インタビュー

強皮症とは-皮膚や内臓に硬化や線維化が起こる病気

強皮症とは-皮膚や内臓に硬化や線維化が起こる病気
佐藤 伸一 先生

東京大学 医学系研究科皮膚科学 教授、 東京大学医学部附属病院 副院長

佐藤 伸一 先生

この記事の最終更新は2016年04月19日です。

強皮症(きょうひしょう)という病気をご存知でしょうか。「強皮症」という名前がつく病気は2つ存在しますが、両者はまったく異なる病気です。病名が似ているために、患者さんが病名を勘違いしてしまうことも少なくありません。今回5記事にわたり説明するのは、膠原病のひとつである「全身性強皮症(強皮症)」です。1記事目である本記事では、強皮症とは何か、膠原病とは何かについて東京大学医学部皮膚科学教室 教授 佐藤伸一先生にお話しいただきました。

強皮症という名前がついている病気は以下のように2つあります。しかし、両者はまったく異なる病気です。

  • 限局性強皮症
    皮膚とその下部の筋肉のみ侵す病気です。全身性強皮症と異なり全身性の病気ではありませんし、内臓を侵しません。比較的症状は軽いです。
  • 全身性強皮症
    膠原病のひとつです。皮膚や内臓の硬化あるいは線維化が起こります。皮膚、肺、腎臓などの全身に臓器に変化が起こります。

医師から単に強皮症と伝えられた場合は「全身性強皮症」を指します。しかし、名前が似ているがために、「限局性強皮症」であるにもかかわらず「全身性強皮症」と勘違いし、不必要な不安にかられてしまうケースが少なくありません。専門医以外の医師が両者の違いを正確に理解することも必要ですし、患者さん自身もどちらの強皮症であるのか、しっかりと確認することが重要です。

膠原病の定義は、「からだの2つ以上の臓器が同時に障害され、どの臓器が病変の中心であるかを特定する事ができない病気」です。

1942年にアメリカの病理学者Paul Klemperer(ポール・クレンペラー)が提唱しました。膠原病は病名ではなく、病気の成り立ちの観点からみた分類です。膠原病に含まれるものに強皮症、全身エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ皮膚筋炎などがあります。これらはまったく異なる病気のように思われますが、複数の臓器に障害(変化)が起こるという膠原病の定義には当てはまります。患者さんのなかには「膠原病という病気です」とおっしゃる方もおられますが、膠原病は病名ではありませんので、膠原病のなかのどの病気であるかが重要になります。

(※関連記事:東京大学大学院 医学系研究科内科学専攻アレルギー・リウマチ学教授 山本 一彦先生の記事「全身性エリテマトーデス(SLE)の検査―自己抗体を必須とし、慎重な診断が求められる」

膠原病の成り立ち
膠原病の成り立ち

(※強皮症研究会議「強皮症がわかるリーフレット」より引用)

全身性強皮症の中でも病気の進行や内臓病変を起こす頻度は患者さんによって大きく異なります

全身性強皮症の中でもいろいろなタイプ(病型)があることがわかってきたため、国際的には全身性強皮症を大きく2つに分ける病型分類が広く用いられています。

  • びまん皮膚硬化型全身性強皮症:皮膚硬化や臓器病変、逆流性食道炎などが起こります。
  • 限局皮膚硬化型全身性強皮症:比較的軽症です。皮膚硬化は進行しますが、数十年にわたり、わずかずつ徐々にしか進行しません。

前者は発症から5〜6年以内は進行することが多く、後者の軽症型では進行はほとんどないか、あるいは緩徐です。この病型分類のどちらに当てはまるかによって、その後の病気の経過や内臓病変の合併についておおよそ推測ができます。

ここでも誤解がうまれてしまう点としては、「限局性強皮症」と「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に「限局」という単語が含まれていることです。繰り返しになりますが、ご自身がどの強皮症であるのか誤解のないようにきちんと理解することが、不必要な不安を避けることにつながります。

強皮症は日本では6,000人以上いると推定されています。しかし、皮膚症状がゆっくりとしか進行しない患者さんは、病気に気づかず、またきちんとした診断が受けられていないなどの理由から、軽症型の患者さんを含めると、さらに患者数は多くなるのではないかと推測されます。男女比は1:9であり、30〜50歳代の女性に多く見られます。ごく稀に小児期に発症することもあります。また、70歳以降の高齢者にも発症することもあります。

 

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