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インタビュー

精神科と身体科との連携―精神科身体合併症の問題点(1)

精神科と身体科との連携―精神科身体合併症の問題点(1)
成島 健二 先生

東京都立多摩総合医療センター 精神神経科 部長、東京医科歯科大学 臨床教授

成島 健二 先生

精神科の患者さんは一般の方に比べてさまざまな身体疾患の有病率が高いことがわかっています。総合病院の精神科がこのような身体合併症を持つ患者さんに対応していくためには、身体疾患を扱う他科との連携が重要です。しかし実際の診療現場ではさまざまな問題があるといいます。東京都立多摩総合医療センター精神神経科部長の成島健二先生にお話をうかがいました。

「精神疾患の患者さんを精神病床以外に入院させてはならない」とする法的な規制があるので、原則として精神疾患の患者さんは精神病床に入院していただかなければいけないのですが、実情は異なります。身体疾患の治療のために、内科病棟にうつ病の患者さんが入院されていることは珍しくありませんし、統合失調症が寛解(かんかい:症状が現れなくなった状態)した患者さんが外科の病棟で手術後のケアを受けたりしています。

患者さんをどこの病棟で受け入れるかということは、様々な問題を内包した難しい問題です。法的な問題に加え、医師や看護師の能力的な問題、管理上の問題など、解決すべきことは多岐に渡ります。東京都立多摩総合医療センターの精神科では下記を念頭に置き、受け入れ先について対処していますが、必ずしも明確に線を引くことができるとは限りません。柔軟な対処が求められます。

症状 表

  • 精神科病名による処遇はせず、症状の重症度による
  • 他の精神科病院に入院中だった患者は精神科病棟でケア
  • 精神科病棟では精神科が主治医、他病棟では身体科が主治医
  • 受診経路の窓口が精神科の場合は原則として精神科病棟

医学の進歩によって精神障害の患者さんの生命予後は確実に改善しています。それ自体は素晴らしいことなのですが、精神科領域においても高齢化の問題は避けることができません。

程度の差はあれ、高齢になれば認知症を合併するのはごく普通のことなので、歳をとった精神科の患者さんたちは、既存の精神疾患に加えて認知症を患うこととなります。また、高齢になれば様々な身体疾患を合併します。これも避けることのできない問題です。

我が国では急速な高齢化が進んでいることが指摘されておりますが、高齢者をどのように支えていくかという問題に未だ答えは示されていません。精神科領域においては、さらに混迷の度合いを深めています。

認知症の患者さんを精神科や神経内科が一手に引き受けるというのは無理があります。程度の差はあれ全ての方々が認知症になるわけですから、医療だけの問題として考えても解決には向かいません。社会全体を巻き込んだ政治的な介入が必要なのではないでしょうか。

精神科救急の現場には、認知症を背景として患者さんが幻覚妄想状態になったり脱抑制状態(衝動を抑制できない状態)になったりして、包丁を振り回す等の他害行為におよび、東京都立多摩総合医療センター精神科の精神救急に搬送されてくる頻度は明らかに増加しています。今後も精神科救急の現場に認知症の患者さんが増加していくのは間違いないものと思われます。

このような状況下で、精神科救急入院料病棟という特別な条件を満たす病棟が重要視されつつあります。

精神科救急入院料病棟とは、精神科救急医療を担う高機能・高規格の精神科専門病棟で、「スーパー救急病棟」ともいいます。これは2002年に診療報酬表に掲載されたもので、診療報酬上では1996年に新設された精神科急性期治療病棟をしのぐという意味で「スーパー救急病棟」と呼ばれています。

東京都立多摩総合医療センター精神科においてもスーパー救急を実施していますが、そのためには様々な条件を満たす必要があります。具体的には精神保健指定医5名、精神保健福祉士2名、病棟の半分以上が個室などといった条件ですが、我々の場合、それらの条件を満たすうえで、ひとつだけ難しい点があります。それは3ヶ月以内に6割以上の患者さんを、自宅あるいは居住する施設に退院させるという条件です。

近年は患者さんの高齢化・複雑化が顕著であり、心身の疾患双方が重症の患者さんや、社会的な背景が複雑な患者さんなどを受け入れてしまうと、短期間で退院していただくことは難しくなります。また、東京都立多摩総合医療センター精神科では、精神科救急や身体合併症を30床足らずの病棟でケアしているため、それらのカテゴリに属する患者さんを適切に治療したうえでスーパー救急の規格を満たすのは簡単なことではありません。

身体合併症がある場合、通常よりも入院期間が長くなります。たとえば総合失調症の患者さんの場合、幻覚・妄想を治療するのに1〜3ヶ月かかるとして、そのうえで癌の治療を行うことになればさらに何ヶ月か入院が必要になります。医師や看護師も、複数の問題を持つ患者さんを適切に治療するために、他科との連携のみならず日頃からスキルアップのための努力を続ける必要がありますし、通常の精神科救急以上に人員も必要です。

 

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  • 東京都立多摩総合医療センター 精神神経科 部長、東京医科歯科大学 臨床教授

    成島 健二 先生

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