インタビュー

海外渡航時の医療①-海外旅行や出張など渡航の際に参考にしたい便利な情報まとめ

海外渡航時の医療①-海外旅行や出張など渡航の際に参考にしたい便利な情報まとめ

JAMSNET東京(ジャムズネット東京)は、海外居住経験を持つ医療、保健、福祉、教育、生活等の...

JAMSNET東京(ジャムズネット東京)

この記事の最終更新は2016年08月29日です。

最近は、様々な国や地域でテロ事件が相次いだり、デング熱やジカ熱といった感染症が流行したりと、海外渡航において考えておかなければならないリスクが増える傾向にあります。これは、海外赴任や海外留学といった長期滞在を目的とした渡航だけでなく、出張や旅行のような短期的な滞在でも同様で、不測の事態というのはいつどこで遭遇するかわかりません。

そのため、事前に渡航先でのリスクに関する情報を収集し、まずは基礎的な知識を得ておくことが大切です。また、感染症に関しては、そのリスクを予防・回避するために、渡航前の予防接種やトラベルクリニックの活用について情報を得て、計画的に予防接種を進めておくことが肝要です。特にトラベルクリニックについては、まだなじみが薄く、その存在を知らない方も少なくない状況ですが、日本では扱っていないワクチンの接種が可能であったり、予防薬の処方、医療相談、渡航先での医療機関の紹介、母子手帳の英訳などのサービスも行っており、家族帯同で海外に渡航される方や持病を抱えていて日常的に薬を服用している方にとっても安心して渡航前の準備ができるようになっています。

一方で、渡航中においては、実際に病気にかかるなどのトラブルにあった場合に信頼できる医療機関をどのように探して訪ねればよいのかということについて、現地に入ってからでは時間と労力を必要以上に多く費やしてしまう可能性もありますので、いざという時に訪ねる医療機関を事前に調べておくと安心です。さらに、長期滞在や家族帯同で渡航される方にとっては、自身や家族の心の健康に関しても留意しておくことをおすすめします。これまでとは異なる文化や風習の中での生活にストレスを感じ、環境の変化に対して柔軟に対応できないケースも考えられるからです。メンタルヘルスケアに関する情報や相談窓口などがありますので、事前に情報を入手したり、相談しておくと渡航先でメンタルヘルス異常が現れる前に自身でコントロールし、予防に努めることもできる可能性があります。

初めて海外に渡航される方や不定期に渡航される方にとっては、何をどのように準備してよいのかというところから判断に迷ってしまいがちです。特にそのような方にとっては、最初から細かい情報を入手するよりは、準備すべきことの概要をおさえておく方が、その後の準備がスムーズに進みます。以下に参考となる医療情報サイトに関して、サイト名とURL、サイトの主な目的、得られる情報の概要を記載しますので、ぜひお役立てください。

テロや紛争などの緊急事態における危機管理情報

特例社団法人 海外法人安全協会

テロや紛争などの緊急事態への対応および危機管理情報の提供を目的としたサイトです。海外安全お役立ち情報の中の海外安全マニュアルには健康管理に関する情報ページがあり、渡航先で体調を崩す要因や崩した場合のリスク、予防方法、渡航先の医療水準を考慮した保険の加入などについて概要的な情報を得ることが可能となっています。また、医療関連を含め、海外安全情報に関する講演会やセミナーの受講も可能です。

海外感染症流行情報

東京医科大学病院渡航者医療センター

海外感染症流行情報の提供を目的としたサイトです。各国、各地域の最新の感染症流行情報や感染者の情報、予防のための注意事項などについて毎月定期的に情報が更新されて公開されています。現在、海外でどのような感染症が流行しているのかといった概要情報を網羅的に得るのに適したサイトです。

