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疾患啓発タイアップ

公開日 : 2017 年 04 月 08 日
更新日 : 2017 年 10 月 17 日

ステージ別にみる子宮頸がん手術と治療-ダヴィンチを用いたロボット支援下広汎子宮全摘術

昭和大学産婦人科では手術支援ロボット・ダヴィンチによる手術に力を入れており、2017年2月には同院で4例目となるロボット支援下広汎子宮全摘術を実施しました。

子宮頸がんのエキスパートである昭和大学医学部産婦人科学講座准教授の松本光司先生に、ステージ別における子宮頸がんに対する治療とダヴィンチの適用について伺いました。

子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染によって生じる

子宮に生じるがんは、子宮体がん子宮頸がんがあります。子宮頸がんとは子宮頸部と呼ばれる子宮の入口部に生じたがんのことをいい、病理学的所見によってさらに扁平上皮癌と腺癌に細分化されます。(ここは病理学的に上皮性悪性腫瘍が確定しているので、がんではなくを使用します。)

子宮頸がんの発生には、HPV感染が関係していることがわかっています。

子宮頸がんは実は予防できるがん

子宮頸がんは、がん検診を受ければ前がん病変(がんになる前の段階の疾患)を発見することができます。そして高度前がん病変の段階で外科的治療を行えば、がんになる前に治療することができることから、予防できるがんともいわれています。

子宮頸がんに対する治療方法はステージによって変化する

子宮頸がんステージ

がんに対する治療方法は、外科療法、抗がん剤を使用する化学療法、放射線療法が三大療法です。

比較的初期の子宮頸がんでは、がんの進行度合いだけでなく、妊娠・出産に対する希望 (妊孕性温存希望)を考慮しながら治療方針を決定するのが特徴といえるでしょう。

子宮頸がんの好発年齢は子宮体がんよりも若いため、子宮頸がんを発症した女性には、小さいお子さんをお持ちの方も多いです。初期の子宮頸がん手術では、子宮頸部円錐切除術レーザー蒸散術などの日帰り手術を希望される方が大勢いらっしゃるのは、小さい子供の世話などであまりゆっくり入院していられない方が多いためと考えています。

子宮頸がんのステージと適用される治療方法

子宮頸がんではステージ (進行期) によって適用される治療方法が異なります。

高度前がん病変の患者さんでは子宮頸部円錐切除術と呼ばれる手法で、異常を認める組織を切除するのが一般的です。条件を満たす患者さんに対しては、レーザー治療を行うこともあります。ステージI/II期の子宮頸がんの患者さんに対しては子宮全摘術が原則となりますが、ステージⅠA1のように、子宮頸部の表面に留まっているごく初期の子宮頸がんで妊孕性温存を希望する患者さんに対しては、子宮頸部円錐切除術のみで経過を見ることも行われます。

子宮全摘の術式は一般的には、IA1期では単純子宮全摘摘出術、IA2期では準広汎子宮全摘術、IB1〜II期では広汎子宮全摘術を選択します。広汎子宮全摘術では子宮や腟壁の一部だけでなく、卵巣・卵管・骨盤リンパ節も一緒に摘出することを含んだ術式です。ただし、年齢や進行期、組織型によっては卵巣を温存することが許容されることがあります。また、IA2期やIBI期の一部で妊孕性温存を強く希望する患者さんに対して、広汎子宮頸部摘出術 (子宮頸部を摘出し、子宮体部と腟を縫合する)を行っている施設もあります。

ステージⅢ期は、がんが腟壁の下3分の1に達している、もしくはがんが傍子宮組織を介して骨盤底に達している状態で、手術では摘出することが困難です。また、がんが隣接臓器である膀胱や直腸に及んでいるステージIVA期でも、局所病変を手術で摘出することが出来ません。このような進行子宮頸がんには、放射線治療を主体とする治療が行われます。

最近は放射線治療単独ではなく、シスプラチンという抗がん剤を同時に併用する同時化学放射線療法が標準となっています。遠隔転移のあるステージⅣB期では、抗がん剤を使用する薬物療法同時化学放射線療法を行います。

