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インタビュー

直腸がんの手術。肛門温存は可能?

直腸がんの手術。肛門温存は可能?
大田 貢由 先生

横浜市立みなと赤十字病院 大腸外科 部長代理

大田 貢由 先生

大腸がんの中でも発生頻度の高い直腸がんでは、手術にともなって肛門の機能が損なわれ、人工肛門が必要になる場合もあります。しかし、手術手技の発達などさまざまな理由により、肛門温存比率は非常に高くなっているといいます。肛門温存手術の新しい技術が開発される一方で、そのことによる再発のリスクも考慮する必要があります。横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センターの大田貢由先生に肛門温存手術とその課題についてお話をうかがいました。

私たちの施設のデータでも10~20年前はおそらく肛門に近い下部直腸がんの肛門温存比率が6〜7割だったと記憶していますが、現在では9割を超えています。これにはいろいろな理由があります。手術が精密になったというのもその理由のひとつですが、私たちは腹腔鏡を活用してより精密に手術を行なっています。あるいは、肛門括約筋を温存するISR(括約筋間直腸切除術)という新しい手術が開発されたことなど、さまざまな要因があります。もうひとつ重要なのは集学的治療です。そういった理由によって肛門温存比率が高くなっています。

しかし肛門を温存することによって、一部の試験では局所再発率が悪化しているというデータもあります。これはトレード・オフの関係で、無理をして肛門機能を残そうとすればがんが残ってしまい、局部再発の危険が高くなるということも一方で起こってきます。これは非常に難しい問題です。

患者さんは肛門機能を残してもらえれば満足するかもしれませんが、一方では再発という難しい問題を克服しなければなりませんし、それは患者さんにはわかりにくい部分です。個々の症例が肛門を残せるものなのかどうかということをしっかりと検証することも必要ですし、どこまで肛門温存が可能なのかということについて、さらに議論を積み重ねていくべき分野であると考えます。

がんになった患者さんは、肛門を残してもらうために手術を受けるのではなく、できればがんを治してもらいたいと思って手術を受けるのだと私は考えます。患者さんにとって「がんが治る」ということは、5年後に75%生存しているといった数字ではありません。がんをやっつけたい、がんで死にたくない、二度とがんで悩みたくないという思いで治療を受けているのではないでしょうか。

そうであるならば、がんを治す可能性が一番高い選択肢から優先的に考えるべきであり、それは極論をいえば大きくとること、つまり拡大手術です。しかし、そうしてしまうと今度はがんが治ったことと引き換えに肛門機能を失ってしまいます。そこで、そこから少し歩み寄って、がんが治せるギリギリの部分でなんとか肛門を残せないかということを、患者さんと一緒に探っていくというステップを踏むべきです。

最初に肛門温存ありきではなく、がんが治る一番よい手立てはこれだというものをまず考えます。その上で患者さんの負担があまりにも大きいのであれば、負担を減らすために低侵襲な腹腔鏡手術を選択する、あるいは縮小手術で肛門を残すというような議論が生まれてくることが望ましく、その順番は医師も患者さんも意識しておくべきです。

新しい治療が出てくると飛びつくというのは患者さんも医師も同じです。しかしそれは手段のひとつに過ぎません。ゴールがどこにあるのかということを見失わないようにしながら選択するというのがもっとも重要なことです。

 

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