Medical Noteとは

大腸がんが肝転移したとき−生存率、自覚症状は?(東京都新宿区)

  • #肝臓がん
  • #大腸がん
  • タイアップ
  • 公開日:2017/01/11
  • 更新日:2017/01/25
大腸がんが肝転移したとき−生存率、自覚症状は?(東京都新宿区)

がんは日本人の死因第1位です。「大腸がん」は、「肺がん」に続いて2番目に死亡率の高いがんです。近年では、健康診断や胃がん検診やピロリ菌の除菌など、胃がんに対し早期発見やリスク軽減策をとられる方が増えたこともあり、胃がん罹患率・死亡率は減少の兆しを見せています。その一方で大腸がんは、運動不足や食生活の欧米化などによる生活環境の変化に伴い、統計医学的にも最も急速に増えているがんとされています。

大腸がんは他の重要な臓器に転移しやすいことでも知られており、とりわけ大腸と強い関わりを持つ「肝臓」は最も大腸がんの転移が発見されやすい臓器です。今回は「大腸がんの肝転移」について、国立国際医療研究センター病院肝胆膵外科医長 枝元良広先生にお話を伺いました。

肝臓がんの種類−原発性肝臓がんと転移性肝臓がんの違い

肝臓

肝臓がんはがんの原発巣(げんぱつそう・最初にできた場所)がどこかによって大きく2つの種類に分けられます。肝臓で発生したがんは「原発性肝臓がん」と呼ばれ、それ以外の部分で発生し肝臓に転移したがんは「転移性肝臓がん」と呼ばれています。肝臓がんが原発性であるか転移性であるかによって、がんのでき方が異なり、それによって治療方法も変わります。

原発性肝臓がんとは

原発性肝臓がんは年間7~8万人の方がかかるがんです。肝臓を構成している「肝細胞」と「胆管細胞」という2つの細胞のうち、いずれかを原発巣として発生した肝臓のがんを指します。また、B型・C型の肝炎を持つ患者さんは、この原発性肝臓がんを発症する確率が高いとされています。

転移性肝臓がんとは

転移性肝臓がんは、子宮がん、胃がん、そして大腸がんなど肝臓以外にできたがんが、肝臓に転移したものを指します。

今回取り上げる「大腸がんの肝転移」は、大腸でできたがんが肝臓に転移してしまった場合を指し、「転移性肝臓がん」の中でも最も多く見られる種類です。もともと大腸がんは、肺・脳など命に関わる重要な臓器に転移してしまう可能性が高く、その中でも最も転移しやすい臓器が肝臓です。

大腸がんが肝臓に転移してしまうメカニズム

肝臓

肝臓がフィルターの役割をする

先ほど転移性肝臓がんは大腸からの転移が最も多いとお伝えしました。これは肝臓が大腸から吸収された栄養分とともに、血液に乗って流れてくるがん細胞を受け止める、いわばフィルターのような役割をしているからです。大腸と肝臓が「門脈」という血管でつながっており、大腸を含む消化器で吸収された栄養分はこの門脈を通り、一度全て肝臓に流れ込みます。この流れに乗ってがん細胞も大腸から肝臓へと運ばれ、そこに蓄積してしまい肝転移を引き起こします。

肝臓はがん細胞を一度せき止め蓄積しますが、これに気づかずがんが肝臓に転移し悪化してしまうと、がんがさらに肺やその他の臓器にまで転移してしまうこともあります。裏を返せば大腸がんの肝転移は、早期発見し、完全に治すことができれば、その先の臓器にがんが転移することを防げます。合併症の「腹膜播種」やがんの「リンパ節再発」などの事象がなければ、肝転移の早期発見と治療によって患者さんががんという疾患そのものから解放される可能性も高くなります。

大腸がん患者はすべて肝転移をおこすのか?

大腸がんが肝臓に転移する割合

大腸がんが肝臓に転移する割合
腹腔鏡による転移性肝がんの術中画像 提供:枝元良広先生

大腸がんの肝転移では、大腸がんそのものと肝臓に転移したがんを同時に発見する割合は大腸がん患者全体の10%、大腸がんを手術で除去した後に肝転移を発症する確率は大腸がん手術の受けた人のうちの7.1%という報告があります。大腸がん患者本人の免疫力が強いと、肝臓に流入したがん細胞を免疫細胞が壊し、転移を食い止めることもありますが、どんなに小さな大腸がんでも、肝転移の可能性はゼロではないと心得ておく方がよいでしょう。

大腸がんの位置によって肝転移のリスクは変わる?

さまざまな施設や病院の臨床研究で大腸がんの発生部位と肝転移の関係性について研究をしていますが、今の所これといった有意差が出ていないのが実情です。しかし私の臨床経験としては、右側の大腸にがんができる右半結腸の患者さんの方が、肝転移を発症する方がやや多い印象があります。なかなか統計学的に明確な差が出てこないのは、おそらく大腸がんの発生する分母自体が、部位によってばらつきがあるせいではないでしょうか。大腸がんの発生部位別に肝転移の確率を調べようにも、発生部位によって症例そのものの数が大きく開いてしまっていると、正確な数値を出すのが難しくなります。

また近年では、大腸の右側と左側ではがんの遺伝子学的な変化が異なるということが発表されました。肝転移との関係性はまだ不明ですが、この発表により大腸がん治療は発生部位によって治療方法を選択も考慮した方がいいという流れが生まれつつあります。

肝転移の要因

大腸がんの肝転移の因果関係は、遺伝的要因、生活習慣を含め未だに証明されていません。もともと肝疾病はがんに限らず因果関係のわからないものが多いので、まだまだ研究の余地があると思っています。

