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便失禁とは-自らの意思に反して便がもれる症状
排便・排尿の悩みを抱えている方は意外に多く、「尿もれ」は年齢にともなって多くの人が経験することとして認知されつつあります。同様に便がもれる「便失禁」もまた、誰もが経験する可能性のある症状のひとつ...
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便失禁とは-自らの意思に反して便がもれる症状

公開日 2016 年 01 月 25 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

便失禁とは-自らの意思に反して便がもれる症状
高尾 良彦 先生

国際医療福祉大学 教授/医療法人財団順和会山王病院 外科 副部長

高尾 良彦 先生

排便・排尿の悩みを抱えている方は意外に多く、「尿もれ」は年齢にともなって多くの人が経験することとして認知されつつあります。同様に便がもれる「便失禁」もまた、誰もが経験する可能性のある症状のひとつです。しかし、その状態が病気といえるのかどうかもわからず、誰にも相談できないまま悩んでいる方が多いといわれています。便秘や便失禁などの排便障害を中心に多数の診療経験をお持ちである国際医療福祉大学教授・山王病院外科副部長の高尾良彦先生に便失禁についてお話をうかがいました。

「便失禁」とはどのような病気か

「便失禁」は、さまざまな原因によって便がもれる症状をいいます。特定の疾病、つまり何かひとつの病気を指しているわけではありません。コンセンサス会議や学会などで提唱された便失禁の定義がいくつか存在しますが、世界的に統一されたコンセンサスは得られていません。その中の代表的なものとしては、国際失禁会議(International Consultation on Inontinence; ICI)において、「社会的・衛生的に問題となる状況で、自らの意思に反して液状または固形の便がもれる症状」を失禁と定義しています。

便失禁の病態はさまざまで、本人が意識していない時に出てしまうこともあれば、我慢しようと思っても出てしまうという場合も含まれます。また、少量の便汁(べんじゅう)だけの場合もあれば、軟らかい便や固形便が出てしまうこともあります。便失禁に悩んでいる方は推計で全国に500万人以上ともいわれていますが、病院を受診せず、家族にも知らせることができず悩んでいる方も多いと考えられます。これまでにも国内外でいくつかの調査が行なわれていますが、その中で便失禁の症状を抱えている方の割合として報告されている数字、いわゆる有症率は2.2〜25%とかなり幅があります。その理由は、先に述べたように便失禁の定義が定まっていないことに加えて、調査の方法や対象となる方の条件が異なっていることなどによると考えられます。

日本では欧米に比べて65歳以上の高齢者約1,500人を対象にした調査では、介護施設などに入所せず在宅で生活している方であっても、そのうちの数%は便失禁を経験していることが報告されています。しかし、便失禁は必ずしも高齢の方だけにみられるものではありません。ある企業で働く20~65 歳の約300人を対象にしたアンケート調査でも、過去1ヶ月の間に何らかの便失禁を経験した方が数%いることがわかりました。特に原因となる疾患などがなく、ごく普通に日常生活を送っている方も含めて、便失禁は誰もが経験する可能性があるといえます。

【参考文献】

  • Nakanishi N, Tatara K, Naramura H, et al: Urinary and fecal incontinence in a community-residing older popu- lation in Japan. J Am Geriatr Soc 45:215-219, 1997
  • 味村俊樹,大見琢磨,矢後尋志ほか:本邦の労働人口における便失禁の頻度に関する検討. 日本外科学会雑誌. 104:538, 2003

便失禁の種類

便失禁はその症状から大きく2種類に分けられます。ひとつは切迫性(せっぱくせい)便失禁、もうひとつは漏出性(ろうしゅつせい)便失禁です。また、この両方の状態が存在する混合性便失禁もあります。

切迫性便失禁

便意を感じるがトイレまで我慢できずにもれてしまう状態をいいます。切迫性便失禁には次のような要因が関わっていると考えられます。

  • 外肛門括約筋の損傷、機能の低下
  • 直腸に便をためておく機能の低下
  • 下痢などによる便の性状の変化、心理的要因など

漏出性便失禁

便意を感じることなしに、いつの間にか便がもれている状態をいいます。漏出性便失禁には次のような要因が関わっていると考えられます。

  • 内肛門括約筋の損傷、機能の低下
  • 骨盤内臓神経の損傷、機能の低下
  • 直腸肛門感覚の低下など

混合性便失禁

漏出性と切迫性の両方がある状態をいいます。便失禁には複数の要因が関わっていることが多く、漏出性または切迫性であると明確に区別できないケースも少なくありません。

何科を受診すればいいのか

便失禁の治療を受けている方は、最初から大腸・肛門科などの専門医を受診しているわけではありません。かかりつけ医や一般の病院で対応できる場合もあり、実際にそうした医療機関で治療を続けている方も大勢いらっしゃいます。それは、便失禁が生活習慣の見直しや排便のコントロールで大きく改善する可能性があるからです。

最初に症状を伝えるときには勇気がいるかもしれませんが、問診などを通じてどのような症状があるのかをしっかりと伝えていただくことが重要です。その上で必要な場合には、他の診療科や二次的な医療機関への紹介を受けることになります。また、診断のためにより詳しい検査が必要な場合には、肛門科もしくは大腸・肛門科を標榜している専門の医療機関や、排便機能外来を有する施設で検査を受けていただくこともあります。

 

わが国では数少ない排便生理機能検査設備を駆使して大腸・小腸の通過時間、肛門内圧、直腸感覚の測定や排便造影、ダイナミックMRI、経肛門超音波検査などから便秘や便失禁などの機能性疾患の病態を診断するエキスパート。治療はバイオフィードバックなどの保存的治療から、便秘の原因になる直腸瘤や直腸重積の経肛門的手術(STARR)、腹腔鏡下結腸全摘手術、便失禁に対しては仙骨神経刺激装置植込み手術(SNM)などの低侵襲手術までを行なっている。