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インタビュー

子どもが発熱したらどのような症状に注意する?ポイントは「視線」にある

子どもが発熱したらどのような症状に注意する?ポイントは「視線」にある
上村 克徳 先生

兵庫県立こども病院 救急総合診療科 部長

上村 克徳 先生

子どもが突然発熱した場合、ご両親は焦ってしまうことも多いでしょう。子どもの発熱は非常によく見られる症状で、珍しいものではありません。しかし、だからこそ発熱を診るときには大切なポイントを抑える必要があるといいます。子どもが発熱した場合、何を見ることが重要なのでしょうか。数多くの子どもを診療してきた、神戸市立医療センター中央市民病院 小児科医長の上村克徳先生にお話しいただきました。

子どもが熱を出して受診したとき、医師は何をみて子どもの重症度を判断するのでしょうか。

小児を専門とする医師であれば、患者さんの病状の重症度のほとんどを第一印象、つまり診察室に入ってきた最初の数秒間の表情や体の動きで判断します。親御さんやご家族、一般の方の場合、子どもが高熱を出して体をぐったりさせていると、深刻な状況ではないかと考えがちです。しかし、本当にみるべきなのは熱の高さよりも病状の「重症度」であり、その一番の目安は「視線の力強さ」であると考えています。平たく言うと「目力」です。

診察室に子どもが入ってきたとき、最初に医師は子どもの視線を観察します。具体的には固視(こし:しっかりとアイコンタクトが取れて、一点を集中して見ることができる状態)・追視(ついし:診察室内のおもちゃや指先などひとつの動く対象物などを目でしっかりと追うことができる状態)ができるかという点です。

子どもの熱の原因は、一回の短い診察時間内では判断がつかないこともあります。ただし、直ちに医療的な介入が必要であるか、落ち着いてこれからの対応を親御さんと相談できるかは、子どもの視線をみることによってすぐに判断できることが多いのです。

発熱は何らかの病気あるいは身体の異常によって起こる症状で、多くの方がご経験している通り、全身倦怠感を伴うことがほとんどです。そのため、健康なときよりも全身が怠かったり重かったりすることは当然の反応ともいえます。

医師は子どもの発熱を診る際、視線の力強さとともに子どもが「ぐったりしているか」を観察します。「ぐったりしている」というと非常に抽象的な言葉ですが、実は医師をはじめとした医療従事者の考える「ぐったりしている」状態と、親御さんの考える「ぐったりしている」状態は、意味合いが異なってきます。

そもそも「ぐったりしている」とは「倦怠感があり、体が思うように動かせない」という意味を含みます。しかしその定義ははっきりと定まっていません。

親御さんは、自分の子どもが元気で活気に満ちあふれているいつもの状態をご存じです。そのため、少しでもいつも通りの状態と異なる場合、ほとんどの親御さんは子どもが「ぐったりしている」と認識します。確かに熱を出せば、人は年齢に関わらず倦怠感を覚えるため、親御さんからみれば子どもが「ぐったりしている」と感じるのは自然なことです。

しかし医師は、子どもの周囲への反応や、質問への受け答えなどがしっかりできていれば、たとえ少し倦怠感があるようにみえたとしても「ぐったりしている」状態とは判断しません。

では、医師の考える「ぐったりしている」状態とはどのようなものでしょうか。それは、医師が常日頃から様々な病気の子どもを診ている中で判断する、経験的な感覚に基づくものです。

具体的には、子どもが医療者や親御さんへ示す反応が乏しかったり、表情が少なかったりする場合(目が開いててもボーッとしている状態など)や、手足の動きが乏しく筋力が低下しているように感じる場合などで、こうなっていると「ぐったりしている」と判断します。つまり、親御さんが通常心配に感じる状態でも、医師からみれば「(医学的に)ぐったりしている」状態ではなく、大きな心配はいらない状態だと診断することがあるのです。

その他の例としては、赤ちゃんがベビーカー上から動きたがらない、子どもがベッドから起き上がろうとしないなど、一般的な目線で見れば「ぐったりしている」状態でもそうではないと判断することがあります。繰り返しますが医師は重症度を第一印象の「視線(目力)の力強さ」で判断します。視線(目の焦点)がしっかりと定まっていて(固視がしっかりしている)、周囲の人や物を目で完全に追えて(追視がしっかりしている)、呼びかけるといつも通りの反応があって、しっかりと言葉や動作でのやり取りができているときは、たとえ子どもにいつも通りの活気がないとしても「(医師の基準としての)ぐったりしている」状態ではないと判断しています。

冒頭でも触れましたが、発熱したとき、多くの方は「熱が高ければ高いほど重症だ」と考えがちです。しかし、医療者からみたとき、熱の高さは重症度と完全には比例しません。

そもそもなぜ熱が高いと重症であるように感じるかというと、体温計で熱を測ることで体温が「数字」として「客観的」に提示されるので、親御さんが感じる「元気さ」などの「主観的」な判断よりも、数字のほうが重要であると思い込んでしまうためだと考えます。本当は、熱の高さよりも子どもの顔色や食欲、活気のほうがはるかに大事な情報なのですが、体温が数字ではっきりと提示されるために親御さんは子どもの熱が高ければ心配になり、反対に平熱か、あるいは高熱でなければ「大きな心配はいらないだろう」と思えてしまうのです。

