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大動脈弁狭窄症の手術――カテーテル治療“TAVI”について

大動脈弁狭窄症の手術――カテーテル治療“TAVI”について
田端 実 先生

虎の門病院 循環器センター外科 特任部長、東京ベイ・浦安市川医療センター 心臓血管外科 部長

田端 実 先生

小船井 光太郎 先生

東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科 部長

小船井 光太郎 先生

渡辺 弘之 先生

東京ベイ・浦安市川医療センター 副センター長 循環器内科/ハートセンター長

渡辺 弘之 先生

目次
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TAVIとは経カテーテル的大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation)の略であり、TAVR(経カテーテル的大動脈弁置換術:Transcatheter Aortic Valve Replacement)と略されることもあります。これは大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療であり、石灰化で傷んだ大動脈弁まで折りたたんだ人工弁をカテーテルで運び、大動脈弁の内側に人工弁を広げて留置する方法です。TAVI用の人工弁は、金属のフレームの中にウシやブタの組織でつくられた弁が縫い付けられています。金属のフレームが折りたたまれ小さくなった状態で運ばれ、大動脈弁の内側で元の形状に戻されます。

傷んだ大動脈弁は人工弁に押しのけられて、バルサルバ洞という大動脈の付け根の部分に収納され、大動脈弁に金属フレームがひっかかる形で人工弁が固定されます。人工弁を植え込んだ瞬間から、傷んだ大動脈弁に代わって人工弁が動き始めます。 2016年現在日本で使用可能なTAVIの人工弁には、風船で広げるタイプと形状記憶合金で自然に広がるタイプがあり、患者さんそれぞれの大動脈弁の形状などを考慮して選択します。

 開胸手術TAVI

胸骨の切開必要ほとんどが不要*

人工心肺装置必須ほとんどが不要**

一時的に心臓を止めること必須不要

傷んだ弁をどうするか切除する押しのける

人工弁をどうするか針と糸で縫う金網で固定する

人工弁のサイズをどのように決めるか術中に弁のサイズを直接測定して決めるCTやエコーで弁のサイズを測定して決める

人工弁の種類は生体弁と機械弁生体弁のみ

* 胸骨を小さく切って行う方法もあります。

** 心臓機能が弱っている場合に必要になることもあります。

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開胸手術に限り、人工弁には2つの種類があります。

・生体弁:ブタの心臓弁やウシの心膜を使ってヒトの弁に似せてつくられた弁であり、耐久性は機械弁に劣りますが、ワーファリン(血を固まりにくくする薬)は約3か月のみの服用です。

・機械弁:カーボンでつくられた2枚のディスクが開閉する弁であり、耐久性が非常に優れています。しかしワーファリンを生涯服用する必要があります。

基本的には65歳以上の患者さんに対しては生体弁を、65歳未満の患者さんには機械弁を使用する傾向にあります。なぜなら、若い方は代謝がよく石灰化・沈着しやすい傾向にあるため、生体弁があまり長持ちしないからです。高齢の方では20年程度持つのに対し、若い方では10年程度しか持たないこともあります。しかし、機械弁は留置すると生涯ワーファリンを服用しなければならないため、近年は若くても生体弁を選択する患者さんが増えてきています。どの人工弁を使用するかは、年齢で一律に区切るわけではなく、医師と患者さんが十分話し合ったうえで患者さんの希望に沿って決めます。

 TAVI(タビ)は施設によってTAVR(ティーエーブイアールまたはタバー)と表記されていることがあります。これは同じものを意味し、呼び名は国によって異なります。

 

TAVIはもともとフランスが発祥の治療方法です。そのため、フランスをはじめとするヨーロッパの機関ではTAVIと呼ばれています。一方、TAVIがアメリカで始まった際、アメリカでは従来の開胸手術であるAVR(大動脈弁置換術:aortic valve replacement)にそろえて、経カテーテルによるAVRということでTAVR(Transcatheter AVR:ティーエーブイアールまたはタバー)と呼ぶことにしたのです。外科的手術はSAVR(Surgical AVR:エスエイブイアールまたはサバー)と呼ばれています。

 

現在でもTAVIで一番のシェアを誇るエドワード社はTAVIと呼ぶ一方、ガイドライン上ではTAVRと呼称されているなど、この呼び名は統一されていません。しかし、日本ではTAVIのほうが一般的といえます。そのため本記事では“TAVI”と表記を統一します。

