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超音波診療で腰痛・膝痛・肩痛を解決! ――X線からエコーへ変わる新時代の整形外科

超音波診療で腰痛・膝痛・肩痛を解決! ――X線からエコーへ変わる新時代の整形外科
皆川 洋至 先生

城東整形外科 診療部長

皆川 洋至 先生

整形外科といえば、まずX線検査(レントゲン)をイメージする方が多いのではないでしょうか。長い間、画像診断の第1選択はX線検査(レントゲン)でした。しかし、現在では“まずX線検査(レントゲン)”ではなく、“まずエコー(超音波検査)”へと変わりつつあります。X線検査(レントゲン)では骨しか見えません。

しかし、エコーでは骨ばかりでなく靱帯(じんたい)(骨同士を連結)・筋(骨同士を動かす)・(けん)(骨への筋付着部分)・神経・血管なども見えますし、放射線による被曝がまったくなく、外来診察室でリアルタイムに体の中を検査してもらえます。見えるから分かる、分かるからできる。

見つけた病変に対するエコーガイド下治療では、瞬時に痛みを取り除くこともできます。整形外科領域におけるエコーを用いた診断と治療について、城東整形外科 診療部長の皆川洋至先生にお話を伺いました。

レントゲン

1895年、ウィルヘルム・レントゲン(独)の発見したX線が、医療界に革命を起こします。体の中が見える、分からなかった病変が見つかる、新たな治療法が次々に生まれ、医学が飛躍的に進歩していきます。

診断に欠かせないツールとなったX線検査(レントゲン)は、いまや世界中どこの病院やクリニックでも簡単に受けることができます。そしてX線検査(レントゲン)で描出される骨を中心に、整形外科は学問体系を築き上げていきます。今ではX線検査(レントゲン)が一般的になっていますが、見方を変えれば当時は“X線検査(レントゲン)しかなかった”ともいえます。

“まずX線検査(レントゲン)”で全ての病気が診断できるわけではない、これを証明したのがポール・ラウターバー(米)、ピーター・マンスフィールド(英)らが発明したMRI(核磁気共鳴画像)でした。1980年代に普及し始めたMRIは、X線検査(レントゲン)では見えない脊髄(せきずい)・靱帯・筋・腱などの軟部組織を可視化し、関節疾患や脊椎・脊髄疾患に対する新たな治療法を生み出します。そして、整形外科は“骨を扱う専門科”から“運動器を扱う専門科”へと姿を変えていきました。

MRIは撮像に人手・時間・費用がかかるため、簡単・手軽に受けられる検査ではありません。予約が必要で、検査対象も一部の病気に限られます。

一方、エコーは人手・時間・費用がかかりません。しかし、整形外科で扱う体表に近い部分の画質が悪過ぎたため、ほとんど臨床現場では使われませんでした。ところが、高周波リニアプローブの開発・装置のフルデジタル化が進み、2000年を過ぎた頃から徐々に「整形外科でもエコーが使える!」という認識が広がり始めます。そして現在では、整形外科の画像診断が“まずX線検査(レントゲン)”でなく、“まずエコー”へと変わり始めています。

五十肩

中高年に生じた肩痛を一般に”五十肩”と呼びます。江戸時代から使われてきた言葉で、本来は正式病名ではありません。五十肩のうち、X線検査(レントゲン)診断できる病気が“肩石灰性腱炎”と“変形性肩関節症”です。両者合わせて五十肩全体の約1割もありません。

X線検査(レントゲン)診断できない残りの約9割は、全て“五十肩”と呼ばれました。しかし、現在では “五十肩”の2大疾患“腱板断裂”“凍結肩”を瞬時にエコー診断できます。いまだに「五十肩は放置すれば治る」と勘違いしている人がいます。

しかし、“腱板断裂”と“凍結肩”は自然に治らず何か月も何年も痛みに苦しむ病気で、手術が必要になることもあります。平均寿命が50歳に満たなかった江戸時代、五十肩は“長命病”とも呼ばれていました。

平均寿命が80歳に到達した現在では、「長生きした証拠」「死ねば治る」では通用しません。専門家の間では、もはや“五十肩”は使うべきでない病名になっています。“五十肩”で悩む方には、“放置すれば治る”ではなく“まずエコー”をすすめることが最善のアドバイスということになります。

