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公開日 : 2016 年 11 月 02 日
更新日 : 2017 年 07 月 21 日

遺伝子治療・がん遺伝子治療3-北青山Dクリニックが実践するCDC6shRNA療法とがん治療の将来

目次

1.CDC6shRNA療法

北青山Dクリニックで現在提供している「がん遺伝子治療」は、「がん抑制遺伝子」などの「遺伝子」を単に投与するものではなく、「がんの無限増殖能に関わるCDC6タンパク」を標的とする「RNA干渉療法」を利用しています。RNA干渉療法を用いた遺伝子治療は他に類がなく、この治療は遺伝子治療の中でも斬新で画期的なものと言えるでしょう。治療の目的はCDC6タンパクを消去することで、その際に投与される複数の因子の中でCDC6shRNAが最もキーになる物質です。そこで私はこの治療を「CDC6shRNA療法」と命名しました。

CDC6shRNA療法においては、がん細胞の中に確実にCDC6shRNAを送り込むために、その運び屋(ベクター)として病原性を取り除いたレンチウイルスを用いています。また、正常細胞にはなく、がん細胞のみに発現しているテロメラーゼと接触したときに薬効が現れるようにhTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)を搭載し、正常細胞には影響を与えないよう工夫されています。

レンチウイルスによって効率よく細胞の中に入り込み、がん細胞のみでCDC6shRNAが作動して、がん細胞中のCDC6タンパクが作られなくなります。CDC6タンパクは、がんの無限増殖能の生みの親であると考えられていて、CDC6タンパクが枯渇すると、がん細胞が無限増殖できなくなります。そうなるとがん細胞はもはや、「がん細胞」ではなくなり、正常細胞と同様におとなしく老化するか、自己消去して消失(アポトーシス)することになります。

このようにCDC6shRNA治療は、がん細胞を殺傷するのではなく、本来の正常細胞に戻すように設計されているという点で、今までにないコンセプトであるとも言えます。

ウイルスベクターとは?

がん遺伝子治療では、遺伝子や核酸などの作用物質をがん細胞の核内に運ぶ必要があります。この際、様々なバリアを乗り越えて効率よく核の中まで作用物質を運ぶ役割を果たすものを「ベクター」といいます。何がベクターとして機能しうるか、については様々な研究が行われてきましたが、現在では「ウイルスベクター」と「プラスミドベクター」が有力視されています。

風邪、帯状疱疹、インフルエンザ感染症などはウイルス性の病気です。これらは、ウイルスが細胞内に入り込むことによって感染します。ウイルスベクターは、ウイルスがもつこの力を利用して遺伝子などの作用物質を細胞の核の中まで運びこもうという発想から開発されました。ウイルスを人体に投与することに問題は無いのかと疑問に感じると思いますが、ベクターとして使用されるウイルスは病原性を取り除いているので心配はありません。ウイルスの病原性が取り除かれても、細胞内へ入り込む力は保持されるので、その力を利用して有効成分を細胞の核内に運びこみます。

現在、優れたウイルスベクターとして期待されているものは二つあります。一つはアデノ随伴ウイルス(AAV)、もう一つがレンチウイルスとよばれるものです。レンチウイルスはHIVウイルスの病原性を除去して作成されたもので、ウイルスベクターの中でも特に大量の作用物質を運ぶ能力をもつうえに、効率よく細胞の核内に取り込まれて安定した薬理効果を発揮することが分かっており、遺伝子治療においては高く評価できるウイルスベクターと言えます。

RNA干渉療法とは?

RNA干渉療法は、病気の原因となっている「タンパク」の合成に関与するRNAを破壊する治療法です。それによりそのタンパクが作られなくなり、病的な現象が消失します。生理現象のみならず病的な現象において様々なタンパクが関与しています。 RNA干渉は「病気の原因となるタンパクを消去して細胞を正常化させる治療」と換言できます。CDC6shRNA治療では、ターゲットとなるタンパクは、がん細胞の悪しき振る舞いの原因となるCDC6タンパクです。それをRNA干渉で消去して、がん細胞を正常化させることを意図しています。

