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膠原病(こうげんびょう)とは? 原因・遺伝・検査法・治療の難しさについて

膠原病(こうげんびょう)とは? 原因・遺伝・検査法・治療の難しさについて
松永 敬一郎 先生

横須賀市立うわまち病院 総合内科 顧問

松永 敬一郎 先生

目次
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膠原病(こうげんびょう)という言葉は聞いたことがあっても、それが一体どのような病気なのかは知らない方も多いのではないでしょうか。膠原病とはどのような病態で、どのような症状が現れるのか。横須賀市立うわまち病院 副病院長 総合内科部長の松永敬一郎先生にご解説いただきました。

膠原病」と聞くと病気の名前のように思われるかもしれませんが、膠原病は1つの病気の名前ではなく、いくつかの疾患をまとめた病気の概念のことです。皮膚・筋肉・関節・血管・骨など、全身にあるコラーゲン(たんぱく質)に慢性的な炎症が広がる病気を総称して「膠原病」と呼んでいます。

膠原病には、似ている疾患概念がいくつかあります。

【類似疾患概念】

リウマチ性疾患……運動器官(関節や筋肉など)に痛みが生じる病気

結合組織疾患……結合組織(上皮・筋・神経など)に炎症が起こる病気

自己免疫疾患……体の免疫反応が異常を起こす病気

膠原病にはこれらの疾患の特徴を併せ持っている病気が多くあります。そのため、膠原病はこれらの3つの疾患概念が重なり合った病気の総称だと考えられています。つまり、膠原病とはこのようないくつかの病態を持ち合わせる、複雑な病気の概念なのです。

膠原病とは?

実際に膠原病はどのような症状が現れるのでしょうか。病気の種類にもよりますが、下記のような症状が見られると膠原病の疑いがあるとされます。

【膠原病を疑うべき症状】

  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 関節痛
  • 皮疹
  • 筋痛
  • レイノー現象(手や指の変色)
  • 手指腫脹

*参考:日本臨床検査医学会 「臨床検査のガイドラインJSLM2012」を参考

具体的に、膠原病とはどのような病気のことを指すのでしょうか。厚生労働省の支援により運営されている難病情報センターでは、下記のような疾患が膠原病として紹介されています。

このように非常に多くの疾患を総称して、「膠原病」と呼んでいるのです。

膠原病の発症理由はいまだ不明です。いまのところ、膠原病の1つ、SLEでは、一卵性の双子の一人が発症したとき、もう一人もSLEになる確率は約25%と報告されています。このことからSLEにおいては、遺伝も1つの要因であること、そして遺伝以外の条件(日常生活の環境:環境要因)が大きな原因になると考えられています。

診察

膠原病が疑われる場合、さまざまな検査をすることになります。たとえば全身性エリテマトーデスの場合、以前はネフローゼ症候群になるまで発見されないことが多かったですが、最近は、検診でたんぱく尿や血球減少を指摘されて膠原病が疑われ、抗核抗体の検査を受けるために紹介受診される方が多くなりました。

さらに詳細な判断が必要な場合には、画像診断などの専門的な検査を行います。ここでは膠原病診断の概略を紹介していきます。

まずは患者さんの症状を伺う「問診」を行います。

膠原病では「膠原病を疑うべき症状」でご紹介したような特徴的な症状が見られます。どのような症状が、どの部位に現れたかを明らかにすることで、膠原病の中のどの疾患に分類できるかを探っていきます。

問診によって膠原病の可能性が指摘されると、血液検査を行います。

血液中には、膠原病の判断に役立つ自己抗体がいくつか存在しています。それぞれの抗体の量や種類を調べることで、膠原病であるかどうか、どの病態に近いかを判断していきます。

【膠原病を診断するための検査項目】

血液検査では以下のような血中成分の量や種類を確かめます。

  • 白血球
  • 赤血球
  • 血小板
  • CRP(炎症反応の強さを見る数値)
  • 自己抗体

この中では自己抗体の値がもっとも重要な指標です。

画像診断にはX線検査や超音波検査などを使います。膠原病の場合、体のさまざまな臓器に炎症が起きていることが多いので、これらの画像診断から体の中の臓器の状態を診ていきます。

