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不整脈と心房細動とは?高周波カテーテルアブレーションによる治療や術後の合併症などを専門医が解説

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  • 公開日:2016/09/05
  • 更新日:2017/01/14
不整脈と心房細動とは?高周波カテーテルアブレーションによる治療や術後の合併症などを専門医が解説

目次

不整脈とは?

心筋梗塞

 

健康診断などで、「不整脈があるので再検査をするように」などといわれて心配になった方も多くいるのではないでしょうか。そもそも不整脈とは一体どういったものなのでしょう。不整脈とは、心臓を流れる電気信号の異常により心拍数に異常をきたしたり、リズムの乱れを生じるものを指します。絶対に治療が必要なものからそうではないものまで様々な病気が含まれます。まずは、正常な心臓の電気信号の作り方と不整脈の仕組みについてそれぞれご紹介します。

正常な心臓の電気信号の作り方

心臓には、血液を受けるための上部の部屋「心房」と血液を送り出す下部の部屋「心室」が左右にひとつずつ、合計4つの部屋があります。右心房の洞結節でつくられた微量の電気が、刺激伝導系という経路を伝い心房から心室に伝達されます。そして、この電気刺激が心臓の筋肉(心筋)に伝わり、拍動が生じることで全身へ血液が運ばれます。

心臓の電気刺激伝導と心電図波形

 

心房と心室の間には房室結節という中継点のような場所があります。この房室結節は心房の収縮の後、時間差で心室の収縮が起こるように、電気信号をうまく遅らせながら心室に伝える役割があります。

拍動は1分間で60回~80回ですが、これは洞結節が電気信号のリズムを作り、それを房室結節がきちんと1:1に伝導することで成り立っています。

不整脈が起こる原因

不整脈は、この電気信号がうまく発信あるいは伝達しなかったり、別の場所から電気が流れてきてしまうことをきっかけに、心筋が異常な電気的興奮をきたすことで起こります。

●3つの種類の不整脈

不整脈は大きく次の3種類に分かれます。

「期外収縮」− 脈がとぶ

「頻脈」− 脈が速くなる

「徐脈」− 脈が遅くなる

実は、不整脈は『病気の名前』ではありません。『病態』を現したものです。また、手首を触って数える脈拍とは違い、心電図検査、血液検査、胸部X線、運動負荷心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査などの検査で調べます。誰にでも起こる生理現象のようなものから、命にかかわるものまであります。中でも健康診断などでよく発見される「期外収縮」は治療が必要ないケースが多い不整脈です。「徐脈」や「頻脈」は、治療が必要とされることも多く、特に心臓弁膜症、虚血性心疾患、心不全など心臓に持病がある場合、これら不整脈には注意が必要です。

不整脈の症状

心臓の電気信号のリズムに乱れがあるからといって必ずしも自覚症状があるわけではありません。

心臓などに持病がある人以外は、健康診断などで指摘されてはじめて、自分が不整脈であると知るケースも少なくありません。

脈が遅くなると、息切れ、立ちくらみ、めまいや一過性の失神などの症状が起こり、脈が速くなると、吐き気や動悸、冷や汗、めまいなどの症状が起こることがあります。

不整脈の治療方法

健康診断などで不整脈の指摘があった場合、循環器内科で治療が必要かどうか調べてもらいましょう。内服治療や、必要に応じてペースメーカーやカテーテルアブレシーションなどの手術が必要となります。

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治療が必要な不整脈について

不整脈でもっとも危険なものは、『突然死を起こす可能性がある不整脈』です。

突然死を起こす可能性がある不整脈として以下が挙げられます。

●致死性不整脈

●準致死性不整脈

また、命を脅かすほどの危険性はないものの、自覚症状が強く生活の質を下げてしまう不整脈や、脳梗塞や心不全につながりうる不整脈も治療の対象になります。

致死性不整脈

不整脈の中で最も重症度が高く、治療を行わないと短時間のうちに生命に危険を及ぼす可能性のあるものです。致死性不整脈が現れた場合には、早急に治療を開始する必要があります。

