下垂体腺腫は、血液中のホルモン値の測定や負荷試験(ホルモンを刺激する薬物を投与して観察する検査)とMRI(磁気共鳴画像診断装置)による画像検査を組み合わせて診断を行います。どのような方法で、どのような情報から診断を行うのでしょうか。本記事では、下垂体腺腫の診断法について神戸大学大学院医学研究科 糖尿病分泌内科学 准教授の高橋裕先生にお話を伺いました。
症状を疑ったときには、まず血液中のホルモン値を測定します。先端巨大症の場合は成長ホルモンや、成長ホルモンによって調節されているIGF-1(アイジーエフワン、ソマトメジンC)と呼ばれる物質を測定します。クッシング病の場合はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)とそれによって調節されているコルチゾールを測ります。また、血液中のほかに尿中のホルモンを測定する場合もあります。またいくつかの負荷試験が必要な場合もあります。
同時にMRIで下垂体の画像診断を行います。造影することによって、腫瘍と正常な組織がきれいに区別され、どの部分に腫瘍があるのか、周りの神経を圧迫しているかどうかなどがわかります。ただし、プロラクチンが高い場合には腫瘍以外の原因として、薬物の服用により上昇している場合があるので注意が必要です。視床下部(ホルモンの分泌をコントロールする中枢)からは、通常ドパミンというホルモンが出てプロラクチンを抑えているのですが、ドパミンを抑えるような薬、たとえば向精神病薬や胃潰瘍の薬などを飲むと抑制が解除され、プロラクチンが上がってしまうことがあるからです。
下垂体の上部には視交叉という視神経が交じわった部分があり、腫瘍が大きくなると視交叉を圧迫して「両耳側半盲(りょうじそくはんもう)」という症状が現れることがあります。両眼で外側(耳側)の半分の視野が欠けてしまいます。こうした場合眼科受診をきっかけに下垂体腺腫がわかることがあります。
また糖尿病や高血圧で来院されて、下垂体腺腫がわかることがあります。それは先端巨大症やクッシング病はホルモンの影響により糖尿病・高血圧を併発しやすいからです。例えば、神戸大学医学部附属病院において、糖尿病で紹介されて入院した約300人の患者さんのうち2人が先端巨大症でした。先端巨大症やクッシング病は疾病に特有な顔や身体所見の特徴があるので、プライマリケア(身近にあり、さまざまな相談にのってくれる医療)の先生に気づいて頂くことが重要です。また先端巨大症では顔貌の変化だけではなく、靴や指輪のサイズが大きくなることがあるのでそのようなときには内分泌専門医に相談して下さい。
また、クッシング病の患者さんは重症の骨粗しょう症になるケースが多くあります。閉経前の女性で圧迫骨折を起こしたような場合には、疑ったほうがよいでしょう。
奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学講座 教授
奈良県立医科大学 糖尿病・内分泌内科学講座 教授
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・内分泌代謝科指導医日本糖尿病学会 糖尿病専門医・糖尿病研修指導医
日本の間脳下垂体疾患診療、研究におけるフロントランナーの1人。厚労省班会議における間脳下垂体疾患診断ガイドライン作成に関わる一方、研究においては成長ホルモン分子異常症による低身長症、成人成長ホルモン分泌不全症における非アルコール性脂肪性肝炎、下垂体機能低下症の原因となる日本初の新たな疾患「抗PIT-1抗体症候群」など新しい疾患概念を次々と提唱してきた。内分泌代謝科の専門医師の育成にも尽力している。現在は分子生物学的アプローチ、疾患特異的iPS細胞を用いた下垂体腫瘍、機能低下症など下垂体疾患の原因解明と創薬を目指した研究を進めている。
高橋 裕 先生の所属医療機関
関連の医療相談が6件あります
淋菌性腟炎について
1年ほど前に淋菌性腟炎と似た症状が出たことがあります。膣内が痒くなったり、膀胱炎になったり。。。今はたまに黄緑?っぽい膿みたいな織物がごく稀にでます。最近性病についてたくさん知り、不妊症や早産流産になるのが怖くて不安でたまりません。おりものもどれが普通なのかネットで見ても基準が分からないし、今の状態が普通なのかわかりません。生理も今月は血の量が頭よりかなり少なかった気がして、不安です。生理痛は毎回1.2.3日目が酷いくらいです。4,5.6はいつも生理痛はありません。大体25周期6日間生理と言った感じです。でも生理が123日にドバドバっと重いのが来て45よわまって6にまた来るみたいな生理だったのが最近1.2.3にかけて血が出て、4.5-6はもう茶色の血?で終わりかけみたいな少量しかでません。血がへったようなきがします。大丈夫でしょうか? それと、性行為後にゴムなしでした場合は中をシャワーの水であらってぬるぬるが取れるまで洗ってしまっていました。それがダメなことを知り、膣内洗浄専用のがあることを知りました。今からでも遅くないでしょうか?(T . T) 細菌感染を過去に起こしていたのではないかと思うと怖いです。 産婦人科などは受診したことがありません。
血液検査での甲状腺ホルモンの数値について
先週血液検査を受けたのですが、その結果 甲状腺ホルモンを調べる数値で TSH0.017 (L) Free T3 3.58 Free T4 1.87 (若干H) だったので内分泌内科の受診を勧められました 何か考えられる症例はありますか? 一年前脳ドックで甲状腺に水がたまっている&良性の腫瘍があると言われたことがあるのですが 何か関係があるでしょうか? ちなみに昨年8月に卵巣嚢腫の手術をした時に甲状腺の事も言い調べてもらったのですが特に異常は言われませんでした
多発性内分泌腫瘍症について
昨年の9月に尿管結石になり内視鏡で手術を受けました。その際に受けた血液検査で甲状腺に関する数値が異常なため詳しく調べるようにと内分泌科を紹介され受診していました。その後検査にて副甲状腺機能亢進症の診断を受けましたが。下垂体に関する数値?も調べることになりできもの(腫瘍)があるとのことで、多発性内分泌腫瘍症と診断を受けました。初めて聞いた病名です。 まずは副甲状腺を全て摘出する手術を受けるようにすすめられています。副甲状腺を切除しても、この病気は治らないのでしょうか?手術をしても良くならないのに手術を受けたほうがいいのでしょうか?身体に傷をつけるのが怖いというのが本音です。手術しなければどうなってしまうのかもわからず不安です。
生理が短いです
生理についてです いままではそんなことなかったのですが、2、3ヶ月まえから徐々に生理が短くなったりしています 今月の生理は2日目の夕方までは出ていたのですが、夜にはほとんど血の量はありませんでした 薬などは服用していません 知りたいことは 不妊なのでしょうか 病院を受診した方が良いのでしょうか もし受診した場合検査方法などはどうなるのでしょうか
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「下垂体腺腫」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。