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公開日 : 2016 年 09 月 05 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

心房細動治療のカテーテルアブレーションの歴史と最新技術ー技術進歩で手術の成功率も向上する?

目次

発作性心房細動の高周波カテーテルアブレーション、拡大肺静脈隔離術とは?

心房細動において、発作的に発症し数時間から長くても7日程度で発作が治まるものを「発作性心房細動」と呼びます。加齢とともに徐々に発作やその期間が長くなり、慢性的なものへと進んでいくことが多いです。心房細動の問題点は、自覚症状による生活の制限とともに脳梗塞や心不全発症のリスクが増すことでした。そのため、様々な治療が行われるわけですが、ここでは発作性心房細動のカテーテル治療について詳しく解説していきます。

不整脈のメカニズムとアブレーション法

不整脈は、正常な電気信号発信部位以外の場所からの「規則的な異常電気信号の発信」あるいは、筋肉や刺激伝導系(電気信号を心臓全体に伝える通り道)を介した「電気信号の渦」によるものです。カテーテルアブレーションは、異常電気信号の発信源や電気信号の渦を探して高周波電流で焼灼することにより不整脈を治す治療法です。しかしながら、心房細動は3~4個の電気信号の渦が心房筋に発生し、その渦がさまようように移動してしまうため、カテーテルアブレーションで焼灼することができないとされてきました。

1998年にフランスの医師であるハイサゲール先生は、心房細動が不規則で早い連続的な異常電気信号により発生することを発見したのです。この発信源の多くは、左心房に4本開口している1~2cmの太さの血管(肺静脈:肺で炭酸ガスと酸素のガス交換を終えた血液を左心房へ送る血管)の周囲および肺静脈開口部から肺静脈内に数センチ迷入している心筋から発生することがわかりました。

当初、ハイサゲール先生は、この異常電気信号をカテーテルでピンポイント焼灼するアブレーション法を行っていましたが、4本の肺静脈のどの部位から発生するかを見つけるのが難しく、長期治療実績は約50%にとどまっていました。そこでハイサゲール先生は、4本のそれぞれの肺静脈開口部を囲うように焼灼し、肺静脈に迷入している心筋と左心房の心筋を隔離する個別肺静脈隔離焼灼を考案しました、これにより、肺静脈開口部から肺静脈内へ迷入している心筋からの異常電気信号を抑えこむことができ、成績が向上し世界中にこのアブレーション法が普及しました。

心房細動に対するカテーテルアブレーション

しかしながら、個別肺静脈隔離焼灼は4本の肺静脈開口部を各々焼灼するため、患者さんによっては肺静脈そのものが狭窄(きょうさく)してしまうことがあり、また焼灼した部位の周辺から発生する異常電気信号に関しては対応することができませんでした。

そこで、左右の肺静脈ごとに、上下二本をひとまとめに、より広い範囲を一気に焼灼してしまう「拡大肺静脈隔離焼灼」を高橋先生が考案されました。この方法により焼灼による肺静脈の狭窄を防ぎ、同時に広い範囲で異常電気信号の拡散を防げるようになったのです。

肺静脈解離術図解

拡大肺静脈隔離術は合併症を減らしつつ、成功率をさらに上昇させることに成功しました。確かに拡大肺静脈隔離術は優れた治療法ですが、肺静脈周囲の筋肉から発生する異常電気信号が心房細動の原因の7-8割にとどまる以上、これだけでは完璧な治療法とはいえません。今でも心房細動を起こす他の箇所からの異常電気信号に関しては、もぐら叩きのように部位を探してはピンポイント焼灼する方法がとられています。また拡大肺静脈隔離術そのものも決して簡単な治療ではありません。

アブレーション手術風景
アブレーション手術風景

年間で50例以上の治療を行い、熟練した術者が行うようガイドラインで定められているのですが、これはつまり「行う術者によって明確な差がでてしまう」ことを意味します。医療技術に進歩している日本において、このような治療はなかなか類をみないものです。最近は、術者を選ばない治療となるべくクライオバルーン、ホットバルーンアブレーションなどの技術革新ともいえるべき器具も話題を集めていますが、心房細動発生の部位を考えると従来の拡大肺静脈隔離術以上の成績を望める治療ではないことがわかります。

 

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心房細動のカテーテルアブレーション治療の成功率や再発率、これからの発作性心房細動治療

2016年現在、発作性心房細動のアブレーション治療では拡大肺静脈隔離手術が第一選択とされており、心筋の動きを乱す異常電気信号の発生源が肺静脈以外にある場合にはアブレーションによって当該部位を焼灼する方法が選択されています。この方法では、一回目のカテーテルアブレーションで約75%の方が治療できるものの、残念ながら残りの約25%が再発してしまいます。再発の原因として一番多いものは人工的に作った筋肉の火傷が治り、筋肉が復活することで再び電気を通すようになることです。

そして次に多いのが治療のときには確認できなかった他の部位からでてくる異常電気信号によって心房細動が起こることです。これらの方にもカテーテルアブレーションを複数回行えば約9割は治せるとされていますが、残りの約1割の方はどうしても難しいのが現状です。実際に心房細動を再発する確率については患者の体質や手術を実施した医療機関によって異なってきますが、完璧に治せるということはまずありません。

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永続性心房細動に対するカテーテルアブレーションの治療の今

発作性心房細動と永続性心房細動(慢性心房細動)の違い

発作性心房細動になると心臓の、特に心房と呼ばれる部位の筋肉が健常な方のものより働き続けることになります。心房細動が生じている期間が1年程度であれば、発作性心房細動の治療と同様のカテーテルアブレーション「拡大肺静脈隔離術」で治療することが期待されます。しかし、心房細動によって心房が働き過ぎの状態が1年以上継続してくると心筋に疲労が蓄積するため、心筋が電気的・解剖学的に変化してきます。こうした変化のことを心筋のリモデリングと称します。心房の筋肉がリモデリングをおこすと、電流の通りやすさや電気の渦の回りやすさが発作性心房細動の時より上昇します。

つまり、異常電気信号に対する心筋の受攻性(じゅこうせい:敏感性)が高まるのです。この状態になると、簡単に心房細動が発症し継続するようになります。抗不整脈薬はもちろん、カテーテルアブレーションの効果も期待できなくなり、心房細動の時間が少しずつ長くなります。そして、最後には房細動の状態がずっと続く「永続性心房細動(慢性心房細動)」へと移行します。

アブレーション手術風景
アブレーション手術風景

また心房細動が慢性化すると異常電気信号の好発部位も肺静脈周辺から心房全体へと広がるため、異常電気信号すべてを焼灼ことは困難であるとされ、一般的に永続性心房細動の治療成績は下がると言われています。そのため、永続性心房細動の治療方法として、拡大肺静脈隔離焼灼に加えて、心筋の受攻性を弱める追加焼灼が検討されていますが、拡大肺静脈隔離術を行った場合と治療成績が変わらないという研究結果が出るなど、いまだ永続性心房細動の治療の世界は混沌としているのが実情です。

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