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造血幹細胞移植、ドナーの適応基準であるHLAの一致とは?ドナーの条件とリスク

造血幹細胞移植、ドナーの適応基準であるHLAの一致とは?ドナーの条件とリスク
香西 康司 先生

東京都立多摩総合医療センター 血液内科・輸血科部長

香西 康司 先生

主に白血病など血液の悪性疾患に対して行われる造血幹細胞移植。この治療を安全に行うためには、患者さんとHLA(白血球の型)が一致しているドナーの方に、骨髄や末梢血を提供していただく必要があります。なぜ親子よりも兄弟のほうが、HLAが一致する確率が高くなるのでしょうか。造血幹細胞移植のドナーの条件と、骨髄採取や末梢血採取時に起こりうるドナーのリスクについて、東京都立多摩総合医療センター血液内科・輸血科部長の香西康司先生に解説していただきました。

HLAには、A座・B座・C座とDR座・DQ座・DP座があり、子どもは父親と母親からそれぞれの座を1つずつ受け継ぎます。

造血幹細胞移植のドナーの条件とは、このうち移植と密接な関連が判明しているA座、B座、DR座の3座(対になっているため合計6座)が一致していることです。

ただし、移植源によりC座やDQ座、DP座の影響も考えられることがあるため、より複雑にHLAの適合率をみる症例もあります。
同じ父母から生まれる子どものHLAの組み合わせは4通りある

上の図のように、A座、B座、DR座は父親と母親から対となって遺伝するため、同じ両親から生まれた子どものHLAの組み合わせは、合計で4通りとなります。

親子のHLAが一致することは稀ですが、兄弟ならば4分の1、つまり25%の確率で一致するというわけです。したがって、血縁者間移植におけるドナーとは、基本的には患者さんのご兄弟を指します。

前項ではA座、B座、DR座の3座が一致することが重要であると述べましたが、1座だけが異なっている一座不一致の非血縁者造血幹細胞移植も、免疫抑制剤の進歩により可能になりました。一座不一致移植は、血縁者間でも非血縁者間でも行われています。

血縁者間移植のドナーとは、基本的に患者さんのご兄弟であると述べました。ただし、上の図からもわかるように、親と子のHLAは必ず半分は合致します。

近年では、最も新しい造血幹細胞移植法、ハプロ移植(血縁者間HLA半合致移植)も登場し、このようにHLAが完全には合致しない血縁者もドナーとなれるようになりました。ハプロ移植は、親子だけでなく兄弟でも行えます。

非血縁者間移植を行う場合の選択肢には、以下の2つがあります。

  • 骨髄バンクに登録されているドナーさんから骨髄(液体)を提供してもらう
  • さい帯血バンクに登録されている臍帯血を使う

このうち臍帯血を用いる場合は、二座不一致まで移植することが可能とされています。へその緒から採取した臍帯血のリンパ球は未熟であり、異物を認識する力が弱く、強い免疫反応を起こすリスクが低いからです。

へその緒を切り離す様子

このように、一座不一致のドナーを用いた造血幹細胞移植や臍帯血移植、血縁者間ハプロ移植も可能になったため、現在ではドナーが見つからないというケースは少なくなっています。

ただし、患者さんのご兄弟にHLAが一致する方がいる場合は、その方をドナーとした血縁者間移植が優先となります。

骨髄採取のイラスト

造血幹細胞移植のひとつに、骨髄移植があります。患者さんやご家族のなかには、骨髄移植という言葉を聞き、「骨の一部を切り取り、患者さんに埋め込む大手術」といったイメージを持たれる方がおられますが、実際に採取して移植するのは骨髄内を満たしている骨髄液という液体です。腰の骨である腸骨(ちょうこつ)には骨髄が豊富に存在しており、骨髄液の中には造血幹細胞が多量に含まれています。

ドナーの方に受けていただく骨髄採取とは、うつ伏せになっていただき、体外から骨髄採取針を腸骨へと挿入して、合計で700cc~1000ccの骨髄液を抜くというものです。

採取する骨髄液の量は患者さんの体重などにより異なります。

ドナーの方からは多量の骨髄液を採取するため、あらかじめ2回程度に分けて800ccほどの自己血貯血を行い、骨髄採取後に血液を体内へと戻します。

自己血の貯血量も骨髄採取予定量などにより異なります。

2回に分けて自己血貯血を行う場合は、1回目を採取日の3週間前、2回目を1週間前に実施します。

1度の採血で、上限量である400ccの血液を採ることが多いため、この期間は特に健康に留意していただく必要があります。

骨髄採取は全身麻酔下で行います。そのため、国外も含めると、骨髄移植が世界で始められてから今日までに数件の麻酔中の死亡例が報告されています。このように、病気ではない方に全身麻酔処置を行って健康を損なうことは、あってはならないことです。

