インタビュー

公的総合病院として小児・産婦人科も充実させて地域医療に貢献する!JCHO(ジェイコー)九州病院

公的総合病院として小児・産婦人科も充実させて地域医療に貢献する!JCHO(ジェイコー)九州病院
多治見 司 先生

地域医療機能推進機構(JCHO) 九州病院 院長

多治見 司 先生

この記事の最終更新は2016年12月25日です。

日本が少子高齢化社会に突入して久しい昨今。その波は地方に大きい影響を及ぼしています。そのようななか公的病院として、オールラウンドの機能を持ちつつ、日本の未来を担う子どもや妊婦の受け入れに積極的に尽力している病院が、北九州市八幡西区にあるJCHO(ジェイコー・地域医療機能推進機構)九州病院(以下、九州病院)です。北九州市西部地区における基幹病院として日々患者さんを受け入れる九州病院の強みや今後の目標とは何でしょうか。九州病院 院長の多治見 司(たじみ つかさ)先生にお話をうかがいました。

九州病院の外観

九州病院はもとも九州厚生年金病院として1955年に厚生年金の被保険者に対する早期利益還元を目的に建てられた病院です。当時の八幡市など現・北九州市西部地域には、大病院が存在せず、官民上げての誘致運動の甲斐あってこの地に誕生しました。

これまでは財団法人・厚生年金事業振興団が運営してきた公設民営の病院でしたが、設立母体であった社会保険庁の解体もあり、2014年に運営が国直轄の独立行政法人・地域医療機能推進機構(JCHO)に移管され名称もJCHO九州病院に変わり、職員の身分も民間から見なし公務員に変わりました。2016年現在、設立から62年目を迎えた歴史ある病院です。

開設当初は整形外科中心の病院でしたが、先々代の院長が循環器内科医だったこともあり、成人病診療の強化を図り、九州の市中病院としては最も早く心臓カテーテルや心臓リハビリなどを始めました。そのため循環器領域では先進的な病院でもあります。

現在、循環器疾患に関しては新生児から成人までを総合的、連続的に診ることが出来る、大学以外では全国でも数少ない病院です。また、5疾病5事業など、幅広い疾患に対応できるように整備してきた結果、現在40ほどの診療科を標榜しています。手術件数も年間7000件以上あり、その他の診療実績も大学病院並みで、制度当初よりDPCII群病院の認定を受けています。

九州病院のNICU

整形、循環器領域などで地域貢献をしてきたわけですが、現在では疾病構造の変化に合わせて成人病、特に癌診療に力を入れるなど、北九州市の公的な高度急性期病院としてどんな急性期患者さんでもみることができるような体制を整えているところです。ですから、以前は不採算部門であり今では少子化の影響を直接受けている小児科・産科も伝統的に守り続けてきました。

小児・新生児の診療にかんしては、300g以下の超未熟児の治療や先天性心臓病はもとより市内の新生児手術の半数以上を当院で担い、難しい手術も成功させています。近年、市内外の小児科関連の施設が次々と消失する中で、小児科、小児外科、小児心臓外科の医師が20名以上在籍している当院の責任がより大きくなったと感じています。

また、産科にかんしては、以前より正常分娩は開業の先生に、当院では主に異常分娩をという役割分担をし、母体搬送や他施設の分娩時に何かトラブルが生じれば、当院の小児科医が救急隊と連携して駆けつけ、当院まで搬送し治療するということも行って来ました。しかしながら最近は分娩数そのものの減少に伴い産科施設も減り続けており、好ましいことではありませんが、今では当院で扱う分娩のうち正常分娩と異常分娩の割合がほぼ同じになっています。

北九州市は比較的大きな病院が多い地域ですが、NICUがある施設は多くはありません。九州病院はNICU(15床)、GCU(16床)や小児外科部門も充実していますから、赤ちゃんに何かあった場合にも迅速に対応できます。このように地域の将来のために産科・小児科から小児外科まで、周産期医療を充実させているところが北九州市における九州病院の責任と存在意義の一つといえるでしょう。