致死性不整脈には、以下があります。

「頻脈性不整脈」— 持続性心室頻拍、トルサード・ド・ポワンツ、心室細動

「徐脈性不整脈」— 完全房室ブロック、洞不全症候群

持続性心室頻拍の原因は、心筋梗塞、心筋症、特発性のものなどがあり、トルサード・ド・ポワンツの原因は、QT延長症候群、先天性、薬剤によるものなどがあります。また、心室細動の原因は心筋梗塞、心筋症、Brugada症候群、特発性のものなどがあります。

準致死性不整脈

不整脈そのもので死に至るほど重症ではないものの、治療をせず長時間放置することによって血液の流れが悪化し、死亡することのある不整脈です。持病をもっている人に起こりやすく、やはり詳しい観察と治療が必要です。

準致死性不整脈には、以下があります。

「頻脈性不整脈」— 心房粗動の1対1伝導、肥大型心筋症における頻脈性心房細動、WPW症候群における頻脈性心房細動(偽性心室頻拍)

「徐脈性不整脈」— 急速に進展する三枝ブロック、発作性完全房室ブロック、Mobitzll型の第2度房室ブロック

強い自覚症状がある不整脈

直接命にかかわることはありませんが、動悸などを強く感じ日常生活に支障がでてしまうような自覚症状が強い不整脈です。

自覚症状がある不整脈には、以下があります。

「頻脈性不整脈」— 心室性期外収縮、多発性上室性期外収縮、発作性上室性頻拍、発作性心房粗動、発作性心房細動

「徐脈性不整脈」— 発作性洞停止、徐脈頻脈症候群

心不全や脳梗塞を起こす危険性のある不整脈

極端な頻脈(1分間130拍以上)がある場合や、極端な徐脈(40拍以下)が長時間続くことにより心筋に負担がかかり、心不全を引き起こす危険性があります。このとき、もともと心臓病がある場合はとくに心不全を誘発しやすいです。また、基礎心疾患がない場合でも、長期の頻脈により「頻脈誘発性心筋症」と呼ばれる強い心不全が起こることがあります。

心不全を引き起こす可能性のあるものとして以下が挙げられます。

「頻脈性不整脈」— 心室頻拍、接合部頻拍、心房粗動、頻脈性心房細動、上室性頻拍、洞性頻脈

「徐脈性不整脈」— 洞性徐脈、洞房ブロック、房室ブロック

脳梗塞は、心房細動が原因となり起こることがあります。高齢者の脳梗塞は動脈硬化が主な原因となる場合が多いですが、不整脈による脳梗塞は比較的若い人に発症することがあります。

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心房細動とは代表的な不整脈の一つ

心房細動は、代表的な不整脈の一つです。前述の通りそれ自体が致死的なものではなく過度に怖がる必要はありませんが、脳梗塞や心不全になるリスクがあります。とくに糖尿病、高血圧などがある人や高齢者の場合、リスクが増大します。「タバコを吸うとがんになりやすい」といように、「心房細動があると脳梗塞や心不全になりやすい」という形で、心房細動を理解するとよいでしょう。

2003年の日本循環器学会の調査によると心房細動の有病率は、70歳代で男性3.44%、女性1.12%、80歳以上の場合は、男性4.43%、女性2.19%との報告がされており、決して珍しい病気ではないことがわかっています。心房細動は高齢になるほど発症率が高いため、老化が一番の原因であることもわかっています。

通常の心臓リズムと心房細動

通常は、心房から心室への電気刺激は1対1で伝わり、心房と心室が一定のタイミングでずれながら効率的に収縮します。その結果、心臓の拍動が正しいリズムでおこなわれ、血液が全身へと運ばれていくのです。このリズムは「洞リズム」と呼ばれています。正常の場合、洞結節から心室にむかって一方向に流れるのですが、心房細動では、洞結節以外の場所に発生した異常電気信号により、3-4つほどの電気信号の渦を作ってしまします。

心房細動の発生器所(電気の渦)