そのため、日本骨髄バンクが定めるドナーの条件には、持病がないこと、健康な方に限ることなどが明記されています。

HLAが合致する兄弟がドナーとなる場合は、この条件は多少緩和されることがあります。

しかし、安全に骨髄採取のための処置を行える健康状態にあることがドナーの条件になることは変わりません。

通常の骨髄採取で提供していただく骨髄液は700~1000ccですが、一度に抜くことができる骨髄液は5cc程度です。そのため、採取量によっては100回以上繰り返し腸骨へと注射針をさすこともあり、採取後には腰の痛みなどが生じることがあります。

また、ドナーの方には採取日の翌朝までベッド上で安静にしていただく必要があります。排尿もカテーテル(管)を通して行わねばならないため、特に男性のドナーの方は、尿道カテーテルによる痛みを強く感じることもあります。

ドナーから末梢血を採取する様子末梢血(まっしょうけつ)とは、通常の採血など採る血液のことで、この中にも、ある条件下(※)で造血幹細胞が含まれています。そのため、移植する造血幹細胞をドナーの腕から採取することもあります。

末梢血採取を行う場合、採取日の4~6日前からG-CSFという人工的に白血球を増やす薬を皮下注射で投与し、末梢血中の造血幹細胞を増やしておきます。

実際の採取時には、血液透析のように体外循環装置を用いて造血幹細胞のみを抽出し、装置を通った血液を体内へと戻します。そのため、骨髄採取のようにあらかじめ自己血を貯めておく必要はありません。

ある条件下とは:G-CSF投与後や化学療法の回復期など

一見、骨髄採取よりは負荷が少ないようにみえる末梢血採取にも、リスクは伴います。たとえば、白血球を増加させることにより、脾臓破裂や不整脈が起こることもあります。

また、海外では末梢血採取が原因の死亡事故も報告されています。

結論は出ていませんが、G-CSFを健康な方に使用することが、二次性(薬剤性)の白血病に繋がるのではないかという意見もあがっています。

このような大きなリスクのほかに、長時間同じ姿勢で末梢血採取を行うことで腰などに痛みが生じたり、血液が固まらないよう投与する抗凝固剤の副作用によってしびれが生じることもあります。

骨髄採取と末梢血採取、どちらの採取法にもメリットとデメリットがあり、ドナーの方の負担の感じ方も人それぞれです。過去にドナーとなった経験がある方を対象とし、次回どちらの採取方法を選ぶかを聞いたアンケート調査でも、回答はふたつにわかれています。

ただし、どちらの採取法となるかは、患者さんの状態なども関係するため、必ずしもドナーの方の希望をお伺いできるわけではありません。

骨髄移植と末梢血幹細胞移植では、生着速度やGVHDが起こる頻度が異なります。末梢血幹細胞移植のほうが生着は早いため、患者さんの状態をみて、より早く回復させる必要があると判断した場合には、末梢血採取を選択します。

一方、骨髄移植は末梢血幹細胞移植に比べてGVHDが起こりにくいため、患者さんに免疫反応が起こると危険な場合は、骨髄採取を選択します。

造血幹細胞移植には、骨髄移植と末梢血幹細胞移植のほか、へその緒から採取した臍帯血(さいたいけつ)を用いる臍帯血移植もあります。

分娩後に胎児と切り離した後のへその緒から採取するため、ドナーのリスクはありません。

骨髄バンクに登録されている骨髄を用いて移植を行うには、コーディネートのための期間が必要です。そのため、患者さんにとって最もよいタイミングで移植を行えるとは限らないというデメリットがあります。

これに対し、採取後凍結パックで保存された臍帯血を溶かして使用する臍帯血移植は、患者さんの状態やタイミングに合わせて行えるという利点があります。

しかしながら、臍帯血移植には、他の移植法に比べ生着率が悪いというデメリットもあります。さい帯血バンク移植症例数は年々増えつつあります。臍帯血移植の生着率を改善することは、今後の造血幹細胞移植の課題といえるでしょう。

※生着の定義については次の記事3『造血幹細胞移植後のGVHD(移植片対宿主病)を防ぐために-移植から退院まで』をお読みください。

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