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インタビュー

子どもの熱の原因とは?様々な要因によって子どもは発熱する

子どもの熱の原因とは?様々な要因によって子どもは発熱する
上村 克徳 先生

兵庫県立こども病院 救急総合診療科 部長

上村 克徳 先生

子どもが発熱した場合、熱の高低ではなくまずは目線の力強さを診ることが大事だと『子どもが発熱したらどのような症状に注意する?ポイントは「視線」にある』でお話ししました。これは重症疾患の可能性を除外するためで、それが分かった後に詳細の原因を追究していくことが多いとされます。それでは、子どもの発熱の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。神戸市立医療センター中央市民病院 小児科医長の上村克徳先生にお話しいただきました。

ほとんどの場合、子どもの発熱はウイルス感染に対する反応です。体温が高いと、体はウイルスが増殖しにくい環境に変化します。つまり、体温が高くなるとウイルスの活動の勢いを弱めることができるため、病気の進行の抑制ができると考えられています。発熱の原因は大部分がウイルス感染による感冒(かぜ)ですから『子どもが発熱したらどのような症状に注意する?ポイントは「視線」にある』でご紹介したような重大なサインが無い限りはしっかりと休養して栄養をとれば、特別な治療をしなくても治癒します。正常な体温には個人差があるので、普段から平熱を知っておくことも重要です。

生後3か月未満の赤ちゃんが熱を出した場合、他の症状や状態に関わらず病院を受診していただきます。3か月未満の赤ちゃんは免疫力がまだ弱く、ワクチンの定期接種も完全に終了していないからです。

感染症の中には重症な状態を引き起こすもの(尿路感染症細菌性髄膜炎など、「重症細菌感染症」と呼ばれるもの)も存在します。そのため、救急外来を赤ちゃんが受診した際には、必ずワクチンの接種歴をお尋ねします。その赤ちゃんがワクチンをきちんと打っているかどうかで、重症細菌感染症にかかっている可能性を低く見積もることができるからです。

重症細菌感染症にかかると生命が危険な状態になる可能性もあるため、ワクチン接種はしっかりと行いましょう。定期接種のスケジュール通りにワクチン(ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチンなど)を接種するようにしてください。

上記のワクチンは感染防止効果が極めて高いため、ワクチンを接種することでヒブ(インフルエンザ桿菌B型)や肺炎球菌による髄膜炎などの重症細菌感染症に罹患する確率がかなり低くなります。万が一高熱を出して医療機関を受診したとしても、ワクチン接種がなされていれば重症細菌感染症である確率は低いだろうと医師も診断を絞っていくことができるのです。

ウイルスの種類によって有熱期間(発熱している期間)が異なるため、発熱時間が長いほど重症ということではありません。一日で下がることもあればもっとかかることもあります。簡易検査などでウイルスが特定できれば今後の治療方針や通院治療の方針を説明できることもありますが、ほとんどの場合は経過をみて判断します。

ほとんどの場合、ウイルス感染症は自然に治癒しますが、時間軸で経過を見て初めて状況が「良くなってきている」といえます。つまり初診の第一印象で重症疾患を除外するところまではできても、発熱の原因となっているものは何なのかは、その後の経過を見なければ判断できないことが多いのです。

親御さんは医師に「経過をみないと、この発熱が何だったのか最終的なことはわかりません」といわれると不安に思われるかもしれませんが、子どもに不必要な検査や薬物投与をすることを避けつつ最終的な判断をしっかりとするためにも、経過をみることの重要性を理解して頂きたいと考えます。

「経過観察」とは「なにもせずに様子をみる」という意味ではなく、「子どもの体に不要な介入を避けつつ、病状の経過をしっかり把握する」ための積極的方法なのです。

基本的にほとんどのウイルス感染症は長くても5日間程度で解熱します。子どもが元気なようにみえても長期にわたって熱が下がらない場合は、何か別の理由があるかもしれないことを念頭に置く必要があります。

子どもがウイルスや細菌の感染症以外で5日間以上発熱する代表的な病気に川崎病があります。川崎病はいまだに原因が特定されていませんが、症状(5日間以上続く発熱、眼球結膜(白目の部分)の充血、唇の赤み・舌がイチゴのように赤くブツブツ腫れる、頸のリンパ節の腫れ、皮膚の発疹、手のひら・足の裏が赤く腫れる)の組み合わせによって診断します。