電気信号により心房は収縮するので、渦ごとに心房が収縮することとなります。つまり、心房の部分がばらばらに収縮します。正常時は心房が全体で1分間に60-80回の収縮をしているわけですが、この渦は1分間に350-500回の収縮を起こし、ばらばらに収縮しているため、心房は小刻みに震えている状態になります。この状態を心房細動と呼びます。

ちなみに、心房細動で心房の収縮が異常に増えても、心室が同様になることはありません。なぜなら、たとえ心房と心室の1:1拍動の関係が崩れても、心室への電気信号は房室結節を通って伝わっていく必要があるからです。房室結節は一人ずつしか通れない「吊り橋」のような構造になっていて、電気信号を一拍ずつしか伝えません。この仕組みのおかげで、心房細動自体は致死的な不整脈にならないのです。とはいえ、心室へ伝わる電気信号が1分間に100回を超えると動悸や脈の乱れを自覚しやすくなります。

心房細動が心不全や脳梗塞を引き起こす理由

 

それではなぜ心房細動は心不全の原因となるのでしょうか。心房細動が起こると、心室から送り出される1回の血液の拍出量が30%程度低下してしまうことがわかっています。それだけではなく心房細動が続き、心室の拍動が多い状況が続くと、心臓が疲れ心不全を起こすリスクが高くなります。

一方、脳梗塞はどうでしょうか。左心房の一部に左心耳という箇所があります。心房細動が起こると心房の収縮性の低下により、左心耳の血流が停滞し血液が固まり、血栓ができやすくなります。このようなどこかで形成された血栓がとんでいき詰まってしまうことを「塞栓症」と呼びます。そして、この血栓が脳動脈に詰まると脳梗塞を引き起こします。塞栓症による脳梗塞はそうでない脳梗塞に比べても、非常に梗塞範囲が大きくなりやすいことがわかっています。

しかし、ここで重要なことは、血栓ができたからといって、それが必ずしも「脳梗塞」につながるとは限らない点です。

心臓から大動脈へでた血栓がたまたま頭部に詰まると「脳梗塞」になります。また、頭部の動脈を通り過ぎ、腹部の動脈に詰まって、さらに重篤な状態になることもあります。しかし、心房細動になっても「脳梗塞」にならない人の方が圧倒的に多いので、過度に心配する必要がないことを理解しておきましょう。

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心房細動の3種類について

心房細動は、持続時間などの違いから以下の3種類に分類されます。

・発作性心房細動

・持続性心房細動

・永続性(慢性)心房細動

発作性心房細動

発作性心房細動とは、発作自体は数秒~7日以内で治まりますが、またしばらくすると発作が起こる状態です。

若い人や初めて発作を起こした場合は、動悸や違和感といった強い症状が生じやすいですが、全体の40%は無症状ともいわれています。

発作の症状があるときに心電図検査をすれば、心房細動を示す波形になるため確認することができます。発作が起こっていない時に検査をする場合、24時間心電図の測定ができる「ホルター心電図」での検査をおこないます。異常が認められた場合、心疾患や甲状腺疾患などの基礎疾患を持っているか、今後、心不全や脳梗塞を引き起こすリスクがどのくらいあるかなどにより、治療方針を決めていきます。

治療には、脳梗塞を予防するために「抗凝固療法」という血液を固まりにくくする薬、不整脈治療薬、発作時の脈を緩やかにする薬、発作時に心房細動を止める薬の服用などを用います。また、「高周波カテーテルアブレーション」という、心房細動の原因となる仕組みから心房を隔離するためのカテーテル手術を行うこともあります。成功すれば脳梗塞の予防のために薬を内服する必要がなくなることが期待されます。

「徐脈頻脈症候群」で心房細動が停止したときに心拍の停止や極度に遅くなる症状がある場合は、失神、心停止、突然死を避けるためにペースメーカーの植え込みがおこなわれます。

