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ステージ別にみる子宮頸がん手術と治療-ダヴィンチを用いたロボット支援下...
昭和大学産婦人科では手術支援ロボット・ダヴィンチによる手術に力を入れており、2017年2月には同院で4例目となるロボット支援下広汎子宮全摘術を実施しました。子宮頸がんのエキスパートである昭和大学...
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ステージ別にみる子宮頸がん手術と治療-ダヴィンチを用いたロボット支援下広汎子宮全摘術

公開日 2017 年 04 月 08 日 | 更新日 2018 年 09 月 19 日

ステージ別にみる子宮頸がん手術と治療-ダヴィンチを用いたロボット支援下広汎子宮全摘術
松本 光司 先生

昭和大学産婦人科学 教授

松本 光司 先生

昭和大学産婦人科では手術支援ロボット・ダヴィンチによる手術に力を入れており、2017年2月には同院で4例目となるロボット支援下広汎子宮全摘術を実施しました。

子宮頸がんのエキスパートである昭和大学医学部産婦人科学講座准教授の松本光司先生に、ステージ別における子宮頸がんに対する治療とダヴィンチの適用について伺いました。

子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染によって生じる

子宮に生じるがんは、子宮体がん子宮頸がんがあります。子宮頸がんとは子宮頸部と呼ばれる子宮の入口部に生じたがんのことをいい、病理学的所見によってさらに扁平上皮癌と腺癌に細分化されます。(ここは病理学的に上皮性悪性腫瘍が確定しているので、がんではなくを使用します。)

子宮頸がんの発生には、HPV感染が関係していることがわかっています。

子宮頸がんは実は予防できるがん

子宮頸がんは、がん検診を受ければ前がん病変(がんになる前の段階の疾患)を発見することができます。そして高度前がん病変の段階で外科的治療を行えば、がんになる前に治療することができることから、予防できるがんともいわれています。

子宮頸がんに対する治療方法はステージによって変化する

子宮頸がんステージ

がんに対する治療方法は、外科療法、抗がん剤を使用する化学療法、放射線療法が三大療法です。

比較的初期の子宮頸がんでは、がんの進行度合いだけでなく、妊娠・出産に対する希望 (妊孕性温存希望)を考慮しながら治療方針を決定するのが特徴といえるでしょう。

子宮頸がんの好発年齢は子宮体がんよりも若いため、子宮頸がんを発症した女性には、小さいお子さんをお持ちの方も多いです。初期の子宮頸がん手術では、子宮頸部円錐切除術レーザー蒸散術などの日帰り手術を希望される方が大勢いらっしゃるのは、小さい子供の世話などであまりゆっくり入院していられない方が多いためと考えています。

子宮頸がんのステージと適用される治療方法

子宮頸がんではステージ (進行期) によって適用される治療方法が異なります。

高度前がん病変の患者さんでは子宮頸部円錐切除術と呼ばれる手法で、異常を認める組織を切除するのが一般的です。条件を満たす患者さんに対しては、レーザー治療を行うこともあります。ステージI/II期の子宮頸がんの患者さんに対しては子宮全摘術が原則となりますが、ステージⅠA1のように、子宮頸部の表面に留まっているごく初期の子宮頸がんで妊孕性温存を希望する患者さんに対しては、子宮頸部円錐切除術のみで経過を見ることも行われます。

子宮全摘の術式は一般的には、IA1期では単純子宮全摘出術、IA2期では準広汎子宮全摘術、IB1〜II期では広汎子宮全摘術を選択します。広汎子宮全摘術では子宮や腟壁の一部だけでなく、卵巣・卵管・骨盤リンパ節も一緒に摘出することを含んだ術式です。ただし、年齢や進行期、組織型によっては卵巣を温存することが許容されることがあります。また、IA2期やIBI期の一部で妊孕性温存を強く希望する患者さんに対して、広汎子宮頸部摘出術 (子宮頸部を摘出し、子宮体部と腟を縫合する)を行っている施設もあります。

