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常位胎盤早期剥離とは―分娩前に胎盤が剥がれてしまう重症疾患
妊娠中に起こる様々な病気の一つとして、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)というものがあります。これは赤ちゃんがまだお腹の中にいるのに、何らかの原因で胎盤が剥がれてしまい、赤ちゃんに...
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常位胎盤早期剥離とは―分娩前に胎盤が剥がれてしまう重症疾患

公開日 2016 年 04 月 21 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

常位胎盤早期剥離とは―分娩前に胎盤が剥がれてしまう重症疾患
光山 聡 先生

東京都立多摩総合医療センター 産婦人科部長

光山 聡 先生

妊娠中に起こる様々な病気の一つとして、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)というものがあります。これは赤ちゃんがまだお腹の中にいるのに、何らかの原因で胎盤が剥がれてしまい、赤ちゃんに酸素が行かなくなってしまう非常に重篤な疾患です。常位胎盤早期剥離によって産科DICという別の合併症をきたすこともあるため、妊娠中は注意する必要があります。常位胎盤早期剥離とはどのような病気なのか、東京都立多摩総合医療センター 産婦人科部長の光山聡先生にご説明していただきました。

常位胎盤早期剥離とは

常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)とは、赤ちゃんがお腹の中にいるとき、つまり生まれる前に胎盤が子宮壁から剥がれてしまうことをいいます。

胎盤はお母さんの酸素や栄養など必要な物質を赤ちゃんへつなぐ役割を果たしています。そのため常位胎盤早期剥離になると、酸素と栄養を赤ちゃんに送ることができなくなります。また、常位胎盤早期剥離は分娩途中や臨月に入っていない時期(比較的早い時期)にも起こります。発症を予測することは不可能です。

常位胎盤早期剥離の一般的な症状:気づきづらいこともある

常位胎盤早期剥離では、胎盤のどの箇所が剥離してしまうかによって自覚症状も経過も異なってくる傾向があります。

胎盤の下の部位が剥がれると早期に性器出血が起こるため、妊婦さんも早めに異常に気づいて病院を受診しにいらっしゃいますが、胎盤の上方の部位が剥がれた場合、胎盤と壁との間に血が溜まってしまいなかなか出血しません。この場合は気づかないうちに胎盤剥離が進行していき、気づいたときには手遅れとなっていることも少なくありません。ですから、いつもと違う痛み・おかしな痛みがあったときはすぐに産婦人科を受診していただきたいと願います。また、痛みの症状が軽度でも、胎動を感じなかったり、腰痛・便意・嘔気の出現が主症状となったりすることもありますので、異常を感じた場合はすぐに受診してください。

常位胎盤早期剥離の流れ

常位胎盤早期剥離は非常に危険な疾患である

常位胎盤早期剥離になった方の10~30%はお腹の赤ちゃんが死亡するか、または助かったとしても脳性麻痺が残ってしまう可能性がある、非常に危険な状態といえます。

また赤ちゃんの死亡率が非常に高いだけでなく、妊婦さん自身にも命の危険が及びます。常位胎盤早期剥離では胎盤が剥がれると同時に、子宮壁から出血が起こります。そのため妊婦さんの血液状態が変化し、播種性血管内凝固症候群(DIC:詳細は記事2『産科DICとは。新しいタイプの産科DICが増加する理由』)という合併症を引き起こしてしまう可能性があるのです。こうなると大量出血を引き起こし、重篤に陥るため、早急な処置が必要とされます。緊急帝王切開や症状に合わせた治療を同時並行で行って、母児ともに救命しなければなりません。

とはいえ、救命が成功しても、それまでに時間がかかってしまったり症状が重篤だったりした場合には、やはり赤ちゃんに脳性麻痺や脳障害などが起きてしまう可能性があります。

常位胎盤早期剥離を予見する危険な徴候

常位胎盤早期剥離の症状として代表的なものは以下のとおりです。

  • 強烈な腹痛
  • お腹が板のように硬くなっている
  • 性器からの出血がある(不正性器出血)
  • 胎動が感じられない、感じづらい
  • 腰痛、便意、嘔気

上記の症状が現れた場合は常位胎盤早期剥離の可能性が高くなりますが、自覚症状が現れづらい場合もあります。

なおその他の危険因子としては、高血圧・常位胎盤早期剥離の既往歴がある・陣痛前の破水・喫煙・外傷・切迫早産などが挙げられます。

常位胎盤早期剥離の検査と診断

超音波検査では、胎盤が厚くなっている(胎盤後血腫といいます)という所見(医学的見解)があります。またCTG(Cardiotoco Gram:胎児心拍陣痛図)というモニターを付けたときに、赤ちゃんの心音がグラフ上フラット(平坦)であったり、あるいは低下している場合は赤ちゃんが危険な状態といえます。血液検査では貧血や血液凝固異常の具合を診ていきます。

前項で述べた臨床症状とともに、検査でこのような超音波画像や胎児心拍数モニタリング(赤ちゃんの心拍の状態を調べる検査器具)を使用することもありますが、検査をしている猶予すらない場合もあります。つまり、このような指標はあるものの、検査だけではすべてを判明させることは難しいということです。実際は、超音波検査ではっきりとした所見がわからなくても、結果的に帝王切開術を施行したところ、最後に常位胎盤早期剥離だったとわかるケースもあります。

常位胎盤早期剥離の治療

分娩(ほとんどの場合は緊急帝王切開)が唯一の治療法です。発症してからどれだけ早く胎児を娩出できるかによって母児の生命予後が変わってきます。

また母体にDICの症状が認められる場合にはその治療を行います。DIC状態が悪化すると最悪の場合は子宮を全摘することも念頭に置かなければなりません。最も優先されるのは母体の救命です。

常位胎盤早期剥離の予防 早期受診を心がけ、妊婦健診をしっかりと受けることが大切

明確な予防法は今のところ存在しません。つまり、妊婦の方であればいつ、誰に起こっても不思議ではないということです。そのため何かがあってもすぐに対処できるように、いつもと違う症状があるなど少しでも体調に変化を感じたら早急に病院を受診してください。通常の陣痛発来等では、救急車の使用は極力控えて頂いていますが、常位胎盤早期剥離が疑われた場合は救急車の使用をお勧めします。

妊婦健診にてリスク因子となる異常(妊娠高血圧症候群など)や、稀ですが常位胎盤早期剥離自体が早期発見できることがあります。

また特に異常が無いと思っていても、適切な時期・間隔にそって妊婦健診を受け、専門医に体調を管理してもらうことが非常に大切です。

 

周産期医療・産科救急から婦人科一般、婦人科悪性腫瘍治療までを一手に担う東京都立多摩総合医療センターにて部長を務める。「地域周産期医療への貢献」と「患者の心と体をサポートすること」を掲げ、救急救命センターとも連携した母体救命対応総合周産期センターにて多くの妊産婦と胎児を治療している。

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