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混合性結合組織病(MCTD)とは?その原因と症状 ‐手が腫れる・しびれる・色が変わる、皮膚が硬い、顔が赤い・関節が痛い…これらが併発する疾患

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  • 公開日:2017/04/21
  • 更新日:2017/04/21
混合性結合組織病(MCTD)とは?その原因と症状 ‐手が腫れる・しびれる・色が変わる、皮膚が硬い、顔が赤い・関節が痛い…これらが併発する疾患

目次

手指の腫れやしびれを感じる、手の色が変わる、皮膚が硬い、顔が赤い、関節が痛いなど、様々な症状が現れる混合性結合組織病(MCTDという疾患があります。この疾患はリウマチ膠原病の1つであり、国の指定難病に定められています。

混合性結合組織病(MCTD)ではなぜこのように様々な症状があらわれるのでしょうか。桜十字病院院長補佐 リウマチ膠原病内科の中村正先生にお話を伺いました。

※MCTD…混合性結合組織病の英語表記(Mixed Connective Tissue Disease)の略

混合性結合組織病を理解する前に -そもそもリウマチ膠原病とは?

混合性結合組織病はリウマチ膠原病のひとつです。そもそもリウマチ膠原病とはどのようなものでしょうか。まずはリウマチ膠原病についてお話しします。

リウマチ膠原病は3つの疾患の特徴を併せ持ち、全身に様々な症状が現れる「病態の総称」

リウマチ膠原病の総称

リウマチ膠原病とは、

・リウマチ性疾患

・総合組織疾患

・自己免疫疾患

という3つの要素(疾患概念)を併せ持つ複数の疾患単位を総称した表現であり、ある特定の疾患を指すものではありません。

結合組織疾患

結合組織とは、血管をはじめ関節・臓器膜(心膜・胸膜)など全身臓器の細胞と細胞とを結び付ける組織のことで、体を構成する重要な役割を担っています。

この結合組織に病変が現れる疾患を結合組織疾患といいます。結合組織疾患において最も病変が現れやすい臓器は血管などであり、漿膜病変(心膜炎・胸膜炎など)や血管閉塞、虚血といった症状が現れます。

自己免疫疾患

自己免疫疾患とは、細菌やウイルスなどから体を守る免疫システムに異常が起き、自己を攻撃してしまう疾患です。こうした反応は自己免疫反応と呼ばれます。自己免疫反応を起こすと、臓器機能の障害、関節組織の破壊や、ホルモンバランスの異常、アレルギー反応など多様な症状が現れます。

リウマチ性疾患

リウマチ性疾患とは、自己免疫反応によって、全身の関節やその周囲の骨・筋肉が痛むといった主症状を呈する疾患の総称です。リウマチとは、もともと「ロイマ(rheuma:流れる)」というギリシャ語が由来になっています。これは古代ギリシャにおいて「指、膝、肘、と全身の関節に次々と炎症が現れる理由は悪い体液が全身をぐるぐると巡っている(流れる)ためだ」と考えられていたことに起因しています。

実際、上記で説明した通り、自己免疫学機序で炎症を引き起こすのは、血液で全身を巡る自己抗体や免疫担当細胞であり、古代ギリシャに提唱されたリウマチの疾患概念は、病態を適切に捉えた表現だったといえるでしょう。

こういった3つの疾患概念を合わせ持った病態がリウマチ膠原病です。リウマチ膠原病はこうした背景を持つため、実に様々な臨床症状が現れます。

リウマチ膠原病の代表的な疾患

関節リウマチ

関節滑膜炎を主徴とする慢性炎症性疾患です。関節炎が長期持続すると関節の破壊に繋がります。また、関節リウマチが進行すると肺や多臓器に関節外病変が広がるケースもあり、アミロイドーシスの出現、間質性肺炎、感染症や心血管病変などを合併します。

日本リウマチ学会編.関節リウマチ診療ガイドライン2014より

全身性エリテマトーデス(SLE)

免疫異常によっておこる組織障害に基づいた多彩な全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患です。発熱、全身倦怠感、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経などの内臓のさまざまな症状が一度に、あるいは経過とともに現れます。

