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ガンマナイフで肺がん脳転移時の治療成績向上―新型ではフレームレスの分割照射にも対応

ガンマナイフで肺がん脳転移時の治療成績向上―新型ではフレームレスの分割照射にも対応
金 永学 先生

京都大学医学部 呼吸器内科 助教

金 永学 先生

森 久恵 先生

国立循環器病研究センター 脳神経外科 医長

森 久恵 先生

記事1『肺がんの脳転移は治療できる? 症状や余命、ステージについて』では、治療法の進歩により、肺がんで脳転移が起きても長く生きられる方が増えてきていることが分かりました。特に定位放射線治療機器ガンマナイフによって、脳転移した腫瘍の治療効果は格段に上がっています。

新型のガンマナイフがフレームレスの分割照射にも対応したことで、ますます注目されるガンマナイフによる肺がんの脳転移時の治療。引き続き、京都大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教の金 永学先生、国立循環器病研究センター ガンマナイフ治療・脳神経外科 病棟医長の森 久恵先生のお二人に、お話を伺います。

森先生:ガンマナイフとは放射線治療に用いられる治療装置のひとつで、1968年にスウェーデンで開発されました。約200個の線源から発するガンマ線を用いて、虫眼鏡の焦点のように病巣部に集中的にビームを当てて治療します。

このガンマ線は周囲の正常組織に影響を与えることはほとんどなく、集中的にビームが当たった箇所だけをナイフで切り取るように治療できます。小さな病変であれば開頭手術を行わずに治療やコントロールができるため、低侵襲な点がメリットです。また、1泊2日から2泊3日と短期間のため治療を受けやすく、3~4個の腫瘍であれば、2時間以内の照射時間で治療できる点も特徴です。

また、ほかの放射線治療機器は放射線科医が治療を行うのに対し、ガンマナイフは当院のように脳神経外科医が操作、治療を行うことも多いことが特徴の1つです。副作用で脳浮腫の症状が起きた際などでも、そのまま治療医である脳神経外科医が対応に当たることができます。

ガンマナイフとは

金先生:ガンマナイフは低侵襲で、1泊2日から2泊3日の入院期間で治療を行うことができるため、抗がん剤の休薬期間中に治療が行えます。そのため、抗がん剤と組み合わせてより効果的に治療することが可能です。また、肺がんの脳転移におけるガンマナイフ治療は1996年より保険が適用され、高額療養費制度の利用も可能です。そのため、今後ますますガンマナイフによる肺がん脳転移時の治療は増えていくことが予想されます。

ガンマナイフにはメリットが多いことから、呼吸器内科でも患者さんに脳転移が見られた場合にはまずガンマナイフ適応の可否を調べ、適応の場合には第一の選択としてガンマナイフ治療を行うことが多くなっています。

最近では、ごく小さいうちに脳転移を見つけられるケースが増えてきました。脳転移がなくても定期的に脳のMRIを撮影する施設が多くなってきたためです。私の所属している京都大学医学部附属病院では、脳転移がない患者さんでも最低年1回はMRI検査を行い、脳転移が生じていないかチェックしています。

森先生:ガンマナイフでは、大きく2つの治療効果が期待できます。

ガンマナイフで期待できる治療効果

まずは本来の目的である、腫瘍のコントロールが期待できます。Serizawaらによると、ガンマナイフだけで治療を行った1万個以上の転移性脳腫瘍のうち、治療から1年後の腫瘍コントロール率(腫瘍の増大が抑えられている確率)は以下のように報告されています

腫瘍体積腫瘍コントロール率

1ml未満99.5%

1~4ml92.6%

4~10ml87.3%

10ml以上65.5%

*出典:
Serizawa T, Higuchi Y, Ono J, Matsuda S, Nagano O, Iwadate Y, Saeki N. Gamma Knife surgery for metastatic brain tumors without prophylactic whole-brain radiotherapy: results in 1000 consecutive cases
J Neurosurg. 2006 Dec;105 Suppl:86-90.

また、実際に当院でガンマナイフ治療を行った、肺がんからの転移性脳腫瘍の症例をご紹介します。本症例では、青色で囲まれた腫瘍にガンマナイフによる照射を行いました。ガンマナイフ治療後には分子標的治療薬を継続し、1年後には全ての病変が縮小あるいは消失しました。

ガンマナイフ治療を行った肺がんからの転移性脳腫瘍の症例
ガンマナイフ治療を行った肺がんからの転移性脳腫瘍の症例(ガンマナイフ治療後に分子標的薬で治療を継続)

転移性脳腫瘍は腫瘍が大きくなると神経症状が現れ、四肢の麻痺や言語障害、ふらつきなどが生じて日常生活に支障をきたします。症状が深刻になると寝たきりになってしまうことも少なくありません。