海外旅行と病気

東京医科大学病院渡航者医療センター

感染症などの病気の基礎知識の提供とe-learningによる知識の習得を目的としたサイトです。デング熱やジカ熱、マラリア狂犬病といった感染症や海外旅行者の中で最も多い病気とされる下痢の症状に関する解説、また、渡航前に摂取しておきたいワクチンの一覧や事前準備(健康診断や医療衛生情報、携帯医薬品、各種予防薬、保険加入など)に関する解説が掲載されており、解説を読んで知識を習得した後に、e-learningで理解度をチェックすることが可能になっています。

海外赴任・留学・出張の総合情報サイト - JCMの「海外いろは」

海外出張、海外赴任、海外留学をする方に対する健康管理と安全対策の情報提供を目的としたサイトです。予防接種やトラベルクリニックの活用、渡航先に持っていくと便利な医薬品、渡航先での自身および家族の健康管理・メンタルヘルスケア、また帰国前後に対応すべきことなど比較的詳細に豊富な情報量が掲載されています。特に予防接種に関しては地域別に推奨される予防接種や必要接種回数、接種スケジュールが細かく軽されており、トラベルクリニックリストのリンク先も載せられているため、必要な情報を具体的に入手することができるようになっています。

海外渡航にあたってのお役立ち情報

厚生労働省検疫所FORTH 海外で健康に過ごすために

海外で健康に過ごすための感染症などの情報提供を目的とした厚生労働省検疫所のサイトです。渡航前の準備(予防接種や感染症予防の知識、持病管理、投薬相談など)の確認やチェックリストでの健康状態の整理ができます。また、帰国後の健康チェックや感染が発覚した場合の対応に関する解説も有用です。

海外渡航にあたって注意すべきことがおおよそ理解できている方にとっては、さらに詳細な情報や具体的な準備・行動に関する情報が必要になってきます。引き続き、参考となる医療情報サイトのサイト名とURL、サイトの主な目的と得られる情報の概要を記載しますので、ぜひご参考にしてください。

外務省海外安全ホームページ

海外に渡航・滞在する方が自身で安全を確保するための参考情報の提供を目的としたサイトです。各国・地域の危険情報やスポット情報などの海外安全情報や安全対策が掲載されています。医療・健康関連としては、トピックス・重要なお知らせの中の医療・健康関連情報に、感染症に関する危険情報や広域情報、スポット情報が提供されているほか、新型インフルエンザ鳥インフルエンザに関する基礎知識と対応方法、そして指定医療機関の情報を得ることができます。

外務省在外公館医務官情報

世界の医療事情の情報提供を目的としたサイトです。国別、地域別に保健制度などの医療事情やかかりやすい病気・怪我、健康を維持するための留意事項、必要な予防接種、病気になった場合の対応と病院の紹介などが細かく掲載されています。

財団法人 海外法人医療基金

医療不安解消のための海外医療情報の提供を目的としたサイトです。日本人が海外で利用する医療機関のデータベースが公開されており、検索して閲覧することができます。また、予防接種などを行う国内のトラベルクリニックも検索が可能となっています。さらに、会員登録をすることで小児および成人の医療相談やメンタルヘルス相談を受けることも可能です。

日本渡航医学会

感染症予防や高山病、ダイビングの際のトラブル、渡航中のメンタルヘルス、緊急時対応、インフルエンザ対策、渡航後の診療問題などを扱う学会。医療従事者向けではあるが、国内および海外のトラベルクリニックを詳細に確認することが可能となっており、検診内容や対応ワクチン、予防薬について細かく記載されています。また、帰国後に感染症が疑われる場合の国内の対応医療機関の確認も行うことができます。

医療団体のネットワーク構築や地域限定での情報発信、あるいは渡航先で重傷を負ったり、死に至ったりした場合の支援に関する情報源を紹介します。必ずしもここまで深く読み込む必要はないかもしれませんが、いざという時に頭の片隅に入れておくと役立ちますし、適切な支援を得ることができます。

