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肺がんの脳転移は治療できる?症状や余命、ステージについて
がんのなかで最も脳転移が多いといわれる肺がん。脳転移が起きた場合は転移した腫瘍の大きさや個数にかかわらずステージⅣの進行がんとなります。従来は脳転移が起こると予後は不良といわれていましたが、今で...
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肺がんの脳転移は治療できる?症状や余命、ステージについて

公開日 2017 年 03 月 31 日 | 更新日 2017 年 10 月 20 日

肺がんの脳転移は治療できる?症状や余命、ステージについて
金 永学 先生

京都大学医学部呼吸器内科 助教

金 永学 先生

森 久恵 先生

国立循環器病研究センター 脳神経外科 医長

森 久恵 先生

がんのなかで最も脳転移が多いといわれる肺がん。脳転移が起きた場合は転移した腫瘍の大きさや個数にかかわらずステージⅣの進行がんとなります。従来は脳転移が起こると予後は不良といわれていましたが、今ではさまざまな治療法が生まれ、脳転移が起きても予後の改善が顕著になっています。

肺がんの脳転移時の症状や治療法などについて、京都大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教の金 永学先生、国立循環器病研究センター病院 ガンマナイフ治療・脳神経外科 病棟医長の森 久恵先生のお二人にお話をうかがいました。

肺がんの脳転移とは

脳腫瘍

金先生:肺がんは、日本人のがん別死因のトップを占めるがんであり、その克服は重要な課題です。肺がんの特徴のひとつに脳に転移しやすいというものがあり、転移性脳腫瘍の約半数が肺がんによるものといわれています。肺がんの脳転移は、脳のどの部分にも起こりえます。

近年、薬物療法の進歩により肺がん患者さんの生存期間は改善してきています。これ自体は大変喜ばしいことなのですが、いっぽうで生存期間がのびるということは、その分、脳転移を起こす機会が高まることも意味しており、肺がんによる脳転移の患者さんが、今後さらに増えていくことが予想されます。

肺がんの脳転移時の症状と余命(生存期間)、ステージ

身体麻痺

肺がんの脳転移時の症状

金先生:肺がんの脳転移が生じた際の症状は、転移した部位によってさまざまです。代表的な症状として、

  • 四肢の麻痺
  • 言語障害
  • けいれん
  • 意識障害

などが挙げられます。

また、脳転移が起きると転移した腫瘍の周りに脳浮腫(脳のむくみ)が起こります。脳浮腫によって頭蓋内圧が亢進し、頭痛や吐き気などが出てくることもあります。

金先生

肺がん脳転移時の余命(生存期間)とステージ

金先生:肺がんが脳に転移している場合、転移した腫瘍の数や大きさにかかわらずステージⅣと診断されます。

海外の少し古いデータですが、脳転移を有する非小細胞肺癌の生存期間の中央値は5ヶ月という報告があります。また、脳転移に伴う症状がある患者さんの生存期間は、症状がない患者さんと比べ短い傾向にあることがわかっています。しかし、最近では薬物療法の進歩により、たとえ脳転移があっても長期生存する患者さんが増えてきています。

森先生:昔は脳転移が患者さんの生存期間を決める、といわれていましたが、近年では治療法が格段に向上し、脳転移が直接の死因となる患者さんは少なくなってきています。

森先生

肺がんの脳転移時の治療法—抗がん剤やガンマナイフなど

森先生と金先生

金先生:脳転移を有する肺がん患者さんの治療において中心となるのは化学療法です。分子標的治療薬(がん細胞の増殖にかかわる特定の分子に作用することで、がんの増殖や転移を特異的に抑制する薬)などを含めた抗がん剤が用いられることが一般的です。近年は特に分子標的治療薬の進化がめざましく、新しい薬剤が次々に開発されています。

しかし、一般的に転移性脳腫瘍には化学療法が効きにくいことから、ガンマナイフを中心とした放射線治療の果たす役割が重要です。

森先生:ここ10〜20年でガイドラインも含めて、治療法は大きく変わったように感じます。治療法が変化したことで、たとえ脳転移があっても長期間生きられる患者さんが増えてきました。

限局型(比較的早期で根治的治療が可能な状態)の小細胞肺がんに対しては、経過中に脳転移が起こる可能性が高いため、脳転移が生じる前に予防的に脳全体に放射線を照射する治療(予防的全脳照射)を行っています。限局型の小細胞がんでは、予防的全脳照射により生存期間がのびるというデータがあり、標準的に行われています。

しかし全脳照射を行うと脳の正常部にもダメージを与えてしまい、認知機能が低下するなど、患者さんのQOL(生活の質)の低下を招くリスクが高いことがわかってきました。そのため最近になって、今までそれほど問題視されていなかった予防的全脳照射の安全性などを含めた長期的合併症のリスクに対して、現場の医師や専門家から懐疑的な声が多くあがってきています。このような背景もあり、できる限り全脳照射を行わない方法で治療を行う方針に変わりつつあります。