TAVI

もっとも一般的な方法は、脚の付け根からカテーテルを進める(けい)大腿(だいたい)アプローチです。何らかの理由で経大腿アプローチが難しい場合は、心臓に直接カテーテルを入れる経心尖(けいしんせん)アプローチや、左鎖骨下からの鎖骨下動脈アプローチ、大動脈からの直接大動脈アプローチなどがあります。ここでは、経大腿アプローチと経心尖アプローチについて解説します。

経大腿アプローチは、脚の付け根の大腿動脈(だいたいどうみゃく)からカテーテルを挿入して人工弁を心臓まで運び、大動脈弁の位置で留置する方法です。胸部をまったく切開しないため患者さんの体の負担がもっとも小さい方法です。ただし、脚から心臓までの間の血管が細かったり、詰まっていたり、大きく曲がっていたり、あるいは動脈瘤(どうみゃくりゅう)と呼ばれる瘤(こぶ)状の膨らみがあったりする方には適しません。

2016年からより径の細いカテーテルが使えるようになりました。製品が進化することでより多くの人に侵襲(患者さんへのダメージ)の小さい経大腿アプローチができるようになっています。経大腿アプローチは、全身麻酔ではなく局所麻酔で行うことも可能です。全身麻酔あるいは局所麻酔でTAVIを行うことにはそれぞれ利点・欠点があります。

経心尖アプローチでは左胸を5cmほど切開し、心臓の先端の心尖部と呼ばれるところからカテーテルを挿入します。心臓の中を通って大動脈の位置で人工弁を留置します。心尖部は大動脈弁に非常に近いためカテーテルのコントロールが容易で、弁の位置を正確に決めやすいということが利点です。また、脚やお腹の血管を通る必要がないため、血管トラブルが少ないという利点もあります。一方、経大腿アプローチよりは侵襲が大きくなり、また局所麻酔で行うことはできません。

一般的に経心尖アプローチは時間がかかって痛みが強いといわれています。

   
鎖骨の下を5cmほど切開して、鎖骨下動脈からカテーテルを入れる方法や、右胸や胸の正面を同じく5cmほど切開して上行大動脈(大動脈弁のすぐ上の血管)からカテーテルを入れる方法があり、東京ベイ・浦安市川医療センターではいずれのアプローチも行っています。
また日本では行われていませんが、首の頸動脈からのアプローチもあります。

全国的には経大腿アプロ―チとその他のアプローチの割合は9:1と報告されています。今後経大腿アプローチがさらに増えてくると考えられます。ほぼ全て経大腿アプローチという施設もあるようですが、血管性状が悪くても無理をして経大腿アプローチを行っていたり、経心尖アプローチが得意でないといった事情があるようです。

当センターでは、経大腿アプローチとその他のアプローチの比率は7:3ほどで、その他のアプローチの多くが経心尖アプローチです。全国平均よりも経心尖アプローチの割合が多くなっている理由としては、血管の性状が悪くハイリスクな患者さんが多いこと、経心尖アプローチの経験が豊富で短時間で合併症なく施行できることが挙げられます。

今後さらに経大腿アプローチが増えていくと、各施設の経心尖アプローチの経験がますます減り、技術レベルの維持が難しくなってきます。血管性状が悪いなどの理由で経大腿アプローチが難しい患者さんに対しては当センターのような経心尖アプローチの経験が豊富な施設が役立つことができると考えています。

 

  • 体の負担が小さい
  • 出血量や輸血量が少ない
  • 入院期間が短い

TAVIの最大のメリットは低侵襲であること、すなわち患者さんの体の負担が少ないということです。そして術後の回復も早く、入院期間が短くてすむことです。当センターでは、術後のリハビリにも注力しており、最短術後3日での自宅退院を実現しています。

・長期耐久性が不明

・大動脈弁の形状やサイズにより適応に制限がある

・植え込みの精度がやや劣る

 一方、TAVIのデメリットは、10年以上の耐久性がまだ分かっていないことであり、若い方への使用は慎重に行う必要があります。また、傷んだ大動脈弁を押しのけて人工弁を植え込むため、大動脈弁の形状やサイズにより適応に制限があります。近年TAVI用人工弁の改良や技術の向上で植え込みの精度は著しく向上していますが、外科医が直接弁のサイズを計測して、最適なサイズの人工弁を正しい位置に針と糸で縫合する開胸手術と異なり、まれに弁のサイズや位置が合わないこともあります。また、弁周囲からの逆流が残ったり、心臓内の電気伝導を邪魔してペースメーカーが必要になることもあります。

