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インタビュー

進行直腸がんに対する腹腔鏡手術

進行直腸がんに対する腹腔鏡手術
大田 貢由 先生

横浜市立みなと赤十字病院 大腸外科 部長代理

大田 貢由 先生

大腸がんの中でも直腸がんは骨盤内の深いところにできるため、手術そのものが難しく、患者さんの身体への負担が大きいとされていました。しかし、小さな傷だけで行える腹腔鏡手術の技術が確立され、従来の開腹手術と同等の治療成績を上げられることがわかってきました。横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センターで大腸がんの腹腔鏡手術を多数手がけている大田貢由先生にお話をうかがいました。

私たちの施設でも、当初は早期がんを対象として大腸がんの腹腔鏡手術を行なっていましたが、現在は進行がんに対しても腹腔鏡手術を行なっています。特に直腸がんは、大腸がんの中でも手術に特殊性があるものですが、この直腸がんについても腹腔鏡手術を行なうようになってきました。

早期がんから適応を拡大して、安全性と治療の根治性を担保しながら対象を広げていく中で、臨床試験にも参加してきました。有名なJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の0404という試験の結果が最近(2015年1月)オープンになりましたが、腹腔鏡手術が進行大腸がんについても開腹手術とほぼ同等の成績であるということが証明されています。

しかし、こうした大規模な臨床試験の結果があって初めて腹腔鏡手術ができるというわけではありません。たとえばこの市民総合医療センターではこれまで2,000例以上の腹腔鏡手術をやってきた実績があり、そういった症例の蓄積によって徐々に適応を拡大し、現在に至っています。

開腹手術との比較で明らかなことは、出血量が少なく、その代わりに手術時間が長いということです。基本的に傷が小さいので、痛みが軽くて傷跡が目立ちにくく、術後の回復が少し早いといわれています。加えて、創感染(そうかんせん・手術で切開した傷の感染)などの合併症も少なくなります。

開腹と腹腔鏡の両方で手術をしてきた立場からいえば、腹腔鏡のほうが深部をより詳しく拡大して見ることができ、手術が精密かつ繊細に行えるという印象を持っています。開腹手術の時代には、直腸の手術は複雑すぎて腹腔鏡では無理だと思われていましたが、現在では腹腔鏡手術のほうが逆に精密にできるのではないかと考えています。

固定された視点から肉眼で物事を見て判断するよりも、対象にカメラで近寄って拡大して見たほうが良いというのは、大腸の手術に限らずマイクロサージャリーの分野などでも共通する利点です。特に直腸のように肉眼で見えにくいところでは、カメラの補助を使って手術を行うのは合理的な方法です。

その一方で腹腔鏡手術の現在の限界と思われる点は、鉗子(かんし)を使って操作をするため、手で直接行なうほど繊細な動きはできないということです。いくらカメラで精密に観察することはできても、手術機器の構造上、必ずしも手と同じように繊細に操作できるとは言えません。マジックハンドを使って手術をするわけですから、そもそも操作自体の難しさがあります。

また、非常に狭いところであるため、目的の部位に到達できるかどうかという問題もあります。カメラでは見えていても、さまざまな障害物を乗り越えてそこにアプローチできるかどうかということになると、手を使ったほうが有利な場合もあります。

近接して見るということには、長所ばかりではなく短所もあります。俯瞰した全体像をつかみにくくなるため、腫瘍が大きい場合やリンパ節の郭清などで手術が広範囲に及ぶ場合には、近接した拡大視野だけで手術を組み立てていくことが難しく、「木を見て森を見ず」ということになる可能性もあります。

したがって腹腔鏡手術では、術前の画像診断によって自分(医師)がどういう手術を行なうのかシミュレーションをしておくことが非常に重要です。開腹手術のように臨機応変に対応というわけにはいきませんので、術中に重大な合併症を起こしたときに対処が遅れることも十分考えられます。

腹腔鏡手術にはそういった欠点もあるため、手技の習熟度に応じて症例への適応を決めていく必要があります。最初から直腸がんのような難しい手術を扱うと危険も伴います。

大腸の手術は技術認定制度によってクオリティ・コントロールをしっかりと行なってきた分野であり、クオリティ・コントロールをしっかりと行なってきた領域では重大な事故はあまり起こりませんが、それでも技術認定のある外科医なら誰でも直腸の手術が安全に行えるというわけではありません。やはり自分の技量を鑑みながら症例を選択していくこと、無理をして難しい症例に手を出さないということが何より大切であると考えます。

腹腔鏡手術が適さないと思う症例については、患者さんにも率直にそのようにお伝えします。万が一腹腔鏡手術で不測の事態が起こった場合には、コンバージョンといって開腹手術に移行することもありますが、実際にはそのような例は年間で1件あるかないかというところです。非常に少ない確率ではありますが、そういった合併症などが手術中に起こったとき、躊躇することなく開腹手術に移行するのは当然のことであると認識しています。

 

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