ステージⅢ期は、がんが腟壁の下3分の1に達している、もしくはがんが傍子宮組織を介して骨盤底に達している状態で、手術では摘出することが困難です。また、がんが隣接臓器である膀胱や直腸に及んでいるステージIVA期でも、局所病変を手術で摘出することが出来ません。このような進行子宮頸がんには、放射線治療を主体とする治療が行われます。

最近は放射線治療単独ではなく、シスプラチンという抗がん剤を同時に併用する同時化学放射線療法が標準となっています。遠隔転移のあるステージⅣB期では、抗がん剤を使用する薬物療法同時化学放射線療法を行います。

外科療法

子宮頸部円錐切除術

子宮頸部を高さ1~1.5cm程度の円錐状に切り抜く小手術で、高度前がん病変に対する主要な治療法です。ごく初期の子宮頸がんで術後も妊娠を希望されている患者さんには、子宮頸部円錐切除術のみでその後の経過を見る場合もあります。この方法は子宮頸部を短くすることから早産の原因になることもあるため、患者さんの年齢や妊娠の希望に応じて切除する円錐の深さを微調整する場合もあります。切除された子宮頸部組織は病理学的に検査されるので、前がん病変のなかに初期がんが紛れていないかを調べることもできます。

レーザー蒸散術

レーザーを当てて、前がん病変を焼灼・蒸散する方法です。焼灼した部位はしばらくすると新たな上皮を形成します。子宮頸部の長さは短くなりにくいため、円錐切除術と比べると妊娠した場合の早産のリスクは少なくなるといわれています。

しかし、レーザーで焼き飛ばせるのはレーザー光線の届く範囲 (目で見える範囲) の表面に限られるため、子宮頸管内にも病変が及ぶような場合は病変が残存することになります。レーザー蒸散術は子宮頸部円錐切除術と比較すると適応も限られ再発率もやや高いため、レーザー蒸散術が勧められるかどうかについては専門医の診察を必要とします。

単純子宮全摘出術

単純子宮全摘出術・広汎子宮全摘出術

子宮頸がんではIA1期に対して行われる手術です。子宮筋腫や子宮体癌に対して子宮全摘を行う場合にもこの術式で行います。膀胱や腸管といった周囲の臓器を傷つけず、子宮のみを摘出します。

子宮は基靭帯をはじめ複数の靭帯によって支えられていますが、本術式では各靱帯を個別に切除することなく、複数の靭帯を束ねてまとめて結紮・切断します。そのため切除ラインはおのずと子宮近くになりますが、簡単・円滑に子宮全摘を行うことができ、なおかつ手術時間も短く出血量も少なく抑えられます。

広汎子宮全摘出術

ステージIB1〜ⅡB期に進行すると、子宮頸部深くもしくは周辺の組織にがんが浸潤するため、腟壁や子宮を支える靱帯を含めて広範囲に子宮を摘出する広汎子宮全摘術が行われます。

病変がある子宮頸部ギリギリで切除すると病変が残存する可能性があるため、広汎子宮全摘術では子宮頸部を回り込むようにして子宮頸部から離れたラインで靭帯を一本ずつ切っていきます。複数の靭帯を束ねてまとめて結紮・切断する単純子宮全摘術に比べると時間はかかりますが、各靱帯を個別に切断するため切除ラインを子宮頸部から離してより外側に持ってくることが可能になります。

通常この手術を実施するときには、最初に転移を起こしやすい骨盤内のリンパ節を摘出する骨盤リンパ節郭清(かくせい・リンパ節の切除)や、両側付属器摘出術(卵巣や卵管の切除)も同時に行います。

放射線療法

手術で摘出した子宮などの病理検査の結果、がん細胞が子宮頸部の筋層の深いところまで浸潤している場合や腟壁や基靱帯、リンパ節などにも広がりが見られ、再発のリスクが高いと判断される場合には、広汎子宮全摘出術を実施した後に放射線療法を実施してがんの根治を目指します。