邦人医療支援ネットワークJAMSNET NY

ニューヨーク周辺の医療系邦人支援グループ同士の情報交換、相互連携の構築を目的として設立されたネットワークです。ニューヨークのほかに東京やカナダ、ドイツにも同様のネットワークがあり活動しています。活動自体は医療団体や教育団体、福祉団体が主で、邦人支援の相互連携や協力体制構築のための定期会合や講演会、ワークショップ、勉強会などが行われており、渡航者に直接関係するものではありませんが、震災被害などに遭われた方々に対して9.11事件などの経験をもとに心のケアについてアドバイスやサポートを受けることのできる「NYからの心の相談110」がありますので、メンタルヘルス関連で悩みがあるときには支援を受けられる可能性があります。

米国で働く日本人医療従事者による情報発信ブログポータルサイト「あめいろぐ」

在米日本人医療従事者による情報発信が目的で、医療従事者中心ですが、一般の方にも参考となる情報が得られます。例えば、アメリカでの市販薬の種類や使い方、日本で使用していた薬の有無などが確認できたり、ワクチンの情報についてもまとめて提供されています。さらに、アメリカでの医療に関する質問をすることができ、在米医療従事者のメンバーから適切な回答を受けることができます。

特定非営利活動邦人 海外医療情報センター

海外旅行、海外赴任など渡航先で患った病気、怪我、事故などで困っている方への医療支援や渡航移植希望の方への支援活動が行われています。渡航先の病院から日本の受け入れ先病院までの搬送、渡航先で亡くなられた方の遺体搬送、あるいは高額医療費に対する減額交渉や診断書・明細書の翻訳、還付請求申請書作成の支援といったサービスを受けることができます。

コロナウィルスの名前の由来は諸説ありますが、ウイルスの粒子表面に王冠のような突起が複数あり、粒子を取り囲んでいるその突起の様子が太陽のコロナに似ていることからコロナウイルスと呼ばれています。このコロナウイルスは人や動物の間で感染しますが、人に対して感染を引き起こすコロナウイルス(HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、 SARS-CoV、MERS-CoVの6種類が知られています。

この中でHCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1の4種類については風邪の原因の10~15%程度を占めるとされ、ほとんどの人が子どもの頃に一度は感染経験を持っています。後述する SARS-CoVやMERS-CoVと比較すると、症状は比較的軽く、鼻水や鼻づまり、喉の痛み、咳といった呼吸器系の症状や腹痛、下痢などの腸管系の症状、そして発熱などを伴います。ただし、乳幼児や免疫力の低い人でまれに気管支炎肺炎など重症化することもあるため、日常的にうがいや手洗いをこまめに行うことはもちろんのこと、風邪にかかっている方との濃厚接触をさけることが肝要です。

流行時期は冬季が多く、ウイルス保有者からの飛沫感染や排泄された便からの感染、ウイルスが付着したものに接触することによる感染などが主な感染経路です。一方で、SARS-CoVやMERS-CoVはコロナウイルスが突然変異した新型のコロナウイルスで季節性インフルエンザほど感染力は強くないものの、感染して発症すると肺炎など呼吸器系の症状により重症化しやすいのが特徴です。特に高齢者や生活習慣病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患がある方は重症化するリスクが高くなり、死に至るケースも少なくありません。

これらの新型ウイルスはもともとコウモリの間で伝播していましたが、その後、豚やラクダへの感染が確認され、さらには人へも感染し、人と人との間でも感染が確認されるようになりました。SARA-CoVに関しては2002年の11月に中国の広東省で最初の感染者が確認されました。そして2003年にかけて30カ国にも及ぶ感染の広がりを見せ、その結果、感染者数は8098人、死亡者は774人(致死率9.56%)に達しました。なお、SARS-CoVの流行は2003年の7月に終息しており、現在のところは流行の情報はありません。

