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インタビュー

公開日 : 2016 年 09 月 02 日
更新日 : 2017 年 12 月 05 日

腰痛対策は世界的にみても成功していない

腰痛は、生活に支障をきたす年数(Years lived with disability:YLDs)という指標が、今も昔もトップを占めています。

※2位はうつ病、3位が鉄欠乏性貧血、4位が首の痛みとなっています。

このランキングは数年間変わっていないため、腰痛の対策はうまくいっていないと捉えることができます。また、私も最近では企業の方や保健師の方とお話する機会が増えましたが、想像以上に勤労者にも腰痛持ちの方が多く、「だましだまし」仕事を続けているという声をよく耳にします。

専門家から具体的な解決策を提示されず、対症療法としてコルセットなどの装具療法を処方され、世界的に仕事のパフォーマンスが落ちている現状は危惧すべきものであると考えます。このような状況を受け、私たちの急務は、腰痛に対する具体的なソリューションを提案することであると考えています。

痛みやストレスが私たちの脳を「悲観脳」にし、慢性腰痛を引き起こす

脳の「側坐核(そくざかく)」が良好に働いている状態をSunny Brain(楽観脳)、扁桃体が必要以上に興奮している状態をRainy Brain(悲観脳)と呼びます。これは、オックスフォード大学の心理学者であるエレーヌ フォックス教授が名付けたものです。楽観脳がうまく働いている「楽観脳」の状態とは、その名の通り困難な状況も前向きに捉えられる状態のことを指します。

健康で問題ごとなどを抱えていないときは、脳において「側坐核」へと正常なドパミンとオピオイド分泌が起こり、楽観脳の状態が維持されます。しかし、痛みやストレスを受けるとドパミンおよびオピオイドの分泌に不具合が生じ、物事をネガティブに捉える悲観脳となってしまいます。

すると、私たちの体は痛みに対して過敏になり、結果として慢性腰背部痛などの痛みを覚えるようになるのです。

また、一般に「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニンの働きも低下してしまいます。

つまり、記事1で述べた持ち上げ前かがみの姿勢など「メカニカルな腰へのストレス」以外に、職場や家庭などにおける「心理的なストレス」も脳の機能の不具合を来し、間接的に慢性腰痛を引き起こすリスク因子となるのです。

どのような心理的ストレスが腰痛の誘因となるのか、よくみられるものを以下の表に記します。

【働く人々が仕事に支障をきたす、腰痛の危険因子】(松平らの複数の研究報告から)

 

腰痛の新規発生

慢性化

人間工学的要因(メカニカルな腰へのストレス)

 

●持ち上げ/前かがみ動作が頻繁

●25kg以上の持ち上げ動作

●20g以上の重量物取扱い

●介護作業に従事

(持ち上げ、前かがみ、ひねり動作が頻繁)

心理社会的要因(心理的なストレス)

●職場の人間関係のストレスが強い

●週労働時間が60時間以上

●仕事の満足度が低い

●働き甲斐が低い

●上司のサポート不足

●人間関係におけるストレスが強い

●家族が腰痛で支障を来した既往(病歴)がある

●不安や抑うつ、身体化(いわゆる自律神経失調症のような状態)

ストレスを感じている時の「持ち上げ動作」による腰への負担を検証

ストレスが腰痛のリスク因子となると聞き、驚きや懐疑の念を抱かれた方も多いでしょう。私がこのような研究を始めた理由も、なぜストレスなどの心理的要因がぎっくり腰の原因になるのかと疑問を感じ、そのメカニズムを解明したいと考えたからです。

そのため、「持ち上げ動作」の前に、あえて被験者がストレスを感じるような課題を与えて、腰部の椎間板圧縮力を比較する実験を行ったこともあります。実験を主導したのは、私の講座の研究員でもあり、新潟医療福祉大学の准教授である勝平純司氏です。

【実験の内容】

●対象者:健常な日本人男性13人

●方法:被験者に心理的ストレスのかかる課題を出し、それを解いてもらいつつ持ち上げ動作をしてもらう。

心理的ストレスのかかる課題とは、2桁の暗算を解いてもらい、回答が奇数のときだけスクワット法(股関節・膝関節を屈曲して行う持ち上げ動作)を行ってもらうというものである。

●結果:椎間板圧縮力は、単独でスクワットを実施した場合63N/kgであったが、ストレス課題後のスクワットはこれを有意に上回った。

このような結果が出た原因には、姿勢バランスの乱れがあると考察しています。

また、ストレス過多の状態では自律神経のうち交感神経が優位になるため、筋肉の緊張が高まり、腰への血流も悪化します。これもまた腰痛の原因となるといえます。

これらのことから、否定的な思考のくせを改めるなどストレスを溜めこまない対処法を知り、脳内のやる気物質であるドパミンと幸せホルモンのセロトニンを自ら抑えてしまわないよう心掛けることが、メンタルヘルス対策のみならず、腰痛や肩こりの予防に繋がると考えられます。

とりわけ介護作業や運搬作業を伴う仕事をされている方は、ストレスを抱えながら持ち上げ動作を行わないよう、そして日ごろからストレスを溜めこまないよう意識づけていくことが大切です。

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