高齢化の影響もあり、近年がんの患者さんは増え続けています。当院は厚生労働省指定の地域がん診療連携拠点病院にも指定され、毎年2000例以上の新規のがん患者さんを診療し、登録しています。また、ほとんどのがんでは県内でも有数の手術実績を残しています。

またできるだけ患者さんの負担を減らすために鏡視下手術を積極的に取り入れ、昨年には、北九州地区では初めて前立腺がん、腎癌に適応があるロボット手術も導入し、すでに1年で約100例の手術を行いました。放射線治療ではリニアック2台、小線源照射装置1台が、多くの患者さんの治療に活躍しています。そのほか外来化学療法室(20床)、緩和ケア病棟(14床)緩和ケアチームなど拠点病院にふさわしい体制を整えています。

九州病院は二次救急医療機関(入院を要する救急医療を担う医療機関であって、第三次救急医療機関以外のもの。第三次救急医療機関は救急救命センターなどがこれにあたる)で、救急救命センターではありませんが、それでも2015年度で5800件近い救急車を受け入れ内3300人ほどが緊急入院しました。重症例が多く、緊急手術も数多く行っています。救急室には専用のCT装置などを隣接させ、オーバナイトベッド12床、救急病床4床、ICU15床を用いて、重症患者さんを含めた救急患者さんに対応しています。

医師

様々な合併症を持つ高齢の患者さんに対応するためには、病院の総合力を上げることが必要です。経営的には何かに特化したほうが楽ですし、人も集めやすくなりますが、公的病院である当院の場合、そういうわけには行きません。可能な限りオールラウンドで、かつ質の高い医療で地域の患者さんを診療できるようにするのが自らの役割と考えており、今後もそれを目指してゆきたいと考えています。

しかし、当院に限らず他の病院もそうですが、診療科によって医師の数が偏っていることが問題です。医師の数が少ないとどうしても医師1人あたりの負担が増え、長時間労働や、患者さん1人あたりの診療に十分な時間が取れない、医師が疲弊してしまうなどの問題を招いてしまいます。

当院では、特に麻酔医不足が深刻で、年間3700件以上ある全身麻酔の施術を8〜9人の医師でなんとかやっている状況です。彼らは診療時間外や急患の手術にも気持ちよく応じてくれ、頭が下がる思いです。けれども、この状態が続くのは好ましくなく麻酔医の確保が急務ですが、簡単ではありません。他にも産婦人科や神経内科、救急などの医師も十分とはいえない状況です。

院長として最も大事な仕事は必要な医師、職員を確保することですが、地方ならではの難しさを痛感しています。研修プログラムや医療機器など環境を更に充実させ、意欲ある人材が働きたくなるような、魅力ある職場を作っていきたいと考えています。

談笑する高齢者

2010年頃までは、当院で受け入れた救急患者さんは小児が多かったのですが、現在では小児と大人の割合が逆転しています。加えて分娩なども減っており、少子高齢化を如実に感じます。

これから15年ほどの間、北九州市の人口は15%近く減少し、逆に患者数は現在の1.2倍に増える予測です。このことは、高齢患者さんの絶対数と割合が増え、我々の負担も大幅に増えることを意味します。がん脳卒中糖尿病高血圧症などの生活習慣病の患者さんの治療は勿論、予防が益々大事になります。そのため、九州病院ではこれらも生活習慣病の教育にも力を入れています。一方では人口構造を改善するために出生率を高めることも急務であり、生みやすく、育てやすい、安心の地域社会づくりにも貢献して行きたいと考えています。

時代や社会、地域のニーズに対応しながら、これからも市民の皆さんに必要とされる病院として日々努力と研鑽を重ねていきます。

 

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  • 地域医療機能推進機構(JCHO) 九州病院 院長

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