頸椎(けいつい)捻挫膝関節捻挫、そして足関節捻挫。本来、“捻挫”には「捻じった」、「挫いた」という“病歴”としての意味しかありません。しかし、何らかの病名が必要ですから、診断の際には止むを得ず“捻挫”が使われます。

病態が分からなければ、治療は安静・湿布・痛み止め程度になります。すなわち、捻挫だから「大丈夫」なわけではないのです。

救急の外傷でもっとも多いのが“足関節捻挫”ですが、多くの主病態は“靭帯断裂”です。X線検査(レントゲン)では靱帯が写らないため、診断が“捻挫”になってしまいます。靭帯の断端を寄せて固定しなければ、靱帯の機能は失われ捻挫が癖になりやすくなります。ぐらつきが強ければ手術が必要になることもあります。

中学生・高校生の捻挫では圧倒的に靭帯断裂が多いのに対し、小学生の足関節捻挫では約80%、40歳以上の女性では約60%が靭帯付着部で生じた“裂離骨折”です。いまだに骨折は全てX線検査(レントゲン)診断できると思われる方もいらっしゃいますが、裂離骨折のほとんどはX線検査(レントゲン)診断できません。つまり、X線検査(レントゲン)で異常がないから骨に異常がないわけではないのです。

たとえ医師が正確に診断できなくても、処方せんや診断書作成などには第三者に病状を説明する診断名が必要です。X線検査(レントゲン)しかなかった時代、“五十肩”や“捻挫”は病名として広く使われてきました。“ぎっくり腰””寝違え”“むち打ち”“肘内障”“シンスプリント”なども、原因や病態がはっきりしないため病歴が病名となった代表例です。

これらは分かりやすく汎用性が高い病名である一方、対症療法しかできないためよくならない症例が一定割合生じます。病歴病名は専門医が使うとやや格好悪い、一般人が使えば他人に不利益を及ぼしかねない意味を含みます。ある意味“X線検査(レントゲン)時代の負の遺産”といえるかもしれません。

エコーは心臓・肝臓・腎臓など、深部にある臓器の観察には欠かせない検査装置です。内科、産婦人科、泌尿器科などほとんど全ての診療科で普及しているのに対し、なぜか整形外科では長い間普及しませんでした。体表近くにある腱・靭帯・末梢神経がよく見えなかったからです。高周波リニアプローブが登場した現在では、深部臓器より表在臓器のほうが逆によく見えるようになっています。それでは、現在の整形外科におけるエコーの立ち位置について解説します。

高周波リニアプローブが登場すると、エコーではMRIよりさらに細かな部分が観察できるようになりました。静止画のレントゲン・CT・MRIと異なり、リアルタイムに体の中が見えるため、組織の動き・血流・硬さも分かります。外来診察室では問診・視診・触診と同時に使われ、瞬時に痛み・しびれの原因を見つけだすパワーアシスト・スーツになります。また、健側と患側を同時に2画面表示すれば、専門知識がない患者さんでも簡単に病変を理解できるコミュニケーション・ツールになります。

エコー診療の様子2

城東整形外科での実際のエコー診療の様子(画像ご提供:皆川 洋至先生)

あれこれ人手・時間・医療費をかけて検査したあげく、結局湿布と痛み止めの処方をするだけでは本末転倒です。単なる診断の道具ではなく、治療の道具として威力を発揮できる点に、エコー本来の価値があります。

手の感触だけに依存した従来の手技と異なり、エコーガイド下では標的を見ながら精度の高い治療が可能です。難易度の高かった小関節や滑液包・腱鞘内への注射、肩こり・腰痛に対する筋膜リリース、末梢神経に対するハイドロダイセクション、凍結肩に対するサイレント・マニピュレーションなど新しい治療手技が次々に生まれています。治療ばかりでなく、手術や骨折脱臼整復前に行う神経ブロック、術後の疼痛(とうつう)管理までエコーの応用範囲は広がっています。

整形外科のエコー診療1

問診・視診・触診と同時にエコーが使われる(画像ご提供:皆川 洋至先生)

