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インタビュー

多発性骨髄腫の再発とその治療法について

多発性骨髄腫の再発とその治療法について
萩原 將太郎 先生

東京女子医科大学 血液内科講師

萩原 將太郎 先生

この記事の最終更新は2016年09月01日です。

多発性骨髄腫は、治癒が困難な病気です。最初の寛解導入療法に引き続く造血幹細胞移植、地固め療法、維持療法などの治療を行っても、その後、再発してしまうことは少なくありません。

再発には、2つの種類があります。

M蛋白が徐々に増加して、最も減少した時点からM蛋白が25%以上増加した時点で、「再発」と診断しますが、貧血や腎機能障害、高カルシウム血症、新たな骨病変などを伴わない(新たな症状のない)再発を、無症候性の再発あるいは生化学的再発と呼びます。この場合には、急いで治療を行う必要がないこともあります。

しかし、M蛋白が急速に増加する場合や、予後不良因子がある、LDHが高い、末梢血に形質細胞が出現しているなどの場合には、次の治療を早く開始した方がよいと思われます。

M蛋白の増加と、いわゆるCRAB症状(高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変)を伴う再発を症候性の再発といいます。この症候性の再発では、早めの治療が必要です。

再発に対する治療は、これまでの治療内容や年齢、再発のタイミングによって異なります。

1)最初の治療によって6-9ヶ月 の無治療期間が得られた場合には、同じ治療を再度行うことによって効果が得られる場合があります。

2)65歳以下の方で自己末梢血幹細胞移植を未だ受けていない場合や、初回の幹細胞移植が著効した例では、2回目あるいは3回目の自己末梢血幹細胞移植を考慮します。

3)初回治療で用いた薬剤に、まだ使用していない薬剤を組み合わせた治療。

4)予後不良因子がある場合には3剤から4剤を組み合わせた治療を検討します。

5)若年者で、HLA一致の血縁者がある場合には同種造血幹細胞移植も検討することがあります。

6)臨床試験

1)進行の早い場合、症状の強い場合には3剤から4剤を組み合わせた治療を行います。

2)ゆっくりとした再発であれば1剤あるいは2剤による治療でもよい場合があります。

多剤併用の治療を行う場合には、少なくとも1剤は薬剤耐性でないことが重要です。組み合わせには、化学療法剤とプロテアソーム阻害剤、サリドマイドやレナリドミドなど免疫調整剤を基本とした治療を考慮します。

近年、多発性骨髄腫の治療は、新規薬剤の登場により大きく進歩しています。

2015年から2016年の間に承認された新規薬剤について解説します。

サリドマイドやレナリドミドと同様に免疫調整薬(IMiDs)の一つです。

ボルテゾミブおよびレナリドミドの治療歴がある再発、難治性の多発性骨髄腫に対して適応があります。デキサメサゾンとの併用で用います。主な副作用には、好中球減少、血小板減少などがあります。構造はサリドマイドに類似しているため、催奇性のリスクがあり、処方は登録制で厳重な管理を必要とします。

ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤です。再発、難治性の多発性骨髄腫に適応があります。ボルテゾミブ、デキサメサゾンとの併用で用います。主な副作用には、血小板減少、下痢、疲労、貧血、好中球減少などがあります。

ボルテゾミブと同様に、プロテアソーム阻害剤のひとつです。再発、難治性の多発性骨髄腫に適応があります。レナリドミド、デキサメサゾンとの併用で用います。主な副作用には、血小板減少、好中球減少、貧血があります。また、心機能障害が出現することがあります。

ボルテゾミブ、カルフィルゾミブと同様に、プロテアソーム阻害剤の一つですが、他の薬剤とは異なり、経口薬です。国際共同臨床試験では、再発、難治性の多発性骨髄腫に対する有効性が示されています。

多発性骨髄腫細胞の表面にあるSLAMF7という糖タンパクを標的としたモノクローナル抗体です。自然免疫を司るリンパ球の一つであるNK細胞も活性化する効果があると考えられています。国際共同臨床試験では、レナリドミド、デキサメサゾンとの併用で再発、難治性の多発性骨髄腫に対する有効性が示されています。

多発性骨髄腫細胞の表面にあるCD38という表面抗原を標的としたモノクローナル抗体です。単剤でも有効性が示されており、国際共同臨床試験では、ボルテゾミブやレナリドミド等との併用で高い有効性が報告されています。

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