インタビュー

かぶれ(接触皮膚炎)の治療

かぶれ(接触皮膚炎)の治療
椛島 健治 先生

京都大学大学院 医学研究科 皮膚科学 教授

椛島 健治 先生

この記事の最終更新は2016年02月15日です。

この章では、接触皮膚炎の具体的な治療方法について、また最新の研究から今後の展望までについて、引き続き京都大学医学研究科 皮膚科学教室教授の椛島健治先生にうかがいました。

そもそも赤いぶつぶつができたときに、接触皮膚炎なのかそれ以外の病気なのかを、見た目で判断するのは難しいと思います。一つの目安として、ある特定の場所に繰り返し同じような症状が現れた場合には、一度皮膚科を受診することをおすすめします。接触皮膚炎が疑われ、原因と思われる物質を避けてもしばらくして(目安としては1週間ほど)症状が改善されなかった場合は、違う物質が原因である可能性が高いため、再度受診をしましょう。

すでに炎症が生じている場合にはステロイド軟膏の外用剤が処方されることが多いです。しかし、原因物質との接触を避けられない場合、塗り薬を使用しても副作用がでることも多く、まずは原因物質の除去に努めることが第一となります。特に顔にできたかぶれに対して長期にステロイドを塗ると、毛細血管の拡張などの副作用が生じやすいため、注意が必要です。

またステロイド軟膏は種類も多く、強さもさまざまです。ステロイドは原因物質を除去した上で使用すれば、症状がおさまるまでの期間が短くなる効果があります。しかし副作用も生じやすいため、担当医と相談の上、自分にあったステロイドを処方してもらいましょう。さらに、まれではありますが、ステロイド外用剤によるかぶれを生じるケースもあります。

目が開かないくらいにパンパンに腫れてしまっている、日常生活に支障をきたすほど炎症反応が起きているという場合には、ステロイドを内服することもあります。例えば漆(うるし)による皮膚炎などは症状が強く、外用のステロイドでは症状が改善されないこともあります。ただ実際には、接触皮膚炎で内服薬を使用することはあまりありません。

金属除去療法とは、金属による全身性接触皮膚炎の患者さんで、原因となる金属との接触を除去しても症状が改善されない場合に用いる方法です。金属との接触だけではなく、体内に摂取する金属量を減らすために、食物中の金属摂取制限・歯科金属除去の2つの方法がとられることがあります。

ニッケル・クロム・コバルトなどは特にチョコレート・ココア類・豆類・香辛料・貝類などに多く含まれるため、上記金属アレルギーの場合は摂取量の摂取制限を行います。また、ステンレス製の調理器具からニッケルなどの金属が溶け出していた例も報告されています。この場合、調理器具の変更の検討をすることもひとつの方法です。

歯科治療時の詰め物(入れ歯など)に水銀・パラジウム・金などが含まれていることもあり、これらが原因となってアレルギーを引き起こしていることもあります。この場合、歯科で詰め物などを除去してもらうことで改善する可能性もあります。

ただ、この治療法は接触皮膚炎ガイドライン(治療方針)の中でも標準治療として推奨しているわけではないので、一般には行われていません。また、費用の問題や患者さんの性格など様々なことを考慮した上で、効果が見込める場合に行う治療になります。

私が行っている研究のひとつとして、おむつかぶれ(刺激性皮膚炎)のメカニズムの解明というテーマがあります。長い間おむつかぶれの原因はよくわかっていなかったのですが、マウスを使った実験により、白血球の中でも特に好酸球・好塩基球の相互作用によって刺激性皮膚炎が生じていることが解明されました。

おむつかぶれは赤ちゃんだけではなく、高齢者の方でもトラブルを抱えている方がいらっしゃいます。現在はまだ臨床応用は進んでいませんが、今後好酸球・好塩基球の働きを抑制する薬ができれば、ステロイド以外の薬による治療ができるようになるかもしれません。

また、もう一つの研究として、オメガ3脂肪酸のひとつである「レゾルビンE1」の皮膚アレルギーの対する効果についても研究が進んでいます。オメガ3脂肪酸は魚類に多く含まれる脂肪酸で、昔から血をサラサラにする動脈硬化抑制の効果が知られていました。また、それと同時にぜんそくを抑制するなど、抗炎症作用があることも注目されてきた物質です。この抗炎症作用に着目し、代謝産物の1つである「レゾルビンE1」によって皮膚アレルギーが改善されることがわかってきました。現在はアトピー性皮膚炎の患者さんに対して内服薬・外用薬の処方による研究が進められており、将来は保険適用の治療になるかもしれません。

【参考:接触皮膚炎診療ガイドライン

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