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乳房超音波/エコー検査とは? 乳がん検診への導入も検討されている検査法の内容に迫る(東京都新宿区)

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  • 公開日:2016/12/16
  • 更新日:2017/01/25
乳房超音波/エコー検査とは? 乳がん検診への導入も検討されている検査法の内容に迫る(東京都新宿区)

近年、世界的に乳がんが増加し、日本では乳がんによる死亡率が急増しています。乳がんによって命を落とさないためにも、病気を早期に発見することが重要です。乳がんを早期に発見するための検査法のひとつに、乳房超音波(エコー)検査という方法があります。この超音波検査とはどのような検査方法でしょうか。超音波診断に詳しい国立国際医療研究センターの安田秀光先生にお話を伺いました。

超音波検査でわかること

「乳房超音波検査」とは、むね(乳房)に超音波を当て、むね(乳房)の組織を画像化することで、乳房に病気がないか検査する方法です。超音波検査は名前のとおり、超音波を利用します。超音波はものに当たると反射してもどってきます。この超音波が跳ね返ってきたシグナルを画像に変換することで、むね(乳房)の組織の状態を調べます。超音波検査には痛みがなくほとんど無害です。

それではこの検査では、どのようなことがわかるのでしょうか。むねの病気と聞いて、最もよく連想される病気は「乳がん」でしょう。しかし、乳房には「乳がん」以外にも様々な病気があります。この乳房超音波検査では「がん(悪性腫瘍)」以外にも「良性腫瘍」「乳腺症」などの病気を診断することができます。

1.がん(悪性腫瘍)

乳房にできるがんのことで、一般的に「乳がん」と呼ばれます。乳房にかたいしこりができることで発見されるケースが多いですが、近年ではしこりにはならないタイプの乳がんも発見されるようになってきました。

がんは、周りの正常な細胞を破壊し、放置しておくと血液やリンパの流れに乗って他の離れた臓器(骨・肺・肝臓など)に転移していきます。そのため乳がんと診断された場合は手術や抗がん剤・放射線による治療を検討していく必要があります。

2.良性腫瘍

乳がんのようにしこりができることがありますが、乳がんとは異なり、周りの組織を攻撃したり、ほかの臓器へ転移することはありません。良性腫瘍は、線維線(せんいせんしゅ)や嚢胞(のうほう)が一般的ですが、形・性質など様々なタイプがあります。ほとんどの場合、命に危険を及ぼすことはありませんので、そのまま経過をみます。必要があれば摘出手術を行うこともあります。

3.乳腺症

乳腺症は年齢とともに発症しやすくなり、20代後半からはじまり、30~40歳代の女性に多くみられる乳腺の一種の加齢の変化です。主な症状としては硬結(こうけつ)、乳房痛、異常乳頭分泌が挙げられます。乳腺症には,主として卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンというホルモンがかかわっており,閉経後はこれらの症状は自然に軽減します。

治療を必要とするものはほとんどありませんが、乳がんとの区別が難しい場合もあり、精密検査が必要になることもあります。

胸にしこりや痛みといった症状がみられた場合や、他の検査で「さらなる検査が必要」と判断された場合には、この乳房超音波検査を行い、原因となっている病気を調べていきます。

ほかの乳がん検査方法とそれぞれの違いとは?

乳房超音波検査以外にも、乳がんを調べる方法がいくつかあります。

乳がん検診で用いられる検査は主に4つ

【乳がん検診の項目】

・問診

・マンモグラフィ

・視触診

・超音波(検診項目として採択するか検討段階であり、一部の地域で用いられている)

※上記は乳がん検診(一次検査)の項目です。一次検査で「要精密検査」という結果が出た場合には、二次検査(精密検査)を行います。

どの検査を行うかは、検診の方針や患者さんの状態によって異なります。「視触診+マンモグラフィ」は、「検診で実施することで受診患者さんの乳がん死亡率を減少させた」という科学的なデータが報告されており、検診時の実施が推奨されています。