また、より専門的な診断をつけるために骨髄液を採って調べることがあります。これは膠原病なのか、それとも別の病気なのか(たとえばウイルスが原因になっているケースなど)を見分けるために行います。骨髄液を調べることで診断できる疾患の一例が「血球貪食症候群」です。血球貪食症候群はSLEに合併して発症することがあります。また、SLEの特徴の1つにLE細胞というものがあります。これは抗核抗体が核と結合して形成された免疫複合体を白血球が貪食したものです。このLE細胞も骨髄生検で見られることがあり、診断確定の要因となります。

血液検査

膠原病の検査では主に血液検査が用いられます。これは膠原病であると血液中のある種の成分が異常に増加したり、減少したりするためです。それではなぜ、膠原病では血液中の成分が異常な状態になるのでしょうか。

膠原病では「膠原病の症状の複雑さ」で解説したように、自己免疫機能に異常が生じるという特徴があります。具体的には、本来は体を守るためにはたらく「免疫システム」が、正常な自分の組織を攻撃してしまいます。その結果、血液中の物質のバランスが崩れ、血液検査で異常が見つかります。

このことを詳しくご説明しましょう。

膠原病(自己免疫疾患)の患者さんの体内では、免疫システムにトラブルが発生し、自分の細胞を外部から侵入した異物だと認識してしまいます。すると、本来は自己抗原に反応する自己反応性T細胞はアポトーシスを起こして増殖できませんが、異物となった自己抗原を排除すべく活性化して増えていきます。

T細胞(白血球)は標的となる異物を囲い込み、自分の細胞ごと死んでいくという方法で、異物を排除していきます。そのため一部の膠原病(全身性エリテマトーデスなど)では、最初は白血球が大量に動員されますが、最終的には大幅に減っていきます。

また、膠原病で白血球が減少する理由には「インターフェロン」の増加も関係しています。インターフェロンとは、免疫システムや体で起きる炎症反応を調整する役割を持つたんぱく質です。膠原病では免疫システムに異常が起き、さらに全身で炎症反応が起きるため、インターフェロンが多く生み出されます。このインターフェロンが増えると、白血球や血小板が大幅に減っていきます。このような理由でも、体の中の物質の量が変化してしまうのです。

膠原病の患者さんでは全身で炎症が起きています。また、炎症が起き体の組織が破壊されると「CRP*」といわれるたんぱく質も急増します。このような物質の量を確認することも、膠原病の診断では重要です。CRPが高くならない膠原病はSLEシェーグレン症候群の一部だと考えられます。

*CRPは風邪を引いただけでも高くなるので、CRPが高いから膠原病というわけではありません。

このような背景から、膠原病に罹患すると体内の物質が異常を起こしていることが多くあります。このような異常値が出るからこそ、これらを傍証として検査を行い、膠原病かどうか、そしてどの膠原病なのかを判断することができます。そのメカニズムが明らかになってきたことから、近年では血液検査等からおおよその診断を導くことができます  

膠原病は、その症状の多様性からほかの病気と勘違いされたり、見逃されてしまうことがあります。

ほっぺが赤くなる子供

膠原病の1つに「SLE」という病気があります。この病気は幼少期に多くの方がかかる「りんご病」と似ている部分があり、間違われてしまうことがあります。

SLEとりんご病

【類似点1】

SLEとりんご病の似ている点としてまず挙げられるのは「頬の赤らみ」です。りんご病はその名のとおり、頬が赤くなってしまう症状が有名です。一方、SLEの場合にも皮膚の炎症が起こることによって頬が赤くなる症状がほとんどの方に見られます。

