【疾患啓発(スポンサード)】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 f09cb8bc 2846 424c 858e c387afd73c9b
【画像解説】髄膜腫とは―原因・症状・治療について
髄膜腫(ずいまくしゅ)は、数ある脳腫瘍のなかでもポピュラーなものです。しかしながら、その原因や発生のメカニズムはまだ解明されていません。がんと異なり、ほとんどは良性の腫瘍のため、適切な治療を受け...
クリップに失敗しました
クリップ とは
記事にコメントをつけて保存することが出来ます。検索機能であとで検索しやすいキーワードをつけたり、読み返し用のメモを入れておくと便利です。
また、記事を読んで疑問に思ったこと、わからないことなどをコメントに書き、「医療チームのコメントを許可する」を選んで頂いた場合は、医師や看護師が解説をメールにてお送りする場合があります。
※ クリップ内容は外部に公開されません

【画像解説】髄膜腫とは―原因・症状・治療について

公開日 2017 年 07 月 12 日 | 更新日 2018 年 09 月 21 日

【画像解説】髄膜腫とは―原因・症状・治療について
周藤 高 先生

横浜労災病院脳神経外科 部長

周藤 高 先生

目次

髄膜腫(ずいまくしゅ)は、数ある脳腫瘍のなかでもポピュラーなものです。しかしながら、その原因や発生のメカニズムはまだ解明されていません。がんと異なり、ほとんどは良性の腫瘍のため、適切な治療を受ければ予後も良好です。今回は髄膜腫とは何か、症状や治療など、髄膜腫の基礎知識について横浜労災病院 脳定位放射線治療センター長兼脳神経外科 部長の周藤 高先生にお聞きしました。

髄膜腫とは―髄膜腫の原因

頭蓋の構造

髄膜腫とは、頭蓋骨の内側にあり、脳の表面を覆っている髄膜のうちのひとつである「くも膜」という膜の細胞から生じる腫瘍です。髄膜腫のほとんどは脳の表面に発生するものの、髄膜は脳の表面だけでなく脳室(脳の内側にあり、脳脊髄液を満たしている空洞)内にもあるため、脳室内に発生することもあります。

髄膜腫のほとんどは良性です。腫瘍が大きくなるスピードは遅く、転移することもありません。そのため適切な治療を行えばほとんどの場合、腫瘍をコントロールしながら日常生活を送ることができます。まれに、良性と悪性の中間である異型性髄膜腫、悪性度が高く急速な増殖や転移を引き起こす悪性髄膜腫が生じることもあります。

良性髄膜腫

髄膜腫のほとんどがこの良性髄膜腫です。WHO(世界保健機関)の腫瘍の悪性度分類でグレードⅠに分類されます。転移する可能性はほとんどありません。手術などで完全に摘出すれば、予後は比較的良好です。

異型性髄膜腫

腫瘍の悪性度分類でグレードⅡに分類される髄膜腫です。腫瘍の成長はゆっくりであるものの、周囲に広がっていくことがあります。また、腫瘍を摘出しても再発することが少なくありません。

悪性髄膜腫

腫瘍の悪性度分類でグレードⅢに分類される髄膜腫です。急速に腫瘍が成長し、周囲に広がったり、転移したりすることがあります。治療しても再発・増悪の可能性が高い髄膜腫です。

髄膜腫は脳腫瘍のなかでも発生頻度の高いもので、近年では無症状のうちに脳ドックなどの脳の検査でみつかることがあります。中年以降に多いといわれ、年齢があがるごとに発症率も高まります。

髄膜腫は小児には極めてめずらしい疾患ですが、発症した場合は成人の髄膜腫よりも悪性の割合が高く、予後が不良なことも多いといわれています。

髄膜腫の原因

髄膜腫は女性のほうが発症しやすく、一部の髄膜腫は妊娠による増大、また乳がんや子宮筋腫などの女性特有の疾患との合併がみられることから性ホルモンとの関係が示唆されています。しかしながらまだエビデンスははっきりとしておらず、その原因はいまだに不明です。

髄膜腫は予防できる?

原因が明らかでないため、現時点での有効な予防策はありません。脳ドックなどを定期的に受けることで早期発見が可能になりますが,治療が必要かどうかは主治医の先生の説明をよく聞くことが大切です。

髄膜腫の発生部位―頭のどこにできる?