そこでガンマナイフ治療によって腫瘍を小さくし、これらの症状を改善または予防することによって、治療中でも患者さんがよりよい生活ができることに貢献します。ガンマナイフで脳転移した腫瘍をコントロールし、そして脳以外の腫瘍(原発がんなど)もコントロールできていれば、80%以上の患者さんにおいてADL(Activities of Daily Living:寝起きや排泄、食事、着替えなど日常生活で最低限必要な動作)が維持できることが分かっています。

このように、ガンマナイフによる治療は腫瘍そのものを抑えるだけでなく、患者さんの治療中の生活レベルを維持できることにも寄与しているのです。

森先生:従来のガンマナイフでは、照射中に頭が動くことがないよう、頭蓋骨にピンを刺しフレームによって頭部を固定します。ピン固定が怖いと患者さんが不安に思われるケースもありますが、ガンマナイフでは照射精度を維持するために、焦点位置がずれないようピン固定をする必要があります。ピン固定時の痛みについては、各施設が痛みを少なくするための工夫をしています。

金先生:私のところに来られる患者さんでも、ピン固定を怖がられる患者さんが少なくありません。森先生は、ピン固定時の痛みを軽くするため、具体的にどのような工夫をされているのですか。

森先生:フレーム装着前に鎮痛剤の点滴注射をしておきます。ピン固定は局所麻酔で行います。多くの方はピンで固定していくときの圧迫感を訴えられますが、フレームがしっかり固定されると痛みはあまり感じません。ただし、痛みには個人差があり、不安が強いと余計に痛みを感じることもあります。

できる限りリラックスした状態で治療が受けられるよう、お声がけをし、状況に応じて抗不安薬や鎮静剤を追加します。

治療後、フレームをはずした後に頭全体がジワジワと痛むことがありますが、これは頭の締め付けから開放されたことによるものです。1時間くらいでおさまることが多いです。

また、新型のガンマナイフでは、従来のピン固定だけではなく、ピンを留めずにマスクで頭を固定するマスク固定でも治療をできるようになりました。新しいガンマナイフの登場によって、今まで治療が難しかった比較的大きな腫瘍も、マスク固定による分割照射での治療ができるようになりました。このように、機器の進歩によって患者さんの負担もより少なくなってきているといえます。

新型のガンマナイフの登場によって脳転移治療はさらに進化

森先生:新しいタイプのガンマナイフでは、ピン固定ではなく、患者さんに合わせて作成した専用の枕とマスクで頭部を固定し、治療を行います。

マスク固定では局所麻酔や鎮静剤は不要となり、ピン固定と比べて患者さんに負担をかけることなく連日の分割照射(少量の放射線を複数回に分けて照射する方法)ができるようになりました。その結果、今まで治療が難しかった比較的大きな腫瘍や、脳幹部などリスクが高い部位に対しても、分割照射によって治療できるようになりました。また、腫瘍の摘出術など開頭手術を受けた後では、ちょうど開頭部位がピン固定部に当たってしまい、固定が難しいケースがあります。そのような場合であっても、マスク固定であれば、ガンマナイフ治療は可能です。

大きな腫瘍やリスクの高い部位にも照射ができるように

当センターでは、2019年7月にマスク固定にも対応可能なガンマナイフを導入しました。導入以降、ガンマナイフ治療が適応となる転移性脳腫瘍の症例の約85%に対して、マスク固定によるガンマナイフ治療を行っています(2019年7~11月実績)。

また、患者さんの状態にもよりますが、日帰りでのマスク固定によるガンマナイフ治療にも対応しています。

まず、外来を受診していただき、全身状態を確認させていただいたり、治療についてご説明したりします。マスク固定によるガンマナイフ治療の適応が決定した場合には、治療計画を立てるためにMRI検査を受けていただきます。時間があればそのまま、患者さんの頭部に合わせた専用の枕とマスクを作成します。この作成時間は20分程です。

新型のガンマナイフの登場によって脳転移治療はさらに進化

マスク固定が難しいと考えられるケースとは?

森先生:新型ガンマナイフでは、マスクの鼻の頭につけたシールを赤外線モニターで監視しながら照射を行います。シールが設定の範囲を出てしまうと、照射が止まる仕組みになっています。

マスク固定が難しいと考えられるケースとは、たとえば、首や腰の痛みによって長時間動かずにいることが難しい、咳が出やすい、そんなケースが該当します。このように何らかの理由で動かずにいることが難しい場合には、従来のピン固定でのガンマナイフ治療を選択するケースもあります。ただし、マスク固定であっても休憩をとることができるため、当センターでは動かずにいることが難しいと考えられる場合でも、柔軟に対応させていただいています。このようなケースでマスク固定でのガンマナイフ治療をご希望の際は、一度ご相談いただきたいと思います。

森先生:新型ガンマナイフの登場によってさらに分割照射が可能になったことで、1回あたりの放射線量を小さくすることができるようになりました。それによって、ガンマナイフ治療による副作用は、より抑えられるようになってきたと考えられます。