TAVIは基本的には適応の範囲が広く、持病などで治療ができないというケースはそう多くはありません。しかし、下記のような患者さんには治療が行えません。

 

<TAVI不適応の患者さんの特徴>

・人工透析を行っている患者さん

・心臓以外に重い病気があり、1年以内の余命宣告をされている方

・弁や心臓の出口にあまりにも大きな石灰塊がある方

・弁のサイズが大きすぎるあるいは小さすぎるなど、規格外の弁を持つ方 など

 

特に人工透析を行っている患者さんに対するTAVIの施術は2017年5月現在では保険適用が認められていません。人工透析を行っている患者さんは、一般的に開胸手術のリスクが高く、病院に手術を受けつけてもらえない場合もあります。東京ベイ・浦安市川医療センターでは、腎臓内科や集中治療科とチームを組んで、透析患者さんの心臓手術を積極的に行っています。

そのほか、大動脈弁以外の弁膜症やその他の心臓病を持つ患者さんには、TAVIよりも同時に全ての治療ができる開胸手術をすすめることがあります。

 

TAVIでは血管や心臓の破裂や冠動脈閉塞による心筋梗塞、人工弁が心臓や血管に落ちてしまうことがそれぞれ1%未満で起こりうるといわれています。幸い東京ベイ・浦安市川医療センターではそのような合併症が1例もありません(2016年10月現在)。当院ではTAVI全例で、心臓カテーテルの専門家、心臓外科手術の専門家、ステントグラフト治療(胸やお腹の血管をカテーテルで治療する方法)の専門家がチームを組んで行っており、あらゆる合併症に迅速に対応できる体制を取っています。

脳梗塞はTAVIにおいて2~5%ほどで起こりうるといわれています。当院ではこれまで後遺症の残る脳梗塞は1例もありません(2016年10月現在)。脳梗塞が発症した場合は、脳神経外科医、リハビリチームとの連携で、最善の治療を迅速に行える体制が整っています。

TAVIでは腎臓に負担をかける造影剤を使用するため、もともと腎臓の悪い患者さんは腎不全に陥るリスクがあります。東京ベイ・浦安市川医療センターでは、腎臓の悪い患者さんには極めて少ない量の造影剤(合計20ccほど)でTAVIを行って腎不全を防いでいます。万が一腎臓機能が悪化した場合は、腎臓内科医との連携で迅速な治療を行っています。 そのほかに、人工弁の脇からの血液逆流(弁周囲逆流)やペースメーカーの植え込みが必要になるリスクがあります。

弁周囲逆流とは、人工弁と自己弁の隙間から血液が逆流(大動脈から心臓に逆戻り)してくることです。近年TAVI用人工弁が改良されて、その頻度は減りましたが、開胸手術に比べるとまだ多いのが現状です。逆流が多いと、TAVI後の心臓に負担をかけて心不全を生じることがあります。そのような場合、カテーテルを用いて隙間に栓をして逆流を止める方法もあります。

まずは弁周囲逆流の有無とその影響の予測が重要です。術前のCT等で弁周囲逆流が起こりやすいかどうかが分かります。また、弁周囲逆流が起こった場合に心不全になりやすいかどうかもある程度予測がつきます。東京ベイ・浦安市川医療センターでは、弁周囲逆流が起こりやすく、かつ弁周囲逆流によって心不全になりやすい患者さんには、そのことを十分説明して開胸手術をおすすめすることもあります。

開胸手術でもTAVIでも大動脈弁を人工弁に置き換えますが、それを挿入する際に心臓の中で電気の回路が走っているところに何らかの力がかかることで電気回路を断線する状態になることがあります。その結果、房室ブロックという不整脈が生じ、正常な心臓の動きを維持するためにペースメーカーの植え込みが必要になることがあります。

術後ペースメーカー植え込みは、開胸手術では1%程度、TAVIでは5~15%といわれています。今後TAVI用人工弁の改良で減る可能性はありますが、現状では手術により明らかにペースメーカーが必要になる頻度が高くなっています。