髄膜腫はくも膜のどこにでも発生する可能性があります。髄膜腫ができやすい部位もあるものの、その理由はわかっていません。以下に、特に髄膜腫ができやすい部分を紹介します。

円蓋部(えんがいぶ)

髄膜腫が一番生じやすい場所が円蓋部という頭蓋骨の丸い蓋の部分です。全髄膜腫の25%程度がこの円蓋部に生じるといわれています。手術で取りやすい部分にあるため、手術は比較的容易です。

傍矢状洞(ぼうしじょうどう)

頭の中心を通っている静脈の通り道である、上矢状静脈洞(じょうしじょうじょうみゃくどう)に接するかたちで発生します。静脈洞にまで腫瘍が入り込んでいることが多いため、手術の際、静脈洞に浸潤している腫瘍は残しておくことが一般的です。

蝶形骨縁(ちょうけいこつえん)

頭蓋底腫瘍の発生部位
頭蓋底腫瘍の発生部位

頭蓋骨の底部にある、前頭部と側頭部をわける蝶形骨縁という部分にできる髄膜腫です。蝶形骨縁外側にできた腫瘍の摘出は容易ですが,蝶形骨縁内側に生じた腫瘍は視神経や重要な血管を巻き込んでいることが多いため手術で全摘出することが困難なことがあり、その手術は大掛かりになります。

そのほかの髄膜腫の発生部位

大脳鎌(だいのうかま)

頭蓋内の真ん中にあり、左右の大脳半球の間の硬膜を指します。脳の表面ではないため少々手術の難易度が上がりますが,多くの場合全摘出が可能です。両足に麻痺が生じることがあります。

小脳テント

大脳と小脳のあいだにある「小脳テント」という部分から髄膜腫が生じます。

脳室

脳脊髄液で満ちている脳室という脳内の空洞部にできます。症状が出にくい部位のため、症状が出て発見されるころには腫瘍が非常に大きくなっていることも多いです。摘出には脳の一部を切開して腫瘍に到達することが必要になります。

シルビウス裂

前頭葉と側頭葉のあいだの溝をシルビウス裂といいます。この部位に髄膜腫が生じることはまれです。小児の髄膜腫はこの部位に生じることが多いといわれています。

視神経鞘(ししんけいしょう)

視神経のまわりに髄膜腫が生じます。この部位の髄膜腫を手術で摘出しようとすると、視神経を傷つけ視力に影響を及ぼす可能性があるため、手術でなく放射線治療が第一に選択されます。

嗅窩(きゅうか)

鼻の後ろの部分で、頭蓋底にあたります。匂いを感知し脳に伝える嗅神経に沿って発生します。腫瘍が大きくなると、匂いがわからないなどの症状がでることがあります。

鞍結節(あんけつせつ)

頭蓋底の鞍結節という部位から髄膜腫が生じます。視神経を圧迫・浸潤することがあるため、視野欠損の症状が現れることがあります。

錐体後面(すいたいこうめん)

小脳橋角部(しょうのうきょうかくぶ)とも呼ばれる部分で、頭蓋底にあります。顔面を動かす神経や聴神経の近くにあることから、進行すると顔面麻痺や耳が聞こえにくいなどの症状が出ることがあります。

錐体斜台(すいたいしゃだい)

頭蓋底部にあり、全髄膜腫の6%が錐体斜台に生じます。嗅神経や視神経以外のすべての脳神経を巻き込む可能性があるため、全摘出は難しいといわれています。

ほかに、多発性髄膜腫といって頭蓋内に多数の髄膜腫が生じることもあります。特に両側の前庭神経シュワン細胞腫とともに多発性髄膜腫が出現した場合は「神経線維腫症2型」という遺伝性疾患で、難病に指定されています。神経線維腫症2型の場合は染色体にあるがん抑制遺伝子がうまく機能していないことが原因です。

髄膜腫の症状―自覚症状はある?

四肢の麻痺

髄膜腫は、腫瘍により脳内のある部分が圧迫されて症状が表れます。そのため、腫瘍ができる部位によってその症状が変わります。ゆっくりと成長するため初期の段階では自覚症状がないことも多いです。進行し、腫瘍が大きくなると症状が出てきます。

多くの方に起こる共通の症状と、部位別の症状に分けられます。

共通する症状

  • 頭痛
  • てんかん
  • 嘔吐
  • 意識障害(ぼーっとする など)
  • 水頭症(脳脊髄液が頭のなかに溜まってしまう)

部位別の症状(一例)

<円蓋部・傍矢状洞>

  • 手足の麻痺(うまく歩けない、ものが持てない、しびれる)
  • けいれん
  • 精神症状
  • 失語症(しゃべることができない、相手の話すことをうまく理解できない など)
  • 構音障害(正しい発音ができない)

<蝶形骨縁>

  • 視野障害(視界が欠ける)
  • 複視(ものが二重にみえる)
  • 視力低下
  • 眼球突出

<小脳テント>

  • 平衡感覚障害(ふらつく、めまいがする)

先ほども述べたように、髄膜腫のほとんどは良性です。しかし10%以下の割合で異型性・悪性の髄膜腫が生じることもあります。悪性髄膜腫は増殖のスピードが早く、他臓器への転移も生じるため、生命にかかわることもあります。

髄膜腫の検査

脳の診断画像

造影剤(画像診断検査でより鮮明に病変をみられるようにするために使用する薬剤)を用いてのMRIやCT検査を行うほか、脳血管造影を行うこともあります。造影剤を用いた検査は、腎臓の疾患を持つ方やアレルギー、ぜんそくの方は行うことができません。これらに該当する場合は造影剤を使わず、撮影方法を工夫して検査を実施します。