もう一方のMERS-CoVに関しては、2012年にサウジアラビアで最初の感染者が確認され、その後サウジアラビアやアラブ首長国連邦を中心に感染者が拡大しました。記憶に新しいところでは2015年に韓国で大流行し、181人の感染者に対して32人が亡くなる(致死率17.7%)という事態になりました。主に中東地域で感染報告が多いMERS-CoVですが、韓国をはじめとして中国やフィリピン、マレーシア、タイでも感染者が確認されていますし、ヨーロッパ各国、アメリカでも感染者が確認されています。2015年6月時点の報告では世界で1379人が感染者として報告され、その中で531人が死亡しており、その致死率は38.5%と非常に高いものになっています。また、MERS-CoVに関しては現時点でまだ終息には至っていません。最近でも症例の報告は上がっており、その最新状況について次に説明します。

2016年8月1日に外務省の海外安全ホームページにてMERSコロナウイルスによる感染症の発生に関して広域情報が出されており、8月25日時点においても情報は有効な状況です。この情報によると、サウジアラビアをはじめとする中東地域を中心になおも感染者の発生が報告されている状況で、2016年7月25日付けの世界保健機関(WHO)の発表では、これまでの累計感染者数が1791人まで増えており、その中で少なくとも640人がMERSコロナウイルス関連での死亡者数とされています。その致死率は約36%と依然として高い状況が続いています。

また、サウジアラビア保健省によると、2016年の6月10日から7月30日までの間でサウジアラビアにおいて新規の感染者が56人、その中で死亡者が16人と発表しています。そのため、引き続きMERSコロナウイルスの感染に対しては十分な警戒が必要です。ちなみに、国際保健規則緊急委員会でも、2015年9月の会議における声明ではありますが、国際的に懸念される緊急事態までは該当しないものの、更なる流行に対して強い警戒を有するとしています。MERSコロナウイルスの感染経路についてはWHOや関係各国が依然として調査中ですが、中東のヒトコブラクダがMERSウイルスの保有動物であることは確認されており、感染源の一つとして疑われています。そのため、外務省や厚生労働省からはラクダとの接触や未殺菌のラクダの乳、適切に処理されていないラクダの肉などの摂取について避けるよう注意喚起を行っています。

また、感染者の中にはラクダなどの動物との接触歴がない人もいます。それゆえ、MERSコロナウイルスの発生が報告されている地域、とりわけ中東各国においては、咳やくしゃみなどの症状がある人との接触も可能なかぎり避けるよう注意喚起を行っています。さらに、厚生労働省からはMERSコロナウイルス流行国から帰国した人に対して検疫所で発熱や咳などの症状、ラクダと接触した可能性のある人、あるはMERSコロナウイルスの感染が疑われる人には検疫官に申し出るよう呼びかけており、MERSコロナウイルスの感染あるいはその可能性が高い人は最大14日間、検疫所で健康状態を報告する健康監視対象者となることがあります。また、帰国時には発症していなくても帰国後2週間以内に発熱や咳などの症状が出てきた際には最寄りの保健所に連絡することも呼びかけています。現在、厚生労働省ではMERSコロナウイルスの感染について検査試薬を全国の自治体と検疫所に配布し、検査体制を整えていますが、現時点でワクチンや特効薬はない状況ですので、特に中東地域に渡航する人は細心の注意が必要です。

インフルエンザは冬季に流行しやすく、予防接種を受ける人も多いため一般的によく知られた感染症です。インフルエンザウイルスは抗原性の違いから、A型、B型、C型の3つがあり、特に流行しやすいのはA型のH1N1亜型、H3N2亜型とB型です。この中でA型のインフルエンザウイルスには鳥類への感染性を示すウイルスがあり、鳥類から人へ感染するインフルエンザを「鳥インフルエンザ」と呼びます。また、鳥インフルエンザの中でも感染した鳥がかなり高い確率で死に至るものを「高病原性鳥インフルエンザ」と呼びます。

