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インタビュー

精神科に対する偏見―精神科身体合併症の問題点(2)

精神科に対する偏見―精神科身体合併症の問題点(2)
成島 健二 先生

東京都立多摩総合医療センター 精神神経科 部長、東京医科歯科大学 臨床教授

成島 健二 先生

精神科身体合併症とは、精神科の患者さんが抱えている様々な身体疾患のことです。精神科では身体合併症をケアすることが出来ない一方、身体疾患を扱う診療科では、精神科の患者さんに対する理解が不足しているという現実があります。また、総合病院の中でも、精神科に対する不十分な理解が障壁となり、十分な医療連携が出来ないことがあるといいます。東京都立多摩総合医療センター精神神経科部長の成島健二先生にお話をうかがいました。

私は総合病院の精神科医として長く医療に携わってきた医師ですので、精神科から見た身体科の医療には何も違和感がありません。しかし身体科からみた精神科医療はそうではないことがあるようです。

かつて高名な松沢病院の院長が、日本における精神科医療と患者さんに対する偏見についてよく知られた言葉を残していますが(「我邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の他に、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」)、今でも精神科疾患に対する偏見は根強く、「できれば精神科の患者さんは受け持ちたくない」という医師が見受けられます。

また、精神科医療は手間暇がかかるにも関わらず、採算性が高くありません。精神科の必要性そのものを否定されることはさすがに多くないと思われますが、病院が新設される際、総合病院の中に精神科病床を設けるべきかという段階になると、必ずしも他科から喜ばれるわけではないようです。

ですから、入院病床全体の約5%といわれる総合病院の精神科病床は減少傾向にあり、その存続が難しい状況に置かれています。残念なことではありますが、おそらく今後は総合病院における精神科病床の運営は、さらに難しくなっていくことでしょう。

東京都立多摩総合医療センターは教育研修施設であるため、研修医が複数の診療科を横断的に結びつける橋渡しとなることもあり、他科との関係が良好な病院であるといえます。彼らが成長して常勤医となれば、他科との連携はさらに促進されます。

しかし、精神科に対する偏見をなくすことは事実上不可能です。私がアメリカで研修していた際にも、そういった偏見がない(もしくは少ない)ことを期待していたのですが、実際には日本国内の状況とさほどの違いはないように感じました。

アカデミックなメディカルセンターでもそうなのですから、都市部を離れれば、アメリカの精神障害者は日本以上に激しい差別にさらされているのかもしれません。アメリカで仕事をすると、さまざまな人種の方に出会います。精神障害者に対しては、人種の違いと同じように「差別はないが区別はある」というところまで偏見を改善するのがおそらく精一杯なのではないかと個人的には感じています。

幸いにして、精神科の患者さんに興味を持ち、十分に理解をし、精神科医にも協力的な中堅以上の身体科の先生はたくさんおられます。このような先生方にはいつもお世話になり、ありがたく思っています。しかし、そういった先生方が異動でいなくなったとたん、それまで培ってきた良好な関係はいとも簡単に失われてしまいます。新しく来てくれた先生と一からやり直しです。しかし日々の診療は続けなければなりません。

身体科の医師や看護師と良好な関係を継続する努力は、“賽の河原で石を積む”ようなものです。いずれ崩れてしまうことを知ったうえで、丁寧に石を積み続けなければなりません。

身体科の医師であっても、精神科的問題を持っている患者さんを多く診る機会を持った方であれば、自ら精神疾患の診断や治療にアプローチしてくれるかもしれません。例えば、せん妄の診断と治療などは、身体科の医師のレパートリーに加えていただけると、患者さんのためになるのではないでしょうか。

我々精神科が中心となって他科との連携を進めていく、いわゆるリエゾン精神医療とは逆になりますが、身体科側からの精神疾患へのアプローチもそろそろ出てきても良いのかもしれません。

東京都立多摩総合医療センター精神科において、コンサルテーション・リエゾン精神医療による他科連携(精神科医が他科に足を運んで、精神疾患を持ちながらも他科に入院中の患者さんのケアをするシステム)は、年間約1000例に上ります。

コンサルテーション・リエゾンなどというと聞こえがいいのですが、かつてはかなり泥臭く、ボランティアのような活動であったように記憶しています。そのような評価につながりにくい医療活動は、今も昔も患者さんのためのボランティア的な形から始めていくしかないのかもしれません。

我々精神科医が当初このような活動を始めた時代は、「御用聞き」と称して、精神科の患者さんが入院している他科の病棟まで足を運び、当該科の医師や看護師に「何かお困りのことはありませんか」などと地道に聞いて回っていたものです。スマートとは真逆の、手作りの医療でした。

そのような地道な活動を先達たちが続けた成果として、最近は診療報酬の面でもいくらかの評価がされるようになりました。今日では他科からも広く認識されているリエゾン精神医療にも、このような歴史があることを忘れてはなりません。

 

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  • 東京都立多摩総合医療センター 精神神経科 部長、東京医科歯科大学 臨床教授

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