持続性心房細動

持続性心房細動は、症状が7日以上続いて自然に治まらないものを指します。

以前の治療法では、症状がつらい場合、抗凝固療法で脳梗塞を予防した後に、不整脈治療薬や電気ショックによって心房細動を止める方法が中心でした。

しかし、臨床実験の結果などから、心房細動を止める治療法が必ずしも良いとは限らないことがわかってきました。そのため、現在の治療は、脈をゆっくりと適正な範囲にしていく治療や、抗凝固療法のみを行うことが一般的です。また、カテーテルアブレーション術が行われることもあります。

永続性(慢性)心房細動

永続性(慢性)心房細動とは、薬物の服用や電気ショックなどでも心房細動を止めること(除細動)が難しい状態を指します。

発作性心房細動が永年性(慢性)心房細動に進行していく要因のひとつに老化現象があります。

高齢になるとより慢性化し、動悸や不快感などの自覚症状があまりなくなってくる傾向もあり、検診や他の病気での入院の際に行われた心電図検査などで発見されることも多いです。

この場合の心房細動は症状を止める見込みがないため、心房細動を止める薬の服用や、電気ショックは行いません。また、カテーテルアブレーションでも施設間の成績に差はあるものの、一般的には十分な効果が見込めません。

高齢者であるほど心不全や脳梗塞のリスクが高くなるので、血液を固まりにくくする薬を服用する抗凝固療法や、脈が速くなることを防ぐ薬を用いるといった治療が中心となります。

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心房細動の原因

心房細動は若い人から高齢者まで、多くの人に発症リスクのある病気です。また、基礎疾患が要因となるものや、ストレスなど生活習慣が要因となるものなど心房細動を発症する原因も様々です。
心房細動を発症する代表的な原因は次のとおりです。
 

「心疾患」
狭心症、心筋症、心臓弁膜症、心筋梗塞など心臓に基礎疾患がある場合、日常的に心臓機能に負担がかかっているため不整脈が起こりやすく、心房細動を発症するリスクが高くなります。

「高血圧」
高血圧の状態が続くと血管内の圧力が常に高い状態となり、血管内の細胞に負荷がかかります。それが原因となり動脈硬化がすすみます。心房においてはリモデリングとよばれる筋肉の変性がすすみ、心房細動が起こりやすくなります。日本では高血圧疾患をもっている人が多いため、高血圧と心房細動を併発している人も少なくありません。

「生活習慣」
偏った食事や不規則な生活などを続けていると、高血圧をはじめ高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の原因になります。生活習慣病があると心房細動が起こりやすくなります。また、生活習慣病を有していると脳梗塞になる可能性も高くなります。

「加齢」
心房細動は、年齢を重ねるごとに発症率も上がっていき、70歳代で5%、80歳代で10%という発症率のデータもあります。
高齢になると心筋が繊維化するため、若い頃に比べ心臓の構造がもろくなり、それが原因となって心房細動を発症しやすくなります。

「自律神経」
高齢者だけでなく若い人にも心房細動は発症します。
不規則な生活習慣や過労、ストレスなどで自律神経の乱れが生じます。
自律神経のバランスが崩れることで、体調にも影響し、心房細動を引き起こす要因になることがあります。

「その他の要因」
甲状腺機能亢進症など内分泌系の基礎疾患がある場合も心房細動を起こしやすい要因になります。
健康な人でも、過度な飲酒や不眠、貧血状態であったり、発熱や脱水症状を起こしていたりすると、心房細動を引き起こすことがあります。
遺伝との関係は一部確認されている段階で、現在研究が続けられています。

孤立性心房細動とは?

心房細動が起こる原因を列挙しましたが、心疾患など原因となる基礎疾患があって起きる心房細動と、それ以外の要因による心房細動があります。そして、基礎疾患がない状態で発症するものを特に「孤立性心房細動」と呼びます。
 

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心房細動の症状

最も頻度が高い心房細動の自覚症状は「動悸」です。脈を計ってみると一定のリズムになっていない不規則な脈拍となります。動悸の他に、立ちくらみ(めまい)、胸の痛みや胸部の不快感、だるさなどの倦怠感があります。症状が強く現れる場合、日常生活に支障が出てしまうこともあり、症状の現れ方にはかなり個人差があります。

