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インタビュー

障害児の栄養問題。経鼻栄養や胃ろうの造設、手術が必要になることも

障害児の栄養問題。経鼻栄養や胃ろうの造設、手術が必要になることも

東京都立小児総合医療センター 消化器科 部長

村越 孝次 先生

立花 奈緒 先生

東京都立小児総合医療センター 小児消化器科 

立花 奈緒 先生

近年、障害を持つお子さんの生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)をどのように上げるかが重視されるようになってきましたが、「栄養」の問題はなかなか扱っている病院が少ないのが現状です。今回は、小児専門医療施設ならではのチーム医療を生かし、障害を持つお子さん(特に重症心身障害児)の栄養対策に積極的に取り組んでいらっしゃる、東京都立小児総合医療センター消化器科の村越孝次先生と立花奈緒先生にお話を伺いました。

障害者とは、法律上の定義では「身体の機能の障害や、知的な障害や、精神的な障害のために、日常生活や社会生活に相当な制限を持つ人」のことを指します。18歳未満の方は「障害児」と呼ばれ、個々人によって障害の程度は非常に幅広く存在します。栄養面でいえば、食事行為はまったく問題のないお子さんから、飲み込みの機能が悪いお子さん、身体が動かせず全く飲み込めないお子さんまで様々です。そのなかでも、特に重度の方(重症心身障害児といいます)は、摂食・嚥下障害・誤嚥、栄養障害、呼吸障害、緊張・けいれん、体躯変形(体全体が変形してしまっていること)などを抱えている場合が多くあります。

前述のように、自発的に食事ができない、食べ物を飲み込むことができないなどの問題を持つお子さんは栄養失調になりがちです。消化器に障害を持つためうまく消化吸収できなかったり、栄養が偏ってしまったりすることもあります。

具体的な消化器の障害としては、胃食道逆流症食道裂孔ヘルニア嚥下障害(飲み込みができないなどの問題があること)・誤嚥、空気嚥下症(呑気症:必要以上に空気をのみこんでしまい、消化器に問題を起こす状態)などがあります。

特に障害が重度になると嚥下障害・誤嚥を起こすことが多いため、チューブで直接胃や腸に栄養剤を入れる「経管栄養」が行われます。経管栄養にはチューブを胃まで入れる場合と、腸まで入れる場合の2種類があります。また、胃や腸に繫がる穴を皮膚にあける(胃ろう、腸ろう)手術を行い、直接ここから栄養を入れることもあります。

左:胃ろう、右:腸ろう

 

経鼻栄養

なお重症心身障害児の場合は、小児科にかかる年齢を超えても一般の大人の病院ではなかなか診てもらえません。よって多くの場合、重症心身障害児の方は大人になっても小児科を頼らざるを得ないのです。

以前、幼少期から重症心身障害児だった現在30歳の患者さんが、「もともと飲み込みは上手ではなかったけれど、ついに飲み込めなくなってきた」と当センターが統合される前の施設を受診されました。検査をしてみると、胃液の逆流が原因で食道に潰瘍ができ、それが瘢痕(はんこん:粘膜の傷が治る過程でできる粘膜の変形やかさぶたのようなもの)化して、食道狭窄(食道が狭くなる)になっていました。この方は治療ができる段階だったため、食道狭窄を解除し胃液の逆流を防ぐ噴門形成手術をすることで嚥下機能が回復し、食べる楽しみを回復することができました。

その後も、小児科にかかる年齢を超えて栄養の問題が出てくる方をたくさん診させていただきました。そのようななかで次第に気づいたのが、個人の歴史を昔からたどると「もっと早く医療介入できたのでは」というポイントがある、ということでした。

それでは、そのポイントについてお話しましょう。

障害を持つ子どもの多くは入院という慣れない環境にストレスを感じやすいため、「なるべく体調を整え、入院しないでお家でゆっくり過ごせるようにする」のが一番大事です。

障害を持つ子どもは、栄養摂取方法に限らず、家族が重要な判断をしなければならない場面が多くあります。特にそのなかでも、日常生活をどう介助してゆくのかというテーマが重要課題です。

親御さんの思いとしては、なんでも叶えてあげたいと思う反面、なにも得られない状況におちいることはしばしばあります。直面した問題を解決するために医療機関を受診しても、医療的な介入方法が想像の域を超えていて、なかなか踏み切れない親御さんもしばしばいます。

そのようなとき医療者側のアドバイスとしては、通常の子どもは成長の過程で無意識に自らの能力を取捨選択しますが、障害児はその選択を親御さんが代用するしかなく、その際は何を犠牲にして何かを得るかを決断してあげることが大切だと説明しています。

たとえば重症心身障害児のお子さんは、徐々に飲み込みの機能が落ちて、誤嚥(食べ物が空気の通り道に入ってしまうこと)を起こしてしまうことがあります。このとき、喉頭気管分離術(空気の通り道とご飯の通り道を分ける手術)を行うと、声を出せなくなりますが、ごはんをより安全に食べられるようになり、味を味わうことで食事の楽しみは持ち続けられます。

つまり、食べる楽しみを持つため、喉頭気管分離術を行う選択肢がある一方で、声を失いたくないからごはんが食べられなくなっても手術はしないという選択肢もあるのです。そしてこれを決めるのは、多くの場合ご家族の判断にゆだねられます。

子どもが10人いれば、10通りの家族と10通りの選択があります。栄養供給方法についても、口から食べるのか、経管での栄養が必要か、それとも手術介入するか、選択する場面・選択肢は多々あります。家族の思いを尊重しつつ、判断材料になる客観的なデータ(メリット・デメリット)を、我々はしっかりと説明する義務があると感じています。

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