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ガンマナイフで肺がん脳転移時の治療成績向上―最新型ではフレームレスの分...
記事1『肺がんの脳転移は治療できる?症状や余命、ステージについて』では、治療法の進歩により肺がんで脳転移が起きても長く生きられる方が増えてきていることがわかりました。特に定位放射線治療装置「ガン...
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ガンマナイフで肺がん脳転移時の治療成績向上―最新型ではフレームレスの分割照射にも対応

公開日 2017 年 03 月 31 日 | 更新日 2017 年 07 月 13 日

ガンマナイフで肺がん脳転移時の治療成績向上―最新型ではフレームレスの分割照射にも対応
金 永学 先生

京都大学医学部呼吸器内科 助教

金 永学 先生

森 久恵 先生

国立循環器病研究センター 脳神経外科 医長

森 久恵 先生

記事1『肺がんの脳転移は治療できる?症状や余命、ステージについて』では、治療法の進歩により肺がんで脳転移が起きても長く生きられる方が増えてきていることがわかりました。特に定位放射線治療装置「ガンマナイフ」によって脳転移した腫瘍の治療効果は格段にあがっています。

最新型ではフレームレスの分割照射にも対応したことでますます注目されるガンマナイフによる肺がんの脳転移時の治療について、引き続き京都大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教の金 永学先生、国立循環器病研究センター病院 ガンマナイフ治療・脳神経外科 病棟医長の森 久恵先生のお二人にお話をうかがいます。

ガンマナイフとは

ガンマナイフ装置

森先生:ガンマナイフとは放射線治療に用いられる治療装置のひとつで、1968年にスウェーデンで開発されました。約200個の線源から発するガンマ線を用いて、虫めがねの焦点のように病巣部に集中的にビームを当てて治療します。

このガンマ線は周囲の正常組織に影響を与えることはほとんどなく、集中的にビームが当たった箇所だけをナイフで切り取るように治療できます。小さな病変であれば開頭手術を行わずに治療やコントロールができるため、非常に低侵襲な点がメリットです。また、入院も1泊2日から2泊3日と短期間のため治療を受けやすく、3~4個の腫瘍であれば、2時間以内の照射時間で治療できる点も特徴です。

また他の放射線治療装置は放射線科医が治療を行うのに対し、ガンマナイフは脳神経外科医が操作・治療を行うことも特徴のひとつです。副作用で脳浮腫の症状が起きた際などでも、そのまま治療医である脳神経外科医が対応にあたることができます。

ガンマナイフ

金先生:ガンマナイフは低侵襲で、治療期間が短く抗がん剤の休薬期間中に治療が行えます。そのため抗がん剤と組み合わせてより効果的に治療することが可能です。また、肺がんの脳転移におけるガンマナイフ治療は1996年より保険が適用され、また高額医療制度の利用も可能です。そのため今後ますますガンマナイフによる肺がん脳転移時の治療は増えていくことが予想されます。

ガンマナイフにはメリットが多いことから、呼吸器内科でも患者さんに脳転移がみられた場合にはまずガンマナイフ適応の可否を調べ、適応の場合には第一の選択としてガンマナイフ治療を行うことが多くなっています。

最近ではごく小さいうちに脳転移をみつけられるケースが増えてきました。脳転移がなくても定期的に脳のMRIを撮影する施設が多くなってきたためです。私の所属している京都大学医学部附属病院では、脳転移がない患者さんでも最低年1回はMRI検査を行い、脳転移が生じていないかチェックしています。

ガンマナイフで期待できる治療効果

ガンマナイフで期待できる治療効果

森先生:ガンマナイフでは大きくふたつの治療効果が期待できます。

腫瘍のコントロール

まずは本来の目的である、腫瘍のコントロールが期待できます。Serizawaらによると、ガンマナイフだけで治療を行った10000個以上の転移性脳腫瘍のうち、治療から1年後の腫瘍コントロール率(腫瘍の増大が抑えられている確率)は以下のように報告されています。

腫瘍体積 腫瘍コントロール率
1ml未満 99.5%
1-4ml 92.6%
4-10ml 87.3%
10ml以上 65.5%

 

出典:

  • J Neurosurg. 2006 Dec;105 Suppl:86-90.
  • Gamma Knife surgery for metastatic brain tumors without prophylactic whole-brain radiotherapy: results in 1000 consecutive cases.
  • Serizawa T1, Higuchi Y, Ono J, Matsuda S, Nagano O, Iwadate Y, Saeki N.