比較的、初期の心房細動の方が強い症状が現れることが多く、高齢者などの慢性心房細動では、症状をほとんど感じないという人が増えていきます。慢性化すると自覚症状が現れにくくなりますが、だからといって、決して改善されたわけではありません。

長期に渡る心房細動により血栓が作られ、血液の流れに乗って血栓が運ばれ脳の血管を詰まらせると脳梗塞が起こります。脳梗塞が起こると、血管が詰まった場所により手足の麻痺や言語障害などが起こったり、突然呼吸することができなくなったりするなど命にかかわる危険性もあります。

一方、自覚症状がない心房細動もあります。自覚症状がなくても、心電図検査によって心房細動の波形が見つかることがあります。

先にも説明しましたが、心房細動自体が命にかかわるというよりは、長期間心房細動の状態が続くことで、心臓の機能が低下し心不全を引き起こしたり、心房細動によりできてしまった血栓が脳血管に詰まって脳梗塞を発症したりするリスクが高くなることが問題です。

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心房細動の検査

無症状の方の心房細動の検査には、心電図のほか、甲状腺ホルモンの異常を調べたり、血液検査などがおこなわれます。

ここで、一般的な検査方法から、最新の検査方法や心エコー検査についてご紹介しましょう。

心電図検査

心電図検査は、心房細動を発見するための基本的な検査です。

慢性心房細動で自覚症状をあまり感じることのない場合でも、心電図検査をすれば心房細動を発見することができます。心臓は、血液を体全体に行き渡らせるため、微弱な電流を発生させて収縮と拡張を繰り返しますが、心電図はその電気的波形を記録し心臓の動きをみていきます。胸の部分に6ヶ所、両手首、両足首の4ヶ所に電極を付け、心臓から発生する電流を機械が感知していきます。心電図検査では、狭心症、心筋症、心筋梗塞、甲状腺機能障害などの影響、電解質(カルシウム・カリウム)の異常、心臓の拍動リズムの乱れ(不整脈)などがわかります。

心房細動の心電図は、心房が興奮状態になることで、波形が不規則に細かくf波はさざ波のようになり、基線は小刻みに震えるようになり直線にはなりません。正常な場合にみられるP波が確認できなくなり、大きな波の起こる間隔も不規則になります。

ホルター心電図検査

24時間の心電図を記録することができる検査方法です。

医療機関で一時的に測定する心電図と違い、24時間連続で記録されるため、短時間ではわからない不整脈などを発見することができます。

胸の部分5ヶ所にシールの電極を貼り、それをコードで小型心電計とつなぎ、心電計をベルトで腰に巻きつけ24時間装着します。ホルター心電図装着時はシャワーや入浴はできません。行動記録用紙に、食事、トイレ、運動、不整脈の自覚症状、睡眠など行動を細かく記入します。

イベント心電図検査

近年開発されたもので、通常の生活をする中で動悸などの自覚症状が現れたときに、スマートフォンくらいの大きさの機械(イベント心電図検査)を胸に当てることにより心電図を測ります。

この結果を病院で分析することにより、頻度の少ない心房細動を発見することができます。

自覚症状がないという人には、体外式ループレコーダ(ELR)という心電計を使用することもあります。

心エコー検査

心臓超音波検査ともいわれ、心房の大きさ、心臓の機能が低下していないか、血の塊ができやすい状態になっているかどうか、血栓があるかどうかなどを調べます。

経食道心エコー検査

心エコー検査だけでは確認できない血栓もあります。

血栓ができている疑いがある場合は、経食道心エコー検査も合わせておこないます。この検査は、からだの内側から心臓の状態を確認できるため、血栓の大きさや位置など詳しく調べることができます。

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心房細動を疑ったら、自分でできる自己検脈の有用性

自己検脈(高橋先生提供画像)
自己検脈の方法(画像提供:高橋淳先生)