超音波検査の必要性

では、超音波は乳がん検診で行わなくてもよいのでしょうか。確かに、超音波検査は乳がん検診の必須項目として推奨されているわけではありません。しかし超音波診断を行うことで、新しい病変の発見や、正確な診断につながることがあります。

例えば、乳房に厚みのある、または乳腺が発達している方では、マンモグラフィで結果がわかりづらいケースがあります。そのような場合には超音波による診断がとても有用です。また、超音波検査はマンモグラフィで発見されにくい小さな腫瘍を見つけることもあります。「超音波検査を行うことで検診患者さんの死亡率が減少した」というデータはいまのところ発表されていませんが、超音波が乳房の病気の診断に有効であることは間違いありません。

超音波検査の重要性を調べた「J-START」

では「マンモグラフィのみ」の場合と「マンモグラフィ+超音波検査」の場合を比べると、どれほど検査結果が向上するのでしょうか。その答えを検証するために「J-START※1」という調査が行われました。

研究の内容とは?

J-STARTは、2007~2011年にかけて行われた調査です。全国の76,196人の女性に協力をいただき実施しました。参加女性は「マンモグラフィのみ」「マンモグラフィ+超音波検査」の2つのグループに分かれてもらい、それぞれの検査を2回(2年間隔)受診してもらいました。

マンモグラフィと超音波の両方を行うと早期乳がんの発見率が通常の約 1.5 倍

この調査から、マンモグラフィのみではなく、マンモグラフィと超音波検査を両方行うことで、早期乳がんの発見率が約 1.5 倍になるという結果が得られました。このことから超音波検査を併用して行うことの有用性が明らかとなりました。

その一方で、「マンモグラフィ+超音波検査」のグループでは、「マンモグラフィのみ」のグループよりも、検査の負担が増えてしまうことが明らかになりました。たとえば、要精密検査と診断された患者さんがより多くなり、針生検など身体に負担のかかる追加検査の回数も増加していたことがわかったのです。これは超音波検査をすることで、より多くの「病気の可能性」を拾うができるがゆえに起きてしまう問題です。今後は、超音波検診導入によるメリットとデメリットとのバランスを厳密に検討する必要があります。

超音波診断の重要性が示されたとても重要な研究結果

超音波検査を用いた乳がん検診に関する大規模な調査(ランダム化比較試験※2)はJ-STARTが世界で初めての研究です。この調査の結果は、2015年に世界でも有名な医学雑誌「the Lancet」に掲載されました。この研究結果の報告によって、日本や世界で増え続ける乳がんへの対策として「超音波検査」がさらに期待されるようになりました。

超音波検査を行ったことで発見された症例

では、実際に超音波を使うことでどのような病気を見つけることができたのか、具体例を紹介しましょう。

ケース1「わかりにくい嚢胞(袋)の壁にできるがん」

マンモグラフィや超音波の結果から、乳房のなかに「袋」のような影をみつけることがあります。このような影を見つけた場合には、良性腫瘍のひとつである「嚢胞(のうほう)」である可能性が高いと考えられます。

ですが、さらに超音波でよく調べてみると、袋のへりや壁の部分に少しおかしな変化が見つけられました。実はこの嚢胞の壁の部分に、がんが潜んでいたのです。ただの嚢胞だと思ったら「がん」を見逃していたかもしれないケースでした。

ケース2「血液の流れも見える超音波だからこそ発見できたがん」

とある70歳の女性の乳房に確認された「しこり」を検査したときのことでした。しこりの影は、一見、以前より経過をみていた1つの良性腫瘍のように見えました。しかし超音波でよくよく見ていくと、近くに新たにできた「2つ目の小さな腫瘤」だと判断できました。

さらに超音波検査では「血液の流れ」も見ることができます。確認すると、新たな腫瘤に血液が豊富に流れていることがわかりました。一般的に、高齢の方の良性腫瘍や乳腺症であれば、血液の流れが豊富にみられることはまずありません。このことから、2つ目の小さな腫瘤はがんである可能性が高いと判断できました。手術で取り出してみたところ、3mmのがんであることが確認できました。