現在保険診療で認められているTAVIの適応は、息切れやふらつきなどの症状がある重度の大動脈弁狭窄症で、開胸手術のリスクが高いと判断された患者さんです。開胸手術のリスクが高いとは、下記のような状態を指します。

<開胸手術のリスクが高い患者さんの特徴>

・超高齢の患者さんであること

・体力が著しく低下していること

・心臓の動きや他の臓器の機能が著しく低下していること

・開胸手術を繰り返している場合 など

もともとTAVIは症状のある重度の大動脈弁狭窄症で、かつ手術のリスクが高い患者さんのみの治療とされてきましたが、近年は手術リスクが中程度の患者さんにまで行われるようになっています。一方で開胸手術のリスクが低い患者さんには開胸手術で治療を行うことが推奨されています。

東京ベイ・浦安市川医療センターでは、内科医、外科医による診察・検査に加えて、理学療法士による体力やその予備能力の評価を行い、総合的に手術リスクを評価しています。一見元気でも手術リスクが潜んでいることもありますので、大動脈弁狭窄症で手術が必要といわれたら一度ご相談ください。

一方で、前述のように手術リスクが高くても大動脈弁のサイズや形状によってはTAVIが向いていない場合もあります。そのような場合に安全に開胸手術を行えるTAVIと開胸手術の両方を得意とする施設を選ぶことが重要です。

大動脈弁狭窄症の治療に何より大切な“チーム医療”

患者さんの高齢化に伴って複雑な病態が多くなる状況では、多様な専門科が集まったチームで治療に取り組むことがより重要になってきます。たとえばTAVIの手技には“神の手”と呼ばれるような超絶技巧は必要とされません。個々の手技はシンプルで、むしろスタッフ同士が常にコミュニケーションを取り合って、タイミングを合わせることのほうが重要です。コミュニケーションが不十分であったり、連携のタイミングがずれたりすると重大な合併症が起きる可能性があるからです。

多くの施設では内科医が主体でTAVIを行っていて、外科医は合併症対応のために部屋の隅で控えているだけという光景がよく見られます。東京ベイ・浦安市川医療センターでは心臓血管外科医が主体となって、循環器内科医とともにTAVIを行っています。TAVIと開胸手術両方の専門家であるからこそ、偏りなくそれぞれの患者さんにとって最良の治療を選択することができます。

外科医がTAVIを行ってみるとTAVIのよさを実感することが多々あります。たとえば、過去に心臓の手術を受けている患者さんの再手術の場合、弁をもう一度換える、あるいはバイパス手術の後に弁を換えるといったときに、開胸手術は3~4時間ほどかかりますがTAVIであれば1時間もかかりません。出血もほとんどなく終わり、患者さんが早く回復することは大きなメリットだと実感しています。

同時にTAVIを行えば行うほど開胸手術のよさも分かります。手術でなければできないこと、手術だからこそ追及できる精密さや完璧さがあることをあらためて感じます。 

良いハートチームの条件

内科もしくは外科、どちらか一方のイニシアチブが強すぎるチームはやはり偏りが出てしまいます。また内科医が手術なんかダメだと考えていたり、外科医がTAVIなんかダメだと考えているチームも同様です。もはやそれらはハートチームと呼べません。開胸手術を適応すべき症例にTAVIを選択してしまう、あるいはその逆のことも起こりうるのではないでしょうか。

やはり、共に高いレベルの実力があり、外科医と内科医が互いに尊重し合って対等の立場で治療できるチームこそよいチームだと考えています。TAVI数が多いのに手術数が少なかったり、手術数が多いのにTAVI数が極端に少ないところはチームバランスが偏っているのかもしれません。

カテーテルや手術の専門家だけでなく、心エコーやCT、リハビリの専門家の存在もTAVIにはとても重要です。また、TAVIの対象になる高齢の患者さんは心臓以外の病気を抱えていることがよくあります。心臓以外の病気が問題になったときにすぐに対応できる体制であることも重要です。

優秀な心エコー医

TAVIを行っている施設を評価するひとつの判断材料として、優秀な心エコーの医師がいるということが挙げられます。一般に冠動脈のステント治療を専門としている医師がTAVIを担当するというパターンが多く、ときにはチームといってもそれだけにとどまっている場合があります。

もちろんエコーがまったくできないということはないでしょうが、本当にTAVIが必要な方、TAVIが適している方を見極めるためにはやはり心エコーを専門とする医師の診断が重要です。心エコーには診断だけでなく、TAVIが安全かつ確実に進行するように導く役目やいち早く合併症を発見する役目もあります。

