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インタビュー

精神科救急とは。どのようなときに必要となるのか?

精神科救急とは。どのようなときに必要となるのか?
成島 健二 先生

東京都立多摩総合医療センター 精神神経科 部長、東京医科歯科大学 臨床教授

成島 健二 先生

精神科救急というと、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか。精神疾患を持つ患者さんが突然心のバランスを崩して大声を出し、周囲にいた方が驚いて救急車や警察を呼び、運ばれていく。そのような固定概念を持たれている方が多いのではないかと思われます。しかし実際は、そのようなケースに限らず、様々なレベルの精神科の救急医療が存在します。東京都における精神科救急の受診から治療に至る流れについて、東京都立多摩総合医療センター精神神経科部長の成島健二先生にお話をうかがいました。

精神科の患者さんは、私が勤務する東京都立多摩総合医療センターのような総合病院ではなく、精神科の単科病院に入院しているほうが一般的です。実際、日本の精神科全体の病床数のうち、精神科の単科病院の病床数が9割以上を占めます。また、精神科の患者さんというと入院治療を頭に浮かべる方が多いと思われますが、実際は入院患者さんの総数はさほど多くありません。圧倒的多数の患者さんは外来に通っており、投薬や精神療法などの治療を受けながら自宅や施設から通院しているケースがほとんどです。

精神科救急は、必要とされる介入のレベルによって初期(一次)、二次、三次と分類されますが、東京都立多摩総合医療センターは最も重篤な精神症状を持った患者さん(三次)たちを、夜間・休日に診察しています。それでは、精神科救急が必要となるのはどのようなときでしょうか。具体例として、統合失調症の患者さんを挙げてみます。

統合失調症の患者さんは、自分が病気であり、通院や服薬が必要な状態にあると考えていない患者さんが多く(「病識が無い」といいます)、服薬を止めてしまうことが珍しくありません。薬を中断してしばらくすると、様々な症状が出てきます。

たとえば典型的な症状である幻覚や妄想が再燃(抑えられていた症状が再び悪化すること)し、いわゆる「幻覚妄想状態」になります。すると、自分を攻撃してくるような「幻聴」が聞こえるため、自宅を飛び出して夜中に大きな声を出してしまったり、他人の家に許可なく上がり込んで警察沙汰になったりするのです。ここまでくると、「様子がおかしい」と周囲が気づき、近隣の住民の方などが110番通報することになります。警察官が患者さんを保護し、取調べをして、精神疾患による自傷他害の可能性があると判断された場合、東京都であれば、警察官は東京都保健医療情報センターに通報することになっています。

通報日時が夜間や休日であれば、精神保健指定医と呼ばれる特別な資格を持った医師1名がその患者さんを診察(緊急措置鑑定といいます)するのですが、「直ちに入院させなければ自傷他害の恐れがある」と判断されると、患者さんの入院する意思の有無にかかわらず、「緊急措置入院」していただくことになります。この入院は72時間に限定されているので、可能な限り迅速に、精神保健指定医2名による正式な鑑定(措置鑑定といいます)を行って、入院継続の必要性を吟味します。入院が必要と診断されると、入院形態が時間制限のない「措置入院」に変わり、入院治療が継続されることになります。このような流れが、おそらく典型的な夜間休日の精神科救急の実際といえるでしょう。

幻覚・妄想状態で興奮している患者さんは暴れたり大声を出したりしていることが多いので、保護も搬送も大変です。このようなときには、たとえ患者さんが小柄な女性であったとしても、信じられないほどの力を出します。少なくとも4〜5人の警察官が対応するのですが、患者さんが保護バンドで拘束された状態で病院まで搬送されることも珍しくありません。

患者さんが東京都立多摩総合医療センターの精神科救急外来を受診した際は、警察官・ご家族・ご本人からできるだけ迅速に必要最小限の情報を収集して、限られた時間と状況の中で最大限の注意を払って、患者さんの精神症状を評価します。さらに患者さんが重篤な身体合併症を持たないことを確認した後は、ほとんどのケースで、治療上の安全を確保するために患者さんに鎮静をかけます。

上記で述べた通り、患者さんが東京都立多摩総合医療センターに緊急搬送されてきたときには、緊急措置鑑定という精神保健指定医1名による仮鑑定をするのですが、この入院は72時間以内に限定されています。そのため、翌日以降のできるだけ早い機会に、2名の精神保健指定医による正式な措置鑑定と呼ばれる診察を行う必要があります。

2名の診察結果が一致して、入院の継続が必要という結論に達した場合は、正式に措置入院の判断がくだされます。これは患者さんの入院意思の有無によらない、東京都知事の命令による入院となります。

東京都立多摩総合医療センターの場合は、精神科救急のために確保された病床数が4床しかありません。そのためほとんどのケースで、鑑定後直ちに東京都と契約した精神科単科専門病院に患者さんを搬送し、措置入院を継続することになるのですが、これはあくまでも東京都の場合です。他の都道府県では別のシステムに則って入院から治療までの流れが設定されています。

ここまでの話で明らかにされたように、東京都の精神科救急のシステムで東京都立多摩総合医療センターが果たす役割は、治療的な色彩があまり濃くありません。実質的には治療の導入までが我々の果たす役割となります。

東京都が実施する精神科夜間休日救急診療事業では、東京都内を4つのブロックに分けており、それぞれのブロックで事例化した患者さんは、ブロックごとに対応します。

  • 第1ブロック(区北東部):東京都立 墨東病院
  • 第2ブロック(区西北部):東京都保険医療公社 豊島病院
  • 第3ブロック(区西南部):東京都立 松沢病院
  • 第4ブロック(多摩地区):東京都立 多摩総合医療センター

23区は3ブロック合わせて人口約420〜430万人です。東京都立多摩総合医療センターは多摩地区を担当しますが、多摩地区には約420万人の人口がありますので、東京都の半分の地域の夜間休日の精神科救急を東京都立多摩総合医療センターのみで担当していることになります。

 

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    成島 健二 先生

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