インタビュー

子どもの骨折における受診のポイントと応急処置

子どもの骨折における受診のポイントと応急処置
萩原 佑亮 先生

東京都立小児総合医療センター 救命救急科 医長

萩原 佑亮 先生

この記事の最終更新は2016年05月11日です。

子どもの骨折は大人の骨折と異なり、不完全な折れ方をしやすいという特徴があります。子どもの骨折について、東京都立小児総合医療センター救命集中治療部救命救急科の萩原佑亮先生にお伺いしました。

子どもの骨は成長途中であるため、大人に比べて軟らかいという特徴があります。そのため、大人の骨折のように一直線には折れません。子どもが骨折した場合、若木骨折(骨の膜の内側で、筋状にひびが入る)などの不完全な損傷になることが多いと知られています。レントゲンを撮っても骨折の様子が見えなかったり、見逃されやすい傾向にあったりします。

また、最も多い子どもの骨折は、転んだときに手をついて起こる上腕骨顆上骨折(肩から肘を結んでいる上腕骨の骨折)というものです。

手足の骨折の場合、一番多い場面は、遊具や自転車からの転落をはじめとした事故です。また、赤ちゃんが転倒・転落した場合は、鎖骨(喉から肩にかけてを結ぶ骨)骨折も多くみられます。

  • 激しい痛みがある、触ると痛がる
  • 動かせない
  • 皮膚の一部がひどく腫れている
  • 皮膚が変色している
  • 腕や足に力が入らない
  • 腕や足の向きがおかしい

これらの症状がある場合は、骨折を疑い病院を受診しましょう。

また、赤ちゃんや乳幼児の場合は、自分で症状を訴えられません。赤ちゃんや乳幼児が骨折したときは、以下のような兆候がみられます。

  • 体の一部を動かそうとしない
  • 体を一定方向に向けるときのみ泣く
  • 寝かせたり抱き上げたりするときに大泣きする

これらが該当した場合、骨折を疑うことがあります。

骨が皮膚を突き破ってしまっている場合や、皮膚が損傷して下にある骨が見えてしまっている場合(開放骨折といいます)は、細菌が骨に感染する恐れがあります。また、骨折箇所の先にある手先・指先や足先などが動かない場合は、血液の流れや神経が障害されている可能性があります。このような場合は、早急に病院へ行きましょう。

個人的には、骨が大きく変形してしまった場合や体を動かしてよいのか迷う場合は、救急車を呼んでも問題ないと考えます。

子どもが転んだり何かにぶつかったりした後、痛みや腫れが引かなければ、骨折捻挫を疑います。ただし、骨折・捻挫・打撲の区別は、一般の方にはなかなかわかりにくいものです。

患部(骨折を疑う部位)は動かすと痛むため、可能な限り動かさないように固定してから冷やします。

固定の際は、副木(そえぎ)を当てるのもよいでしょう。副木に使う材料は、まっすぐに固定できれば、棒・段ボール・雑誌を丸めたものなど、どのようなものでも構いません。ただ、骨折した部分の上下の関節も含めて固定する必要があるため、副木には十分な長さが必要になります。

関節は無理に動かすと出血が増えることがあるため、無理に動かさずに本人が一番楽な姿勢で固定します。

包帯は、きつく巻くとうっ血することもあるため、注意が必要です。処置に迷う場合は、そのままの状態で受診してもよいでしょう。

肘内障とは、腕の関節がはずれかかってしまった状態です。骨折とは異なる障害で、後遺症を残すことはありません。肘内障は、子どもが親御さんと腕を組んで遊んでいたり、親御さんが子どもの手をひっぱったりした瞬間などに起こりやすいといわれます。3歳程度までの子どもに発症しやすいのですが、成長とともに起こりづらくなります。肘内障は、腕をだらりとして動かさない、おもちゃなどを渡しても片方の腕を挙げないなどの状態がみられることで発見されます。

肘内障の場合は病院で簡単に整復が可能であり、その後の固定も不要です。整復に関しては、実は骨折が紛れている場合もあるため、親御さんの事故判断で無理に行わない方がよいでしょう。

また肘内障は、自然に治ることもあります。英語では肘内障を“nurse made elbow”と呼び、実際に看護師が受診した子どもを触っているうちに自然治癒するケースがあるのです。また病院を受診したときには治っていたり、検査(レントゲン撮影時)で腕を動かしているうちに治ったりします。

もちろん、おかしな痛みが続く場合や腕の動かし方が不自然な場合は、骨折などが隠れている場合もあります。その際は詳しく検査します。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

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