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インタビュー

公開日 : 2016 年 01 月 27 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

便がもれてしまう「便失禁」は、さまざまな原因によって引き起こされ、複数の要因が重なり合っていることも少なくありません。患者さんの抱えている症状がどのようなものなのかを明らかにすることが治療への第一歩となります。便失禁を診断するための問診や検査はどのように行なわれるのでしょうか。国際医療福祉大学教授・山王病院外科副部長の高尾良彦先生にお話をうかがいました。

問診の重要性

患者さんの症状を整理するうえで問診は非常に重要です。問診の質問事項は大きく3つのグループに分かれており、それぞれ以下のような質問事項から成っています。

1.日常排便習慣に対する質問事項

  • 患者さんにとっての正常な排便とはどんな状態か
  • それがいつから、どのように変わったか
  • 下剤などの内服薬、浣腸、洗腸などの排便補助を行なっているか(いつから・どのように)
  • 普段の便の性状(※ブリストルスケールで記載)
  • 排便時にいきむか、いきむとしたらどのくらいの時間か
  • 便とガスの排出を区別できるか、水様便と固形便の識別ができるか
  • 便排出を我慢できるか、できるとすればどのくらいの時間可能か
  • ガス排出を我慢できるか、できるとすればどのくらいの時間可能か
  • 排便前に腹痛や腹部の膨満感があるか
  • 排便に指や手を用いた補助が必要か
  • 排便後、拭き取るのに問題はないか
ブリストール便性状スケール(便の性状・固さを7段階に分類したもので、4,5が普通便を表す)

2.便失禁に焦点をおいた質問事項

  • 漏れることを自覚できるか、意識的に我慢できない便失禁か
  • 漏れるのはガスか、液状便か、固形便か
  • 最初の便失禁はいつ起こったか、その後時間的にどう変わってきたか
  • どの程度の量が漏れるか、その性状はどのようなものか
  • どのくらいの頻度で失禁するか、失禁を引き起こすきっかけはあるか
  • 漏れは排便後に起こるか、それとも不定期か
  • 日常生活に影響があるか、どのような支障があるか
  • 予防的にパッドなどの保護用品を使用するか、それは有効か

3.便失禁に関わる日常生活についての質問事項

  • 食事内容と嗜好品(コーヒー・アルコールなど)の摂取状況
  • 喫煙歴、体重の変化(BMI; ボディマス指数)
  • 内服薬(向精神薬投与を含む)
  • 日常生活状態:起床、食事と排便、入眠時間などの確認
  • 生活環境:とくにトイレに関する環境の確認
  • 日常生活の活動性、認知症の有無
  • 既往歴・併存疾患:とくに尿失禁、糖尿病併存の有無

これらの質問事項は、日本大腸肛門病学会で現在作成中の便失禁診療ガイドラインに盛り込む案として検討しているものです。患者さんが最初に接する機会の多い、かかりつけ医などの非専門医で適切な診断を行なっていくためには、こうした問診の内容を標準化していくことも大切であると考えます。

便失禁の検査と診断

  • 視診

出産時の会陰切開の痕跡や、肛門周囲の皮膚炎などを目で見て判断します。

  • 直腸指診・膣診

直腸指診は、指を肛門に入れて異常の有無や括約筋の強さを判断するもっとも基本的な診察方法です。また膣診では、子宮や膀胱などの臓器が本来の位置からずれて下がってくる「子宮脱」や「膀胱脱」がないかどうかを診ます。これは骨盤底筋群と呼ばれる筋肉とそれを支持する靭帯が弱っていると起こりやすく、便失禁の原因にもつながります。

  • 直腸肛門内圧検査および直腸感覚機能検査

肛門括約筋や骨盤底筋群など、排便にかかわる筋肉が緩まないとうまく排便できず、逆に筋力が低下すると便やガスがもれることにつながります。また、直腸の感覚が鈍くなると便がたまっていることが自覚できず、逆に過敏になると排便回数が多くなり、我慢できず便がもれることがあります。このような直腸や肛門の筋肉の機能や感覚を数値的に評価する検査です。

  • 超音波検査・MRI(核磁気共鳴画像)検査

肛門括約筋の損傷や萎縮の状態を観察することに優れています。

  • 排便造影検査

直腸の中バリウムを含んだ擬似便を注入してX線撮影し、実際のもれ具合や排便時の動的な変化を調べます。

排便造影検査(左:安静時、右:排便動作時)

山王病院 大腸・肛門外科のホームページより引用 )