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外来透析という選択肢を!柴垣医院が在宅医療を通じて見いだす「これからの腹膜透析」の可能性

外来透析という選択肢を!柴垣医院が在宅医療を通じて見いだす「これからの腹膜透析」の可能性
柴垣 圭吾 先生

医療法人社団明洋会 柴垣医院 理事長

柴垣 圭吾 先生

柴垣医院を開院した先代理事長 柴垣昌功(まさかつ)先生は、まだ日本で血液透析が行われていなかった時代にアメリカへ渡り、透析療法の父といわれるスクリブナー先生やコルフ先生に師事しました。

その後に自由が丘駅前で開院して40年、当時はまだ外来透析も珍しかった時代から地域の方とともに歩み、クリニックは2003年に当代の柴垣圭吾先生へと引き継がれています。

増え続ける透析患者と、膨れ上がる日本の医療費。そして今後、在宅医療と透析は切っても切り離せない関係になると柴垣圭吾理事長と宮本研院長は予想されています。お二人に詳しくお話を伺いました。

透析患者さんをとりまく現状

現状の血液透析治療では患者さんの負担が大きい

末期の慢性腎不全となり血液透析が必要になると、一般的に週3回、透析クリニックに通って3~5時間程度の透析を行います。これは頻度、時間ともに患者さんにとって大きな負担です。若い方であれば仕事との兼ね合いが大きな問題となりますし、大部分を占める高齢の方になると通院自体が大きな問題です。

当院を含めて透析患者さんの送迎を行うクリニックも多いですが、寝たきりに近い状況だと送迎での通院すら困難になります。ベッドからストレッチャーへの移動、車への移動、来院後には透析ベッドへの移動。スタッフも常に数人がかりです。

腹膜透析を行っている方は患者さん全体の約3%

透析療法には血液透析だけでなく、腹膜透析と呼ばれる方法があります。これは自宅や職場でも継続して透析が行える点が特徴ですが、日本で受けていらっしゃる患者さんには主に以下の共通点が挙げられます。

・仕事や家事を続けており、アクティビティーの高い世代

・老廃物の尿への排泄が減っても、まだ尿量が維持されている(安定した腹膜透析には、尿や便への水分排泄もあれば望ましい)

・ご自身で注排液手技の管理、留置カテーテルの管理をきちんとできる

・家族や職場での理解が得られ、体調管理をサポートしてもらえる

腹膜透析は、現状では「比較的お元気な方が行う透析」との位置付けになっており、日本で腹膜透析を行っている方は透析患者さんの3%にすぎません。諸外国と比較しても非常に少ない割合です。

通院できない患者さんへの対応が国家レベルで必要に

保存期の慢性腎臓病を治療している中でも、透析患者さんは年々増え続けています。今後も高齢化が進むにつれ、腎臓機能の加齢による低下も影響して、透析患者さんは増えていきます。今は当院のような透析クリニックや、病院施設で対応できていますが、国家的な社会福祉政策として急性期の入院病床数が減らされる中では、それも遠からず限界を迎えるでしょう。医療機関も現状の認識のままでいれば、透析患者さんの治療ニーズに応えることができません。

透析クリニックが提案する在宅医療とは?

現在、外来や入院を問わず医療機関内(病院、クリニック)での透析が、患者さん全体の97%を占めます。しかし、合併症や体力低下によって、自宅から通院できない患者さんがさらに増えたとき、どのような解決策があるのでしょうか。施設で血液透析を継続することが当たり前でなくなった際に、求められる透析医療とはどのようなものでしょうか。

透析クリニックが在宅医療を始めて見えた課題

近年は訪問診療や訪問看護ステーションの増加により、自宅でのお看取りも徐々に増えてきました。透析治療も同様に、在宅でも引き続き治療する場合が増えてくるのではないでしょうか。透析関連の診療報酬が2年ごとに下がり続ける中で、血液透析だけに依存した透析クリニックは、いずれ医療経営的にも立ちゆかなくなるのではと大きな危機感を抱いています。

そのような激変する医療環境を見据え、我々は従来の透析クリニックでありつつも、新たに在宅医療(訪問診療)を開始したのです。実際に透析医が訪問診療を始めてみると、様々な視点から理解できる事実がたくさんあり、在宅医療と透析の掛け算で何が実現できるか?を考えるようになりました。

通院しない訪問診療型の腹膜透析

先にもお伝えしましたが、大部分を占める血液透析の場合、それを受けるには病院・クリニックなど治療設備の整っている場所に週3回程度、患者さんが出向く必要があります。一方で、当院は大学病院と連携しながら、腹膜透析も専用の診察室を設けて診療してまいりました。腹膜透析は患者さんがご自宅で、ご自身の手で透析治療を行うことができ、通院の頻度は月に1回程度とかなり少ないのですが、診察や処方のためには定期的に受診していただく必要があります。

当院の在宅医療部門は、定期訪問診療の形式をとっており、通院の必要がない透析治療の形が生まれたので、診察も検査も患者さんのご自宅だけで行えます。

透析クリニックの在宅医療(訪問診療)、鍵は腹膜透析が握る?