難病センター「全身性エリテマトーデス(SLE)」より

強皮症

皮膚や内臓が硬くなる変化(硬化や線維化)を特徴とする慢性疾患です。手指・手の甲、前腕、上腕、体の胴体に腫れを感じる、皮膚の色が変わる、肺が硬くなる、腎臓に障害がおきるなどの症状があらわれます。

※ここでは全身性強皮症の定義を解説しています  難病センター「全身性強皮症」より

多発性筋炎/皮膚筋炎

自己免疫性の炎症性疾患で筋肉の炎症により、筋肉に力が入りにくくなる、疲れやすい、痛みを感じるなどの症状が現れます。

難病センター「皮膚筋炎/多発性筋炎」より

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リウマチ膠原病の1つ - 混合性結合組織病(MCTD)とは?

リウマチ膠原病の「SLE」「強皮症」「多発性筋炎/皮膚筋炎」が混在する疾患

1972年、アメリカのSharpらは「リウマチ膠原病である全身性エリテマトーデス強皮症多発性筋炎/皮膚筋炎の症状が混在し、血液検査で抗U1-RNP抗体が高値陽性となる病態」を混合性結合組織病Mixed Connective Tissue Disease)と定義しました。

混合性結合組織病は、混合性(Mixed)と書き表すように複数のリウマチ膠原病の症状が合わさった疾患です。そのためそれぞれの疾患症状が合わさった、様々な症状が現れるという特徴があります。

混合性結合組織病の定義

厚生労働省では、下記の2つの特徴を持つ疾患を混合性結合組織病と定義しています。

●全身性エリテマトーデスを思わせる臨床所見、全身性硬化症を思わせる臨床所見、多発性筋炎/皮膚筋炎を思わせる臨床所見が、同一患者に同時にあるいは経過とともに認められる。
●血清中に抗U1-RNP(ribonucleoprotein)抗体が、高い抗体価で検出される。

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混合性結合組織病(MCTD)の疫学

■患者数

厚生労働省が発表している特定疾患医療受給者証所持者数によると、混合性結合組織病と認定され特定疾患医療受給者証を所有している患者さんの数は、2008年で8,658名、2013年で10,539名と報告されており、増加していることが明らかになっています。

小児の混合性結合組織病は平成12年度厚生科学研究班による全国調査では小児人口10万人あたり0.33人と報告されており、成人に比べると患者数は少ないといえます。

■男女比

混合性結合組織病の男女比は1:13〜16とされ、女性に多い疾患です。

■好発年齢

混合性結合組織病の発症年齢は30〜40歳代が多いです。しかし小児から高齢者まであらゆる年齢に発症する疾患であることが知られています。

難病センター「混合性結合組織病」および小児慢性特定疾病情報センター「混合性結合組織病」より

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混合性結合組織病(MCTD)の症状 

初期症状は「レノイー症状」「手の甲・指の腫脹」が多い

代表的な初期症状は下記の2つです。

■レイノー症状(Raynaud症状)

レイノー症状とは手や指が蒼白化したあと、暗紫色、紅潮を経て元の色に戻る症状であり、寒冷刺激や精神的緊張によって血管が収縮することで起こります。症状は数分~数十分間持続し、冷感やしびれを伴います。レイノー症状はほぼ全例に見られる症状です。

■手の甲・指の腫脹

手の甲や指が腫れぼったくなることで、指輪が入りにくくなることがあります。この症状は混合性結合組織病の80~90%の方にみられる症状です。

3つの疾患が合わさった「混合所見」が現れる

混合性結合組織病では、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎に似た臨床症状・検査所見(混合所見)が現れます。各症状の頻度は、どの疾患の特徴がより前面にあらわれてくるかで大きく異なります。

【混合性結合組織病におけるSLE、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎に似た主な症状と発現頻度】

 

症状

SLE様症状

多発関節炎

リンパ節腫脹

顔面紅斑

心膜炎

胸膜炎

腎炎症状(蛋白尿や血尿など)

強皮症様症状

手指に限局した皮膚硬化

肺線維症

食道運動機能の低下

消化管病変の発現(食道以外も含む)

