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インタビュー

便失禁の外科治療をめぐる最新の話題

便失禁の外科治療をめぐる最新の話題
高尾 良彦 先生

国際医療福祉大学 教授、医療法人財団順和会山王病院 外科 副部長

高尾 良彦 先生

便失禁は保存的治療によって多くの方に改善がみられるといわれています。しかし保存的治療で十分な改善がみられないとき、その原因によっては外科手術による治療が有効な場合があります。中でも仙骨神経刺激療法(SNM)は適応となる患者さんに劇的な効果をもたらす最新治療として注目されています。国際医療福祉大学教授・山王病院外科副部長の高尾良彦先生に便失禁の治療をめぐる最新の話題をうかがいました。

心臓ペースメーカーのような形状・サイズの電気刺激装置を臀部(お尻のふくらみ)に植え込み、排便に関わる仙骨神経を電気的に刺激することで排便をコントロールします。

仙骨神経刺激療法で使用する電気刺激装置(ボールペンとの比較)

 

刺激装置を植えこむ前に、神経に刺激を伝達するためのリードと呼ばれる細い線のみを体に入れ、体外から電気刺激を送って効果の有無をテストします。この試験刺激によって効果が確認された患者さんには、刺激装置の植え込み手術を行ないます。電気刺激装置の設定は患者さん自身でも調整が可能です。

SNMが便失禁を改善するしくみは複雑ですので、一般の方には少し誤解されやすいところがあります。神経に送られる刺激が直接的に肛門の動きをコントロールしているというわけではありません。関連記事「便失禁の原因-複数の要因が重なり合って生じる」の中で排便のしくみについてお伝えしたように、直腸の感覚が脳に伝わって便意として認識され、肛門括約筋を締めようとする一連の神経伝達がうまくいかないと便失禁につながります。電気刺激によってこれらの神経の働きを本来の状態に戻すことが排便機能の正常化につながると考えていただいたほうがよいでしょう。

この手術は保険適応となっており、また高額療養費制度の対象となりますので、自己負担限度額の範囲内で治療を受けることが可能です。手術後の生活における制限として、全身MRI(Magnetic Resonance Image:核磁気共鳴画像)検査を受けることができないという欠点がありました(頭部MRIのみ可)。しかし、疼痛治療に用いられる同様の装置では、一定の条件の下で全身MRI検査が可能な製品が開発されており、今後近いうちにSNM装置でも実用化されると思われます。

また、体内に植え込んだ装置を駆動するための内蔵電池を5〜7年ごとに取り替える必要がありますが、ベッドパッドの下に敷いて使う非接触式の充電システムがすでにアメリカで開発されています。人体への影響や脂肪層など体組織を通しても十分な充電効率が得られるかなど、さまざまな検証が必要なため、実用化には数年を要するといわれています。

  • 有茎薄筋移植術(ゆうけいはっきんいしょくじゅつ):太ももの筋肉の一部を肛門の周囲に移植し、弱っている括約筋の代わりに肛門を締める役割を補います。
  • 肛門括約筋形成術:部分的に損傷している括約筋を縫い縮める手術です。

患者さんにとっては、便失禁の悩みから解放されることが何よりも大切です。手術による治療には一定の効果がありますし、特に仙骨神経刺激療法(SNM)は、これまでの治療で効果が得られなかった患者さんにとって非常に有用であることは間違いありません。ある患者さんは直腸がん手術の影響による便失禁のため、ほとんど外出できない状態が続いていましたが、手術後は温泉旅行にも行けるようになりました。

しかしながら、本当に手術を必要とする方は、実はそれほど多くありません。なかには手術を予定していたにもかかわらず、食事指導や薬物治療などの保存的治療が功を奏して手術の必要がなくなる方もいらっしゃいます。患者さん自身が正しい知識を身に付け、実行していただくことによって、ひとりでも多くの方がより早い段階で便失禁の悩みから解放されることができれば、それに越したことはないのです。

 

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  • 国際医療福祉大学 教授、医療法人財団順和会山王病院 外科 副部長

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