【類似点2】

また、SLEの代表的な症状として「関節炎」がありますが、りんご病でもこの症状が見られることがあります。特に成人のりんご病患者さんでは関節痛が多くみられます。

【類似点3】

また、この2つの疾患は血液検査の診断結果にも似ているところがあります。SLEの診断ではよく抗DNA抗体という抗体を測定します。SLEではこの抗DNA抗体が陽性となりますが、りんご病でも同様に抗DNA抗体が陽性になることがあります。

さらに、膠原病、りんご病のどちらも血液中の「補体」というたんぱく質が減ります。

似ているが治療法はまったく異なる

このように2つの病気には似ている点が多くありますが、病気の原因と治療法は大きく異なります。

SLEは体の中の免疫システムに異常が起きる「自己免疫性疾患」ですので、ステロイドや免疫抑制薬という薬を使って、発症初期にしっかり症状を抑えていく必要があります。

一方、りんご病は、パルボウイルスB19というDNAウイルスが原因の「感染症」です。解熱剤を飲み、体を休めるなどの治療を行うことで、自然と治癒していく病気です。

このように2つの病気の治療法はまったく異なります。そのうえ、SLEは臓器や組織を破壊していく病気であるため、SLEである場合には重症化する前に治療を進められるよう早期発見することが求められます。そのため2つの病気を見分けることはとても重要なのです。

ドライアイ

シェーグレン症候群とは、主に涙や唾液を分泌する腺(涙腺・唾液腺)に症状が現れる膠原病です。シェーグレン症候群は他の膠原病(関節リウマチ、SLE、全身性強皮症など)と合併することも多くあります。

シェーグレン症候群では主に3つの症状が見られます。

【原発性シェーグレン症候群の症状】*

原発性シェーグレン症候群の患者さんは、有する病変によって以下の3つのグループに分けられます。

目や口などの乾燥症状のみを有するグループ

約45%

全身性の何らかの臓器病変を呈するグループ(諸臓器へのリンパ球浸潤・増殖による病変、自己抗体・高γグロブリン血症による病変など)

約50%

悪性リンパ腫原発性マクログロブリン血症を発症したグループ

約5%

*難病情報センターより

シェーグレン症候群のうち、約45%の方は「目や口の中の乾燥」症状のみが現れます。中には深刻な乾燥に悩まされる患者さんもいらっしゃいますが、ほとんどが軽症の乾燥症状です。

このような目や口の乾燥(ドライアイドライマウス)はなかなか気付きにくい症状です。特に若い方では乾燥を感じにくい傾向があります。そのため病気を発症していても気付いていない「潜在患者」が多くいると考えられています。実際、定期健診や入社時の健診などで偶然、病気が判明したという方も多くいらっしゃいます。

「隠れているシェーグレン症候群」を見つける取り組み

そこで私は「ドライケアフォーラム」という講演会を開催しています。これは膠原病が原因として引き起こされる乾燥症状についての情報を共有する会です。目や口の乾燥は多くの方が感じやすく病気だと捉えられにくいうえに、なかなか自己免疫疾患だと想起されないことが多くあります。もっとシェーグレン症候群が原因になっている乾燥症状の理解を広めて、症状に苦しんでいるのに、隠れてしまっている患者さんを見つけていきたいと考えています。

患者と向き合う医師

膠原病は発病したときがもっとも症状が重い時期であることが多いため、診断したらすぐに治療を行います。したがって、発症初期の症状を抑えることができれば、その後は状態が安定するケースが多いです。

しかし、膠原病の治療で重要なことは、安定した後のフォローアップです。膠原病は症状が安定した後に悪化させてしまうと、回復が難しい重症になることがあります。そうならないよう、膠原病患者さんのフォローアップは注意して進めていく必要があります。

また、記事でもご紹介したように、全身にさまざまな症状が現れる膠原病は、正しい診断がとても重要です。「重症化する前に、正しく診断して治療を始める」、つまり早期発見・早期治療が大切な病気だといえるでしょう。

引き続き記事2『リウマチの原因とは? 治療の変化・予防法・リハビリなどリウマチの概要を紹介』では、膠原病の中でも有名な「関節リウマチ」について、松永先生にご解説いただきます。

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