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直腸がん手術の問題点と臨床試験のあり方
新しい治療法や手術手技が開発される中で、患者さんが得られる利益と再発のリスクは正しく評価されているのでしょうか。横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センターの大田貢由先生は、あまりにも...
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直腸がん手術の問題点と臨床試験のあり方

公開日 2016 年 02 月 19 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

直腸がん手術の問題点と臨床試験のあり方
大田 貢由 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器外科 准教授

大田 貢由 先生

新しい治療法や手術手技が開発される中で、患者さんが得られる利益と再発のリスクは正しく評価されているのでしょうか。横浜市立大学附属市民総合医療センター・消化器病センターの大田貢由先生は、あまりにも多様な治療が許容されている状況は患者さんの不利益につながる可能性があると指摘しています。臨床試験を通じて治療成績を客観的に評価することの重要性、今後への期待などを大田貢由先生にお話しいただきました。

直腸がんの局所再発と治療に対する考え方

直腸がんの局所再発率というのは非常に重要ですが、治療して数年後に出てくる結果なので、患者さんにとっては目に見えにくく、わかりづらい部分です。患者さんは退院するまでがひとつの治療だと考える傾向があります。そこで私が患者さんにいつもお伝えしているのは、退院するまでが治療なのではなく、そこから再発するまでを定期的にチェックすること、それもひとつの治療なのだということです。

また、高齢の方と若い方では何を優先するかということも違いますから、そういった観点から考えれば、高齢の方と若い方では治療方針が一緒になるということはないはずなのです。目指すものが少しずつ変わってきますので、それは当然のことだと思います。治療のためのガイドラインもありますし、最新治療もいろいろな選択肢がありますので、そういったものをお話ししたうえで、患者さんと医師との間でどの治療がベストかという合意形成をすることが非常に重要です。

しかし、個々の手術によってどのくらい再発のリスクが増すのか、あるいは肛門機能が残せるなど、患者さんにどのくらいの利益があるのかということについて、どの施設でもまだはっきりと分かっているわけではありません。医師の手技によっても変わってきますから、多くの医師は自分たちの経験に基づいて、あるいは自分たちの理想に基づいて話をしているというのが現状です。

私は患者さんの利益を第一に考えていろいろなオプションをご提示し、たとえばこの施設では腹腔鏡手術が得意であるということも率直にお話ししますが、それは治療のオプションのひとつであるということもお伝えした上で選択していただくようにしています。

自分が不得意なものをすすめる人は世の中にはいませんから、場合によってはセカンドオピニオンも必要になってきます。しかし患者さん皆がそれを求め始めるとなかなか治療が始められないといった問題も生じますし、話が上手い医師のところにばかり患者が集まるという危険性もあります。良かれと思って手術をしてもらい、3年後にうまくいかなくても後の祭りです。臨床の現場には常にそういった難しさがあるのです。

臨床試験に対する誤解

ひとつの大きな流れとして、効果がはっきりとしない治療、いわゆる標準治療から大きく外れた治療については臨床研究、臨床試験という形で倫理委員会の承認を得て行なれるようになってきました。また、保険適応されない治療については先進医療を国に申請し、機会を得てから行なうということが主流になっています。

かつては直腸がんの治療などでは、効果がはっきりしていない治療を各施設の判断で実施していました。それは今まで、ある程度医師の良心に任されてやってきた面があるのですが、あまりにも多様な治療が許容されている状況は患者さんの不利益につながる危険があります。そういったものについてはきちんと整理をして、たとえばこの治療は倫理的に是なのか否なのか、審査を受けた上で患者さんに説明をして同意をいただいて行なうというような大きな流れがあって、私たちの施設でもそうなりつつあります。

昔は臨床試験といえば、患者さんは何か新しいものを試されるというイメージがありましたが、それは治験という,新薬の効果をみる試験のイメージに近いものです。患者さん側には、臨床試験というのは何をされるのかよく分からないし、怖いから受けたくないというところがありましたが、患者さんだけでなく医師にも臨床試験を回避しがちな傾向がありました。つまり、臨床試験というのは患者さんを試すようなものだから、あまりやりたくないという考えです。

しかし、臨床試験は今ある治療をきちんと登録して行なうことで、治療成績を客観的に評価することができるようになります。一人ひとりの患者さんにとって直接のメリットはなくても、医療全体にとっては非常に大きなメリットがあります。また、行われている治療の多くは先進的というよりも臨床的に報告され、すでに導入されている治療が主ですから、患者さんにとってはそれほど大きなリスクやデメリットはありません。私は臨床試験に患者さんが積極的に同意していただき、きちんと計画して行なうということが、今後もっと広まっていくことを期待しています。

患者さんの間にそういった認知が浸透せず誤解されているのは、これまで臨床試験のあり方を明らかにしてこなかった病院側にも少なからず責任があります。効果がはっきりしないまま、やりたい治療をやってしまっている可能性があるからです。

たとえば、肛門温存でお話ししたISR(括約筋間直腸切除術)にしても、出てきた治療成績が実はあまりよくなかったということがあります。このような例もあり得ますから、きちんと責任をもって患者さんに説明し、データをIRB(治験審査委員会)にかけているような施設で治療を受けられることをおすすめします。同時に患者さんが正しい知識を身に付け、そういった取り組みをしている施設を選択するという価値観を持つことも必要です。

 

低侵襲な大腸がんの腹腔鏡下手術を得意とするエキスパート。JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)大腸がんグループの施設研究責任者やYCOG(横浜臨床腫瘍研究グループ)の研究代表者を務め,臨床研究を積極的におこなっている。

「直腸がん」についての相談が5件あります

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