外科療法

子宮頸部円錐切除術

子宮頸部を高さ1~1.5cm程度の円錐状に切り抜く小手術で、高度前がん病変に対する主要な治療法です。ごく初期の子宮頸がんで術後も妊娠を希望されている患者さんには、子宮頸部円錐切除術のみでその後の経過を見る場合もあります。この方法は子宮頸部を短くすることから早産の原因になることもあるため、患者さんの年齢や妊娠の希望に応じて切除する円錐の深さを微調整する場合もあります。切除された子宮頸部組織は病理学的に検査されるので、前がん病変のなかに初期がんが紛れていないかを調べることもできます。

レーザー蒸散術

レーザーを当てて、前がん病変を焼灼・蒸散する方法です。焼灼した部位はしばらくすると新たな上皮を形成します。子宮頸部の長さは短くなりにくいため、円錐切除術と比べると妊娠した場合の早産のリスクは少なくなるといわれています。

しかし、レーザーで焼き飛ばせるのはレーザー光線の届く範囲 (目で見える範囲) の表面に限られるため、子宮頸管内にも病変が及ぶような場合は病変が残存することになります。レーザー蒸散術は子宮頸部円錐切除術と比較すると適応も限られ再発率もやや高いため、レーザー蒸散術が勧められるかどうかについては専門医の診察を必要とします。

単純子宮全摘出術

単純子宮全摘出術・広汎子宮全摘出術

子宮頸がんではIA1期に対して行われる手術です。子宮筋腫や子宮体癌に対して子宮全摘を行う場合にもこの術式で行います。膀胱や腸管といった周囲の臓器を傷つけず、子宮のみを摘出します。

子宮は基靭帯をはじめ複数の靭帯によって支えられていますが、本術式では各靱帯を個別に切除することなく、複数の靭帯を束ねてまとめて結紮・切断します。そのため切除ラインはおのずと子宮近くになりますが、簡単・円滑に子宮全摘を行うことができ、なおかつ手術時間も短く出血量も少なく抑えられます。

広汎子宮全摘出術

ステージIB1〜ⅡB期に進行すると、子宮頸部深くもしくは周辺の組織にがんが浸潤するため、腟壁や子宮を支える靱帯を含めて広範囲に子宮を摘出する広汎子宮全摘術が行われます。

病変がある子宮頸部ギリギリで切除すると病変が残存する可能性があるため、広汎子宮全摘術では子宮頸部を回り込むようにして子宮頸部から離れたラインで靭帯を一本ずつ切っていきます。複数の靭帯を束ねてまとめて結紮・切断する単純子宮全摘術に比べると時間はかかりますが、各靱帯を個別に切断するため切除ラインを子宮頸部から離してより外側に持ってくることが可能になります。

通常この手術を実施するときには、最初に転移を起こしやすい骨盤内のリンパ節を摘出する骨盤リンパ節郭清(かくせい・リンパ節の切除)や、両側付属器摘出術(卵巣や卵管の切除)も同時に行います。

放射線療法

手術で摘出した子宮などの病理検査の結果、がん細胞が子宮頸部の筋層の深いところまで浸潤している場合や腟壁や基靱帯、リンパ節などにも広がりが見られ、再発のリスクが高いと判断される場合には、広汎子宮全摘出術を実施した後に放射線療法を実施してがんの根治を目指します。

一方でステージⅢに進行した子宮頸がんは、手術で完全摘出することが困難であるため、最初から手術ではなく放射線療法を主体とする治療を選択します。手術ではなく放射線治療になった場合に、なかには「自分は手術で癌がとれないから助からない」と落ち込む方もいらっしゃいます。しかし、放射線療法は根治可能な治療方法のひとつであり、ステージⅢの子宮頸がんでも5年生存率は50~60%と十分な予後が期待されます。

最近は放射線治療単独ではなく、抗がん剤(シスプラチン)を同時併用して行なう同時化学放射線療法が標準となっています。

化学療法(抗がん剤治療)

主に、がんが再発したときや全身に転移しているときに選択されます。広汎子宮全摘術後の術後補助療法に、放射線療法の代わりとして化学療法を行う施設もあります。

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