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その不安感、不安障害かも―不安障害の症状と原因は?薬で克服できる?

その不安感、不安障害かも―不安障害の症状と原因は?薬で克服できる?
[医師監修] メディカルノート編集部

[医師監修] メディカルノート編集部

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不安障害とは不安やそれに付随する身体症状が強く現れる症候群の総称です。「些細なことが気になり、いつも不安で仕方ない」「人前に出るとひどく緊張して怖くなるので、人にかかわる場面を避けてしまう」「突然動悸が治まらず、息苦しさのあまり救急車を読んだが、病院についたら治まってしまった」―このような状態に当てはまる場合、不安障害という病気の可能性があります。不安障害にはパニック障害や全般性不安障害(GAD)、社会不安障害(社交不安障害とも:SAD)などがあり、その症状も様々ですが、総じて「強い不安」が主症状となります。この記事では、不安障害の症状と原因、治療の際に使われる薬(SSRI、SNRI、NaSSA、抗不安薬)と改善法についてご紹介します。

不安障害とは?「不安」「恐怖」のために生活が困難になる病気

不安障害は、不安を主症状とする症候群の総称です。

不安障害に含まれる症候群は複数の疾患がありますが、代表的な不安障害は「パニック障害」「全般性不安障害」「社会不安障害」「分離不安障害」などがあります。

なお、かつては強迫性障害および外傷後ストレス障害が不安障害の下位分類に置かれていましたが、DSM-5ではこれらは独立した不安障害となっています。

不安障害に含まれる病気―代表例

パニック障害(広場恐怖症)

パニック障害は、パニック発作、予期不安、広場恐怖を三大症状とする、不安障害の代表的な疾患です。

パニック発作では、突然訪れる恐怖や不安によって、動悸やめまい、呼吸困難などの強い症状が現れます。これらの症状により、患者さんは「自分は死んでしまうかもしれない」とすら感じるほどの恐怖を感じ、救急車で緊急搬送される場合もあります。

しかし、症状はすぐに消失し、検査でも異常はみられません。

全般性不安障害(GAD)―「不安」「心配」が慢性的に続く

特定の対象がないにもかかわらず、持続的な不安が6か月以上継続している状態を全般性不安障害と呼びます。この不安は、周囲や本人がいくら抑えようとしても解消されません。誰でも不安になることはありますが、全般性不安障害の場合、その強い不安によって自己コントロールが不可能となり、疲労感や集中力欠乏などの症状が現れます。

社会不安障害(SAD)―「あがり症」「緊張しい」では済まされない

社会不安障害とは他者がかかわる社会的な交流の場において著しい不安を感じる障害です。

何らかの状況で自分が行動を起こしたり、発言したりすることへの強い不安があり、生活に支障をきたす場合、社会不安障害と診断されることがあります。対人恐怖や赤面恐怖、視線恐怖、会食恐怖、嘔吐恐怖などの症状は社会不安障害に含まれます。

分離不安障害(SepAD)―子どもにも不安障害は起こる

分離不安障害は、幼児期に発症する不安障害の一種です。

人は幼い頃、母親に生活を依存しながら成長していきます。分離不安とは、母親や親せきなど、依存対象から離れることに対する猛烈な不安のことを指します。この不安が過剰なほど強く、学校や幼稚園に行ったり、一人で外出するのも難しくなってしまう場合は分離不安障害が疑われます。多くの場合、子どもは不安を直接表現せずに「お腹が痛い」「頭が痛い」などの身体的不調を訴えます。

その他の不安障害(近似のもの)

  • 一般身体疾患による不安障害
  • 物質誘発性不安障害
  • 特定不能の不安障害

不安障害と「不安な状態」の違いは?

人は誰でも不安を覚えることがあります。そのため、一部の方から「不安障害は病気ではない」ととらえられ、「気にしすぎ」「病気を理由にしている」など、患者さんに厳しい目を向けられてしまうこともまだあるようです。しかし、一時的な不安と不安障害は別物だと考える必要があります。不安障害と単純な「不安」との違いは、「強い不安や付随症状によって日常生活に支障があるか」と考えられます。また、不安な状態が途切れず6か月以上続く場合、ある特徴的な場面で不安が増強し、身体症状が現れる場合には注意が必要です。

不安障害の原因は?親との関係は影響するのか?

不安障害の原因は、まだはっきりとわかっていませんが、身体的要因(脳機能の異常)と心理的要因(ストレスや過去の精神的なショック体験、過労、睡眠不足、心労など)の2種類が考えられています。これらの二つが重なり発症することもあります。

幼少期の家庭環境や緊張した親子関係が発症に影響するという説もあります。ただし、親とのそうした関係がすべての不安障害に繋がるわけではありません。

不安障害にはSSRI、SNRIなどの抗うつ剤や抗不安薬が処方されることもある

不安障害の治療は薬物療法と精神療法が中心です。

不安障害の患者さんに出される薬は、SSRIなどの抗うつ剤や抗不安薬(ベンゾジアゼピン誘導体)が基本となります。

不安障害への薬、抗うつ剤の代表「SSRI」ってどんな薬?

SSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」に分類される薬で、その作用は「脳内セロトニンの増量」です。

脳の大脳辺縁系は本能、情動、記憶などに関係しており、扁桃体は快・不快、怒り、恐怖、などの情動をつかさどります。パニック障害などの不安障害ではこれらが「恐怖神経回路」の過活動を引きおこすといわれています。刺激によって「恐怖」感情が引き起こされると、その興奮が周辺の神経部位へ伝えられます。その結果、動悸、呼吸促迫や呼吸困難、震えやすくみなどの不快な症状を引き起こしてくると考えられています。

恐怖神経回路は主としてセロトニン神経によって制御されており、不安障害やうつ病の患者さんは脳のセロトニンが少なくなっていると考えられています。そのため、セロトニンの働きを強めるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が不安障害には有効であるとされるのです。
 

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『ストレスでセロトニンが不足する。セロトニン神経が弱るのはなぜか』

SSRIの種類―デプロメール®(ルボックス®)、パキシル®、ジェイゾロフト®、レクサプロ®

1.デプロメール®・ルボックス®

デプロメール®・ルボックス®は1999年に発売された国内初の選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI)です。初期のSSRIで、服用回数が多かったり併用禁止の薬物(ロゼレム®)があるなど使いづらい点が多少みられます。うつ病で使用される頻度は減少傾向にありますが、不安に対する効果は高く、不安障害には比較的よく用いられます。

実際に、社会不安障害に対する有効性を調べる試験もおこなわれています。この薬を飲む人とプラセボ(にせ薬)を飲む人に分かれ、服薬10週後の効果を比較したところ、デプロメール®・ルボックス®を飲んだ人たちの「恐怖感・不安感」および「回避」の点数が大きく低下しました。つまり、社会不安障害に有効なことが証明されているのです。

2.パキシル®

パキシル®は2000年に発売されたSSRIです。その効果には定評があり、一部のファンから「最強のSSRI」と表現されることもあります。ただし、他のSSRIよりも副作用が強く、特に減薬・断薬時に生じる離脱症状は一部で問題となりました。そのため、離脱症状をなるべく起こさないような新しいタイプのパキシル®(「パキシルCR®」や「パキシル5mg®」など)が発売され、開発が進んでいます。

3.ジェイゾロフト®

ジェイゾロフト®は2006年に発売されたSSRIです。効果は穏やかですが、副作用も軽めでバランスが良いといわれています。また、血中濃度半減期が長い(約23~24 時間)ので、1日1回の服用で済むのもメリットといえます。飲み合わせに関係する性質として、他のSSRIが関与する肝薬物代謝酵素に対する阻害作用が弱いとされます。

なお、ジェイゾロフト®は2014年にSSRIとして初めてOD錠(口腔内崩壊錠)が発売されました。

4.レクサプロ®

2011年発売、国内4番目の選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI)です。他のSSRIとの最大の違いは、セロトニン系の神経に特化して選択的に働くことです。

既存のSSRIのなかでセロトニン取り込み阻害作用の選択性が最も高く、ノルアドレナリンやドパミンの取り込み阻害作用が相対的に弱いため、これまでのSSRIよりも副作用(口の乾きや便秘、心毒性、低血圧、頻脈、悪心、低血圧など)が軽いとされています。

効果の強さと副作用の少なさのバランスに優れてることから「もっとも継続性・有効性の高いSSRI」とも評価されることがあります。また、レクサプロ®は「開始用量=治療用量」という特徴もあります。

これまでのSSRI(デブロメール®、ルボックス®、パキシル®、ジェイゾロフト®)は、服用開始時は少ない量から始め、数段階にわけて治療用量(効果が発揮されるのに十分な量)まで増量していきます。たとえばジェイゾロフト®の場合、標準的には25mgから始めて、50mg・75mg・100mgと少しずつ増量していかなければいけません。1週間ずつ増量しても治療用量に入るまでに4週間の時間が必要です。

しかしレクサプロ®は最初から治療用量の10mgを服用することができます。そのため効果が速く感じられる傾向にあります。

正式な効能として、社会不安障害に対してはルボックス®、デプロメール®、パキシル®、レクサプロ®、パニック障害にはパキシル®とジェイゾロフト®が使用可能とされています。

不安障害への薬、新しい抗うつ剤「SNRI」「NaSSA」ってどんな薬?SSRIとの違いは?

