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てんかんは手術で治る? てんかん手術の方法と目的、適応と費用
てんかんの治療というと、抗てんかん薬を用いた内科的治療法を連想される方も多いでしょう。しかし難治性てんかんの場合、一定の年数2種類以上の抗てんかん薬を組み合わせて治療を試みても、発作が治まらない...
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てんかんは手術で治る? てんかん手術の方法と目的、適応と費用

公開日 2016 年 05 月 27 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

てんかんは手術で治る? てんかん手術の方法と目的、適応と費用
藤本 礼尚 先生

聖隷浜松病院 てんかんセンター副センター長・てんかん科部長

藤本 礼尚 先生

てんかんの治療というと、抗てんかん薬を用いた内科的治療法を連想される方も多いでしょう。しかし難治性てんかんの場合、一定の年数2種類以上の抗てんかん薬を組み合わせて治療を試みても、発作が治まらないことがあります。このような患者さんのてんかん発作を完全に消失させ、その後の社会的生活をより豊かにする治療法が、「焦点切除術」をはじめとするてんかんの外科手術です。てんかんの手術にはどのようなメリットとリスクがあるのでしょうか。聖隷浜松病院てんかんセンターにて副センター長を務める藤本礼尚先生にお話しいただきました。

てんかんは治るもの、治すもの-てんかん手術の目的は発作を完全に消失させること

てんかん治療の目標は「てんかん発作完全消失」です。てんかんの症状がある状態では、車の運転や社会生活上、困難が沢山でてしまうからです。ですから、まずは「治そう」という意志を持つことが大切です。目標を決めて、それに向かって歩いていく人生を是非選択してください。てんかん発作があるからと、ご自身、ご家族の人生をあきらめるという考え方からからは脱出しましょう。では、どうやって「完全消失」させるのでしょうか。

抗てんかん薬で発作をコントロールしにくい「難治性てんかん」の見分け方-2年2剤の法則とは

抗てんかん薬でてんかん発作がコントロールできるのは約7割です。ですから、この7割の方は「副作用が少ない抗てんかん薬」であれば生活の質を落とすことなく発作がない人と何ら変わりのない生活を送れるわけです。この7割のグループを発作コントロール容易グループと考えます。

それに対し、残りの3割は「難治性てんかん」グループと呼ばれます。あなたはこの7割のコントロール容易グループなのでしょうか、それとも難治性てんかんなのでしょうか。

この見極めが「2年2剤の法則」です。

つまり、てんかんと診断されて薬を2年以上飲み続け、この間2種類以上の抗てんかん薬を試しても発作が治まらなければ、「難治性てんかん」となります。逆にコントロール容易グループは2年以内に1~2種類のお薬で簡単にコントロールができてしまう、というわけです。

抗てんかん薬が効かない難治性てんかんの治療法選択-薬の組み合わせで治すのは難しい

それでは抗てんかん薬が効かない場合はどうしたら良いのか。もう一度申し上げますが「あきらめる必要はありません」。むしろ、あきらめないでください。一度きりしかない大切な人生です。また、このように申し上げる理由は、「他にも打つ手があるから」です。

まずは薬以外の治療のオプションがあることを知って下さい。効果がないのに同じ戦法を繰り返しても勝ち目はありません。スポーツでもゲームでもすべての物事に当てはまりますよね。

はじめに何種類もある薬をいろいろ組み合わせていく、という考えがまず浮かぶかと思います。しかし、薬を組み合わせるという方法だと500通り以上のパターンが出来上がります。ここに容量を変化させると無限通りです。つまり薬でしか治療をしない、すなわち他のオプションを選択しない場合はこの組み合わせで一生が終わってしまいます。この組み合わせの中で、確実に発作を止められるなら、この努力は有意義でしょう。しかし、先に述べたように2年2剤の法則は科学的に証明されており、発作が止まる可能性は殆どないのです。「あなたに合わせたオリジナルな処方」と言われてしまえばなんとなく納得してしまうでしょうが、この考えで大事な人生の時間がどんどん過ぎていくことは避けましょう。勇気をもって他の治療オプションを選択する事を考えて下さい。

てんかんの外科手術-抗てんかん薬以外の治療オプションとは

他の治療オプションとして①てんかん外科手術②迷走神経刺激療法③てんかん食事(食餌)療法があります。順を追って説明していきましょう。

てんかんは、しばしば地震に喩えられます。これは、震源地(てんかん焦点)から広がり、揺れが(発作症状)が出るといった症状の現れ方に由来します。

そのため、てんかんの外科手術は、てんかんの震源地をとってしまう「てんかん焦点切除術」という方法と、広がりを抑えるために地震波(てんかん波)の広がりを止めてしまう「離断術」とにわかれます。

てんかんの焦点切除術で根治を目指す-脳の一部を切除しても日常生活に問題はでないのか?