 

傷んだ弁を取り除く手術と違って、TAVIは傷んだ弁を脇に押しのけて人工弁を植え込むため、患者さんそれぞれの大動脈弁や大動脈基部(傷んだ弁を押しのけるスペースとなる部分)などの形状やサイズによって制限があります。したがって、CTや心臓エコー検査でその形状やサイズを評価して、TAVIが安全にできるかどうかをよく見極める必要があります。この見極めが不十分だと、心臓の破裂や心筋梗塞、弁周囲逆流などの合併症が起こりえます。東京ベイ・浦安市川医療センターでは、CTやエコー装置を用いて精密な分析を行い、その情報をカンファレンスで共有してTAVIが安全にできるかどうかを判断しています。

また、大動脈弁狭窄症の患者さんには他の心臓弁や大動脈にも問題を抱えている方がいらっしゃいます。そのようなケースでは、手術で全てを治したほうがよい場合もあれば、TAVIで大動脈弁狭窄症だけを治せば十分という場合もあります。この判断は時に難しく、手術で心臓は完全によくなったものの体力が落ちて寝たきりになったり、TAVIで大動脈弁だけ治したものの他の弁の影響で症状がよくならなかったりということもあり得ます。

また、TAVIは主に高齢の患者さんが対象となり、体力が著しく弱っていたり心臓以外の病気を併せ持っている方もいらっしゃいます。その中にはTAVIであっても死亡や合併症のリスクがとても高い方や、TAVIが成功しても症状や生命予後が改善しない方もいらっしゃいます。そのような患者さんにTAVIを行っても、患者さんの体の負担や医療費に見合う効果が得られないことがあります。

超高齢の患者さんの中にはさまざまなニーズがあります。あと5年は孫・ひ孫の成長を見届けたいという方もいらっしゃれば、人生をまっとうしたので苦しい症状だけを取ってほしいという方もいらっしゃいます。後者の場合はTAVI以外の治療が最適であることもあります。

“TAVIに向いているか”という判断が簡単でないこともよくあるのです。東京ベイ・浦安市川医療センターでは心臓の専門家だけでなく、他の臓器の専門家や総合内科医、理学療法士、看護師など多様なスタッフが協力することで、患者さんに最適な治療を実現したいと考えています。

TAVIが向いていることが分かれば、次にどのようにTAVIを行うかを考えます。 どこからカテーテルを進めるか(経大腿か経心尖かあるいは他のアプローチか)、どの種類の人工弁を用いるか(風船で広げるタイプか形状記憶合金のタイプか)、そしてどのサイズの人工弁を用いるか、これらは主にCT画像の解析結果を元に決定します。実際にはこれだけでなく、症例ごとにさらに細かいプランを立てています。

たとえば、万が一合併症が起こったときの対応策は非常に重要です。TAVIに慣れてくるとそのようなことがおろそかになりがちですが、起こりやすい合併症を予測し、それに対する予防策・対応策を細かく立てたうえでTAVIを行うことが重要です。実際合併症の頻度は非常に少ないため、いざというときに迅速に対応できるよう定期的に合併症対応のシミュレーションも行っています。

 

手術参加者が一同に集まり症例ごとの詳細なプランを最終確認

② 麻酔の導入とペーシングワイヤーの留置

③ 脚の付け根の大腿動脈に針を刺してカテーテルを挿入する

カテーテルを心臓の中まで進める

⑤TAVI用人工弁の準備

⑥ 人工弁を傷んだ弁の内側に留置する

⑥ 人工弁を傷んだ弁の内側に留置する2

⑦創のあと

 

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大動脈弁狭窄症の手術を受ける患者さんはご高齢の方が多いため、筋力や認知機能の低下、肺炎などの合併症を防ぐには、術後早期から離床することが重要です。東京ベイ・浦安市川医療センターでは、開胸手術後でも多くの患者さんが翌日からリハビリを始めています。心臓手術後のリハビリで培った知識と技術を生かして、ほとんどのTAVI患者さんに翌日からリハビリを開始します。ハートセンター専属の理学療法士、作業療法士がリハビリを担当します。

