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「疲れやすい」「息苦しい」橋本病の症状・原因・治療やセルフチェック法まとめ。橋本病になったら妊娠や食事、ダイエットはどうすればいい?◇

  • #甲状腺機能低下症
  • #甲状腺・副腎の病気
  • インタビュー
  • 公開日:2016/07/04
  • 更新日:2017/02/09
「疲れやすい」「息苦しい」橋本病の症状・原因・治療やセルフチェック法まとめ。橋本病になったら妊娠や食事、ダイエットはどうすればいい?◇

橋本病は女性に多く、特に30代や40代になると増える甲状腺の病気のひとつです。適切な治療を受けることで健康な人と変わらない生活を送ることができますが、イライラや不安感、元気が出ないといった症状が現れるため、精神疾患や更年期障害と勘違いしてしまったり、「なんとなく不調」と見過ごされてしまうこともあります。

今回は「橋本病のまとめ」と題し、橋本病かもしれない、橋本病になったら妊娠や食事などに制限は加わるのか、自分の赤ちゃんに遺伝する病気?と不安を抱えている方に向け、橋本病の症状や生活上の注意点、血液検査時にみる項目などについてお伝えします。

橋本病とは。うつ病と間違えやすい甲状腺機能低下症のひとつ

うつ病

橋本病(慢性甲状腺炎)とは甲状腺機能低下症とも呼ばれる疾患で、その名の通り甲状腺ホルモンの分泌が少なくなってしまう病気です。

甲状腺ホルモンには代謝を活発にする役割があるため、分泌量が低下すると体のあらゆる機能も低下し、疲れやすさやだるさ、眠気などが生じます。

精神的にも不安定になり、落ち込んだりイライラすることが増えるため、うつ病などの精神疾患と間違われやすいことで知られています。

甲状腺の役割・働きとは-そもそも甲状腺ってどこ? 首の前が腫れるの? 

甲状腺の位置

以下の記事『甲状腺とは―甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化させる』では、横浜労災病院内分泌代謝科部長の齋藤淳先生が甲状腺の役割について、わかりやすく解説してくださっています。
どこが腫れるのか、甲状腺はどこにあるのかという疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。
https://medicalnote.jp/contents/150707-000013-XCMAOU
 

橋本病の名前の由来 すべての甲状腺機能低下症が橋本病ではない

橋本病という名前は、1912年に九州大学の橋本策博士が、甲状腺の腫れがみられる症例を報告したことに由来します。甲状腺機能低下症の中にはクレチン病という子どもの先天性疾患なども含まれており、全ての甲状腺機能低下症の別名が橋本病というわけではありません。

橋本病って難病指定されているの? 橋本病は難病ではない

「橋本病は難病指定されているのか」と疑問を抱かれている方は、非常に多く見受けられます。少しややこしい話になりますが、難病指定されているのは「甲状腺ホルモン不応症(ふおうしょう)」という先天性の疾患であり、自己免疫疾患に属する橋本病はこれとは全く異なる部類の病気です。甲状腺ホルモンの分泌が過剰になるバセドウ病も、橋本病と同じ自己免疫疾患に分類されます。

ただし、甲状腺ホルモン不応症と橋本病を合併(併発)することは十分あり得ることで、実際に症例も報告されています。

橋本病の症状をチェック

ここでは、橋本病の初期症状や典型症状、進行症状などあらゆる症状をチェックボックス式でご紹介します。

※ただし、当てはまるものが多い場合でも、他疾患であることや、診断のつく病気ではないこともあります。不安視し過ぎないようにしましょう。


□むくみ…押してもへこまないという特徴がある。足やまぶたがむくむ。

□記憶力が低下した…新たに何かを覚えることが難しくなった

□徐脈…脈がゆっくり、あるいは弱くなった

□体重増加…代謝の悪化により起こる

□皮膚が乾燥しカサカサする、粉をふく

□月経異常(女性の場合)…生理周期が乱れたり経血量が増えたと感じる

□元気が出ない、やる気が出ない、疲れやすい…うつ病かもしれないと思い込みやすい症状

□食欲が出ない…食欲は低下するものの体重は増えるのが特徴

□声がかすれる(嗄声)、声が低くなった…初期に出やすい症状

□首が太った、甲状腺が腫れている…大小さまざまだが、硬くごつごつした感触

□寒がり、冷え性になった


※もしかして「うつ病かもしれない」と不安な方へ

上記の症状例をみて、甲状腺疾患ではなく、精神疾患の可能性のほうが高いと感じられた方は以下のリンクから『うつ病の症状』をチェックしてみましょう。
横浜市立大学病院 精神科 診療部長・主任教授 平安良雄先生がうつ病の自覚症状などを解説してくださっています。
https://medicalnote.jp/contents/160418-064-MP
 