また今のところ、がんの肝転移前から肝臓に肝炎など疾患があった場合でも、それらとがん細胞に相互関係はないと考えられています。ただし、肝臓がんと肝疾患が併発していると、治療の面では影響が出ることもあります。手術ができるのか、手術と抗がん剤治療を併用しても安全かなどを医師が的確に判断することが重要です。

大腸がんの肝転移における生存率

入院患者

がん治療では「5年後生存率」がひとつの目安となります。現在がんを完全に取り除く根治的な治療を行なった際、肝臓がんの5年後生存率は40~50%です。これは、原発性肝臓がんでも、転移性肝臓がんでもほとんど変わりません。1980年代には20~30%であったことを考えると、医療の進歩が垣間見れます。

転移性肝臓がんの生存率

大腸がんの肝転移グレーディングの表

大腸癌研究会では2006年に「大腸癌取扱い規約:第7版」の中で、大腸がんの肝転移に関するグレーディングを行い、各グレードによる5年後生存率を統計学的に示しました。

<グレードの基準>

・大腸がんのリンパ節転移の個数

→NX:リンパ節転移の程度不明

 N0:リンパ節転移なし

 N1:リンパ節の転移総数が3個以上

 N2:リンパ節の転移総数が4個以上

 N3:主リンパ節または側方リンパ節など大きなリンパ節に転移

・肝臓に転移したがんの個数

→HX:肝転移の有無が不明

 H0:肝転移なし

 H1:肝転移が4つ以下で腫瘍が最大でも5cm以下

 H2:H1,H3以外

 H3:肝転移が5個以上で腫瘍が最大で5cm以上

 

この2種類の基準を元に、転移が少なく腫瘍が小さい方からA、B、Cとグレードを分け、それぞれの5年後生存率を調べたところ、手術を行なった場合で、Aグループの生存率が約53%、Bグループは約30%、Cグループは約10%という数値が出ました。仮に手術を行わない場合では、5年後生存率は激減します。Aグループが約14%、Bグループは約8%未満、Cグループに至っては0%です。この結果からも手術の有効性が伺えます。

またこのグレーディングを行なった当時、大腸がんの肝転移はまだ抗がん剤治療が普及しておらず、手術だけで治療されていました。この5年後生存率実績も、抗がん剤治療を行わず手術のみで治療を行なった場合のものになっています。現在は手術と並行して抗がん剤治療を行う手法が主流になっていますので、生存率やがん克服の可能性も当時より上がっていると推測できます。

大腸がんの肝転移、死因は?

基本的には大腸がんというより、肝臓がんで肝臓が機能しなくなり、亡くなる方が多いです。人間の全血液量は4~5Lですが、肝臓は「血の塊」と言われるだけあり、1分間に全血液量の半分である2Lの血液が出入りします。このように血のめぐりが活発な臓器であるため、肝臓がんの患者さんを診ていると、がんが大きくなりやすく進行が早いという印象を受けます。

大腸がんの肝移転に自覚症状はあるのか

食欲不振

自覚症状が出てからでは遅い

原発性肝臓がんでも転移性肝臓がんでも症状そのものに大きな差はありません。どちらも自覚症状が出たときには、治療が難しいほど進行してしまっていると考えてよいでしょう。自覚症状のないうちに発見するに越したことはありません。

肝臓がんの自覚症状には、食欲不振や貧血、意識障害など見落としがちなものから、吐血、腹部のしこりなどはっきりと体の不調に気付きやすいものまでありますが、中でも黄疸が出た際は注意が必要です。

黄疸(おうだん)とは

黄疸は肝臓で胆汁の排泄が阻害された際に起こるもので、目に見える症状としては眼球の白眼の部分や皮膚が黄色くなってしまいます。胆汁は脂肪を消化する液体で、食事をしていないときに肝臓で作られ、胆管を通り胆のうに溜まります。食べ物が十二指腸に到達すると、胆のうに蓄えられた胆汁が十二指腸に流れて行き、この時に脂肪を分解する役目を果たします。この肝臓を出て胆管、胆のう、十二指腸乳頭部までの胆汁の通り道を総称して胆道と呼びます。

黄疸には閉塞性と非閉塞性があり、閉塞性の黄疸は物理的なもので胆汁の排泄路である胆道が、腫瘍によって塞がれてしまうタイプの黄疸です。どちらかというと肝臓がんでは非閉鎖性の黄疸の方が恐ろしく、胆道の通りには問題がなく、胆汁を胆道に流し込む胆管細胞そのものに異常がある場合を指し、肝臓の状態がかなり悪い末期の状態であると伺えます。

大腸がん経験者は定期的な検診を

枝元先生

先ほど説明したように、大腸がんを経験している方は多かれ少なかれ、肝臓への転移のリスクを意識し、2~3ヶ月に1度の定期検査をおすすめします。特に大腸がんの治療を受けていた段階でリンパ節に転移があったかどうかにより、転移の可能性や生存率にも差が生じるので、今一度確認しておくとよいと思います。

また人間ドックに含まれている「腹部超音波検査」では、レントゲン撮影のように検査時に被曝したり、手術のように体にメスを入れることなく肝臓の状態を把握することができますので、がんを経験されていない方も含め、1年に1度受診しておくと安心です。

 

枝元 良広

枝元 良広先生

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科医長

年間手術件数1,000件を超える、国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院の肝胆膵外科医長として、高度な医療の提供を続けている。
特に自身の専門である肝胆膵外科疾や腹壁疾患では、いかなる時でも患者のことを考慮した治療の実施を念頭においている。

関連する記事