インタビュー

現在のエリスロマイシン療法について

現在のエリスロマイシン療法について
工藤 翔二 先生

公益財団法人結核予防会 理事長

工藤 翔二 先生

この記事の最終更新は2016年03月15日です。

エリスロマイシン長期療法が生み出されるまでの、並々ならぬ研究や苦労について「記事４：びまん性汎細気管支炎とエリスロマイシン」でお伝えしました。ここでは引き続き、現在の治療法と今後の展開について公益財団法人結核予防会　理事長の工藤翔二先生にお話を伺いました。

エリスロマイシン療法（またはマクロライド療法）が効果を及ぼすメカニズム

●気道の過剰分泌抑制

気道分泌液の95％は水ですが、その水分泌が抑えられるので痰の量が顕著に減少します。　

●慢性の好中球性炎症の抑制

好中球の炎症部位への浸潤の抑制や活性酸素（周囲の物質を酸化させる酸素）の産生を抑制します

●リンパ球および細菌への作用

世界におけるびまん性汎細気管支炎の治療

2000年には世界的にもびまん性汎細気管支炎に対するエリスロマイシン療法が認知され、世界でも嚢胞性線維症などにエリスロマイシン療法（マクロライド系）が行われるようになりました。最初はエリスロマイシンを投与し、無効である場合には、ロキシスロマイシン・クラリスロマイシンなど14員環系マクロライド療法を行います。また、15員環系マクロライドも同じ作用があることがわかっています。エリスロマイシン療法も発展し、欧米でも関心をもって積極的に治療に使ってくれています。

マクロライドの新しい効果

びまん性汎細気管支炎だけではなく、好中球性炎症性気道疾患・滲出性中耳炎・COPD・慢性副鼻腔炎・慢性気管支炎・慢性気管支拡張症などにもマクロライドの少量長期投与が行われています。

最近では、びまん性汎細気管支炎や嚢胞性線維症のような希少疾患だけではなく、COPDの急性増悪の抑制や重症肺炎、インフルエンザへなどにおいても臨床応用され、基本的には抗炎症作用を目的として研究されています。　

マクロライド療法の発展に向けて

マクロライド療法の研究と普及の推進にあたり、1994年に設立された「マクロライド新作用研究会」が大きな支えでした。この「マクロライド新作用研究会」をサポートし続けて下さっているのが、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生です。大村先生はマクロライド研究の世界的な大家であり、最初の研究会は大村先生と相談してスタートし、今日まで約30年間も続いています。

エリスロマイシン・マクロライド療法はこのように皆さんの多大なる協力・共同作業のもと、日本から世界に向けて発信し続けてきた領域です。日本で生まれたこの研究を世界に発信し続けていくとともに、その発展に尽力したいと思っています。

 

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