発熱の経過中に、最初になかった目の充血や唇の赤みなどに気づいたときはもう一度医療機関を受診しましょう。

医学的には38℃以上からが意味のある発熱と考えられており、37.5℃前後は微熱といわれます。微熱の場合は特別気になる点がなければ医学的な対応をしなくても問題が起こる可能性は低く、経過観察とします。ただし、普段から平熱をチェックされている場合、微熱であっても平熱より1℃以上高い場合は「発熱」として対応することもありますので、「目力」や顔色、食欲などに気になる点があれば医療機関を受診してください。

インフルエンザは、毎年のように社会現象として取り上げられるほど爆発的な流行を伴うウイルス感染症で、高熱を出す原因ウイルスの一つです。ここまで大規模な感染症の場合、もはや自分だけ・子どもだけの問題ではありません。社会でどう考えるかを検討していくことが必要となります。

いまだにインフルエンザワクチンの接種については意見が分かれており、年齢によって効果が異なることも事実(一般に、乳児よりも年長児・高齢者のほうが有効率が高い)です。しかし、インフルエンザが流行する時期になると、流行していない時期よりも、高齢者や免疫力が弱い方々を中心に亡くなる方の数が増えることは確かですので、「社会全体としてインフルエンザにどう向き合うか」を考えなければなりません。

子どもがインフルエンザにかかることを避けようと考えるのであれば、子どもにワクチン接種をするだけでなく、両親・きょうだい・同居しているおじいさんやおばあさんを含め全員でワクチン接種し、「家族全体でインフルエンザに対する免疫力を高める」という考えが必要です。

私が勤務している病院でも、10月になると一斉に職員対象のインフルエンザワクチン接種が始まります。学校・職場など、ワクチンをみなさんが接種して、社会全体でできるだけ健康を維持するように努めていけば、社会的に弱い立場の子どもやお年寄りを守れるようになるのではないかと考えています。インフルエンザを筆頭に、百日咳水ぼうそうなどの感染症に関しては、一人一人が社会の一員としての責任を負っていることを理解していく必要があるでしょう。

確かにインフルエンザは流行する感染症で、流行時期になるとインフルエンザによる子どもの熱性けいれんも増加します。熱性けいれんの好発年齢は1~2歳ごろで、5~6歳頃まで起きやすいのですが、インフルエンザになると好発年齢より大きな子ども(小学校低学年)もけいれんすることが知られています。それだけインフルエンザによる発熱は体調に対するインパクトがあり、普通の発熱とは違うということでしょう。また、稀ではありますが、インフルエンザ脳症という合併症を起こすこともあります。

では、これだけ注目されているインフルエンザを小児科医が医学的に特別視するかというと、必ずしもそうではありません。インフルエンザは特別な治療をしなくても数日以内に治癒する病気であると考えています。

最近よく処方されているインフルエンザ薬(タミフル®やリレンザ®など)は熱のある期間を半日程度短縮する程度の効果しかなく、重症化(肺炎インフルエンザ脳症など)を予防できるという根拠はありません。タミフル®は吐き気、嘔吐、腹痛を起こすことがあり、長期服用することで頭痛、倦怠感を起こすことがあります。また、リレンザ®は咳嗽や呼吸困難を起こすことがあります。インフルエンザ薬を飲んでいるからといって安心してよいわけでもないのです。

子どもの中でも、気管支喘息・心臓病・重症心身障がい児・小児がんで治療中・免疫力を弱める薬を内服中の方はインフルエンザが重症になる可能性があるので、インフルエンザ薬を内服することをお勧めしますが、特に大きな持病もなく健康に過ごされている子どもについては、インフルエンザを特別に怖がって薬を服用する根拠はないとお考えください。

どのようなウイルスであっても、最終的には『子どもが発熱したらどのような症状に注意する?ポイントは「視線」にある』で述べたことにつながります。基礎疾患を持っている子どもは別として、重症か否かをウイルスの名前や熱の高さでは判断しないことが大事です。

発熱症状では熱の高さや病名・ウイルス名ではなく、もっと別に目の付け所があります。具体的には全身状態や、目でみてわかる健康状態、視線の力強さであり、そちらのほうが臨床的には重要なポイントと考えられます。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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