QOL(生活の質)の改善、維持

転移性脳腫瘍は腫瘍が大きくなると神経症状が現れ、四肢の麻痺や言語障害、ふらつきなどが生じて日常生活に支障をきたします。症状が深刻になると寝たきりになってしまうことも少なくありません。

そこでガンマナイフ治療によって腫瘍を小さくし、これらの症状を改善または予防することによって、治療中でも患者さんがよりよい生活ができることに貢献します。ガンマナイフで脳転移した腫瘍をコントロールし、そして脳以外の腫瘍(原発がんなど)もコントロールできていれば、80%以上の患者さんにおいてADL(Activities of Daily Living:寝起きや排泄、食事、着替えなど日常生活で最低限必要な動作)が維持できることがわかっています。

このように、ガンマナイフによる治療は腫瘍そのものを抑えるだけでなく、患者さんの治療中の生活レベルを維持できることにも寄与しているのです。

ガンマナイフの副作用

ガンマナイフ装置

局所麻酔を行うことでピン固定時の痛みはあまりない

森先生:ガンマナイフは、頭蓋骨にピンを刺して頭を固定するピン固定が怖いと多くの患者さんが不安に思われていますが、ガンマナイフでは精度を維持するために焦点位置がずれないよう、ピン固定をする必要があります。ピン固定時の痛みについては、各施設が痛みを最小限に抑えるための工夫をしています。

金先生:私のところに来られる患者さんでも、ピン固定を怖がられる患者さんが少なくありません。森先生は、ピン固定時の痛みを軽くするため、具体的にどのような工夫をされているのですか。

森先生: フレーム装着前に鎮痛剤の点滴注射をしておきます。ピン固定は局所麻酔で行います。多くの方はピンで固定していくときの圧迫感を訴えられますが、フレームがしっかり固定されると痛みは感じません。痛みには個人差があり、不安が強いと余計に痛みを感じることもあります。

できる限りリラックスした状態で治療が受けられるよう、お声がけをし、状況に応じて抗不安薬や鎮静剤を追加します。

治療後フレームをはずしたあとに頭全体がジワジワと痛むことがありますが、これは頭の締め付けから開放されたことによるものです。1時間くらいでおさまります。

また、最新のガンマナイフ装置では、従来のピン固定から、ピンを留めずにマスクを被って頭を固定するマスク固定もできるようになりました。今まで治療が難しかった比較的大きな腫瘍もマスク固定の分割照射で治療できるようになります。このように、機器の進歩によって患者さんの負担もより少なくなってきています。

ガンマナイフ装置

腫瘍が大きい場合は浮腫や脳出血、放射線壊死が生じることも

森先生:副作用が比較的少ないガンマナイフでも、腫瘍が大きい場合は副作用が生じることがあります。腫瘍の周囲に浮腫が生じないくらい小さなものであれば副作用の心配はほとんどありませんが、転移性脳腫瘍が直径2cmを超えるような大きな腫瘍の場合には、一時的に浮腫が増強して麻痺が増悪したりけいれんが起こったりすることがあります。しかし腫瘍が小さくなればこれらの症状も消失します。脳出血をおこすこともあります。

私たちが注意しているものは、放射線壊死です。放射線壊死とは、放射線を細胞に過剰照射することによって細胞が壊死を起こし、浮腫が起こることを指します。浮腫が大きくなると腫瘍の部位による神経症状が生じます。

通常、がん細胞がすべて壊死していれば同じ箇所への再発は少ないですが、なかには壊死細胞のなかに混じってがん細胞が生きていることもあり、そこからじわじわと再発することもあります。放射線壊死のなかに生きたがん細胞があることがわかった場合には、壊死した細胞ごと外科手術で取り除くことが標準であるものの、放射線壊死した組織が手術では取り除くことが難しい場所にあることもあって容易ではありません。

加えて患者さんの体力が外科手術に耐えうるものでなく、そもそも手術自体が難しいこともあります。その際にはもう一度定位照射を行ったり全脳照射を行ったりして、生きたがん細胞を壊死させます。