森先生と金先生

金先生:ヨーロッパからは、進展型(進行していて根治的治療が難しい状態)の小細胞肺がんに対しても予防的全脳照射を行うことで生存期間が延長したという報告がありました*。いっぽうで、最近日本で行われた臨床試験の結果、進展型の小細胞肺がんに対し、予防的全脳照射を行った患者さんよりも、予防的全脳照射を行わなかった患者さんのほうが、より生存期間が長かった、という相反する結果が報告されました**。

医療環境が異なるため、一概にどちらがよいとはいえないのですが、少なくとも日本のようにMRIが隅々まで普及している環境においては、副作用のリスクが高い全脳照射を早い段階で行うよりも、MRIでこまめにチェックして、実際に脳転移が出てきた段階で放射線治療を行うほうがよいのではないでしょうか。そして、その際、可能であれば脳の正常部に影響の少ないガンマナイフのようなピンポイント照射がより好ましいと考えています。

*Slotman B, et al. Prophylactic cranial irradiation in extensive small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2007; 357(7): 664-72.

**TAKAHASHI T, Yamanaka T, Seto T, Harada H, et al.Prophylactic cranial irradiation versus observation in patients with
extensive-disease small-cell lung cancer: a multicentre, randomised, open-label,phase 3 trial.Lancet Oncol. 2017 Mar 23. pii: S1470-2045(17)30230.

小細胞肺がんとは?その特徴と治療法

肺がん

 

金先生:肺がんは組織型により、大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんにわけることができます。

小細胞肺がんとは?

小細胞肺がんは肺がん全体のおよそ10〜15%を占めるがんです。悪性度の高いがんとして知られており、増殖のスピードが早い点が特徴です。そのため、発見された段階ですでに脳や肝臓、リンパ節、骨などに転移しているケースが多いです。

小細胞肺がんの治療法

小細胞がんは悪性度の高いがんではありますが、抗がん剤や放射線治療への感受性(効果の出やすさ)が高い点が特徴です。発見時にすでに転移がある患者さんが多いこともあって手術が行われることはまれであり、治療の中心は抗がん剤や放射線治療などの内科的治療になります。

非小細胞肺がんとは?その特徴と治療法

非小細胞肺がんとは?

小細胞肺がん以外の組織型の肺がんすべてを指します。非小細胞肺がんは、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど、さらに細かく分類されます。

非小細胞肺がんの治療法

小細胞肺がんと比べると抗がん剤や放射線治療の感受性が低く、切除可能なケースでは手術が第一選択となります。しかし、実際には進行してから発見されるケースが多く、その場合には抗がん剤や放射線治療などの内科的治療の適応です。非小細胞肺がんのうち、特に腺がんの患者さんでは分子標的治療薬が有効な患者さんが多く、そのような患者さんの生存期間は近年改善してきています。

非小細胞肺がんの一部の患者さん、特に脳転移による症状が出ている患者さんの場合には、まず放射線治療で脳に転移したがんを小さくして症状を抑えてから抗がん剤治療を行うことが多いです。抗がん剤は一般的に脳への移行が悪い(抗がん剤の効果が出にくい)ことが多く、放射線治療を行うことによって、抗がん剤の不得手とする部分を補っています。特に転移した個数が少ない場合には、より効果が高く副作用の少ないガンマナイフを行うようになってきています。

治療の進歩により、肺がんの脳転移が起きても長期生存が可能な時代に

金永学先生

金先生:以前は脳転移をきたした肺がん患者さんの予後は極めて不良でした。しかしここ20年ほどで肺がんの脳転移に対する治療は大きく変わり、脳転移があっても長く生きられる患者さんがどんどん増えてきています。

「脳転移した肺がんは手の施しようがない」という時代は終わりました。ですから肺がんの脳転移に悩む患者さんやご家族には、治療を諦めずに担当医と相談し、必要であればセカンドオピニオンなども利用しながら前向きに治療を行っていただければと思います。

 

肺がん・ガンマナイフ(金 永学先生、森 久恵先生)の連載記事

肺癌をはじめとした胸部腫瘍に対する薬物療法を中心に診療を行っている。新たな治療開発にも積極的に取り組んでおり、治験も多数手がける。

2003年よりガンマナイフ専従医として勤務。国立循環器病研究センターは顕微鏡手術(マイクロサージェリー)、血管内手術(カテーテル治療)、定位放射線照射(ガンマナイフ)の3つを最高水準で提供できることが最大の特色であり、ガンマナイフ治療医としてその一端を担っている。

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