RNAは複数存在しますが、タンパク質の生成に関わる主要なRNAはメッセンジャーRNAとよばれ、それは対応する小さいRNAによって分解されるという特性があります。メッセンジャーRNAを分解する小さいRNAはsiRNAと呼ばれます。RNA干渉では、問題を引き起こしているタンパク質に関与するメッセンジャーRNAに対応するsiRNAを治療に用います。

しかし、ここで問題があります。RNA干渉ではsiRNAが作用するわけですが、siRNAは導入時に重篤な副作用を作ることがあります。そのため、実際に導入されるものは安全に核内に送り込むことのできるshRNA(ショートヘアピンRNA)になっています。話は少し複雑になりますが、安全に導入されたshRNAが核の中で分解して所望のsiRNAになります。

こうして、ウイルスベクターに搭載して送り込む作用物質はshRNAで、ターゲットであるCDC6タンパクに対応するshRNAが「CDC6shRNA」と呼ばれます。

CDC6とは?

「CDC6」はcell division cycle 6 の略で、細胞分裂の際のDNAの複製や合成において重要な役割を果たすタンパクです。正常細胞においては細胞分裂サイクルの一時期にしか発生しませんが、がん細胞においては細胞分裂サイクルの全ての時期に豊富に発生しています※。それにより、がんの無限増殖能が維持されている可能性があり、これを制御することで、がん細胞の無限分裂や無限増殖が抑えられるのではないかと考えられました。「CDC6」タンパクも他の様々なタンパクと同様に対応する遺伝子=「CDC6遺伝子」がその産生の源になります。CDC6遺伝子がCDC6タンパクを合成する過程をRNA干渉と言う先端技術でブロックすることにより、がん細胞の特性の根源ともいえるCDC6タンパクを消去する治療、それがCDC6shRNA治療です。

※CDC6タンパクは、正常細胞内では静止期(G1期)のみに存在しています。細胞の増殖は静止期(G1期)のあとの合成期(S期)、第2静止期(G2期)、分裂期(M期)という順で進みますが、CDC6タンパクは静止期以外の周期では見られません。それに対して、がん細胞ではCDC6タンパクが細胞周期の全てのステージに豊富に存在し、がん細胞の増殖を促し続けているのです。

CDC6shRNA療法について

CDC6shRNA療法とは、

1:「CDC6遺伝子の情報を伝えるメッセンジャーRNA」を標的とし、

2:これに「対応するshRNA」を「ウイルスベクター」によって「がん細胞の核内」に送り込み、

3:shRNAから作られた「siRNA」によりメッセンジャーRNAを破壊して、

4:「CDC6タンパク」の発現を抑制し、がんの無限増殖を止める、

という治療法です。

CDC6shRNA療法の適応になるがんは?

CDC6shRNA治療は、これまで、乳がん、胃がん、肺がん、膵臓がんなど様々ながんの治療に応用されていますが、中でも特に効果が期待できると考えられているのが、スキルス胃がんと乳がんです。しかし、未認可の新しい治療であることから、医療倫理的には、原則として標準治療で対応できない進行がんがその対象になります。

具体的なケースとしては

1:がんと診断された時点で標準治療では根治が見込めないほど進行しており、適切な治療法が見当たらない。

2:根治を目指した治療ではがんの進行が抑えられないので化学療法に移行したが、治療効果が乏しい、もしくは副作用が激しく過ぎて治療が続けられない。

などが挙げられます。

今後、CDC6shRNA治療の効果や安全性が確立されれば、早期のがんや治療後の再発予防など、上記に限らず治療適用がさらに広がるでしょう。

CDC6shRNA治療:薬剤投与方法

「CDC6shRNA」の投与経路は複数あり、病態に応じて使い分けられます。

がんの存在する部位に直接注射する方法が最も確実です。しかし、進行がんは身体の中で広範囲に転移していることが多いので、複数の投与経路を併用せざるを得ないことがしばしばあります。

例えば、スキルス胃がんで腹膜播種がある場合は、がんは胃の他に腹腔内にばら撒かれており、目に見えないレベルで全身を巡っている可能性があります。この場合は、CDC6製剤を、胃の病変に直接注射するのに加えて、腹腔内にも散布し、静脈注射で全身にも送り込みます。胃の病変に直接注射する場合は、エコーをガイドにして皮膚を介して胃の病変に針を刺して行うか、内視鏡を用いて胃の粘膜側から病変に針を刺して行います。腹腔内に散布するのは、エコーを用いて腹腔内にカテーテルなどを挿入して薬剤を注入します。