心房細動は約40%の人が症状なく発症しているとされます。そんな中で自身で心房細動に気づくために有用なのが自己検脈です。指3本(人差し指、中指、薬指)の指先で手首の動脈を触ることで、脈の乱れがないかをチェックします。心房細動の特徴は、なんといっても「脈が不規則に乱れる」ことであり、この方法はとくに心房細動治療中に再発しているかどうかを調べるのに有効です。これを行う有用性があるかどうか、またあるならば詳細な方法はかかりつけ医に指導してもらうとよいでしょう。

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心房細動の治療とその考え方

心房細動そのものは、死に至る類の不整脈ではありません。しかし、心房細動が生じることで心房内に血栓ができる可能性が高まり、塞栓性の脳梗塞につながる危険性が高まるのは先に述べた通りです。また、頻脈が持続することで心室の筋肉が疲弊してしまい、心不全を引き起こすリスクが高まります。そうでなくとも動悸や脈の乱れ、めまい、胸の違和感などの自覚症状によって生活の質を低下させるという問題点もあります。
そのため治療にあたっては、

・心不全や脳梗塞のリスク低下
・生活の質の向上
・基礎的な疾患がある場合(高血圧や心臓弁膜症など)はその改善

といったポイントを多面的に考慮し、方針を決めていくことになります。

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心房細動はどんな時に治療が必要?

 3種類の心房細動、それぞれの治療方法は以下です。

 発作性心房細動の治療ー高周波カテーテルアブレーション

発作性の場合は、心拍数を減らしたり心房細動を停止する効果のある薬剤を用いた内服治療をおこない、薬によってもしくは自然に心房細動が停止するのを待つのが一般的です。薬物療法によって発作の頻度を減らすことも期待できますが、せいぜい50%程度の症例でしか効果が期待できません。また年々加齢とともに効果は低下していきます。そういった背景もあり、まずは脳梗塞発症のリスクを評価した上で必要に応じて、血液をサラサラにする抗凝固療法を行うことが基本です。とはいえ抗凝固療法も決してリスクを0にするわけではなく、薬による出血などの合併症も考慮しなければなりません。様々な観点から脳梗塞のリスクの背負い方、減らし方を検討することが発作性心房細動治療のポイントといえます。

そんな中で根治を目指す場合は、高周波カテーテルアブレーション(心房細動の原因となるメカニズムから心房を隔離する心臓カテーテルによる治療)が選択されることも多くなってきました。

アブレーション手術風景
アブレーション手術風景

 持続性心房細動の治療

内服薬

 

持続性の場合も発作性と同様に内服治療が中心になります。

ゆっくりと時間をかけて心拍数を正常範囲に戻していくことを目指しますが、 症状が強い場合は電気ショックを用いて迅速に心房細動を止める場合もあります。

根治を目指す場合は、カテーテルアブレーション(心房細動の原因となるメカニズムから心房を隔離する外科的治療)が行われます。

慢性心房細動の治療

慢性の場合は電気的、または薬物的に心房細動を止めることができない状態です。

そのため、心房細動自体を止める治療はおこなわず、 心房細動によりリスクの高まる心不全と脳梗塞を予防するための内服治療が一般的です。近年では、高齢の患者も多く先に述べたようなリスクをどう背負うかという考え方から積極的な薬物治療などはおこなわず、経過を観察することも増えてきています。

一方、慢性心房細動についてもカテーテルによる根治術が試行錯誤されています。これまでは困難とされてきましたが、治療法の進化とともに一般的に行われる時代がくるかもしれません。

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心房細動の抗凝固療法とは?ワルファリンとNOAC

心房細動が生じると、頻脈(ひんみゃく)と呼ばれる状態に陥りやすくなります。先に述べた通り心房細動の電気信号は、心室へ伝わる際に房室結節という吊り橋を通る必要があるため、心室の動きが止まってしまうような頻脈を引き起こしません。しかしそれでも房室結節の電導性が良いほどに、高頻度で心室への電気信号を伝えてしまうことになるからです。つまり、心房細動によって激しい運動をしたときと同じような速い拍動が長い時間続くことになります。