造影剤を使用したMRI T1強調画像で明瞭に白くうつることに加え,CTで腫瘍内に石灰化や腫瘍が付着している頭蓋骨の変化などを見つければ画像診断は比較的容易です。

近年では脳ドックなど各種検査の普及で、無症状のうちに見つかることが多くなっています。

一部、手術で組織を採取して悪性かどうかを調べる生検を行うこともありますが、髄膜腫はほとんどが良性であることから生検を実施することはまれです。

髄膜腫の治療

放射線治療

髄膜腫の治療の基本は手術です。多くは良性のため、手術で完全に摘出できれば完治が期待できます。ただし先に述べたように、近年では無症状のうちに見つかることも多くなってきたため、その際は経過観察を行うか定位放射線治療を行います。治療は必ずしも必要とは限らず,腫瘍が小さく症状もない場合には経過観察とすることが一般的です。

開頭手術

手術により、腫瘍を摘出します。髄膜腫の付着部の膜ごと腫瘍を摘出することが理想です。完全に取りきることができれば、手術のあとに放射線治療などは行いません。

ただし、血管や神経に複雑に絡んでいるなど、すべてを摘出できない場合もあります。その際は少し腫瘍を残して、後から放射線治療を行うことがあります。

頭蓋底にできた髄膜腫は、表面にできたものよりも大掛かりな手術となります。頭蓋底の手術では、手術時間がほぼ1日かかることも少なくありません。また、2回にわけて手術を行うこともあります。

手術には当然、合併症や後遺症のリスクが生じます。髄膜腫は一般に血流の豊富な腫瘍であり,手術の際に多くの出血が予想される場合は、あらかじめ「血管内塞栓術」という腫瘍へ向かう血液の流れを止めるカテーテル治療を行うこともあります。

後遺症としては麻痺や失語,視野・視力障害といった腫瘍発生部位に関連したもののほかに,感染症、けいれん発作などが起こる可能性も考慮する必要があるでしょう。

定位放射線治療

ガンマナイフやノバリスなどの定位放射線装置を使用した放射線治療もあります。前述の通り頭蓋底にできた腫瘍で手術が難しい場合、無症状で小さくても増大傾向にある場合、手術で腫瘍が残存した場合に適応されます。

最近は放射線のみで治療するケースも多く、横浜労災病院では患者さんの状態や腫瘍の場所,大きさなどを考慮してガンマナイフとノバリスを使い分けて患者さんごとに最適な治療を行っています。

ガンマナイフ、ノバリスについては以下の記事をご覧ください。

『ガンマナイフとはーガンマナイフ治療の仕組みと費用について』

『定位放射線治療装置ノバリスとは?副作用やガンマナイフ・サイバーナイフとの違い』

髄膜腫で化学療法はしない?

化学療法は分裂が活発な細胞の特性を生かして作用する薬を使います。ゆっくりと増殖する髄膜腫は、化学療法の効果が出にくいため、一般的に化学療法は用いられません(一部、補助的に抗がん剤などを使用する例もありますが、確かな効果は認められていません)。

手術で治療を行うか、放射線で治療を行うかは髄膜腫の発生部位、症状の有無、大きさによって左右されるため、主治医とよく相談したうえで治療法を選択するとよいでしょう。

髄膜腫の予後—術後合併症や再発率・治療経過

病院のベッドにいる患者

髄膜腫の予後は、腫瘍の性質や摘出度により左右されます。良性で完全に取ることができれば再発の心配はあまりありません。しかしながら、腫瘍のすべてを取りきれなかった場合はそこから増大し、再発するリスクがあります。

全摘出が不可能だった場合の再発率はおよそ15%〜40%といわれています。また、髄膜腫の悪性度でも再発率に差があり、良性では7〜12%(長期的な追跡調査では20%とも)、異型性では29〜41%、悪性では50〜78%の確率で再発します。

そうとはいえ、悲観的になることはありません。髄膜腫は基本的には完治が望める疾患です。ただし再発は決してまれではないため、定期検査だけはしっかりと受けるようにしましょう。もし再発したとしても、早期に発見できれば放射線治療で治すことができるからです。

繰り返しとなりますが、髄膜腫が見つかったらすぐに専門の医師に相談しましょう。そして手術がよいのか、放射線治療がよいのか、これらを併用するのか、あるいは当面は経過観察でよいのか,とあなたの状態に応じた方針を医師と一緒に考えていくことが大切です。

記事3『髄膜腫における放射線治療―画像でみる治療の流れと適応条件』では、髄膜腫の治療のなかでも特に放射線治療について、詳しくお伝えします。

 

転移性脳腫瘍(周藤 高先生)の連載記事

2015年開催の第16回日本ガンマナイフ研究会で会長を務める。困難な脳神経外科手術とガンマナイフをはじめとした定位放射線治療を両方行っている数少ない脳神経外科医。