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インタビュー

精神科救急の緊急度・重症度とは? 個々に応じた対応が求められる

精神科救急の緊急度・重症度とは? 個々に応じた対応が求められる
成島 健二 先生

東京都立多摩総合医療センター 精神神経科 部長、東京医科歯科大学 臨床教授

成島 健二 先生

精神科救急の事例には、本人の意志による任意入院から自傷他害のおそれがある場合の強制的な措置入院までさまざまなケースがあり、それぞれの緊急度や重症度に応じた対応が求められます。東京都立多摩総合医療センター精神神経科部長の成島健二先生にお話をうかがいました。

少し専門的な話になりますが、精神保健福祉法における精神科の入院は、医療サイドからの介入の必要度等に応じて任意入院・医療保護入院・措置入院の3つに大きく分かれます(それで全てではありません)。骨子だけをごく簡潔に述べると以下のようになります。

任意入院

患者さん自らの意志による入院

医療保護入院

本人の意志によらない入院。治療の必要があるが、本人はその必要性を認識していないため、家族などが病院に入院を希望するもの。

措置入院

自傷他害のおそれ、つまり自殺を企てたり他者を傷つけたりしようとする方を強制的に入院させるもの。

次に救急の段階についてご説明します。

一次救急はクリニック等の外来レベルで対応することが可能な救急で、潜在的にはこの一次救急の例が最も多いと考えられます。入院が必要だとしても、ほとんどの場合任意入院で対応可能です。二次救急は、精神科単科専門病院等が受け持っており、医療保護入院レベルのものです。上述しましたが、入院を必要とする精神障害者で、自傷他害の恐れはないものの、入院について本人の同意が得られない場合がこれにあたります(下記参照)。三次救急についても上述しましたが、東京都立多摩総合医療センターのようなやや特殊な機能を持った特定の病院が患者さんを受け持つことが多いです。

日本精神科救急学会のサイトより一部改変して作成

図で示したように、ボリュームが一番大きいところは一次救急で、レベルが上がるにつれて数が減っていきます。夜間休日の三次救急は、東京都立多摩総合医療センターの場合、入院に至るケースが年間約300〜400件となります。これは単純計算で毎日1人か2人受け入れている計算になります。

このように、精神科救急は患者さんの症状にあわせて法的にも医療上も異なるレベルの対応をすることで、必要とされる医療を提供しています。なお、精神科は担当医と患者さんとの関わりが他の診療科と比べて強いことが大きな特色なので、退院できるレベルまで治療が進んだ患者さんは、ほとんどの場合、元の担当医のところへ戻っていただきます。

「精神科救急ガイドライン2015」より引用

病態因子(精神症状の重症度を示す因子)として、例えば以下のような尺度があります。

  • GAF(global assessment of functioning; 機能の全体的評定)
  • BPRS(brief psychiatric rating scale; 簡易精神症状評価尺度)
  • PANSS(positive and negative syndrome scale; 陽性・陰性症状評価尺度)

(「精神科救急ガイドライン2015」より引用)

GAFスコアというのは精神疾患の重篤度の評価基準としてDSM-IV TRまで用いられていたもので、最新版のDSM-Ⅴでは、WHO Disability Assessment Schedule 2.0(WHODAS 2.0)というものに変わりました。これらはGlobal Function、つまり全体的な機能評価の尺度です。

また、BPRSやPANSSといった尺度は統合失調症など特定の精神疾患における症状評価に用いられます。しかし、実際にこれらが救急の現場で使われているかというと、必ずしもそうではありません。それは患者さんの病状や診断が多岐に及ぶにもかかわらず、必要な情報が十分に得られないことが多く、患者さんが診察に非協力的なことも珍しくないゆえに詳細な病状の評価が困難なためです。診察に十分な時間をかけられないことも珍しくありません。

しかしそのような難しい状況においても、当然ではありますが可能な限り精度の高い診断を下すことが求められます。

複数の警察官に保護され、血まみれで暴れている患者さんを前にして、我々自身も殴打されることがありうるような危険な状況で、「どのような幻聴が聴こえたか」など詳細な精神症状の重篤度を確認することは事実上不可能です。そのような場合は、言葉の内容(陳述)に加えて、話し方そのもの、声の大きさ、抑揚や強さ・速さなどといった言動全体を評価の対象とすれば、限られた情報から精度の高い病状の評価につなげることが可能となります。もちろん、ご家族や警察官からの情報も最大限に活用します。

精神科救急の現場では、特に自傷他害の有無の判断を正確にくだすことが重要ですが、例えば以下のような切り口から、病態の重篤度を評価しています。

  • 自傷他害を示唆する陳述を繰り返しているかどうか
  • 実際に自傷他害行為が確認されているかどうか
  • 自傷他害の既往歴や家族歴
  • 精神科的な診断、治療、服薬の状況
  • 配偶者等、家族からのサポートの有無
  • 致命的な自傷他害の手段を持っているかどうか
  • 身体合併症の有無
  • 最近のストレスの有無

精神科救急を担当する医師は、「限られたリソースしか利用できない状況で、ときには自ら危険にさらされながら、可能な限り正確な診断をくだし、そのうえでダイナミックかつ現実的に投薬や入院などの意思決定を行う」という困難なタスクを課されているのです。

 

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  • 東京都立多摩総合医療センター 精神神経科 部長、東京医科歯科大学 臨床教授

    成島 健二 先生

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