インタビュー

全身性エリテマトーデス(SLE)の薬物療法。ハイドロオキシクロロキンの登場で何が変わるのか

全身性エリテマトーデス(SLE)の薬物療法。ハイドロオキシクロロキンの登場で何が変わるのか
東京大学大学院 医学系研究科内科学専攻アレルギー・リウマチ学 教授 山本 一彦 先生

東京大学大学院 医学系研究科内科学専攻アレルギー・リウマチ学 教授

山本 一彦 先生

全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんにはステロイドが必要不可欠であり、維持療法として最低限の量を飲み続ける必要があることを記事2『全身性エリテマトーデス(SLE)の内科的治療―寛解導入療法と維持療法とは』でお話ししました。ステロイドは全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとした膠原病の治療に欠かせない薬ですが、最近になってハイドロオキシクロロキン(ヒドロキシクロロキン)が認可されたことから、薬物療法に変化が現れ始めました。ハイドロオキシクロロキンは画期的な薬ではありませんが、ステロイドに頼らざるを得なかった既存の治療方法が変革していくのではないかと期待されています。東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科教授の山本一彦先生にお話を伺いました。

ハイドロオキシクロロキンについて

ハイドロオキシクロロキンは、マラリアの治療薬であったクロロキンを改良してつくられた薬です。ステロイドほど効きは強くないものの、ステロイドと異なるメカニズムを持っています。全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患全体の働きを抑えるとともに、皮膚症状を改善する効果もあるということが近年発見されました。皮膚症状のみ現れるタイプの皮膚エリテマトーデスであれば、ハイドロオキシクロロキンの服用のみで症状が改善することがあります。

関連記事:『全身性エリテマトーデス(SLE)の治療。ステロイドを中心に、ヒドロキシクロロキンの活用も』

ハイドロオキシクロロキンを用いる利点

ハイドロオキシクロロキンの効き目はすでに欧米では証明されており、再燃(一度治まった症状がぶり返してしまうこと)防止の作用もあると報告されています。

さらに、臓器病変(腎炎など)が増悪するのを防ぐともいわれます。ハイドロオキシクロロキンは現在、日本以外の世界中で使われており、世界保健機関(WHO)もその効果を認めています。最近、それが日本でも使えるようになったことは大きな進歩ともいえるでしょう。ハイドロオキシクロロキンの登場で、ステロイド維持量とされる最少量の5ミリを3~4ミリに減量できるかもしれない可能性がでてきたのです。

私のように患者さんを全身的に診ている内科医からすれば、ハイドロオキシクロロキンのメリットは確実にあるといえます。

ハイドロオキシクロロキンを使うにあたっての問題点―期待は大きいが魔法の薬ではない

ハイドロオキシクロロキンは、日本では認可直後の段階ですが、欧米ではすでに全身性エリテマトーデス(SLE)治療における基礎的な薬として使われています。しかし日本で欧米と同じように、ハイドロオキシクロロキンが全身性エリテマトーデス(SLE)の治療として普及していくかはわかりません。

それは、かつて抗マラリア薬として開発されたクロロキンを慢性腎炎の患者さんに投与したことによって、多くの患者さんに網膜症を起こさせてしまった経験があるからです。

このような事件があったことから、日本はクロロキンに対して少なからず慎重になっている部分があり、副作用の少ないハイドロオキシクロロキンであっても、これによる治療が広まるには時間がかかるでしょう。また、ハイドロオキシクロロキンで網膜症を起こすことがないように眼科医とタイアップし、常に視力や視野など網膜症に関して管理をする必要があります。

ハイドロオキシクロロキンは全身性エリテマトーデス(SLE)を治す画期的な薬ではありません。しかし、縁の下の力持ちになってくれる可能性があることは事実です。

それは、今までどのような試行錯誤をもってしても維持療法としてのステロイドを減量することが難しかったのに、ハイドロオキシクロロキンによってそれが減量できるかもしれないという期待が大きいからといえます。

視力低下・色覚異常や網膜症が最大の副作用

副作用としての眼疾患には最大限の注意が必要です。ハイドロオキシクロロキンを服用し続けると網膜病変が起こることがあり、視力低下・視野狭窄・色覚変化などを引き起こす可能性があります。ハイドロオキシクロロキンを服用している患者さんで、こういった症状を自覚したら早急に眼科を受診してください。また、このような症状がなくとも、ハイドロオキシクロロキンを服用していれば、年に一度は必ず眼科に診てもらう必要があります。

副作用が出やすいのはどのような方?

副作用が出やすいのは、肝障害や腎障害を持っている方です。該当する方は、東京大学医学部附属病院では半年に一度眼科で検診していただくことを考えています。

かつて網膜症の薬害事件が起こった際、クロロキンはものすごく多い量で処方されていました。ハイドロオキシクロロキンによる全身性エリテマトーデス(SLE)の治療は、クロロキンよりも副作用の少ないハイドロオキシクロロキンで、尚且つ当時の量よりもずっと少ない量で行います。それでも、ハイドロオキシクロロキンによる治療は注意深く行わなければなりません。

ハイドロオキシクロロキンには期待もありますが、決して特効薬ではないことを頭に留めておく必要があります。どのような薬であっても、過度な期待は禁物なのです。