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どこまで切除するか-肺がん手術の基礎知識と3D-CT術前シミュレーション

どこまで切除するか-肺がん手術の基礎知識と3D-CT術前シミュレーション
小原 徹也 先生

東京都立多摩総合医療センター 呼吸器外科(胸部外科)部長

小原 徹也 先生

3D-CT術前シミュレーションとは、患者さんの肺を3Dでモデリングした画像を活用することで肺がんの手術をより適切に行うことができる技術です。

この技術を導入することで具体的にどのような肺がん手術が可能になるのでしょうか。記事1に引き続き、この技術を採用している都立多摩総合医療センターの呼吸器外科部長 小原徹也先生に解説いただきました。

▼3D-CT術前シミュレーションの概要については記事1『肺がん手術の安全性向上と手術時間短縮にむけて-3D-CT術前シミュレーション』をご覧ください。

肺がん手術の種類

肺がんを切除する方法は大きく分けて4つあります。

一側肺全摘術

片方の肺をすべて摘出する方法

肺葉切除術

肺葉を単位として摘出する方法で、左肺は上葉と下葉、右肺は上葉・下葉・中葉に分かれている

区域切除術

肺の一部区域を切除する方法

部分切除術(楔状切除)

肺の一部のみを切除する方法

肺がん手術の成功が初めて報告されたのは1933年(アメリカ)のことですが、その時の術式は左肺の全てを摘出する肺全摘術でした。その後は肺葉切除術が標準術式となり、日本胸部外科学会の集計によると、 2014 年の肺がん手術例38,085 件のうち、肺葉切除術が72.4%、区域切除術が10.8%でした。近年では、小型肺がんによっては肺葉切除、縮小手術(区域切除)どちらであっても明らかな予後の差が認められないという報告もあり2)※、縮小手術の施行が増えてきています。

1) 小 池 輝 明ら,肺がん,低侵襲手術としての縮小手術,新潟がんセンター病院医誌, 第 52 巻,第 1 号. 2013 年 (http://www.niigata-cc.jp/facilities/ishi/Ishi52_1/Ishi52_07.pdf

2)Okada M, et al. Radical sublobar resection for smallsizednon-small cell lung cancer: a multicenterstudy. J Thorac Cardiovasc Surg 2006; 132: 769-75.

※腫瘍径 20 mm 以下の小型肺がんでは、肺葉切除と縮小手術の治療成績は同等と報告されている。

一般に肺がんは再発しやすいといわれています。国立がん研究センターのデータによると、肺がんの全病期の5年生存率は39.4%と報告されており3)、一度手術をしても再発してしまう方がしばしばいます。そのため再発しないと考えられる切除範囲を十分に確保すると同時に患者さんへの負担が少なくなるよう切除範囲を必要最小限にできる方法を検討することが重要です。

3)がん診療連携拠点病院2007年診断 5年相対生存率 集計結果

 

そこで3D-CT術前シミュレーションという技術を活用することで、より適切な部位を切除することが可能になっています。このことが実際にどのような症例に役立つのかを具体例を紹介します。

2cm以下の小型肺がん(StageIA)は肺葉切除術で治癒することが十分期待できますが、症例によっては縮小手術(区域切除)でも同様の治療効果を得ることが出来ます。また高齢者や肺気腫を合併した低肺機能の患者さんに対して、再発のリスクが多少増えても縮小手術(区域切除術・部分切除術)が適用される場合もあります。

このような場合、3D-CTシミュレーションで病変を立体的に確認することにより、その存在部位や縮小手術でがんを完全に切除できるのかを検討できます。

がんが転移し肺に複数の病変がある場合、それぞれの腫瘍の場所・大きさ・個数・片側か両側かによって手術の方法が大きく変わってきます。

そのような場合にも3D-CTシミュレーションの技術が活躍します。3cm以上の大きな転移巣の場合は肺葉切除術を行いますが、それ以下の場合は区域切除術や部分切除術で腫瘍を摘出することが多くなります。複数個の病変を切除する場合は肺機能の温存も考慮する必要があるため3D-CTシミュレーションによる切除術式の検討が有用となります。

病気の状態は患者さんによって異なるので、どのような手術方法を選択するかは外科医が常に知恵を絞っているところです。必要十分な手術を求められる状況の中、3D-CT術前シミュレーションを活用してより詳細な情報を得ることは、適切な手術をする上でとても重要だといえるでしょう。

小原徹也先生

以前の肺がん治療は病変周囲を十分にとる手術が主流でした。しかし様々な臨床研究結果や、3D-CT術前シミュレーションなどの新技術の登場によって、シンプルにがんを取り除くだけではないということがわかってきています。技術や研究の進歩によって以前よりも手術が複雑になってきているといえるでしょう。

日頃診察していると患者さんの中には「腫瘍はこれだけなのに、こんなに切除してしまうのですか。がんの部分だけではだめですか」とおっしゃる方がときどきいます。再発しないように必要な範囲を切除しなければいけませんが、やはりなるべく肺を残すことは患者さんにとって非常に大事なことです。特に最近は高齢の患者さんが増えているため、術後の肺機能低下を最小限に留める工夫が求められます。

肺がんの罹患数・死亡率は年々増加の一途をたどっており(図1)、国立がん研究センターの2015年のがん罹患数・死亡数予測によると今後も肺がんの罹患数は増えると予想されています。肺がんの罹患数の増加は高齢化による影響が大きいと考えられています。また当科の手術件数を見てみても肺がんは増加傾向にあり、現在では年間約150例の手術症例の約半数を肺がんが占めています(図2)。

肺がんは今後も多くの患者さんが罹患する疾患であり、より良い手術方法の開発は重要性を増していくといえるでしょう。

 

図1 【日本における がん罹患数/死亡数予測】

日本における がん罹患数/死亡数予測

国立がん研究センターの2015年のがん罹患数・死亡数予測 長期的傾向
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20150428.html

 

図2【都立多摩総合医療センター呼吸器外科 手術症例数推移】

手術症例数推移

昨今の肺がん手術では「必要最低限」「必要十分」の切除をするという時代になってきています。そういった治療を実現していくには、3D-CT術前シミュレーショのような新たな技術の存在はとても重要です。命を救うことはもちろん、患者さんの負担をより軽減できる手術手法のニーズは今後も高まっていくといえるでしょう。

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