正式な効能として承認されていませんが、SNRIやNaSSAなどの抗うつ薬も不安障害には有効です。SSRIで効果不十分か、副作用が強く飲み続けられない場合などに応用されています。

*SNRIについて

1.トレドミン®

2000年に発売された日本で最初のSNRIで、セロトニン系とノルアドレナリン系の神経にだけ選択的に働くのが特徴です。

セロトニンとノルアドレナリンを増やしますが、効果はマイルドなほうです。ただし効き方が速いため、早期治療効果が期待されます。

2.サインバルタ®

2010年発売、国内2番目のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。SNRIのなかではセロトニンを増やす割合が高く、SSRIに近めのSNRIともいわれることがあります。減薬時に離脱症状が生じやすいともいわれます。

3.イフェクサー®

2015年に発売されたSNRIです。イフェクサー®はセロトニンとノルアドレナリンを増やす以外に、軽度ながらドーパミンも増やします。低用量ではセロトニンを増やす割合が高く、高用量ではノルアドレナリン系神経への作用が強くなる特徴を持っています。

*NaSSAについて

レメロン®、リフレックス®

レメロン®、リフレックス®はNaSSAという新しい抗うつ薬です。

NaSSAもSNRIと同じくセロトニンとノルアドレナリンの両方を増やすのですが、効き方が異なります。SSRIやSNRIは、セロトニンやノルアドレナリンが吸収されて効果が消えないようにすることでこれらの物質の量を増やす作用を持ちます。一方、NaSSAはセロトニンやノルアドレナリンの分泌を促進することでこれらの濃度を増やす構造になっています。作用機序が違うため、SSRIやSNRIが効かないときにも効果が得られる可能性があります。安全性については、眠気や倦怠感、体重増加が多くみられるものの、吐き気や下痢など消化器症状はやや少ないといわれています。眠気を誘発するため、不眠ぎみの方には効果が高いとも考えることができます。

※すべての不安障害が抗うつ剤によって治るわけではありません。また、患者さん全員に抗うつ剤が処方されるということもありません。抗うつ剤はあくまで治療法の一つの手段として考えましょう。
 

抗うつ剤についてはこちらの記事もご覧ください

『過大評価されている抗うつ薬の効果―「魔法の薬」ではない』

不安障害への薬、抗不安薬(ベンゾジアゼピン誘導体)の特徴と種類

アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)の分子

抗不安薬は、不安や緊張を和らげる薬の総称です。「安定剤」とも呼ばれます。

抗うつ剤に比べてすばやく効果が現れるため、急なパニックや震えといった急性症状をすぐ治めたいときに適しています。代表的なのはベンゾジアゼピン系抗不安薬で、一般的に処方される抗不安薬のほとんどはこのタイプ薬です。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、中枢神経系の抑制に関与する「GABA」という物質の作用を増強します。GABAの働きが強まることによって、脳内で過剰に起こる不安や緊張といった興奮を沈め、気持ちを穏やかにする働きを持っています。

抗不安薬は、抗不安作用の強さと作用時間の長さから分類されます。作用時間が長いほど良いというわけではなく、その人に最も適した抗不安薬が医師によって判断されます。また、作用の強さはあくまでも目安で、個人差があります。

抗不安薬 表

半減期:服用した薬の濃度が体内で薄まる時間の目安

不安障害を改善・克服するには

不安障害は症状そのものへの悩みだけでなく、能力への障害や機能障害が仕事や日常生活へ与える影響が問題になります。不安障害患者のQOLの低下の程度はうつ病にも劣らないといわれています。したがって、不安障害の症状を軽減させるだけでなく、症状が出た場合もそれを制御しながら仕事や日常生活を維持する工夫が重要です。

不安障害の完治に向けて―仕事や生活などQOLを上げるために

不安障害という病気を理解する

不安障害は本人も他者も「気にしすぎ」ととらえ、病気と考えずに放置してしまうことがよくあります。不安障害は精神疾患の一種であり、治療で改善することができます。自分は勿論、周囲にも正しく不安障害を理解してもらうことが大事です。

生じた不安をコントロールする方法を身につける

不安を感じたとき、感じそうなときには自分でリラックスする方法を試してみましょう。よく効くといわれるのは、呼吸法やヨガ、音楽、アロマなどです。

生活環境の改善―適度な運動、睡眠、食事をこころがける

体の健康は心の健康につながります。

規則正しい食事、睡眠、適度な運動を維持することで、自律神経系を安定させ体の調子を整えます。タバコやコーヒーなど、化学物質を含む嗜好品は過剰に摂取しないようにすることも不安の改善に効果的です。
 

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『生活習慣の改善こそうつの予防・治療。十分な睡眠と控えめな飲酒を』

不安やストレスを乗り越えることを目標にする

不安やストレスのない生活を送るのは不可能です。完全になくすのではなく、不安を受け止め乗り越えるのだという気持ちを忘れないようにしましょう。

ストレスを乗り越えたとき、達成感や自信が生まれるはずです。その感覚を大事にして、前向きな気持ちを持つことができれば自然と不安も改善していくでしょう。

不安障害の適切な治療を受ける

精神疾患は診断が難しい病気です。自分が不安障害かもしれないと思ったら、できるだけ具体的に症状や「何に困っているか」を伝えましょう。セカンドオピニオンを受けるのも一つの手です。相性の良い医師をみつけ、長期的に通院して信頼関係を築いていってください。