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インタビュー

全身性エリテマトーデス(SLE)の内科的治療の変化

全身性エリテマトーデス(SLE)の内科的治療の変化
山本 一彦 先生

東京大学 大学院 医学系研究科内科学専攻アレルギー・リウマチ学 教授

山本 一彦 先生

かつて、全身性エリテマトーデスSLE)を発症したときの生命予後はある種のがんと同等で、ほとんどの方が命を落としていました。しかし、ステロイドが開発導入されたことにより、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんが疾患そのもので亡くなってしまう事態は減少してきています。ステロイドは非常に効果的な薬ですが、副作用も多く、今後はさらなる治療法の進化が求められるといいます。全身性エリテマトーデス(SLE)のこれからの治療について、東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科教授の山本一彦先生にお話を伺いました。

内科医は臓器障害を観点において患者さんを診ています。全身管理をする役目を担っていますから、もちろん皮膚にも着目します。ただし、皮膚症状だけを集中的に治療しようとするのではなく、一部の治療が多少うまくいかなかったとしても、最終的に全身を守るためにはどうしたらいいのかということを第一に考えます。

(皮膚症状の治療詳細については古川福実先生の記事『全身性エリテマトーデス(SLE)の治療。ステロイドを中心に、ヒドロキシクロロキンの活用も』を参照)

ですから、全身性エリテマトーデスSLE)の治療はリウマチ専門の内科医だけではなく、皮膚科、他領域の内科(神経内科、消化器内科)と共同し、チームで医療を進めています。

全身性エリテマトーデス(SLE)で私たちが特に注意するのはやはり腎症、そして中枢神経病変です。その他肺、消化管の異常、血管炎の有無、血球減少などの血球異常を注意深く管理しています。

2000年ごろから、関節リウマチの治療は華々しく変化しました。それは主に生物学的製剤が導入され、その治療が成功したことが大きいと考えられています(詳細は『生物学的製剤とは何か 関節リウマチなどに用いられる製剤』)。

しかし、全身性エリテマトーデスSLE)については、生物学的製剤で使用してもよいといえるのは欧米で標準薬の1つとされているリツキシマブのみで、そのリツキシマブも全身性エリテマトーデス(SLE)の治療に大きく貢献したというほどではありません。現状、日本の全身性エリテマトーデス(SLE)の治療は、旧来のステロイドに頼らざるを得ない状況です。

ステロイドはペニシリンと並び、人類が開発した中でも非常に素晴らしい偉大な薬とされていますが、決して夢の薬ではありません。抗炎症作用と抗免疫抑制作用がある一方で、糖尿病・感染症・骨粗しょう症などの副作用も生じます。

とくに入院患者さんでは大量のステロイドが使われる場合があり、感染症(日和見感染)が起こりやすくなります。全身性エリテマトーデスSLE)の患者さんは、免疫が低下したことによる感染症によって亡くなるケースが無視できないことも危惧されています。また、長期的にみると骨粗しょう症が患者さんにとって大きな負担になります。

高血圧症、糖尿病はそれぞれの薬を使ってコントロールすることができますが、根本的に全身性エリテマトーデス(SLE)を治すための特効薬は今のところ開発されていません。

このように、まだ全身性エリテマトーデスSLE)治療において革新的な変革は起こっていないのが現状です。

ただし、ステロイドが使われる前(1960年前後)は、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された半分の患者さんが5年以内に亡くなっていました。全身性エリテマトーデス(SLE)はある種のがんと同じくらい生命予後が悪く、治療も困難でした。しかし現在では5年後生存率90%以上まで伸びています。

これらを考えると、全身性エリテマトーデス(SLE)の生命予後の伸びはステロイドが登場したおかげといえます。全身性エリテマトーデス(SLE)は、それ自身によって命を奪う病気ではなくなってきていますし、現在も様々な薬が研究されていますから、今後はもっと患者さんに負担の少ない治療法が確立される可能性もあるでしょう。その代わり感染症で亡くなる方が多くなったことも忘れてはなりません。

生物学的製剤を中心とした関節リウマチの治療が進歩してから、免疫をコントロールする薬についての世界的な開発は進んでいます。

しかし、血圧の薬や糖尿病の薬と比較すると、免疫に関する薬はまだ十分であるといえる段階ではありません。免疫システムは、外のものを認知してそれを記憶する力を持っており、この能力はヒトの体において神経と免疫にしか備わっていません。認識するという行為は非常に複雑なことです。それでも、免疫は何十億もの未知の物質をすべて認識できますから、すごい能力を持ったシステムといえます。そのシステムに人類が挑戦し、免疫機能を調整する薬を開発しようと機運が高まりつつありますが、実をいうと現在までの治療の方向性は必ずしも理想的ではないと考えています。

理想的には、「正常な免疫機能」と「病的な免疫機能」を選別する力を持った薬が必要と考えられています。つまり全身性エリテマトーデスSLE)引き起こす免疫異常と、まだ体に備わっている正常な免疫反応(感染症に対する免疫作用など)を分けて、異常が起こっているところだけ治療するという力です。正常な免疫反応は残しながら、自己であるDNAに対する誤った自己免疫反応を選択的に抑える。このような時代に医学が突入しなければ、全身性エリテマトーデス(SLE)の理想的な治療は難しいかもしれません。

このような方向の研究がいつ完成するか分かりませんが、実験動物段階では不可能ではないところまで来ています。

ただしヒトの場合はヘテロ、つまり誰もが同じというわけではないので、我々が患者さん一人ひとりの違いを把握しながら個々にあった治療を提供する必要があります。

全身性エリテマトーデス(SLE)という複雑な疾患に対して個別化医療をもたらし、それぞれの患者さんに的確な治療を施す時代に入りつつあるともいえます。

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