ケース3「他の検査ではすぐにはわからなかったがんの場所を発見できる」

乳がん検査では乳房に「石灰化」が発見されることがあります。石灰化とは体の中のカルシウムが沈着している状態のことです。この石灰化の部分を調べてみると、がんだと判明することもあります。

ある患者さんでは、マンモグラフィを行い、乳房に小さな石灰化があることがわかりました。しかし、石灰化がどの場所にあるのか、正確な位置まではすぐには把握できませんでした。そこで超音波で調べてみると石灰化の場所をみつけることができました。この部分の細胞をとってみると、がんであることがわかりました。

「石灰化は超音波で確認することはできない」とよく言われますが、適切な機器をつかい、充分な技能があれば石灰化も発見することができ、その場所まで推測することができます。石灰化を見つけるにはかなり熟練した技術がいりますが、検出することは十分に可能なのです。

 

安田先生

このような特徴を持つ超音波技術をどう使っていくか。

超音波診断を行うことで、新たな情報を得ることができます。このことは、病気を正しく、より早期に発見するうえで非常に大切な役割を果たします。

その一方で、検診ですべての患者さんに超音波診断を行ってしまうと、患者さんの負担を増やしてしまう可能性があります。超音波検査のメリットを生かしつつ、過度な負担が増えないような検診の体制を考えていかなければいけないでしょう。

また、乳がんの発見には「検診の診断方法」も重要ですが、「検診を受けるタイミング」もとても重要です。日本は医療機関が整っており、いつでも病院にかかることができます。これは非常に恵まれた環境といえるでしょう。一方で、「病気に気づいてから、進行してからでないと受診をしない」という患者さんが多いことも事実です。乳がんを早期に発見するためにも、定期的に検診を受けるとよいでしょう。

 これから妊娠出産の時期を迎える人は、その前に一度乳房の健康診断を受けるとよいと思います。妊娠中の方には、X線を用いるマンモグラフィの使用が推奨されていません。また、妊娠することで乳腺が発達するため、超音波診断の精度も落ちてしまうことがあります。お子さんが年子であった場合には、出産、授乳、妊娠、出産・・・と繰り返しているうちに、異常を感じても数年間は乳房のチエックを受けることが難しくなります。乳房検査を受けられるタイミングを逃さないためにも、これから妊娠出産の時期を迎える人は一度健康診断を検討されるとよいでしょう。

乳がんは命にかかわる病気です。乳がんで命を落とさないためにも、適切なタイミングで、自分にあった検査を受けることで、ご自身の健康状態を確認していくことが重要です。

 

※1  J-START (Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial)

超音波検査を併用する検診と併用しない検診(マンモグラフィのみ)の比較試験を実施し、超音波検査が有効かどうかを検証する研究。厚生労働省国家的プロジェクトとして行われた。

※2 ランダム化比較試験

最も質の高い科学的証拠が期待できる研究試験のデザインの 1 つ。既知の試験参加者の属性や影響を及ぼし得る未知の因子による偏りを 2 群間で少なくするために、手順に従い介入群と非介入群を無作為に割り付ける。新しい治療方法や予防を含めた医療の臨床試験で、科学的な証拠を検証するために用いられることが推奨されている。

 

【参考URL】

1)公益財団法人日本対がん協会ホームページ

2)乳腺症 日本乳がん学会HP

3)J-START 公式HP

4)東北大学プレスリリース

 

安田 秀光

安田 秀光先生

国立国際医療研究センター病院 乳腺外科医長

医師になった年は超音波が臨床的に広く使われるときにあたり、その時期から超音波検査に従事する。長年にわたり超音波診断に携わった経験から、乳房超音波診断ガイドラインの制定や、講演を通じ乳房超音波検査の普及に努めてきた。長年の経験が必要となる超音波技術の指導者として積極的に活動している。日々の診療では、超音波診断の簡便、無害、高分解能な利点を生かし、微小病変の診断と治療、腋窩センチネルリンパ節の評価など、整容性をたもちつつ、根治を重視した治療を展開している。

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