このような状態を放置し長期にわたって続けてしまうと、心臓にかかる負担は大きくなり、心不全にかかるリスクが高くなります。塞栓性の脳梗塞発症リスクが高まることについても前述した通りです。心房がリズムよく収縮しない状況では、左心耳に血栓が形成されやすくなってしまいます。これが飛んでいくと、脳梗塞はじめ全身の塞栓症の原因となるのです。

心房細動を治療するにあたっては、上記2大リスクの回避が最重要となってきます。どちらのリスクがより高いかは患者さんそれぞれによって異なっており、既往症(高血圧、肥満、糖尿病など)とのバランスをみながらきめ細かく治療方針を決めていきます。

その中で全ての患者さんに対し、最初に検討される治療法として抗凝固療法があります。

抗凝固療法とは、血栓の発生を予防することで、脳梗塞をはじめとした塞栓症が起こりにくくする治療法をいいます。

抗凝固療法で歴史的に長く主に使われてきた薬にワルファリンがありますが、近年、NOACと呼ばれる新薬も使われるようになってきました。これらの薬は血液をサラサラにする効果があり、これによって血栓ができにくくなります。それぞれの薬に特徴があるため、主治医とよく相談した上で薬剤を決める必要があるでしょう。

当然ですが飲み忘れると狙った効果が得られませんし、ワルファリンにおいては適切な内服量を定期的な血液検査で調整したうえで、きちんと内服していく必要があり、自己管理が非常に重要となります。また、ワルファリンはビタミンKによって効果が阻害されることがわかっていますので、それを含んだ食品(納豆やブロッコリーなど)を食べないといった制限を行う必要もあります。

さらに、血液をサラサラにすることで血が止まりにくくなるため、大怪我をしたり、出血性の疾患で身体に出血を生じたりした場合、出血が止まらず命にかかわる可能性があるという大きな問題をはらんでいます。

そのため、投薬はCHADS2スコア(脳梗塞リスクの高さ指標)などを含めた「心房細動治療(薬物)ガイドライン」を参考にしながら、医師がひとりひとりの患者さんの状態を慎重に判断した上で、適切な容量や薬の種類などを決めていきます。

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心房細動のカテーテル治療 高周波カテーテルアブレーションとは?

心房細動に対する高周波カテーテルアブレーション

心房細動と診断された場合、まず投薬治療を行うことが一般的です。投薬であればすぐに始めることができ、軽度の場合はそれで症状が落ち着くことも十分考えられます。発作性心房細動では約50%の患者さんでは、抗不整脈薬とよばれる薬で心房細動の発症を抑制することができるとされています。しかし残りの50%には効果がなく、そのうえ年々効果は低下していきます。心房細動自体、一番の発症の原因が動脈硬化=老化ですので、薬物療法だけで根治を狙うことは困難なのです。

心房細動を発症している人は、普通の人よりも脳梗塞など塞栓症発症のリスクを背負い、投薬治療もリスクを0にしてくれるわけではない。そんなジレンマに立ち向かうべく進歩してきた治療が「高周波カテーテルアブレシーション」です。

カテーテルアブレーションは、足のつけ根などの太い血管からカテーテルを通して心臓まで到達させ、心房細動の引き金となっている筋肉の細胞を高周波電流で焼き切る手術のことをいいます。手術時間は3~6時間程度ですが、局所麻酔で施術でき、また体にメスを入れないため、患者さんの負担が少ないという利点があります。

しかしこのカテーテルアブレーションはすべての心房細動に有効なわけではありません。発作性の場合であれば、この治療法によって治療成績がよい施設であれば8~9割の患者さんに効果が期待できますが、持続性や慢性になると効果6~7割に下がってしまいます。また非常に難しい技術なので「術者、施設によって成績がばらつく」ことも課題です。今日ではそのばらつきを少なくすべく、とくに発作性心房細動のアブレシーション治療については様々な技術革新が起こっています。

「クライオバルーンアブレーション」とよばれるような治療法もその一環ですが、発作性心房細動が心房内でどのように発生するか、という点を考えると過度な期待はできない治療と考えています。クライオバルーンがターゲットとする、肺静脈周囲から発生する心房細動の異常な電気信号は、発作性心房細動の原因としてせいぜい全症例の7割ということがわかっているからです。成功率を上げるためには、残り1-3割の原因であるその他の場所から発生する電気信号を、経験豊富な術者が探し出し筋肉を焼灼していく必要性があります。