橋本病を発症すると太るというのは真実

あまり食べていない、食欲がわかないにも関わらず急に太った、体重が増えたという患者さんが多くみられます。橋本病による体重増加は、甲状腺ホルモンの減少により代謝が低下し、摂り込んだカロリーをエネルギーに変えて消費する量が減るために起こります。

1日に同じだけ運動しても、基礎代謝が高い人に比べ、基礎代謝が低い人はやせにくく太りやすいと捉えるとわかりやすいでしょう。

食べたものを消化する胃腸の機能も低下します。

顔のむくみも橋本病の症状

また、橋本病を発症すると粘液水腫と呼ばれるむくみ(水っぽくないむくみ)が生じるため、食事だけでなくむくみによる体重増加も起こることがあります。顔がむくむことで、体重以上に自らの受ける印象として「太った」と感じる方も多いようです。

橋本病の原因-自己免疫疾患のメカニズム

橋本病の原因は、自分を守っているリンパ球などの免疫系に異常が起き、自らの細胞を攻撃してしまうことで起こります。このような病気の総称を「自己免疫疾患」と呼びます。橋本病を発症すると、甲状腺組織の中には多くのリンパ球が侵入し、甲状腺細胞が壊されてしまいます。

橋本病の発症原因は遺伝やストレス、妊娠?

橋本病は、遺伝的素因環境的素因が重なり合って発症すると考えられています。ですから、遺伝との関連性はあるといえますが、ご家族に患者さんがいたとしても必ず発症するというものでもありません。

免疫反応が強く現れる原因には、過剰なストレスを受けることや、妊娠・出産などがあり、実際にこれらを機に発症したり、状態が悪化する方もいます。

しかしながら、現時点では決定的な発症原因は解明されていません。

血液検査の結果の見方、橋本病の診断

症状などから橋本病の可能性が疑われるときには、血液検査を受けることとなります。

甲状腺の病気はFT4、FT3、THSをみる

  • TSH…脳下垂体から出る甲状腺刺激ホルモン
  • FT3(遊離トリヨードサイロニン) …甲状腺ホルモンの量
  • FT4(遊離サイロキシン)…甲状腺ホルモンの量

橋本病の場合は、FT3とFT4が基準値より低く、TSHが高くなります。くわえて、自己抗体であるTgAb(抗サイログロブリン抗体)とTPOAb(抗ペルオキシダーゼ抗体)は陽性を示します。

血液検査のほかに、超音波検査や細胞診を行っている施設もあります。

橋本病の治療と薬の副作用

橋本病と診断を受けた場合でも、たとえばTSHが10未満などと低く、軽症と判断されれば経過観察となることもあります。

橋本病の治療法は、甲状腺ホルモン製剤を内服する「薬物療法」で、具体的にはレボチロキシン(以下、チラーヂンS®)という薬剤を用います。

チラーヂンS®の内服量 いつまで飲めばいいの?

チラーヂンS®の内服量は、症例により異なります。一般的には少ない量(12.5~25μg)から飲みはじめ、少しずつ量を増やします。これは、心臓に負担をかけないためです。

服用回数は1日1回です。

多くの患者さんは服用から1~2か月で血液所見が正常になり、自覚症状からも解放されます。しかし、内服を中止すると再び状態が悪化してしまうこともあるため、長期の服用を要することもあります。薬をやめられるのか否かは経過により異なるため、一概にはいえません