熱の高さは病気の重症度をそのまま表しているわけではありません。体温が40度近くまで上がっても数日で自然に治るウイルス性の病気もあれば、体温がそこまで高くないのに長期入院治療が必要な重症感染症だったということもあります。医療者は発熱の子どもをみる場合、まずは髄膜炎などの重症疾患である可能性を除外することから始めます。数百も存在するウイルスの種類をはっきりと特定することは困難ですから、少なくとも重症でなく、経過をみてよい病気であることが判断できれば、詳細な原因は完全にわからなくても構いません。

前項で述べた通り、「目力」は非常に重要なサインになります。子どもと視線が合わず、目がうつろで顔色も悪い場合は、風邪など通常のウイルス感染症以外の病気が原因で発熱している可能性があります。さらにけいれんを起こした・呼吸困難になっているなど、明らかに子どもが普段と違う様子ならばすぐに医療機関を受診します。

「これなら大丈夫でしょう」といえる状態は年齢によって異なるため、一概には述べられません。

生後3か月未満の赤ちゃんは免疫力が弱く、ワクチン接種も十分にすすんでいないので、たとえ元気そうにみえても医療機関を受診し評価を受ける必要があります。それ以上の月齢であれば、熱を出していても哺乳が十分にでき、親御さんの呼びかけに対して普段通りに反応したり、顔を向けたり、笑ったりして、顔色や息づかいが普段通りであれば重症ではないと判断できます。このように普段の行動と比較してどの程度異なるかが判断基準になります。

発熱していれば、通常よりも活動レベルがやや低下するのは自然なことといえます。ですからまったく普段通り・普段の笑顔を見せるということはありません。それでも7~8割方普段と同程度の状態であれば大きな問題はないと考えてよいでしょう。熱が出れば倦怠感を覚えることは自然なので、全くいつも通りにならないのは当然のことともいえます。赤ちゃんの場合、ミルクを飲む量も重症度の判断の目安になります。飲み方が半分以下まで減っているようであれば体力の低下も予測できますし、危険な徴候の可能性があると考えますが、通常の7~8割飲めているならば、すぐに脱水状態になることもなく、その時点では大きな心配はないと考えてよいでしょう。

何を見ればいいか迷われたときは、ご家庭でも医師と同様、子どもの「目」に注目してみてください。

子どもに話しかけたり呼びかけたりして、そのとき子どもがご家族と視線をしっかり合わせ、普段通りの反応を示せば、周囲への関心がある、つまり意識が正常に保たれているということになります。ただし、刺激をやめるとすぐに眠り込んだり、眠る時間が普段よりかなり長い場合は意識状態が低下している可能性がありますので、医療機関を受診してください。

子どもは不快になると不機嫌になったり、泣いたりします。

熱が出た場合、あやすと落ち着くか、あやしても泣き止まないかを見ることも一つの指標になります。あやしても泣き止まない場合、どこかに痛みを感じている(例えば、髄膜炎頭痛を感じていればあやされる(頭が揺れる)ことで更に頭痛が強くなりますし、股関節炎があれば足を触られることで更に痛みが強くなります)可能性があります。

「痛み」は病気の場所や原因を表す指標となる重要な症状です。機嫌が悪い、ぐずる、泣くといった場合、どこかが物理的に痛んでいる可能性があります。あやしても痛みは取れませんし、あやされると痛んでいる部位が尚更痛くなることもあります。あやしても泣き止まない場合は、その原因を調べる必要がありますので、医療機関を受診してください。

受診される子どもの中には、家で測ってみたら熱があったけれど、病院に来てみたら熱が下がっていたということがあります。これは小児科では珍しいことではありません。子どもは熱を出しやすい体質であり、すぐ下がるようであれば一時的な発熱の可能性が高いのですが、生後3か月未満の赤ちゃんであれば、前述した目線や目力の話は一旦頭の隅に置いておき、とにかく病院に来てください。生後3か月未満のお子さんは、熱だけでも実は重大な病気が隠れていることが稀にあるからです。医療施設側は、患者さんが乳児期(特に生後3か月未満)であれば、来院時に熱がなくても熱はあったものとして対応します。

発熱を訴えて病院に来たとき、必ず病院でも体温は測りますが、家で測ったときの最高体温を医師に伝えていただくと診察はスムーズに運びます。前述したように、家での体温と病院で計測した体温は異なる場合があります。飲んだ薬(解熱剤や抗菌薬など)があれば、医師に伝えてください。また、赤ちゃんに厚着させていた場合や、部屋の環境(暖房など)が体温に影響することがありますので、どのような状況で体温を測ったかも併せて伝えてください。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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