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インタビュー

公開日 : 2016 年 06 月 08 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

鎮痛薬について-心疾患・腎疾患がある場合

マヒドン大学 臨床熱帯医学大学院
和足 孝之先生

痛みを抑えるために、いわゆる「NSAIDs(=非ステロイド性抗炎症薬)」と呼ばれる薬がよく使われます。これには以下のものを含みます:

・ブルフェン®=イブプロフェンのジェネリック医薬品や自社ブランド医薬品:イブプロフェンは、風邪薬のような市販薬です。

・ナイキサン®=ナプロキセンのジェネリック医薬品や自社ブランド医薬品

・セレコックス®=セレコキシブのジェネリック医薬品

NSAIDsは、痛みや炎症を抑えてくれます。しかし高血圧や心不全、腎疾患がある人が、NSAIDsを使うべきではありません。また、イブプロフェンや他のNSAIDsの成分が含まれる薬もおすすめできません。以下に理由を記します。

NSAIDsは血圧に悪影響を及ぼす

NSAIDsは高血圧の原因になります。もし既に高血圧であれば、悪化する可能性があり、心筋梗塞や脳卒中の危険性が高まる可能性があります。

また、NSAIDsは降圧薬の効き目を減弱させることもあります。以下の薬はNSAIDsと相互作用します。

・利尿薬(ハイドロクロチアジドなど):利尿薬は血管内から余分な水分を除去します。

・ACE阻害薬(PrinivilやZestrilなどの、リシノプリルのジェネリック医薬品):ACE阻害薬は血管拡張剤です。

・ニューロタン®(ロサルタン等、類似のジェネリック医薬品):ARBも血管拡張剤です。

NSAIDsは心臓や腎臓に負担をかける

NSAIDsの長期使用は体内に水分を貯留させます。すると、息切れや下腿のむくみ、頻脈や不整脈など、心不全の症状が出現させることがあります。またNSAIDsは腎臓の働きも悪化させる為に既に腎疾患がある人にとっては、NSAIDsの内服は危険ということになります。

心疾患や腎疾患のある人はどの鎮痛剤を使えるのか?

単純明快にこれと言い切れません。最も適切な鎮痛剤というのは、その時の健康状態や他の内服薬によるので、主治医には内服している処方薬、市販薬、漢方薬は全て伝えましょう。

市販薬のカロナール®(アセトアミノフェンとジェネリック医薬品)は、高血圧、心疾患、腎疾患のある人によく処方されます。

・しかし、カロナール®を多量に内服すると、肝障害の原因になるため、十分に痛みが押さえられる最低容量から開始しましょう。

・1日4,000mg(325mg錠剤12錠)以上の内服は避けましょう。

カロナール®やアセトアミノフェンのジェネリック医薬品が効かない場合、トラマール®(トラマドールとそのジェネリック医薬品)といった強い鎮痛薬を短期間だけでも使えないか聞いてみましょう。

・腎障害がある場合、1日200mg以上内服してはいけません。また、副作用の危険を減らすために、内服の間隔は12時間以上あけましょう。

・てんかん患者やパキシル®(パロキセチンのジェネリック医薬品)、プロザック(フルオキソチンとジェネリック医薬品)、ジェイゾロフト®(セルタラリンとジェネリック医薬品)内服患者に、トラマドールを使はない方がよいです。使用により痙攣発作の危険性が高まるとされています。

アドバイスコラム

薬に頼らず痛みをコントロールするには

薬を用いないヨガやマッサージなどの代替医療で、投薬量を減らしたり、休薬できる事がよくあります。痛みの場所ごとに、薬を使わなくてもできる治療方法を以下に記します。

●腰痛

積極的にウォーキングなどの運動をしましょう。鍼治療、マッサージ、理学療法やヨガも痛みを和らげてくれます。また、カイロプラクターの施述が効果になることがあります。

●頭痛

アルコールを止め、頭痛の原因になる食べ物を避けましょう。また、運動は頭痛を和らげるのに役立ちます。また、瞑想や深呼吸など、他のリラクゼーション療法もあります。

●変形性膝関節症

ウォーキングや自転車、ヨガなど、なるべく負荷の小さい運動をしましょう。痛みや筋肉の張りは和らぎます。しかし、ランニングやテニスのような、激しいスポーツは症状が悪化することもあるため避けましょう。

●線維筋痛症

痛みを和らげ、より体力を付けるため、定期的に運動しましょう。太極拳(深呼吸しながら、ゆっくりとゆっくり、大きな動きを合わせた運動様式)が最適です。瞑想も疼痛を和らげます。いわゆる認知行動療法と呼ばれる治療法です。

 

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 倉敷中央病院 花田沙穂

監修:和足孝之、徳田安春先生

 

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マヒドン大学 臨床熱帯医学大学院

和足 孝之先生

日本有数の急性期病院で総合内科医として幅広く重症患者を診療した経験から、複数疾患を持つ高齢者が増加し続ける今後の日本の医療で必要なものは”ジェネラルマインド”であると訴え続けている。総合診療の領域で現在有名となっている東京城東病院・総合内科では、当初1人だけで勤務する立ち上げ業務から開始、同院総合内科が現在の地位を築く礎を作った。その後、2015年度より旅行医学・臨床熱帯医学を修めるためにタイの名門 マヒドン大学臨床熱帯医学大学院に在籍中。全世界に通用する日本の医療を目指して、Choosing Wisely翻訳プロジェクトに参画。