チラーヂンS®の副作用

量が多すぎると動悸や不整脈、手の震えや発汗が現れるため、内服量は定期的な血液検査の結果をみつつ決定することが大切です。

このほか、食欲不振や吐き気、体重減少やめまい、イライラや不安感、発疹やかゆみが副作用として知られています。

重篤な副作用には、狭心症や肝臓疾患(尿の色が濃くなる、皮膚や白目部分が黄色くなる)、急性副腎不全(副腎クリーゼ)がありますが、頻度は稀です。

重い副作用は治療初期に現れやすいため、胸に痛みや違和感を覚えたり、強い倦怠感などが現れたときにはすぐに医師に相談しましょう。

橋本病と食事-ヨードの摂りすぎに注意

橋本病の悪化の一因といわれる「ヨード」海藻類に含まれています。海藻類を食べること自体は問題ありませんが、過剰摂取にならないよう、バランスよく規則正しい食生活を心掛けることが大切です。

妊娠や出産時と橋本病-妊娠中でも薬を飲み続けること

妊娠中(特に初期)や産後は特に甲状腺ホルモン値が変動しやすい時期です。安全で健康な妊娠・出産のためには甲状腺ホルモン値を正常に保つことが極めて重要ですので、チラーヂンS®の服用を続け、1~2か月間隔で通院しましょう。

妊娠中の薬剤服用には抵抗を感じる方も少なくはありませんが、橋本病の場合は薬を飲むことが母子の健康のために不可欠です。

チラーヂンS®はもともと私たちがもつホルモンと同じものですので、胎児や母乳にも悪影響はありません。実際に多くの橋本病を持つ女性が薬を飲むことで、無事妊娠・出産されています。

※橋本病と妊娠について、また薬を続けないことのリスクについてより詳しく知りたい方は、横浜労災病院の杉澤千穂先生による『甲状腺機能低下症(橋本病)と妊娠、日常生活の注意点』をご覧ください。根拠に基づく正しい情報が得られます。
https://medicalnote.jp/contents/150713-000004-MPKSCQ

橋本病は完治する病気なのか

「橋本病は治るのか?」「一生付き合っていくもの?」という疑問に対し、インターネット上では根拠のない様々な情報が交錯しています。益々混乱してしまう人も多いでしょう。


横浜労災病院の杉澤千穂先生は、以下の記事で「きちんと薬を飲めば甲状腺ホルモンは十分にコントロールできます。「薬を完全にやめられるのか?」という点については完全に経過は人それぞれです。甲状腺ホルモン製剤の内服をやめられる方もいますが、経過によってはやめられない方もいます。」と述べられています。
こちらの記事には横浜労災病院における詳細な治療法も掲載されています。

『甲状腺機能低下症(橋本病)の治療。レボチロキシン(チラーヂンS®)の内服』
https://medicalnote.jp/contents/150713-000003-UDLNDV

橋本病、ダイエットしてもいいの? 

橋本病は女性に好発する病気で、なおかつ体重増加がみられるため、「なんとかダイエットをしたい」と悩まれる方ももちろんいます。しかし、自己判断によるダイエットは病身に無理をさせてしまうことになりかねません。特に治療の初期はチラーヂンS®の量が体に合っているか、心臓に負荷がないかをみている大切な時期ですので、急激に食事を制限したり激しい運動を開始するのは控えましょう。

まずは医師に相談し、指示に従いながら、ご自身の体にとって適切なタイミングで適度な運動をしていきましょう。


■甲状腺の病気の記事一覧


甲状腺疾患に関する情報を探している方は、次の記事をご覧ください。(全て医師執筆・医師監修)

●『甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は女性に多い病気―概要・原因・検査』
https://medicalnote.jp/contents/150707-000014-CEKQSO

●『甲状腺がんとは-先進国で増えるがん』
https://medicalnote.jp/contents/151029-000050-BNQKGL

●『甲状腺クリーゼとは 甲状腺中毒症をベースにした難病』
https://medicalnote.jp/contents/160222-047-JA

●『甲状腺機能低下症(橋本病)とは』
https://medicalnote.jp/contents/150713-000001-HYYQUF

小林 裕貴

小林 裕貴先生

横浜市立大学大学院医学研究科 病態代謝内科学 博士課程 / 横浜市立大学附属病院 循環器内科

初期研修後、循環器内科医として臨床経験を積むかたわら大学院へ進学し、ウェアラブルデバイスによるバイタルデータ測定・またそれらと生活習慣病の関連について研究を行う。2015年からはメディカルノートにも参加し、メディア統括を務める。Choosing Wisely Japan発起人。

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