一方でステージⅢに進行した子宮頸がんは、手術で完全摘出することが困難であるため、最初から手術ではなく放射線療法を主体とする治療を選択します。手術ではなく放射線治療になった場合に、なかには「自分は手術で癌がとれないから助からない」と落ち込む方もいらっしゃいます。しかし、放射線療法は根治可能な治療方法のひとつであり、ステージⅢの子宮頸がんでも5年生存率は50~60%と十分な予後が期待されます。

最近は放射線治療単独ではなく、抗がん剤(シスプラチン)を同時併用して行なう同時化学放射線療法が標準となっています。

化学療法(抗がん剤治療)

主に、がんが再発したときや全身に転移しているときに選択されます。広汎子宮全摘術後の術後補助療法に、放射線療法の代わりとして化学療法を行う施設もあります。

開腹手術・腹腔鏡手術・ダヴィンチ手術!子宮頸がんの3種類の手術方法

子宮頸がんの3種類の手術方法

開腹手術とは?そのメリットとデメリット

開腹手術とはメスで腹部を切り開いて行なう手術のことです。多くの方がイメージする、従来の手術像といえるでしょう。

この後ご紹介する腹腔鏡手術ロボット手術と比較したとき、手術時間を短縮できることも大きなポイントになります。しかし、開腹手術は腹腔鏡手術やロボット手術と比較して手術時の出血が多く、腹部を大きく切るため手術痕(傷跡)が残り、患者さんの体に対する負担の多い治療方法でもあります。

腹腔鏡手術とは?そのメリットとデメリット

腹腔鏡手術とは、腹腔鏡というテレビカメラ (スコープ)を臍に開けた5-10mm程度の小さい穴からお腹のなかに入れて行う手術です。下腹部に5~10mm程度の穴を数か所開けて、そこから専用の手術器具 (鉗子)を挿入し、モニターに映し出される腹腔内の様子を観察しながら手術を行います。

開腹手術に比べ腹腔鏡手術では体を傷つける量が少ないため、術後の傷みが少なく、入院期間を短くできるほか、手術痕が少ないために美容の観点からも優れた手術といえるでしょう。

しかし、腹腔鏡手術にもデメリットはあります。腹腔鏡手術の鉗子はまっすぐな棒状の器具のため、可動域や操作自由度は非常に制限されています。したがって、手術を担当する医師には高度な技術と経験が求められます。また手術時間が長引きやすい傾向にあり、癒着が多いなど予期せぬ事態があるときは、途中から開腹手術に切り替えることもあります。

ロボット手術とは?そのメリットとデメリット

ロボット手術とは?

ダヴィンチ・サージカルシステムは米国で1990年代に開発され、世界中で導入が進んでいる手術支援ロボットです。我が国でもすでに200台以上のダヴィンチが導入されました。

我が国では、2012年4月から前立腺がん摘出術において保険適用され、現在は子宮や大腸、腎臓、胃などさまざまな臓器への適用拡大が進んでいるところです。子宮頸がんに対するダヴィンチ手術は我が国では2016年4月から先進医療となっており、対象はⅠA2期からⅡB期の症例に限定されています。

腹腔鏡手術の鉗子は自由度が小さく操作性に限界があるため、開腹手術でも難度の高い子宮悪性腫瘍手術を腹腔鏡手術にて行うことは困難でしたが、それを克服できる新しい手術としてロボット手術が注目されています。

腹腔鏡手術では困難な高難度の手術も鏡視下で手術可能になること、腹腔鏡手術の経験の少ない医師でも鏡視下の手術が可能になることが、ロボット手術の最大のメリットといえます。これまでは開腹で行われていた広汎子宮全摘術もロボット手術では小さな傷を残すのみとなるので、侵襲度の低い手術が可能になりました。