またカテーテルアブレシーションを行い根治した患者も、一部の効果しか出なかった患者も、食生活の改善や基礎疾患の治療なども含め、心房細動を起こしたり、悪化させたりするような原因をひとつひとつ解決していく必要があります。これは心房細動の最大の原因が老化である以上、避けては通れない大きな治療の柱です。

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高周波カテーテルアブレーションの適応と目的

心房細動に対するカテーテルアブレーションは、特殊な医療機器を使用しなければならず、また手技が難しいため、安定した成績を得るためには術者やアブレーションに関わる医療スタッフに一定の経験が必要です。そのため、日本循環器学会のガイドライン(カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン)では、心房細動カテーテルアブレーションのクラスI適応(有益/有効であるという根拠があり、適応であることが一般に同意されている)をいかのように限定しています。すなわち「高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず、かつ重症肺疾患のない薬物治療抵抗性の有症候性の発作性心房細動で、年間50例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行われる場合」です。

アブレーション手術風景
アブレーション手術風景
アブレーション手術風景
アブレーション手術風景

持続性心房細動、左房拡大や左室機能低下を認める症例では、肺静脈隔離に加えて種々の追加焼灼が必要であるとともに上記適応症例と比較し成績が劣っているため、経験豊富で治療成績の良い施設でアブレーションを受けることが望ましいと考えられます。

心房細動アブレーションの最大の目的は、正常な脈を維持し、心房細動のために低下した生活の質を改善させることにあります。

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高周波カテーテルアブレーションの合併症

心房細動に対するカテーテルアブレーションは、外科的心臓手術に比較するときわめて安全な治療法ではありますが、心臓の中にカテーテルを挿入し心臓の筋肉を焼灼する手技であるため、十分な注意をしていても合併症が発生する場合があります。多くの合併症(心嚢液貯留あるいは心タンポナーデ:1~2%、末梢血管合併症:0.1~0.2%、横隔神経傷害:0.1~0.2%)は、適切な処置を施せば問題ありませんが、重篤な合併症(脳血栓塞栓症:0.1~0.4%、死亡:0.02以下)も低頻度に認められます。近年、合併症の予防や対策が進んでおり、頻度が減少していますが、施設間で差があるため、アブレーションを受けられる個々の施設での頻度や対策に関して説明を受けられることをお勧めいたします。

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高周波カテーテルアブレーションの術後に注意すること

心房細動に対するカテーテルアブレーションを受け、退院後はすぐに通常の生活に戻れるのが本治療の利点ではありますが、1週間程度はカテーテル挿入部位(特に太ももの付け根)に過度な力が加わる激しい運動は避けたほうが無難でしょう。まれに同部位の内出血を起こすことがあるからです。

アブレーション後数ヶ月は、ある程度の頻度で心房細動が再発する場合があります。心房細動の再発自体は危険なものではありませんが、再発した時に脱水状態にあると、脳梗塞を発症するリスクが増加しますので、脱水を回避する生活を心がけることが重要です。例えば、脱水を回避できない競技スポーツやサウナはしばらく避けたほうが無難でしょう。また、過度な飲酒も脱水の原因となりますので注意が必要です。

また、アブレーションにより心房細動発作がなくなっても、前述した心房細動の原因(生活習慣病等)を有している方は、それぞれの疾患の治療継続が、長期的な新たな心房細動発症の予防に効果的です。

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高橋 淳

高橋 淳先生

横須賀共済病院 副院長

世界で初めて心房細動に対するカテーテルアブレーションを開始したフランス・ボルドー大学に留学し、1998年に帰国後、国内に本治療法を導入した。上下の肺静脈をまとめて焼灼する「拡大肺静脈隔離焼灼術」を考案し、心房細動アブレーションの成績を引き上げ、現在、年間1000件近いカテーテルアブレーション治療を行っている。

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