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下部直腸がんの手術治療について
大腸がんの中でも肛門に近いところにできる下部直腸がんでは、手術によるがん切除に伴って永久的な人工肛門の造設が必要となる場合があります。しかし近年では、ISR(括約筋間直腸切除術)など、肛門機能を...
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下部直腸がんの手術治療について

公開日 2017 年 01 月 19 日 | 更新日 2018 年 01 月 08 日

下部直腸がんの手術治療について
南村 圭亮 先生

社会福祉法人三井記念病院 消化器外科 科長

南村 圭亮 先生

大腸がんの中でも肛門に近いところにできる下部直腸がんでは、手術によるがん切除に伴って永久的な人工肛門の造設が必要となる場合があります。しかし近年では、ISR(括約筋間直腸切除術)など、肛門機能を温存する手術手技が非常に進歩しています。下部直腸がんの外科治療におけるISRの意義について、三井記念病院消化器外科 科長の南村圭亮先生にお話をうかがいました。

直腸の構造と下部直腸がんの発生個所

直腸の構造と発生箇所

直腸は上から順にS状結腸・上部直腸・下部直腸に分かれます。

このうち下部直腸は、内臓を包む腹膜が反転しているところ(腹膜反転部)から肛門につながる肛門管(こうもんかん)までの範囲を指します。この部分にできたがんが「下部直腸がん」です。

異なる二種類の筋肉からなる肛門括約筋の構造

肛門を締める働きをする括約筋は、内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)と外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)という、二種類の異なる性質を持つ筋肉が二重構造をなしています。

内肛門括約筋の構造

内肛門括約筋は、直腸から肛門にかけて腸壁を取り巻く平滑筋(へいかつきん)と呼ばれる筋肉の層です。自律神経によって自動的にコントロールされる不随意筋(ふずいいきん)であるため、肛門を締めようと意識しなくても自律神経の働きで締まります。

外肛門括約筋の構造

一方、外肛門括約筋は内肛門括約筋のさらに外側にある横紋筋(おうもんきん)で、肛門挙筋(こうもんきょきん)など筋の一部が肛門のまわりを取り囲んでいる部分をいいます。骨格筋などと同じように自分の意思で収縮させることができる随意筋(ずいいきん)です。

下部直腸がんの手術には3つの方法がある-マイルス手術・超低位前方切除術・ISRの違い

肛門ごと直腸を切除する腹会陰式直腸切断術(マイルス手術)

マイルス手術

直腸だけでなく肛門まで周囲の皮膚とともに切除し、左腹部に永久人工肛門を造設する手術を腹会陰式直腸切断術(APR; abdominoperineal resection)といいます。下部直腸がんに対する術式としてはもっとも古くから行われている方法で、この術式を広めたMiles医師の名前から通称「マイルス手術」と呼ばれます。がんが歯状線近くに位置する場合や外肛門括約筋にまで広く浸潤(がんが周囲の組織に広がること)する場合などに、現在でも標準的に行われている術式です。

肛門を残す超低位前方切除術

 

肛門を残す超低位前方切除術

 

がんが直腸の上部にできて肛門からある程度離れている場合は、腫瘍の位置から前後に一定の距離をとったところで直腸を切除します。これを「前方切除術」といいます。この方法では直腸をかなり残せるため、肛門機能を温存することができます。

肛門から挿入して腸を縫い合わせる自動吻合器の登場や、お腹に開けたごく小さな傷からカメラや鉗子(かんし)を挿入して行う腹腔鏡手術の拡大視効果による微細な解剖の理解により、より深い(低い)部位でも手術が可能になりました。

この結果、従来ならばマイルス手術で肛門ごと切除しなければならなかったような下部直腸がんに対しても、肛門を温存する低位前方切除術(LAR)が可能になり、最近ではさらに低い位置で切除する超低位前方切除術(ultra-low anterior resection:ULAR)へと進化しました。

超低位前方切除術やISRは、腫瘍が肛門に近くてもできるだけ肛門を残すことを目的として開発されましたが、がんが肛門括約筋にまで浸潤していると、やはりマイルス手術で肛門も一緒に切除する必要があります。

肛門括約筋の構造に着目したISR(括約筋間直腸切除術)

括約筋間直腸切除術(ISR)

ISR(intersphincteric resection)は括約筋間直腸切除術または内肛門括約筋切除術と呼ばれる術式で、その名の通り内肛門括約筋だけを部分的に(または全部を)切除しますが、肛門と外肛門括約筋を残すことによって、排便機能をできる限り温存しようとする方法です。がんの浸潤が内肛門括約筋の範囲にとどまっていれば、この方法によって外肛門括約筋を残し、永久的な人工肛門の造設を回避することができます。

下部直腸がんに対する次世代の手技「TaTME」とは?

ISRは下部直腸がんに対する手術の中では新しい術式ですが、近年ではさらに新しい術式も考案されています。

現在、学会などで注目されているのはTaTME(Transanal total mesorectal excision:経肛門的全直腸間膜切除術)と呼ばれる術式で、この術式では腹腔側とお尻側(肛門側)の両方から腹腔鏡で手術を行います。

TaTMEは海外で先行している術式ですが、日本でも国立がん研究センター東病院の伊藤雅昭先生が主導して導入が始まっています。三井記念病院でも今後、症例を積み重ねてある程度理解が深まれば、このTaTMEを取り入れたいと考えています。

☆伊藤雅昭先生の記事はこちら「直腸がんにおけるISRの有用性-肛門機能の温存が可能

TaTME手術の手技自体は、これまでに培われてきた手技を集積し、組み合わせたものですから、それほど特殊なものではありません。ISRが標準的な手術手技のひとつになったように、TaTMEのような手技もいずれは標準的になっていくのではないかと期待しています。

患者さんも治療の情報を持つべき時代。大腸がんの治療ーステージ別の治療方針とは法に迷った場合はセカンドオピニオンを

これまでご説明してきたように、下部直腸がんの手術による治療にはさまざまな方法があります。したがって、患者さんや一般の方もまずこれらの治療法について知り、どの施設でどういった治療が受けられるのかについて、できるだけ信頼できる情報を持ったほうがよいでしょう。症例数の多い施設はそれだけの経験を持っていると考えられますので、症例数を元に治療を受けるかどうか判断するのもひとつの方法はないかと考えます。

三井記念病院には、他の施設で提示された手術方法に納得できない患者さんが、セカンドオピニオンとして話を聞きたいといって来られることもあります。そういった場面では、可能性のある治療の選択肢についてきちんとご提示したうえで決めていただくようにしています。そこでは当然、リスクなどについてもお話をしますから、それを聞いて納得したうえで治療を受けていただくことがよいのではないでしょうか。

ただし、最後の決め手はあくまでも「がんの根治性を損なわない」ことに尽きます。

 

下部直腸がんの手術(南村圭亮先生)の連載記事

当初は心臓血管外科医を目指して三井記念病院にレジデントとして応募、最終的に消化器外科医の道に進む。消化器外科チーフレジデントを終了後、ハーバード大学で移植免疫研究の経験を積む。専門領域が細分化される消化器外科において、腹腔鏡手術を含めてあらゆる手術に対応できるジェネラリストであり、ユーティリティプレイヤーであることを心がけている。

「大腸がん」についての相談が9件あります

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