金先生:放射線壊死はガンマナイフと他の定位放射線治療によって頻度に差はあるのでしょうか。また、腫瘍の大きさによって放射線量は変わりますか。

森先生:現場で治療している感覚では、各定位放射線治療で起こる放射線壊死の頻度は同程度と思います。放射線壊死はやはり治療時の腫瘍のサイズに影響されます。

放射線量は腫瘍のサイズや場所で変えています。がん抑制効果を得るのに十分な線量をそのまま大きな腫瘍に照射することは、急性放射線障害のリスクを高くしてしまうため、放射線量を小さくするしかありません。しかし小さすぎるとがん抑制効果が得られません。

また言語中枢など脳の機能で特に重要な部位の近くの腫瘍も、放射線量を小さくします。放射線量を小さくせざるを得ない場合には分割照射を行って1回あたりの放射線量を少なくするような方法も検討しています。どのくらいの放射線量を照射するかは、照射前に綿密な治療計画を立てています。

肺がんの脳転移時のガンマナイフの適応―個数や大きさなど

森先生:大きさは直径3cm未満の腫瘍が適応です。個数について、標準的には4個以下といわれていますが、実際にはそれ以上の個数であっても、患者さんの状況によっては全脳照射ではなく、ガンマナイフで治療できた実績もあります。また、脳転移した腫瘍の数が10個程度でもガンマナイフ治療によって半年以上生きられた方もいます。ただし脳全体に無数に腫瘍が散らばっている場合はガンマナイフでなく全脳照射の適応です。

「ガンマナイフ ✕ 抗がん剤」の治療で予後は飛躍的に向上

森久恵先生、金永学先生

森先生:ガンマナイフ治療を受けた方のほとんどにおいて、照射部位の腫瘍が縮小することがわかっています。ガンマナイフによる治療効果は極めて高いといえるでしょう。またガンマナイフは脳転移が再発しても、基本的に場所さえ異なれば何回でも受けることができるので、脳転移が起こるたびにガンマナイフで治療することも可能です。私のみている患者さんのなかにも最高で7回照射をした方がおられ、今も元気に過ごされています。

金先生:最近肺がんの治療によく用いられる分子標的治療薬は、多くの場合脳転移にも有効なのですが、脳への移行が悪い点は他の抗がん剤と同様です。実際に分子標的治療薬で頭蓋外病変のコントロールは良好なのに脳転移のみ悪化したケースを多数経験しています。そして、このようなケースでは脳転移さえ局所治療でコントロールできれば分子標的治療薬を長期に継続できることが多く、治療ストラテジーとしても確立しています。私がいまフォローしている患者さんのなかにもガンマナイフでモグラたたきのように脳転移をコントロールしながら分子標的治療薬を長期に継続している患者さんが何名かおられます。

森先生:脳転移した腫瘍でも、ごく小さなものは抗がん剤で消失することもあります。神経症状が出そうなもの、抗がん剤では抑えられないものはガンマナイフで治療するというふうに、抗がん剤では手の届かないところをガンマナイフで補うことができるようになってきました。肺がんの脳転移におけるガンマナイフ治療は保険適用ですから、今後ますますガンマナイフの出番は増えることでしょう。

金先生:繰り返しになりますが、抗がん剤と併用しながら治療できることがガンマナイフのメリットです。双方をうまく活用することによってがんを制御できれば、肺がんの脳転移の予後もますますよくなっていくことと思います。私たち呼吸器内科でも、脳神経外科や放射線科とも協力しながら肺がんの治療を行っています。ですから脳転移が起きても決して諦めずに、医師と相談しながら前向きに治療に励んでいただければと思います。

 

肺がん・ガンマナイフ(金 永学先生、森 久恵先生)の連載記事

肺癌をはじめとした胸部腫瘍に対する薬物療法を中心に診療を行っている。新たな治療開発にも積極的に取り組んでおり、治験も多数手がける。

2003年よりガンマナイフ専従医として勤務。国立循環器病研究センターは顕微鏡手術(マイクロサージェリー)、血管内手術(カテーテル治療)、定位放射線照射(ガンマナイフ)の3つを最高水準で提供できることが最大の特色であり、ガンマナイフ治療医としてその一端を担っている。

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