患者さんによっては退院後に活動度が減って、せっかく回復した体力が再び落ちてしまうことがあります。退院前の説明や退院後の外来で自宅での活動度についてアドバイスをしたり、必要に応じて通院で心臓のリハビリや治療を行って、体力・筋力の維持をサポートしています。

大動脈弁狭窄症のリハビリは下記のようなことを行います。

<大動脈弁狭窄症のリハビリ内容>

・歩行訓練

・深呼吸の練習

当院では手術内容に応じてプログラムを変え、適切なリハビリを行っています。しかしそれは内容を変えるというよりは、患者さんの回復の速度に応じてリハビリの進むテンポを変えるといったイメージです。

 

開胸手術の人工弁(生体弁、機械弁)は弁の寿命(耐用年数)が知られていますが、TAVIで使用する生体弁はその寿命がまだ知られていません。TAVI用の生体弁は、開胸手術用と同じか似た素材(ウシの心膜やブタの心臓弁)が使用されていますが、弁の厚みが違っていたり、カテーテルで運ぶために折りたたむ必要があることが異なっています。これらの違いが、弁の寿命に影響を及ぼす可能性があります。                                                             

TAVIは2006年ごろに始まったばかりの新しい治療方法であり、TAVI用人工弁の耐久性に関しては、海外でもまだはっきりと分かっていません。そのため、私たち医師は術後の患者さんを、責任を持って長期的にフォローアップする必要があるでしょう。

多くの場合、TAVIの術後は血圧の薬や血をサラサラにする薬を服用する必要があります。血をサラサラにする薬を何種類服用するか、どれくらいの期間服用するかは、まだ明確な決まりがないのが現状です。大動脈弁狭窄症以外の病気がある場合は、もちろんその病気に対する治療の継続が必要です。また、時間が経ってからTAVIの人工弁に血栓(血の塊)が付着したり、弁周囲逆流が増悪することもあるため、定期的に心エコー検査などを行うことが必要です。

 

 

欧米を中心に次々と新しいTAVIデバイスが開発されており、日本にも新製品が導入されてきます。新しいデバイスの特徴の例を挙げます。

・カテーテル径が小さくなって細い血管からでも留置できる

・形状が改良され、弁周囲逆流やペースメーカー植え込みが減少する

・留置した弁の位置が悪ければ位置を変えることができる

大動脈弁狭窄症だけではなく大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)にも使用できる

これらの進歩によって今後ますますTAVIの対象になる患者さんが増えていくと思われます。しかし、外科手術がなくなるわけではありません。若い患者さんやTAVIができないような複雑な病気の方は手術の対象となり、早期回復を促進する低侵襲手術や重症患者さんに対する複雑手術など、より高度な技術が求められると考えられます。

TAVIを含めてこれからの心臓病治療はますます低侵襲化が進んで、超高齢の患者さんやかなり状態の悪い患者さんにも行えるようになるでしょう。しかし、私たちは技術を使って単に余命の延長だけを目指すのではなく、「健康寿命」を延ばすことに貢献しなければならないと考えています。ひと口に健康といってもいろいろなスタイルがあろうかと思いますが、たとえばご高齢の方が身の回りのことを自分でされながら楽しく過ごせるような期間を増やすことが重要だと考えています。そのためには、TAVIや手術だけではなく、術後の内服薬管理やリハビリを含めた総合的な治療の質の向上が必要です。

 

多くのTAVI患者さんがそうであるように、患者さんの高齢化が進むにつれて心臓の病気自体が複雑であったり、心臓以外の病気をかかえていたり、退院後の生活に不安を感じていたり、さまざまな問題がでてきます。これら全てを1人のスーパードクターが解決することはできません。これらの問題解決や健康寿命を延ばすことは、それぞれ高い能力を持った多様な専門家が円滑に連携することでのみ可能となります。「スーパードクターのいる病院」=「チームワークのよい病院」とは限りません。

東京ベイ・浦安市川医療センターでは、開胸手術を専門とする外科医、大動脈カテーテル治療を専門とする外科医、カテーテル治療を専門とする内科医、心エコーを専門とする内科医、心臓麻酔を専門とする麻酔医、集中治療医、看護師、臨床工学技士、放射線技師、理学療法士・作業療法士、検査技師、栄養士、ソーシャルワーカー、事務スタッフがハートチームとして一丸となってTAVI患者さんを支えています。さらには、他科の医師との連携もスムーズで心臓以外の問題にも迅速に対応できる体制を整えています。

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