この高病原性鳥インフルエンザを含む鳥インフルエンザが人に感染することは稀ですが、最近は家畜として飼われている鶏が感染して、流行している鳥インフルエンザが人へも感染するとして、感染症例の数が増加しています。そのため、感染した鳥やその鳥の排泄物に触れたり、生肉の解体などで鳥の内臓などに触れたりすると感染するリスクがあるので注意が必要です。また、人から人への感染はさらに稀ですが、感染者との長時間に渡る濃厚接触があった場合に感染したとの事例が報告されています。一方で、鶏肉や鶏卵の摂取によって人が鳥インフルエンザに感染したとの報告はこれまでありません。ただし、鶏肉の表面だけでなく内部まで全体が70℃以上に達するよう十分な加熱処理を行ってから摂取することが推奨されています。

鳥から人へ鳥インフルエンザが感染した場合、その潜伏期間は2日~5日、長くても10日とされており、発症すると38℃以上の高熱が突然生じ、咳、全身の倦怠感、筋肉痛、腹痛、下痢、嘔吐など通常の季節性インフルエンザと同様の症状が現れます。したがって、症状だけでは鳥インフルエンザの感染の有無は判断できず、検査が必要となります。また、重症化すると肺炎多臓器不全などを起こして死に至ることもあります。治療法としてはまだ十分に確立されておらず、オセルタミビルリン酸塩などの抗インフルエンザ薬を中心とした治療が行われますが、現時点で日本国内においては人への感染は報告されていません。

人への感染リスクのある鳥インフルエンザはいくつか種類がありますが、代表的なものを3つ挙げます。最初に報告されたのは、H5N1型の鳥インフルエンザで、1997年に香港で感染者が確認されました。その後、エジプトやインドネシア、ベトナムなどでの感染が報告されています。2つ目はH7N9型の鳥インフルエンザで、2013年に中国で感染者が確認されました。アジア、中東、アフリカを中心に症例が多数報告されている状況です。さらに3つ目はH5N6型の高病原性鳥インフルエンザで、2014年中国とラオスで感染者が確認されました。ちなみに、日本国内では2014年に熊本県の養鶏場でH5N8型とされる別の高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認され、その後宮崎県や山口県、岡山県、佐賀県の養鶏場でも同じ鳥インフルエンザウイルスが確認されました。また、島根県や千葉県、鳥取県、鹿児島県、岐阜県では野鳥からH5N8型インフルエンザウイルスが確認されています。ただし、前述の通り、現時点で人への感染は報告されていません。


まずH5N1型鳥インフルエンザに関してですが、2003年11月以降の調査で2016年7月19日時点において、WHOが確認している発症者数は世界で854人、そのうち死亡者数は450人となっており、致死率は約53%と非常に高くなっています。中でも最も発症者数が多いのがアジアで、インドネシアにカンボジア、タイ、中国、パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、ミャンマー、ラオスで発症者が確認されており、その数は474人にのぼります。さらにその中でもインドネシアは199人の発症者が確認されており、死亡者も167人と多い状況です。次いで多いのが中東地域で、エジプト、イラク、トルコ、アゼルバイジャンで377人の発症者が確認されています。特にエジプトでの発症者数は354人と際立っています。その他、アフリカやカナダでも発症者が確認されている状況です。

2016年8月25日時点で広域的なH5N1型インフルエンザの流行情報はありませんが、2016年4月25日にレバノンにある複数の養鶏場で死亡した鶏からH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが検出されたとの情報が入っており、外務省からはレバノンへの渡航・滞在について感染予防に努めるよう注意喚起を行っています。次に、H7N9型鳥インフルエンザに関してですが、2016年6月13日時点でのWHOの発表によると、発症者数は781人で、そのうち死亡者数は313人となっており、致死率は約40%とこちらも高い状況です。