厚生労働省が公表した医師の平均診療人数は約20±20人(平均±標準偏差)。60人診る医師は100人中上位5人、80人診る医師は上位1%の計算になります。ところが私のように1人で年間約4万人の患者さんを診療する場合、1日の外来患者数が200人を超えることも珍しくありません。その背景には大学病院や一般病院の予約制導入と土曜日休診の影響があります。

医療費負担が少ないエコーを駆使することで、医師が素早く患者をキュア(cure)し、スタッフ全員が時間をかけて患者さんをケア(care)すれば、短い病院滞在時間でも高い患者満足度が得られると考えます。誰もが安く医療を受けられる国民皆保険制度は、日本が守るべき世界に誇るシステムです。超音波診療は、医療費問題を解決する国が推奨すべき診療スタイルといえるかもしれません。

超音波診療の手技をマスターするためのセミナーが、現在では毎月のように全国各地で開催されるようになりました。2017年7月現在、整形外科開業医の約半数が外来診療でエコーを使っています(日本臨床整形外科医会報告)。その一方、外来診察室に超音波装置を置いていない、置くことができない一般病院が数多くあるのも事実です。勤務医が時代の変化に対応できないのではなく、病院経営者側が超音波診療の価値を理解せず、予算を理由に装置導入を先延ばししている場合が少なくないようです。

次世代を担う若手整形外科医が、エコーの置いていない外来で”五十肩””捻挫”といった言葉を使わざるを得ないのは状況が変わることを願っています。一事が万事、外来にエコーを置いてあるかどうかをみるだけでも、その病院の時代の流れに対する感度が読み取れるかもしれません。

整形外科での診療

整形外科は運動器疾患を扱う専門科ですが、整形外科以外にも総合診療・救急診療、リウマチ科、麻酔科、ペインクリニックなど多くの診療科が運動器診療に関わります。

一般に、診療科は手術で治す“外科”と手術しないで治す“内科”に分かれますが、実際には手術をしない整形外科開業医も珍しくありません。

最近ではメスを使わずに治す“整形内科”という言葉も耳にします。運動器疾患を扱う複数科の医師が執筆した書籍『THE 整形内科(南山堂)』は、2016年に横浜で開催された第89回日本整形外科学会で書籍部門の売り上げ1位になりました。現在もなお手術書を上回る販売数を記録し続けています。その背景には、エコーが運動器疾患に対する保存治療レベルを飛躍的に向上させたことがあげられます。整形“外科”から整形“内科”へ、そして“X線検査(レントゲン)時代”から“エコー時代”へ、パラダイムシフトは着実に進んでいます。

固定電話が携帯電話へ変わったように、エコーも簡単に持ち運びできる携帯型(ポータブル)装置が次々に登場しています。

これまでエコーは病院の検査室で受けるのが一般的でした。しかし、ポータブル装置を院外に持ち出してのスポーツ検診、特に“離断性骨軟骨炎”を早期発見・予防する野球肘検診が全国各地で行われるようになり、最近では住民運動器検診や学校運動器検診にもエコーが使われ始めています。

また、次世代を担う医学生に対し、運動器エコー実習を導入する大学も登場し始めています。裾野が広がり、装置の販売台数が増え、低価格化が進めば、エコーの使い方自体が大きく変わる可能性があります。AI(artificial intelligence:人工知能)と連動して患部にプローブを当てるだけで自動診断できるようになれば、“一家に1台”が常識の“家電エコー時代”がやってくるかもしれません。

レントゲン・CT・MRIが欧米発の技術であるのに対し、エコーは多くがmade in Japanの技術です。ビッグ3と呼ばれる大企業(フィリップス、シーメンス、GE)が世界市場の多くを占めてきましたが、国内メーカーもアジアを中心に市場を広げています。ここ数年、日本のオピニオンリーダーたちとメーカーが協力し合い、高齢化のスピードが速いアジア各国へ積極的な技術指導・交流活動を展開しています。

2020年東京オリンピックに向け、優れた日本の技術が世界へアピールされていきますが、運動器エコーもその1つに含まれます。時代の追い風を受け、これまで以上に運動器エコーの世界が発展していくことは間違いありません。

 

日本シグマックス株式会社

皆川 洋至先生による運動器エコー診療の情報は、日本シグマックス(株)メディカルサイトの特設ページからもご覧いただけます(医療従事者専用サイトです)。

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