私たちは、可能な限り前者の「焦点切除術」を選択し、発作の震源地を根こそぎ取ってしまうことで、完全にてんかんを治す「根治術」を目指します。しかしながら、脳はご存知の通り非常に重要なものですから、どこでも切除はできるというわけではありません。

脳は約3割程度しか使われておらず、残りの7割は使われてはいないため、生活をするうえで切除をしても問題のない部分であれば切除術を行うこととなります。

これを見極めるために、頭蓋内電極による脳機能マッピングや機能的MRIなどを行い、脳の機能を正確に把握したうえで手術を行います。

また、当院では、「覚醒下手術」という手術法も行っています。これは、痛みを伴うところまでは全身麻酔を使用し、痛くなくなったところで起きていただき症状を見ながら脳の切除を行うという方法です。

てんかんの手術「迷走神経刺激療法」でも発作を抑えられる

次に、「迷走神経刺激療法」についてご説明しましょう。首の奥深くには、迷走神経という体中に広がる神経があります。左側の迷走神経は、脳のよくない過剰な活動、すなわちてんかん発作やうつ状態を抑える働きがあります。手術によりここを刺激することでてんかん発作を抑える作用があるという治療方法です。

てんかん食事療法について-糖質と炭水化物の摂取量を制限する

 

過剰な糖質・炭水化物摂取は、てんかんにとってよいことではありません。そのため、糖質・炭水化物を制限するてんかん食事療法を選択することもあります。

具体的には、ケトン食療法と呼ばれ、糖質・炭水化物を一切摂らない古典ケトン食、炭水化物を一日約30g程度に落とす修正アトキンス食、また体に吸収されやすい糖質・炭水化物を避け、糖になりにくい食材を中心に摂る低グリセミック指数食などがあります。

聖隷浜松病院てんかんセンターの食事療法-「安心」と「おいしい」を重視したてんかん食を

当院では管理栄養士と共に各種検査し、安心しながら取り組んでいただける食事療法が行えます。また「食餌」は、美味しさを追及しないという意味も内包していますが、当院では食事の美味しさ・楽しさを追及し、遠州食品加工業組合と協力した「おいしいてんかん食GABA UPプロジェクト」に取り組んでおります。

てんかんは、なるべく早いうちに治しましょう。-就職や結婚、妊娠・出産も可能に

先にも申し上げましたが、発作が完全になくなり、合併症も全くない状態になれば、その方は様々なことができるようになります。私の治療した方の中には入学、就職、結婚、出産など人生を謳歌されている方がたくさんいらっしゃいます。このように、生活の質の高い人生を送るためには、早いうちに積極的治療を考える必要があります。

てんかん患者の突然死(SUDEP)-手術による合併症よりも数段高い確率で起こる

てんかんの合併症には、「突然死」があります。発作に対し積極的な治療が必要な理由の一つはこのSUDEP( Sudden Unexpected Death of Epilepsy Patient)の存在です。

世界的にみて、手術の合併症として脳機能低下、高次機能低下、精神症状、麻痺などが起こる確率はゼロではない(Engel 2003)との報告がありますが、実際このような症状がでる方は殆どいらっしゃいません。

これに対し、SUDEPは上記した合併症よりも5~20倍という数段高い確率で起こり、患者さんの命を奪ってしまうのです。SUDEPの確率のほうが、てんかん手術による様々な合併症のリスクよりも格段に高いため、天秤にかけて考えて積極的に治療をする、という捉え方もすべきでしょう。

てんかんの外科手術は、発作消失後の患者さんの生活を大いに向上させる

てんかんの外科手術の目的は、「発作完全消失」です。その後の社会参加、就学、就職というという更なるステップアップも見越して、皆さんの「幸せ」につながるということが予測されることが、手術を含めた治療オプションの選択になります。

長期間、効果が得られない薬物療法が続けられたがゆえの脳機能低下、知的障害、精神症状をきたしてしまった方が当院に来られることがあります。もっと早期に積極的に治療していたら脳がここまでダメージを受けなかっただろう、と感じざるを得ない症例が多いのです。

外科的な治療が早ければ早いほど、脳機能低下が避けられ人生のステップアップの可能性が高くなります。ですから、難治性てんかんの場合、いつまでも薬の治療にしがみついているのではなく早期に治療オプション変更をする、発作がなくなったら社会の荒波にもまれ社会性・ソーシャルスキルを磨いてもらい精神的なもろさも同時に鍛えていく、というのが一般的なてんかん克服者の経過になります。

手術治療は保険での治療です。

手術は特殊な治療と思われがちで、多くの方から「自費診療でしょうか?」と聞かれることがありますが、「保険診療」ですので安心していただいて良いと思います。また様々な制度も利用ができますので手術の方針が決まったら医療相談室などのご利用をお勧め

します。また迷走神経刺激療法やてんかん食事療法にも保険が適応されます。

てんかんの手術(藤本礼尚先生)の連載記事

筑波大学を卒業後、国内外の施設にて研鑽を積み、現在は聖隷浜松病院にててんかんセンター副センター長・てんかん科部長を務める。てんかん外科の第一人者であり、数多のてんかんの手術を手掛ける。患者目線に立つことを忘れない診療により厚い信頼を得ており、現在はてんかん医療が抱える課題や疾患への偏見解消に向け地域連携活動にも尽力している。

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