中国での発症者数が749人と大半を占める中、香港や台湾、マレーシア、新疆ウイグル自治区、カナダでも発症者が確認されています。2016年8月2日には外務省からスポット情報が出されており、中国の国家衛生・計画生育委員会が2016年に入ってからも6月までの発症者数が97人に上り、死亡者数は40人に達していると公表したとのことです。また、WHOからは同年の6月13日から7月19日までの約1ヶ月間で、新たに死亡者数5人を含む12人のH7N9型鳥インフルエンザ発症者を確認していると報告されています。そのため、外務省は中国への渡航予定あるいは滞在中の人に感染予防を促しています。最後にH5N6型鳥インフルエンザですが、2016年4月4日付けのWHOの報告では、発症者は11人、そのうち死亡者は6人とされています。その後も4月に3名の発症者が追加報告され、5月にも1名の発症者が報告されました。依然として中国では発症者の報告が続いているので、H5N6型鳥インフルエンザについても感染予防に努めることが必要です。

海外旅行先で最も巻き込まれやすいトラブルの1つが食中毒です。

日本人の感覚からすると、家でも外出先でも衛生面が整っているため、飲み水や食事などで食中毒を起こすということはあまり考えませんが、海外では日本ほど衛生面が整っているところは多くないと考えたほうがよいでしょう。

まず、水についてですが、蛇口から出てくる水道水は飲まないほうが賢明です。また、歯磨きの際に水道水を口に含むのも避けたほうがよいでしょう。近くのスーパーやコンビニエンスストアで売っているミネラルウォーターを買って飲んだり、歯磨きをする方が安全です。また、シャワーや手洗い、うがいの際も注意が必要です。さらに外出先でも、例えばサラダなど生の食材は水道水で洗ったりされていることがあり、気付かないところで水道水を口に入れてしまうこともあるので注意が必要です。これは、国ごとに水道水の管理方法が異なり、日本のように必ずしも十分な殺菌処理がなされていないために起こります。

一方で、食事については基本的に十分加熱処理されたものを食べるようにしましょう。生のものや発酵食品などの摂取は食中毒のリスクが高まります。また、現地の方が通う大衆食堂のような店や屋台といった場所も食中毒のリスクがあります。前述の通り、使われている水も危険ですが、食材の衛生管理が十分行われていない場合もありますし、調理に使われている油も十分な衛生管理がなされていない状態で使いまわしている可能性があります。旅行先の雰囲気をもっと肌で感じたいという思いもあるのですが、現地の方ほど免疫力がなく、食中毒にかかってしまうことが少なくありません。

食中毒にかかった場合、一般的によく現れるのは嘔吐や腹痛、下痢といった症状です。また、悪寒や発熱を伴うこともありますし、場合によっては血便が見られることもあります。多くの場合は細菌や寄生虫、ウィルスが体内に侵入して24時間以内に症状が現れ、3日~5日程度で回復傾向が見られますが、中には1週間以上にわたって慢性的に症状が続く場合もあります。

病原体としては、細菌であればカンピロバクターやアエロモナス・プレシオマナスの検出頻度が高く、稀に赤痢菌やコレラ菌が検出されることがあります。また、寄生虫においては、ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバ、クリプトスポリジウム、サイクロスポーラなどが知られており、慢性的な下痢になることが多いとされています。そして、ウィルスとしては日本でも感染するノロウィルスやロタウィルスなどが挙げられます。

これらに感染して旅行先で食中毒を起こした場合の対処法ですが、嘔吐や下痢の症状があれば、我慢することなく出してしまいましょう。体内に侵入した細菌や寄生虫、ウィルスを体が異物とみなして排出しようと反応している証拠だからです。ここで、例えば下痢の症状がひどいからといって、下痢止めなどを服用するとかえって腹痛がひどくなったり、症状が長引く可能性があります。そのため、何よりもまず侵入した細菌や寄生虫、ウィルスを体外に排出しきってしまうことが先決です。

