インタビュー

耳閉感とは-「耳閉感」を伴う疾患と治療法

耳閉感とは-「耳閉感」を伴う疾患と治療法
阪上 雅史 先生

兵庫医科大学病院 病院長

阪上 雅史 先生

この記事の最終更新は2016年03月14日です。

耳が詰まったような感覚を覚える「耳閉感」は、耳への空気の出入りがうまくいかないことによって起こります。疾患によっては、耳の中にたまった液体を取り出したり、換気をよくするための手術が必要な場合もあります。「耳閉感」で疑われる疾患とその治療法について、兵庫医科大学病院副院長で耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室主任教授の阪上雅史先生にお話を伺いました。

耳に水が入ったような感じ、ふさがったような感じを「耳閉感」といいます。耳が何らかの原因によってふさがれ、外の空気との圧力の違いから生じます。外耳・中耳・内耳いずれに原因があっても起こります。なかでも原因は、中耳の部分にある場合がほとんどです。代表的なものは耳管が狭くなる「耳管狭窄(きょうさく)症」です。風邪に伴って鼻の奥の「上咽頭」と耳をつなぐ耳管(じかん)が炎症を起こして腫れてしまい、中耳の気圧調整がうまくできない状態をいいます。正常な人でも風邪をひくと耳管狭窄を起こすことがあります。もともと狭窄しやすい体質を持っている患者さんの場合は長期化しやすいです。

近年増えているのが、耳管が開きすぎた状態になる「耳管開放症」です。耳管の周りの結合組織が少なくなって開いた状態で、もともと体質として持っている人もいますし、加齢や体重減少が原因で起こす人もいます。耳が詰まったように感じ、また「自声強調」といって自分の声が大きく響いて聞こえるようになります。下を向くと耳管の回りの結合組織が充血して一時的に楽になるようです。耳管狭窄症や耳管開放症は放っておくと真珠腫性中耳炎に進行するケースがあるので注意が必要です。

中耳に水がたまった状態になる「滲出性中耳炎」、頻度は少ないですが中耳に粘液がたまる「好酸球性中耳炎」があります。前者は小学校低学年くらいで特に多く見られます。内耳で生じるものとしては、急性低音障害型感音(かんおん)難聴メニエール病が代表的です。この2つはよく似た状態で、前者にめまいが加わったものがメニエール病です。いずれも低音部の内耳性難聴で耳閉感を訴え、金属音を強く感じたり、耳鳴りを生じることもあります。内耳では「突発性難聴」でも耳閉感があります。

外耳では耳あかがびっしり詰まっていたり、プールやお風呂で水が耳に入った場合に起こります。コルク栓のように外耳が密閉された状態にならないと耳閉感は起こらないので、耳あかが詰まっていたとしても少しでもすき間があれば起こりません。

「中耳」に原因がある場合、鼓膜の外側(外気)と鼓膜の内側(中耳)の気圧差が生じ、鼓膜が内耳側に押されてへこんでいきます。また、中耳腔が陰圧になり中耳粘膜より周囲の水分が滲み出したまりやすくなります。治療法としては、まず鼻からカテーテルを通して陽圧の空気を送り込むことで、外気と中耳内の圧力を等しくします。これを「耳管通気」と呼んでいます。また、滲出性中耳炎の場合は鼓膜を切開して滲出液を出します。

上記に述べたものはあくまで対症療法です。耳管機能を根本に治す方法はまだ見つかっておらず、とくに耳管開放症は付き合っていかなければいけない病気です。また、「内耳」を原因とする急性低音障害型感音難聴メニエール病は疾病自体の治療を行うことでおのずと耳閉感も治まりますが、症状を繰り返す病気です。

滲出性中耳炎や耳管狭窄を放置すると、鼓膜が中耳の粘膜とくっついてしまい「癒着性中耳炎」になり、真珠腫性中耳炎に移行することがあります。耳管開放症も放置すると真珠腫性中耳炎に移行することがあります。                                            

耳管通気や鼓膜切開によって滲出液を取り出しても耳閉感が治らない場合には、鼓膜チューブを入れ、水を抜くと同時に外気との圧力を調整します。これを「鼓膜チューブ留置術」と呼んでいます。全身または局所麻酔をしてから鼓膜を切開し、鼓室内の滲出液を吸い出した後チューブを入れます。チューブの留置期間が長ければ長いほど治療効果は上がりますが、大半は自然に排出されてしまいます。まだ改善していない場合は再度留置術を行います。

このほか、耳管開放症で鼓膜がぺこぺこしているような状態になっているときは手術用のテープを張って動きを固定し耳閉感を抑えることもあります。また、子どもで喉と鼻の奥にあるアデノイド(鼻とのどの間にあるリンパ組織)が耳管の開口部を狭くしていることがありますので、アデノイド切除術を行います。

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