また、肝臓転移や肺転移などに対しては、直接注射できないことがあるので、カテーテルを用いて、がんに栄養を運んでいる血管(動脈)に薬剤を送達する場合もあります。直接全体に注射することが困難なほど大きな乳がんに対してもカテーテルを用いてがんの栄養動脈に薬剤を送ることがあります。

今後、様々な送達法が検証されて最適な投与方法が確立されることが期待されます。

CDC6shRNA治療:薬剤の投与量

治療に必要な薬剤の投与量は、治療のターゲットとなる「がん細胞の総数」や「がんの存在部位」、そして「患者さんの生命活動レベル」などに応じて異なります。北青山Dクリニックでは、2009年から100例以上のがんに対してCDC6shRNA治療を提供していますが、必要な薬剤投与量について試行錯誤を繰り返してきました。この治療経験を参考にして、現在、安全かつ効果が期待できる薬剤投与量を患者さんごとに決定しています。

CDC6shRNA治療:治療の目標

この治療の対象となるのは「標準治療の適応がない進行がん」ですが、全ての進行がんを根治できる夢の治療ではありません。

今までの治療例の中には、既存の治療法では進行を止められなかったがんに対して劇的な効果を示した例もあり、これからのがん治療における有力な治療法の一つとして期待できると判断しています。一方で、治療適用や効果判定法の確立、治療薬のコスト軽減、CDC6過剰発生の機序の解明などの課題もあり今後の進展に期待しています。

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2.最後に:進行がん・難治性がんに対する治療の目指すべきところ

CDC6shRNA治療により、標準治療では改善できない病状から回復しその後も継続して健康を維持している方が何人もいらっしゃいます。しかし、臓器不全を来しているような、末期がんの中でも最終段階の患者さんを回復させることは残念ながら実現できていません。効果を期待してこの治療に賭けてくれた患者さんを救えなかった時の無念は、言葉では言い表せませんが、それらの患者さんから教えられることがあります。

もう治療法がないと宣告され回復の舞台を失った患者さんは、絶望の淵に立たされます。そして、エビデンスがない治療法でも可能性があるならばそれを果敢に受け入れます。その時、その眼は希望に輝いているのです。最後まで闘病を望み、その機会を得た患者さんは、お亡くなりになるまで充足感を得て無念さを感じさせません。

治療の限界を判断し、患者さんやご家族にその事実を告げるのも医師の役目です。しかし、有効な治療を開拓し続け患者さんと最後までがんの克服を目指すのも医師の重要な役目でしょう。その役目を全うするには、人としての極めて純粋な気持ちと医療の発展に対する真摯で飽くなき思いを持ち続けなければいけません。

実際、医療の現場には、末期がん患者さんと最後まで共に歩み、最期を看取るという医師も数多く存在します。もう後がないというがん患者さんに対して最後まで希望を持ってもらいながら治療をするのも医師の責任だという思いがその背景にあります。未だ克服できない疾患の一つ「がん」に直面している私たち臨床医の重要な使命は、正当医療をしっかりと遵守すること以上に、遺伝子治療に限らず効果が期待できる新たながん治療の開拓と普及を進めることにあると思います。そのために必要なことは、学閥や国家間の障壁にとらわれない医師や医療機関のネットワークを構築することです。「言うは易し、行うは難し」というところもあるでしょうが、がん治療にイノベーションを巻き起こしたいと考えています。

最後になりますが、進行がんの患者さんに対するCDC6shRNA治療の目指すべきは「がんとの共存」だと感じています。今までの治療は、「がんを根絶させる」ことを求めて開拓されてきました。周知のとおり、早期がんに対しては「がんの根絶」は実現できていますが、どんな最先端医療も進行がんや難治性がんの場合には期待された結果は得られていません。最終的には治療効果よりも健康被害が大きくなってしまう化学療法にあくまで固執するのではなく、がんとの共存を目指した治療法を確立したいものです。たとえ進行がんであっても、高血圧や糖尿病などの生活習慣病と同様、病状をコントロールしながら生活の質を高く保っていくことに主眼を置く。これからのがん治療の目指すところはそのような形かもしれません。

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