次に注意しなければならないのが脱水症状です。症状がひどいとかなりの頻度で1日に何度も嘔吐や下痢を繰り返します。そうなると、体内の水分が奪われて脱水症状を引き起こす可能性が出てきます。ミネラルウォーターやそれを沸騰させた白湯を飲むのもよいですが、アクエリアスやポカリスエットのようなイオン水を飲むとよいでしょう。できれば、旅行前に粉末状のイオン水を持っていくと万一の場合に役立ちます。また、もし経口補水液が手に入るようであれば、それを飲用するのが最もよいと考えられます。何かを飲むとまたすぐに嘔吐や下痢を繰り返したりもしますが、脱水症状にならないためにもしっかり水分補給は欠かさないように注意してください。

症状が少しでも落ち着いてきたら可能な限り横になって体を休めましょう。嘔吐や下痢を繰り返した体はかなり体力の消耗があると思われますが、それ以前に時差ボケや旅行中の疲れ、日本とは異なる環境でのストレスなどを抱えていて、仮に食中毒にかかっていなくても相当疲労している可能性もあります。体力が回復しないことには免疫力も上がってきませんので、休めるときにしっかり休むようにしましょう。例えそれが数分程度であってもトイレにずっと閉じこもっているよりは横になって体を休めた方がよいです。その際、食事は無理に取らなくても大丈夫です。

食事を摂る余裕が出てきたらパンやクラッカーを少しかじる程度でもよいですし、消化によい食事が摂れそうならそれがベストです。このように、基本的には対処療法が食中毒にかかった場合の対処方法になります。しかし、3日程度経ってもほとんど回復傾向が見られないということであったり、高熱が続いたり、血便の症状が出てきたりした場合は医療機関にて適切な処置を受けることをお勧めします。

旅行先で急に体調を崩してどこの病院に行けばよいのか探すのも大変かもしれません。同行者に調べてもらえるようであれば安心ですが、そうでない場合は旅行前にある程度病院を調べておくと安心でしょう。大きな病院であれば英語が通じる場合も多いですし、場合によっては日本語の通訳者や日本人スタッフがいることもあります。また、海外では日本の健康保険は使えません。そのため、診察と薬の処方だけでも多額の医療費を請求される可能性があります。症状が重症化して入院が必要になれば、さらに医療費は膨らみます。何万、何十万という医療費を払わなくても済むように、事前に海外旅行傷害保険に加入しておいてください。

楽しみにしていた海外旅行や重要な取引先との交渉で海外出張される方などにとって、渡航先で体調を崩すというのは最も避けたいことの一つですが、旅の疲れが出てどうしても体調を崩してしまうこともあります。例えば、風邪をひいてしまって咳や鼻水、発熱の症状が現れたり、あるいは旅先の美味しいものをあれもこれも食べ歩いてホテルまで帰ってきたら急に胃がもたれたり、腹痛を起こしたりということはありえる話です。それ以外にも便秘になったり、逆に下痢になったり、あるいは軽いけがをしてしまって、傷薬が必要になったり、目が乾燥して目薬が必要になったりと様々なことが考えられます。日本から常備薬を持って行っていれば問題ありませんが、もしそうでなかったら何とかしてドラッグストアなり、薬局なりを探し、そこで症状に合った薬を購入しないといけません。そんなときにどのように伝えればよいのか、少なくとも英語で伝えられるようになっておけば安心ですので、この後でご紹介する英語を参考にしてください。

まずはドラッグストアか薬局を探す必要があるので、その場所をホテルのスタッフや誰かに聞く必要が出てくると思います。例えば次のように尋ねます。

☆Excuse me.  I am not feeling well. Would you tell me where the drugstore is ?
(すいません。体調が優れないのですが、ドラッグストアはどこにありますか?)