しかし、腫瘍が大きい場合には副作用を生じることがあります。腫瘍の周囲に浮腫が生じないくらい小さなものであれば副作用の心配はほとんどありませんが、転移性脳腫瘍が直径2cmを超えるような大きな腫瘍の場合には、一時的に浮腫が増強して麻痺が増悪したり、けいれんが起こったりすることがあります。しかし、腫瘍が小さくなればこれらの症状も消失します。また、脳出血を起こすこともあります。

そして、特に私たちが注意しているものは、放射線壊死です。放射線壊死とは、放射線を細胞に過剰照射することによって細胞が壊死を起こし、浮腫が起こることを指します。浮腫が大きくなると腫瘍の部位による神経症状が生じます。

通常、がん細胞が全て壊死していれば同じ箇所への再発は少ないですが、なかには壊死細胞のなかに混じってがん細胞が生きていることもあり、そこからじわじわと再発することもあります。放射線壊死のなかに生きたがん細胞があることが分かった場合には、壊死した細胞ごと外科手術で取り除くことが標準です。ただし、放射線壊死した組織が手術では取り除くことが難しい場所にあることもあって容易ではありません。加えて患者さんの体力が外科手術に耐えうるものでなく、そもそも手術自体が難しいこともあります。その際にはもう一度定位照射を行ったり全脳照射を行ったりして、生きたがん細胞を壊死させます。

金先生:放射線壊死は、ガンマナイフ治療とほかの定位放射線治療とによって頻度に差はあるのでしょうか。また、腫瘍の大きさによって放射線量は変わりますか。

森先生:現場で治療している感覚では、各定位放射線治療で起こる放射線壊死の頻度は同程度と思います。放射線壊死は、やはり治療時の腫瘍のサイズに影響されます。

放射線量は腫瘍のサイズや場所で変えています。がん抑制効果を得るのに十分な線量をそのまま大きな腫瘍に照射することは、急性放射線障害のリスクを高くしてしまうため、放射線量を小さくするしかありません。しかし、小さすぎるとがん抑制効果が得られません。

また言語中枢など脳の機能で特に重要な部位の近くの腫瘍も、放射線量を小さくします。放射線量を小さくせざるを得ない場合には、分割照射を行って1回あたりの放射線量を少なくするような方法も検討しています。どのくらいの放射線量を照射するかは、照射前に綿密な治療計画を立てています。

森先生:大きさは直径3cm未満の腫瘍が適応です。個数について、標準的には4個以下といわれていますが、それ以上の個数であっても、患者さんの状況によっては全脳照射ではなく、ガンマナイフで治療できた実績もあります。脳転移した腫瘍の数が10個程度でもガンマナイフ治療によって半年以上生きられた方もいます。

肺癌診療ガイドライン2018年版でも、5~10個の脳転移に対して、一定の適格基準のもと定位手術的照射を推奨しています。実際には、10個以上であっても、患者さんの状態によってはガンマナイフ治療を適応することもあります。

ただし、脳全体に無数に腫瘍が散らばっている場合には、ガンマナイフ治療でなく、全脳照射を行う場合もあります。

“ガンマナイフ × 抗がん剤”の治療で予後は向上している

森先生:ガンマナイフ治療を受けた方のほとんどにおいて、照射部位の腫瘍が縮小することが分かっています。ガンマナイフによる治療効果は高いといえるでしょう。またガンマナイフは脳転移が再発しても、基本的に場所さえ異なれば何回でも受けることができるので、脳転移が起こるたびにガンマナイフで治療することも可能です。私の診ている患者さんのなかにも最高で7回照射をした方がおられ、今も元気に過ごされています。

金先生:近年、肺がんの治療によく用いられる分子標的治療薬は、多くの場合脳転移にも有効なのですが、脳への移行が悪い点はほかの抗がん剤と同様です。実際に、分子標的治療薬で頭蓋外病変のコントロールは良好なのに脳転移のみ悪化したケースを多数経験しています。そして、このようなケースでは脳転移さえ局所治療でコントロールできれば分子標的治療薬を長期に継続できることが多く、治療ストラテジーとしても確立しています。私がいまフォローしている患者さんのなかにも、ガンマナイフでモグラたたきのように脳転移をコントロールしながら分子標的治療薬を長期に継続している患者さんが何名かおられます。

森先生:脳転移した腫瘍でも、ごく小さなものは抗がん剤で消失することもあります。神経症状が出そうなもの、抗がん剤では抑えられないものはガンマナイフで治療するというふうに、抗がん剤では手の届かないところをガンマナイフで補うことができるようになってきました。肺がんの脳転移におけるガンマナイフ治療は保険適用ですから、今後ますますガンマナイフの出番は増えることでしょう。

金先生:繰り返しになりますが、抗がん剤と併用しながら治療できることがガンマナイフのメリットです。双方をうまく活用することによってがんを制御できれば、肺がんの脳転移の予後もますますよくなっていくことと思います。私たち呼吸器内科でも、脳神経外科や放射線科とも協力しながら肺がんの治療を行っています。ですから、脳転移が起きても決して諦めずに、医師と相談しながら前向きに治療に励んでいただければと思います。

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