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インタビュー

進行大腸がんの集学的治療(2)化学療法の導入

進行大腸がんの集学的治療(2)化学療法の導入
大田 貢由 先生

横浜市立みなと赤十字病院 大腸外科 部長代理

大田 貢由 先生

がんを手術だけで治すのではなく、抗がん剤による化学療法や放射線治療を組み合わせる集学的治療の中で、本当にがんを治せる治療とは何なのでしょうか。進行大腸がんの集学的治療に対するひとつの答えが抗がん剤による化学療法の導入でした。術前・術後化学療法をいかに効果的に行なっていくかという取り組みについて、横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センターの大田貢由先生にお話をうかがいました。

直腸がんの場合、手術に先立って抗がん剤による化学療法や放射線治療を行ない、がんを小さくしてから手術をする「術前放射線化学療法」が集学的治療の典型的なものです。しかし、これまでの記事でも触れてきたように放射線化学療法にも限界があり、日本においては手術単独療法の限界というものが明らかになってきました。そこで次にクローズアップされているのが抗がん剤、すなわち化学療法の導入です。

たとえばリンパ節転移のある結腸がんに対して、手術でがんを全部取り切ったけれども切除した組織を見るとリンパ節転移があったというときに抗がん剤治療を行なうと、約20%再発を減らすことができます。つまりこれは、もっとも大きなゴールである「がんを治す」効果があることがはっきりしている治療です。

このことは大腸がんの他の場面でははっきりと証明されていることです。したがって大腸の進行がんは、がんをきちんと取った後に抗がん剤治療を半年間行なうことで、さらに治療成績を良くするということが標準治療として認められています。

直腸がんの最大の問題点は、手術であれ放射線治療であれ、「がんが治る」という点で効果が乏しいというところです。ですから、当然きちんと直腸がんを取った上で抗がん剤治療を行なうということが予後の改善、つまりがんを治すという意味で重要になります。

ただし、直腸がんの特殊性として侵襲が大きく、放射線治療になると合併症が増えるということがあるため、術後の抗がん剤治療が必ずしも十分に行えないという現実があります。そこで欧米でも臨床試験が多く行われてきているのが術前化学療法です。

手術前は患者さんも元気ですが、術後は体力が落ち、治療意欲も低下しがちです。このように術後はさまざまな理由で抗がん剤の治療がうまくいかないことが多いため、効果を上げるために手術の前に入れてしまおうと考えたのです。

くわえて手術の前に抗がん剤治療を行なうとがんが小さくなるため、がんを取りきれる可能性が高くなるといわれています。欧米では実際に化学療法を行なって放射線治療をスキップするという臨床試験がすでに行なわれていますし、日本ではそもそも化学放射線療法を行っていませんから、化学療法でがんを小さくしてから取るという方法にデメリットがあるとは考えにくいのです。

そういった理由から、日本でも欧米でも今さかんに研究されているのは、術前に抗がん剤治療を行なってから直腸がんの手術を行うという治療方法であり、実際に私たちの施設でも少しずつ始めているところです。

抗がん剤治療はかなり進歩しましたが、一方で患者さんにとっては負担となる治療でもあります。薬の種類も増えましたが、それぞれに副作用が伴うため、むしろ患者さんの負担は増えているともいえます。ですから、患者さんに負担のある治療をどれだけきちんと行なえるかということが問題になります。

負担が大きいということは必ずしもデメリットだけではなく、その分効果もあるということですから、できるだけ負担を緩和しながら効果的な抗がん剤治療を行なっていくということは大事な取り組みのひとつです。患者さんが元気なうちに投与して効果があるならば、術前の元気なうちに抗がん剤治療を行うというのは非常に合理的なオプションのひとつであるといえます。

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