多発性筋炎/皮膚筋炎

近位筋の筋力低下

難病センター「混合性結合組織病」より作表

小児の混合性結合組織病では全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎の3つの所見を全て認めることは少なく、全身性エリテマトーデス様所見の比重が高く、強皮症、筋炎様所見の比重が少ないことが特徴とされています。

気を付けるべき「肺高血圧症」の合併

混合性結合組織病患者の10%程度には肺高血圧症が認められます。肺高血圧症とは、心臓から肺へとつながる血管(肺動脈)の末梢が狭くなり血流が滞ることで肺動脈の血圧が上がってしまう病態です。肺動脈の血圧が高い状態が続いてしまうと、肺動脈に血液を送っている右心室(心臓の右側の心室)に大きな負荷がかかり、右心室の機能が低下する右心不全を引き起こします。

この肺高血圧症は命に関わる病態であるため、発症すると予後に大きな影響を及ぼします。そのため混合性結合組織病の患者さんでは、必ず肺高血圧症を疑い検査を行うことが重要です。

神経症状が現れるケースもある

混合性結合組織病では、10〜20%に無菌性髄膜炎、三叉神経障害などの神経症状が認められます。無菌性髄膜炎では発熱や髄膜刺激症状が現れます。これは混合性結合組織病自体が発症要因になっている場合と、治療に用いられる非ステロイド性抗炎症薬が発症を惹起している場合があります。

三叉神経障害は、三叉神経の第2・3枝領域に好発するとされており、顔面片側性の知覚・味覚障害を呈します。また、神経痛を生じることは少ないと報告されています。

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混合性結合組織病(MCTD)の症状を画像で紹介 –レイノー症状や肺高血圧症

混合性結合組織病の主症状であるレイノー症状の臨床症状、そして予後に大きな影響を及ぼす肺高血圧症の検査所見を画像で紹介します。

レイノー症状の臨床症状

レイノー症状

レイノー症状ではこのような皮膚の色の変化が認められます。

 

肺高血圧症の検査所見

こちらは肺高血圧症の胸部レントゲン写真です。肺高血圧症によって右肺動脈の拡大しているため、左第二弓の突出が著明です。また肺野の間質性陰影は明らかではありません。

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混合性結合組織病(MCTD)の原因

混合性結合組織病の発症原因はまだ解明されていません。しかし、この病気に罹患した方の血液を調べると、すべての症例で抗U1-RNP抗体が陽性を示します。抗U1-RNP抗体とは、自分自身の体の成分と反応をおこす自己抗体の1つですが、このように自己抗体の発現が確認されることから、混合性結合組織病はなんらかの自己免疫システムの異常が原因だと考えられています。

しかし現時点の研究結果では、抗U1-RNP抗体が身体に障害を与えているというデータは得られておらず、どのようにして混合性結合組織病の病態が形成されるのかはいまだ不明です。

混合性結合組織病は遺伝するか?

混合性結合組織病の発症には遺伝的な要因も指摘されています。しかし、混合性結合組織病そのものが遺伝するということではなく、混合性結合組織病になりやすい体質が引き継がれるという認識でとらえておくのがよいと考えられています。また、現状の調査では遺伝要因よりも環境因子の影響のほうが大きいと考えられています。

引き続き、記事4『混合性結合組織病(MCTD)の検査・治療・予後とは?』で混合性結合組織病の検査・治療法について、中村先生に解説いただきます。

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中村 正

中村 正先生

医療法人桜十字 桜十字病院

1984年熊本大学大学院医学研究科修了後、熊本大学医学部免疫医学研究施設アレルギー部門・研究員、鹿児島大学医学部内科学第一講座・医員を経て、米国ミシガン大学メディカルセンター・客員上級研究員となる。その後、熊本整形外科病院リウマチセンターやくまもと森都総合病院でリウマチ膠原病内科の部長を務め、2017年桜十字病院 院長補佐に就任。リウマチ膠原病内科を専門分野として数々の講演会で講師を務める。桜十字病院では、近年大きく進歩しているリウマチ膠原病の治療を地域住民が等しく享受できるよう診療を続けている。

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