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インタビュー

総合診療科の重要性

総合診療科の重要性
西田 賢司 先生

東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療センター(ER)センター部長/総合内科部長

西田 賢司 先生

総合診療科や総合内科は、どの診療科を受診すればよいかわからない患者さんの窓口となるところです。東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療センターのセンター長であり、総合内科の部長でもある西田賢司先生に、総合診療科・総合内科についてお話をうかがいました。

記事3『ER・総合内科における研修』において、研修医の教育には最初に総合診療科で雑多に見ていくということがよいのではないかということを申し上げました。ただ、総合診療科や総合内科そのもののあり方については、様々な形があっても良いのではないかと考えています。

やはり誰しも自分の関心のある分野というものはありますし、ある程度専門を持っているべきだという考えもあります。われわれの総合内科でいえば、リウマチ専門医を持っている者や腎臓内科の専門医を持っている者、あるいは糖尿病の専門医を取得しようとしている者もいます。自分である程度専門の分野を持ったうえで総合的な診療を目指すほうが長続きするのかもしれません。

患者さんのニーズにも両方の面があります。一方では専門家に診てもらいたいという方もいらっしゃるでしょうし、また一方では総合的な診療をしてほしいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、医師の専門領域というものがよくわからないと、どこで診てもらえればよいのか迷ってしまうといった話はよく聞きます。私は、総合内科的なマインドを持った専門医もいれば、専門志向を持った総合内科医もいるという形でよいのではないかと考えています。

部門としてどこにも属していない総合診療科があるというのは、患者さんのためでもありますが、研修医が研修をするうえでも大切なことといえます。各科で縦割りになってしまうよりも、どこにも属さないような患者さんを診ることで勉強になる部分があるからです。

総合診療専門医、家庭医療専門医というものがありますが、そこでは横断的な視点や総合的な役割が求められます。2017年からはじまる新しい専門医制度では、内科専門医にもかなり総合内科的な診療が求められてきます。どうしてもそういう領域は必要になってくるのです。

「診る」ということには、「診断をする」「治療を選択する」「それを継続する」という3つの部分があり、診断をするところと治療を継続するところは普通の内科医ができなければいけないものだと考えます。専門ではないからできないというわけにはいきません。しかし、決断をする、つまり治療を選択するところは、専門医が責任を持って行うべきと考えています。治療の選択が難しい場合は特にそうすべきでしょう。

たとえば私が糖尿病で診ている患者さんが腹痛を訴え、検査をした結果、異常が見つかったとします。胃潰瘍などであればあまり迷うことはないですが、もし胃に腫瘍があるときには消化器外科に依頼することになります。そこで治療をし、治療継続の方針が決まってフォローの仕方が分かったら、患者さんを戻していただいても問題はないでしょう。しかし、すべての領域で最先端の治療ができる医者はほとんどいないのではないでしょうか。

したがって、総合診療医の役割の一つは、診断です。治療の選択肢、ましてや最先端の治療ともなれば、糖尿病の薬ひとつをとっても山ほどあって、われわれ専門医でも迷うことがあります。おそらく他の領域の先生からすると、最近の薬はわからないといわれることでしょう。それとは逆にこちらから見れば、リウマチ治療薬の生物学的製剤や血液内科の薬などは、やはりわからないところがあります。しかし、血液のデータを見て、これは何かおかしいと思って専門医のところへ患者さんを紹介することはできるはずです。これからの家庭医も、最初の治療者として、ある程度の診断の目途はそこでつけるところまではできたほうがよいと考えます。

もう一つの役割は、専門医のところで治療が決まって、帰って来た患者さんに対して治療を継続するという部分です。たとえば、かつてはインスリンの治療がどうしても必要な患者さんを帰そうとしても、「うちではインスリンは扱えません」といわれて帰せなくなってしまうということもありました。今ではそういったことはかなり減ってきています。

私が考えるに、いわゆる「かかりつけ医」と「家庭医」は、ニュアンスは異なるものの、ほぼ同じ意味を指します。「家庭医」のほうがやや「その患者さんのみならず、患者さんのご家族や周辺のことまでよく知っている」といった意味合いが入ると思いますが、「かかりつけ医」もその役割を担っていることもありますので、この二者の違いについては様々な考え方があるようです。

患者さんによっては病院の主治医を「かかりつけ医」と呼んでいるケースも少なくありません。私もそう呼ばれることがあり、医師としては大変ありがたいことですが、最近の医療の高度化、病院と診療所の役割分担の必要性などを考えると、なかなか難しい問題があります。

最近電車内などで「かかりつけ医をもちましょう」といったポスターをよく目にしますが、この場合の「かかりつけ医」は大病院の医師ではなく、地域の診療所の先生方を指します。そういったこともあり、ここでは敢えて「かかりつけ医」ではなく、「家庭医」という名称にしてお話しします。

患者さんには専門医に診てもらいたい思いが少なからずあるため、どうしても専門医のいる病院に集まる傾向があります。比較的容態が安定している患者さんも大病院に集中するとなると、医療資源には限りがありますので、大病院でしか提供できない医療が、本当にそれを必要としている患者さんに提供できない事態になってしまいます。また、病院が混んでくればその方に望ましい頻度の医療の提供も困難になってきます。

そのため、病状が安定している方には、家庭医にお願いすることを推進しています。

歯科、眼科などは別としても、一般的な病気について「家庭医」を持つことは非常に重要だといえます。些細なことでも相談できて、そこでもし対応できない場合は専門医に紹介してくれる、そして帰ってきたらまた診てくれるところがあるということが大切なのです。

ただ、普段まったく医療機関を受診していない方が「家庭医」を持つのは難しいかもしれません。何歳以上になったらと年齢で区切るわけにはいきませんが、何かひとつ薬をもらい始めたらそれをきっかけにするとよいでしょう。たとえば慢性疾患で血圧やコレステロールを下げる必要がある、あるいは糖尿病などがある場合、定期的に医療機関へ行くことになりますので、そこを軸に家庭医を持っていただくことをお勧めします。

我々もまた、その「家庭医」のところへ患者さんが安心して帰っていただけるようにしたいと考えています。

たとえば、現在東京都立多摩総合医療センターの糖尿病分野であれば、辻野元祥先生が中心となって循環型の医療連携を推進しています。これは、家庭医に毎月通院し、半年に1回程度東京都立多摩総合医療センターに来院していただくという形です(患者さんの容態によって頻度は異なります)。こうすることで、普段は家庭医できめ細かいフォローをしていただくと同時に、専門医にも定期的に受診する形なので、患者さんも家庭医の先生も安心して受け入れやすくなります。

このような家庭医を中心とした医療連携体制を作ることで、いざというときには、東京都立多摩総合医療センターでより多くの方に高度な救急医療や専門医療を受けていただくことができるようになり、最終的に患者さんには大きなメリットになると考えています。

 

 

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