PDファーストとPDラスト

今後増加するであろう、通院が困難になった透析患者さんを在宅医療で診るには、腹膜透析が重要な選択肢ではないかと当院では考えています。

腹膜透析は手技に慣れていただければ、概ね自分だけで継続できる透析治療ですが、ご自身の腹膜機能が低下してしまうとそれ以上の実施が困難となります。多くの場合、5年から10年をめどに血液透析へ移行する必要があります。

まず腹膜透析からはじめ、その後に血液透析を併用、あるいは完全に移行するという考え方を、PDファースト(PD=腹膜透析)といいます。

反対にこの順序を逆にし、まず血液透析を行ってから、通院が困難になった透析患者さんに腹膜透析を実施しようという考え方がPDラストです。

名称

透析の順序

特徴

PDファースト

腹膜透析→血液透析

腹膜透析期間のQOLが上がる

PDラスト

血液透析→腹膜透析

入院せずに透析を継続

PDラストは入院を回避するための透析

PDラストは以下のような考え方に基づいています。

・在宅訪問診療に移行して腹膜透析を行い、定期通院を回避

・身体動作が悪化して寝たきりのようなご状態では、食事量や老廃物産生も低下しているため、腹膜透析で十分に生存が可能となる。終末期医療として捉えた場合は、尿毒症や溢水を回避することが目的であるので、高度な透析効率を求めない

・従来、自身で完璧に行う必要のあった手技や、カテーテルのメンテナンスなどはご家族が行いつつ、医療従事者もサポートする

ご自身の腹膜は一度劣化してしまうと回復しないので、腹膜透析は基本的に1回のみ選択できる治療法です。つまり、「腹膜透析 – 血液透析 – 腹膜透析」と腹膜透析をもう一度繰り返すことはできません。とはいえ、これまでの腹膜透析導入率は非常に低いため、今後多くの血液患者さんにPDラストという選択を考えていただけるはずです。

在宅医療で真価を発揮する?PDラストがもたらす恩恵

自宅で長く過ごしたい、多くの患者さんの願いを叶える医療

どなたでも具体的に考えたくない事実かと思いますが、PDラストは透析にとっての終末期医療です。色々なご事情で通院も難しく、将来的な体力の回復も望めない方に、何とかして自宅で過ごす時間を少しでも長く提供したい。我々は透析医として、そのような想いをもっています。

これは透析に関係することだけではもちろんありませんが、「病院ではなく家で看取られたい」というニーズは、高齢化が進む日本で確かに増加しています。

生きていくためには透析療法が必要だけれども通院ができなくなった、となると、現状では入院透析しか選択肢が残されていません。入院透析は週3回の透析を受ける目的ばかりで長期間入院し、基本的に退院は見込めない状況です。

また、ある意味特殊な治療分野での長期入院であり、受け入れられる病院も限られています。すると必然的にご自宅やご家族の住む地域から遠方となり、離れた都道府県では、満足にお見舞いも来てもらえない寂しい入院生活になることも少なくありません。

その点、在宅訪問診療で行うPDラストは少しでも長く自宅で過ごしたい、という患者さんの願いを叶えることのできる治療法です。終末期に対する治療方針を患者さんやご家族とあらかじめ相談し、ご容態が優れない時期でも自宅生活を継続する。本来のご希望に添った、自然な治療経過をたどっていく。人生の終盤にも生活の質を保とうという、今の時代に即した医療かと思います。

医療費削減にも効果

また、高齢化で膨張を続ける国民医療費を抑制する、という観点からも国を挙げて在宅医療(訪問診療)を整備し、入院ベッドを減らしているのが今の日本です。

患者さん、ご家族、医療者、行政全ての想いと思惑が一致しているのが在宅医療の推進であり、患者さんの幸福のためだけでなく社会的にも大きな意義があるのです。

PDラストの需要の高まり

患者団体、全腎協のホームページではPDラストの説明も

考え方・言葉ともにまだまだ周知されているとはいえない「PDラスト」ですが、実は透析患者さんの全国団体である全腎協のホームページにも言葉の解説が掲載されています。

今の状況は、「需要はあるけれど、実施してくれる医療機関がない」というとわかりやすいかもしれません。一生、透析と付き合っていくと知り、様々な情報を吟味する中で、患者さん側からこのPDラストに注目が集まることは自然なことでしょう。我々もこのPDラストの概念・治療を、望ましい形で世に広めていきたいと思っています。顧客のニーズに応え続けるのが医療機関でもありますから、透析患者さんの声が大きなムーブメントを起こす日も近いかもしれませんね。