もっと簡単に伝えるのであれば、Excuse me. Where is the drugstore ?でも構わないでしょう。

ここで、少し注意が必要なのが「drugstore」という単語です。アメリカ英語ではおおよそ日本のドラッグストアの感覚と同じで、薬と一緒に日用品が売っているような店を指しますが、イギリス英語では「drugstore」と言うと怪訝な顔をされるか、通じないというようなことにもなりかねません。というのも、drugには薬というよりは麻薬のイメージが強いからです。アメリカでも I need a drug. というと誤解を招きかねません。この人は麻薬を欲しがっているのか?というように求めている薬に相違がでる可能性もあります。ですから、アメリカでは「drugstore」で通じますが、イギリスでは薬局を意味する「pharmacy」を使うようにしましょう。

無事にドラッグストアあるいは薬局にたどり着いたら、今度は自分の症状にあった薬を探さないといけません。薬局はもちろん、ドラッグストアでも調剤薬局が入っている場合は薬剤師が常駐しているでしょうし、いなければ店の店員に薬を尋ねることになります。例えば、このようn会話です。


・自分:Excuse me.
・店員:May I help you ?
・自分:I need ( or want) a ○○○○.

最後の文の「○○○○」に症状に合わせた薬の名前を入れれば、薬剤師か店員が持ってきてくれるはずです。
以下に、症状に合った薬とその英単語をいくつか紹介します。また、ここでも~薬(風邪薬など)というのに、drugという単語は基本的に使いません。medicineという単語を使いますので注意ください。

風邪薬

cold medicine 

咳止め

cough medicine

頭痛

headache medicine

解熱剤

antifebrile medicine / medicine for fever

鎮痛剤

painkiller / aspirin

※aspirinは商品名ですが、日本でもバファリンやイブといった商品名が会話に出てくるのと同じでアメリカなどでもaspirinの方が一般的なようです。

胃腸薬

digestive medicine / stomach medicine

便秘薬

laxative product

下痢止め

antidiarrheal medication / medicine for diarrhea

軟膏

ointment

目薬

eye lotion / eye drops / eyewash

湿布

compress

※温湿布はhot compress、冷湿布はcold compressと言います。

漢方薬

chinese medicine / herbal medicine


以上がよくある症状で必要となる薬の英語名になります。もし、必要な単語が思い出せないようであれば、I need (or want) a medicine for ○○○○. の、○の部分をジェスチャーで患部をおさえるなどすれば最低限のことは伝わる可能性もあるので、このフレーズを覚えておくと便利です。くれぐれも I need (or want) a drug for~ とだけは言わないように注意しましょう。

最後に注意していただきたいのが、服用時の用量です。日本で扱っている薬とほぼ同じもの、同じ成分のものが海外でも手に入りますが、体格などの違いから用量が大きく異なっている場合があります。例えば、風邪薬に記載されている用量は20歳~40歳を基準とされていることが多いようですが、比較的小柄であったり、高齢者であったりする場合は、その基準とされている用量で服用すると、薬がきつ過ぎて副作用が生じることもあります。また、鎮痛剤のアスピリンなどは1錠の成分量が81mg、100mg、300mg、500mgといったように様々な種類がありますので、誤って成分量が多いものを購入しないように注意しなければなりません。このようなことから、記載されている用量よりは少し少なめ、あるいは高齢者の方などであれば半分ぐらいの用量に減らして服用し始めることがより安全です。また、なかなか自分で判断するのが難しい場合は、ドラッグストアや薬局の薬剤師に確認してみることをお勧めします。

例えば、

How should I take this ?
(どのようにして飲めば良いですか?)
あるいは、
Would you tell me this dosage and administration ?
(この薬の用法・用量を教えてください)

と、尋ねれば、

Take a tablet (or cap or pack) three times a day after a meal.
(1日に3回、毎食後1錠(カプセル、包)飲んでください)

というように、あなたの症状や体重を考慮した用量をアドバイスしてくれるでしょう。

また、副作用についても聞いておくと安心です。

Does the medicine have any side effects ?
(この薬には何か副作用がありますか?)

Would you tell me about side effects of this medicine ?
(この薬の副作用について教えてもらえますか?)

と言ったように尋ねれば教えてくれるでしょう。