一方ロボット手術のデメリットはコストがかかることです。現在は1件あたり150万円ほど費用がかかりますが、今後先進医療・保険医療へと移行し、ロボット手術が普及することで低コスト化されていくと考えられます。昭和大学病院では先進医療へ移行するまでの10例については、ロボット手術の有用性・安全性検証のための臨床研究として、全額病院負担で行っています。詳細はお問い合わせください。

ロボット手術の大きなメリットは傷を小さくできること

開腹手術と比較したときのロボット手術における最大の特長は、体に残る傷の大きさの違いにあります。

ロボット手術ではへそ周辺にポートと呼ばれる穴を5ヶ所程度設置して、そこからロボットアームに接続されたスコープや専用の鉗子を体内に挿入して手術をします。従来の開腹手術ではへそ横から恥骨の上まで一直線の大きな傷が手術痕として残りますが、ポートの大きさは最大でも12mm程度ということを考えると、ロボット手術の傷跡がいかに小さいかをおわかりいただけるでしょう。

患者さんの体質にもよりますが、ロボット手術の傷口は半年〜1年もすればほとんどわからなくなるので、美容面で大変優れています。

低侵襲治療のため入院期間を短縮可能

体に傷をつける度合のことを侵襲度といい、侵襲度の低い治療方法のことを低侵襲治療と呼びます。ロボット手術は体に最低限の傷しか残さない低侵襲治療のため、患者さんの術後の回復を早めることが可能です。

たとえば、同じ子宮頸がんの広汎子宮全摘術を開腹手術で行ったとき、手術翌日に少し歩ければよいほうで、退院まで2週間程度かるのが一般的です。一方のロボット手術は低侵襲治療のため傷跡の痛みも少ないことから、多くの方は翌日から歩行可能です。翌日からすぐに全粥や通常とほぼ変わらない食事を食べられるようになり、手術後5~7日程度で退院可能です。

安全性も向上

ダヴィンチには手術を安全に実施して精度を向上させる機能も搭載されています。スケーリング機能や手ブレ補正機能により、術者の手ブレや予期せぬ動きをカメラや各種鉗子に伝えることなく、かつ自然な操作感で手術が可能です。

また術者の目となるカメラの視野も助手に頼ることなく、術者自身が自由に操作することができます。

ダヴィンチの操作は、鉗子操作とカメラ操作の切り替えは足元のペダルで、カメラ操作自体は手元のマスターコントローラーで行っています。また術者の目となるカメラの視野も助手に頼ることなく、術者自身が自由に操作可能です。

そしてロボット手術では、10~15倍拡大できる立体画像で細い神経や血管を見て確認できるため繊細な作業も正確に行えます。細かい血管も電気メスなどのパワーソースを用いて切断するため、開腹手術と比較して出血量が少ないことが知られています。

子宮頸がん手術にダヴィンチが向いている理由

松本光司先生

昭和大学病院では今後、子宮頸がんに対する外科的治療に対しても積極的にロボット手術を導入していきたいと考えています。

子宮頸がんの好発年齢は30代以降と通常のがんより低いため、手術の傷跡が残ることに対し抵抗感を持たれる方が多いです。「傷跡を残したくない」という患者さんの願いを叶えるためにも、美容面を損なわないロボット手術の果たす役割は大きいといえるでしょう。そしてロボット手術は、開腹手術より出血量が少ないため、術後の早期回復・入院期間の短縮・早期の社会復帰が可能となります。

また、入院期間が短縮されることにより多くの患者さんを受け入れやすくなるため、ベッド回転率が向上するという病院側のメリットもあります。
 

子宮頸がん・ダビンチ(松本光司先生)の連載記事

1991年より産婦人科医師としてキャリアをはじめる。2016年に昭和大学 産婦人科学講座 准教授に就任。婦人科悪性腫瘍の診療に従事。我が国の代表的HPV(ヒトパピローマウイルス)研究者の一人としても知られている。

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