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インタビュー

子どもの熱に対する対処法 家庭でできるケアのポイントは何か?

子どもの熱に対する対処法 家庭でできるケアのポイントは何か?
上村 克徳 先生

兵庫県立こども病院 救急総合診療科 部長

上村 克徳 先生

子どもが熱を出したとき、多くは家庭できちんと看病してあげることで自然に治癒します。今回は子どもが発熱したとき、家庭でできるケアのポイントについて、神戸市立医療センター中央市民病院 小児科医長の上村克徳先生にお話しいただきました。

熱は体内で起こる免疫反応の一種で、体外から侵入したウイルスや細菌と戦うために起こる、いわば自然な体の反応です。免疫反応は生体が獲得した非常に高度な防御装置で、長い歴史のなかで数多くのウイルスや細菌に立ち向かえるよう人体が適応した証ともいえます。そのため「熱を下げたら風邪が長引くから下げてはいけない(熱を下げることで体の免疫反応を弱めるのではないか)」という意見もありますが、実はこの意見に明確な医学的証拠はありません。熱を一時的に下げて体を楽にする方法もあることを知っておき、何よりも、子どもが風邪をひいている間もできる限り気持ちよく過ごせるように環境を整えることを考えて欲しいと思います。

赤ちゃんあるいは小さな子どもが発熱した場合、できるだけ熱を体外に放散するよう、涼しい服装に着替えさせてあげましょう。とはいえ冬であれば、あまりにも薄着にしてしまうと寒さで体が冷えてしまいますから、薄着にしたうえで暖房をつけるなど、衣類以外で周囲の環境を調整します。何℃が適温であるかは子どもの体調によって異なりますが、目安として新生児室は25~26℃に保たれており、肌着1枚とタオルによるおくるみで新生児用ベッドに寝ていることを参考にしてください。

また、発熱している子どもが入院すると、病院では体の一部(首、脇、股のつけねなど太い血管が通っている部分)を冷やすこともありますが、冷やすのを非常に嫌がる子どももいます。また、赤ちゃんの体の広い範囲を冷やすと体温が下がりすぎたり、寒さによって体の震えを誘発する可能性がある点に注意が必要です。家庭では冷やすことにこだわりすぎず、気持ちよく過ごさせることを心がけましょう。

食事やミルクについては、熱が出ているからといってその内容を意識し過ぎる必要はなく、普段通りで構いません。たとえば、おかゆ・おじやは病気になったときの定番食でもあり、「熱のときといえばおかゆ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。もちろん子どもが欲しがるならば食べさせてよいですが、嫌がる場合は無理をせず、子どもが食べたいというものを食べさせてください。ただし、子どもが熱と同時に下痢をしていれば消化に悪いもの(脂肪分が多い食べ物、糖分がたくさん入ったジュースなど)は控えます。とはいえ食事自体を控える必要はありませんから、基本的には普段通りの食事内容で十分だと考えてください。

水分摂取に関しても食事と同様、普段子どもが飲んでいるもので問題ありません。熱を出しているからといって、無理に特別な経口補水液を飲ませる必要はないでしょう。経口補水液はあくまで選択肢の一つです。嘔吐や下痢がひどく、脱水症状の心配があるときは経口補水液も検討しますが、消化器の症状がなければ普段通りで構いません。特別なことは考えずとも、普段親御さんができることで十分な治療効果があるとお考えください。

熱を出しているという理由でお風呂に長期間入らないと、かえって体に汚れが付着して、皮膚が荒れてしまうことがあります。高熱で機嫌が悪いときは、お風呂に入ることでさらに体力を消耗することがあるので避けたほうがよいですが、熱もある程度落ち着いていれば本人の機嫌がよいところを見計らって、温めすぎない程度にさっとお風呂に入れて、清潔を保ってあげましょう。

熱に対する薬の投与に関しては小児科としても意見が分かれるところですが、一般的には解熱薬が処方されます。

一般的には、子どもに安全な解熱剤としてアセトアミノフェンという成分の薬が処方されることが多いです。ただし、解熱剤は治療薬ではありません。解熱剤を使ったからといって病気そのものが治ることはなく、熱による不快感・倦怠感などを緩和し、食事や水分摂取ができるだけ行えるように補助するための方法とお考えください。

かつては、解熱剤を使って熱を下げると風邪が長引くといわれていたこともありました。しかし、これに対して明確な医学的な根拠は示されていません。体温が高ければ確かにウイルスの増殖は抑制されますが、解熱剤の使用で熱を下げるとウイルスが過剰増殖するわけでもありませんから、解熱剤の使用を怖がりすぎる必要はないでしょう。

また、発熱は食欲を抑制する作用があります。大人であっても、熱があれば食欲は減退するでしょう。そういったときに解熱剤を用いて体を楽にして、体力低下を防ぎ、脱水を防止することには意味があります。このように、発熱症状の緩和を目的として解熱剤を使うことは悪い方法ではありません。

前述したように解熱剤は治療薬ではないため、解熱剤で病気を治すことはできませんが、症状緩和のための選択肢の一つとしては有効なものだととらえましょう。

ひとつ注意点を挙げるとすれば、決して大人用の解熱剤を子どもに飲ませてはなりません。先に述べたように、小児用の解熱剤は、アセトアミノフェンという薬剤に限られていますが、大人用の解熱剤には他の成分が含まれていることが多くあります。別の成分で作られた解熱剤は子どもにとってリスクが高いことがわかっているため、子どもには子ども用の薬をきちんと飲ませるよう心掛けます。

医師のなかには、自然経過で良くなるタイプの発熱ならば、親御さんの自宅でのケアで十分対処できるという方もいます。これは、「医療施設に頼らずとも、自分たちの力で子どもをケアできることを実感していただくことが大事」という考えに基づいています。

「何かあったらすぐ来てください」と医師側が言うことは間違いではありませんが、結果的に医療への依存度を上げることになりかねません。家庭でできる看護で回復するものを、いかにも医療的な介入によって治したように見せることになってしまうのです。

私は、子どもがかかった病気を自分たちの力で回復させることができたとご家族に実感していただくことも重要なことだと考えています。高熱自体が悪いものではありませんし、熱以外の全身の状態が普段と変わりない状態であるならば、ほとんどの場合に薬や特別な処置は不要です。ご両親は、ご自身の力を信じていただき、積極的に自宅での看護に取り組んでほしいと思います。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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